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本拠地突入編・1
斬られ役、応援する
しおりを挟む114-①
パン屋での戦闘に巻き込まれた女性客……エネム=ワツリィを自宅まで送り届けようとしていた武光達の前に、影魔獣が現れた。数は5体、全員人型で右腕の肘から先が剣状になった剣影兵であった。
現れた剣影兵を前に、アルジェは叫んだ。
「お前達、戦闘態勢を──」
「アルジェちゃん、気をつけて!! 敵が来るよ!!」
「油断するなよ、皆!!」
「ま、まだ他にも隠れているかもしれません、注意しましょう!!」
既に戦闘態勢を取っているクレナ達を見てアルジェは呆気に取られた。ついさっきまで楽しそうにお喋りして、緊張感など欠片も無かったのに……
「おいアルジェ、ボーっとすんな、戦闘態勢だ!!」
「わ、分かっている!!」
フリードに言われて、アルジェは武器を構えた。左腕に装備された楕円形の小型盾の先端に、刃渡りおよそ一尺三寸(約40cm)ほどの笹の葉状の剣が取り付けられている、剣と盾が一体となった《剣盾》とでも言うべき特異な武器だ。
アルジェは武光達の前へ進み出ると、武光達に背を向けたまま言い放った。
「お前達は手を出すな……王国軍最強部隊の強さを見せてやる!!」
「はぁ!? ふざけんなよ、お前何勝手なこと言って──」
「参る!!」
「オイ!?」
フリードが止める間も無く、アルジェは剣影兵の群れに突っ込んだ。
アルジェはまるでダンスのステップを踏むかのような足運びで、剣影兵の攻撃を最小限の動作で軽々と躱し、左手の剣盾による鋭い一撃を次々と叩き込んでゆく。
「スゲェ……!!」
「う……うん」
「流石はロイ将軍の部下だ……!!」
「す、凄いですアルジェさん」
アルジェの華麗な戦いぶりに息を呑むフリード達だったが……
「アカンな、アレは……」
〔ああ……行こう武光!!〕
「ナジミ!! エネムさんを連れて安全な場所まで下がれ!!」
「分かりました、武光様!!」
ナジミ達に指示を出すと、武光は駆け出した。
確かに、アルジェの攻撃は剣影兵に全て当たってはいるものの、剣影兵の核を捉えられておらず、全くダメージを与えられていない。攻撃を物ともせずに反撃してくる剣影兵を前に、形勢は逆転しつつあった。
「くっ……」
アルジェは真っ向から振り降ろされた剣影兵の剣腕を躱すと、地面にめり込んだ切っ先を踏みつけて相手の自由を奪いつつ、剣盾の持ち手を握る力を少し緩めた。
すると、盾に取り付けられた剣が、ハサミのように、中心線から左右に分かれた。
「喰らうがいい……白狼の顎を!!」
アルジェは、左右に分かれた剣で剣影兵の首を挟み込むと、剣盾の持ち手を強く握り直した。すると、開いた剣が再び閉じられ、切断された剣影兵の首がポロリと落ちた。
「見たか……!! これが冥府の群狼の……『狼』の強さだ!!」
そう吐き捨てたアルジェは、次の敵に対応しようと、首を落とした剣影兵に背を向けたが……
「ガアアアアアッ!!」
「なっ!?」
首を落とされた剣影兵がアルジェに襲いかかった。振り降ろされた剣腕がアルジェの無防備な首筋を捉え──
「させるかアホが!!」
間一髪で、武光が剣影兵をショルダータックルで吹っ飛ばした。
〔右だ武光!!〕
「応ッッッ!!」
“すん!!”
武光は右から飛びかかってきた別の剣影兵に対して、右足を踏み込み、身体の向きを変えながら抜刀し、敵の胴体を抜き打ちに斬り飛ばした。上半身が消滅したにも関わらず、未だに動いている下半身を真っ向唐竹割りに両断しながらアルジェに声をかける。
「大丈夫か、アルジェ!!」
「余計な事を!! 私は……一人でも十分に戦える!!」
「そやな……でも、一人でも十分に戦えるんやったら……二人なら二十分に戦える!!」
「はぁ!? どういう計算だそれは!? 何を馬鹿な──」
「この任務を成功させて、シュワルツェネッ太に認めてもらいたいんやろ?」
「と、当然だ!!」
「せやったら……俺らにも仲間を応援させてくれや……なっ?」
「い……今は戦闘中だぞ!? ヘラヘラするんじゃない!!」
「……アカンか?」
「くっ……す、好きにしろ!! 但し、邪魔はするなよ?」
それを聞いた武光はニヤリと笑った。
「安心せぇ、主役を存分に引き立てるのが俺の仕事……俺は、プロやぞ?」
武光は、左手で魔穿鉄剣を鞘から抜き放ち、イットー・リョーダンと魔穿鉄剣を交差させるように、前に突き出して構えた。
「よっしゃ!! イットー!! 魔っつん!! 全力でアルジェを援護すんぞ!!」
〔よしきた!!〕
〔任せて下さいご主人様!!〕
114-②
……一方その頃、エネムを連れて退避したフリード達の前にも刺客が襲来していた。
「お、お前は……っ!?」
フリード達は思わず息を呑んだ。目の前に現れたのは……因縁の相手だった。
「ククク……さぁて、斬り刻んでやるぜぇ、クソガキ共!!」
「……インサン=マリートっっっ!!」
聖剣士が 現れた!!
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