193 / 282
魔王軍進撃編
執事、決心する
しおりを挟む193-①
突如として魔王城を襲った衝撃に、影光は足を取られて機材の角に頭を思いっきりぶつけてしまった。
「ぐっ……一体何が起きた!?」
ゲンヨウの補助を任されていた兎頭の魔族……《怪兎族》の男、ペタレーオが、手元の機材にはめ込まれた鏡を見て叫んだ。
「右の前脚に敵の攻撃が集中している模様です!!」
ペタレーオの報告を、操城輪を握るゲンヨウは一笑に付した。
「フン、慌てるでない!! メ・サウゴ・クーの脚部には鉄壁の装甲が施されておる。どれほどの影魔獣が束になろうと無敵の装甲には傷一つ──」
「そ、装甲板が脱落しました!!」
「何じゃと!?」
ゲンヨウは愕然とした。魔王城の脚に施されていた無敵の装甲は三百年の間にすっかり老朽化してしまい、取り付けが緩んでしまっていたのだ。
「狼狽るでない、無敵のメ・サウゴ・クーに死角無し!! この城の底部には下に潜り込まれた時の為の無数の迎撃用兵器が──」
「て、底部の迎撃兵器が歩行の振動と戦闘の衝撃で次々と脱落してゆきます!!」
魔王城の底部に設置されていた迎撃兵器の数々も、三百年の間にすっかり老朽化してしまい、取り付けが緩んでしまっていた。
「こ、こうなれば……ホン・ソウザンの街を取り囲む城壁を破る為に用意した、禁断の秘密兵器で──」
「歩行の振動と戦闘の衝撃で底部に穴が空いて何かが落下した模様!! あ、あれは……城壁破砕用の秘密兵器です!!」
魔王城の底部に秘匿されていた禁断の(以下略)
ペタレーオの報告を聞いたゲンヨウはガクリと項垂れた。
「お、おーい……ジイさん!?」
「ふ……ふふ……ふははははは!!」
肩を震わせながら笑い始めたゲンヨウを前に、影光は嫌な予感がしまくりだった。
「上等じゃ……例え装甲が剥がれ落ち、迎撃兵器や秘密兵器が使えずとも……」
「ま、まさか……」
「我らが城は無敵!! こうなればメ・サウゴ・クーを城壁に体当たりさせ、破壊してくれるわ!!」
「ぎゃあーーー!! やっぱりかーーー!!」
影光は即座に伝声管に駆け寄った。
「皆ーーー!! 近くの物に全力で掴まれーーーッッッ!! つばめとすずめはオサナの言う事をよく聞いてジッとしてるんだ、大丈夫だ、オサナといれば怖くないからな!!」
本来の作戦では、魔王城に搭載されていた秘密兵器でホン・ソウザンの街をグルリと取り囲む高く分厚い城壁をブチ抜いて突入口を作り、そこから部隊を突入させる手筈だったのだが、それが使えないとなった以上、城壁を破るにはもはやそれしか無い。
ホン・ソウザンの城壁は鏡越しではあるが、壁の上の兵士達の顔が確認出来る距離まで近付いていた。
「だが……脚が保つのか……!?」
魔王城は四本の脚で巨城を支え、動いているのだ。たった一本の脚が破壊されただけで、進むも退くもままならなくなる。いや、それどころか今は全速で前進中なのだ、そんな時に脚が破壊されてしまったら……魔王城は間違いなくド派手に倒れ、城内の味方に大損害が出る!!
影光が焦っていると、魔王城を連続して大きな衝撃が襲った。
「うおっ……どうした!?」
ペタレーオは影光からの質問に、震える声で答えた。
「敵が……次々と魔王城の右前脚に体当たりをして自爆しています!!」
「何だと!? ジイさん、映像を切り替えてくれ!!」
「う、うむ!!」
影光は正面の大鏡に映し出される映像を正面から底部へと切り替えてもらった。
そこに映し出されたのは、ヨミの率いる麗翼軍との戦いで残り三体まで数を減らしたサンガイハオウの姿があった。
「何だ……!? 様子がおかしいぞ!?」
三体のサンガイハオウはヨミ達からの攻撃を受けながらも皆、頭を抱えて苦しんでいる。だがそれは、戦いのダメージによる苦痛ではない。同じ影魔獣である影光は、直感的にそう感じた。
そして、その内の一体が糸の切れた操り人形のようにダラリと両腕を下ろしたかと思うと、突如として、魔王城の右前脚に猛スピードで体当たりし、自爆した。ペタレーオが悲鳴に近い叫びを上げる。
「脚部がもう限界です!! 次に体当たりされたら……」
鏡には残った二体のサンガイハオウに総攻撃をかける麗翼軍が映し出されている。
二体のサンガイハオウは一瞬逃げるような素振りを見せたものの、すぐさま魔王城の右前脚に向かって飛翔した。
ヨミ達の必死の攻撃により、一体は翼をやられて墜落した。しかし、もう一体のサンガイハオウは手足を吹き飛ばされながらも攻撃を突破し……
……魔王城を凄まじい衝撃と振動が襲った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる