209 / 282
両雄激闘編
斬られ役、とっておきを出す
しおりを挟む209-①
「うおおおおおっ!!」
〔うおおおおおっ!!〕
イットー・リョーダンを振り上げ、雄叫びを上げながら突進してくる武光を前に、教皇は余裕の笑みを浮かべた……と言うと、少し語弊があるかもしれない。
何故ならば、影魔獣と化してしまった教皇の顔は目も鼻も口も無い、のっぺらぼうなのだから。
「フフフ……貴様の攻撃など、この永遠不滅の肉体には効かぬわ!!」
教皇は己の肉体の強靭さを誇示すべく、真っ向から迫り来る敵の剣に対し、右の人差し指を向けた。
「でやあああっ!!」
〔でやあああっ!!〕
“すん!!”
「なっ……!?」
ロイと戦った時のように指一本で斬撃を受け止めようとした教皇だったが、教皇の右腕は、いとも容易く斬り裂かれてしまった。
間髪入れず、返す刀で足元から襲い来る刃に対し、教皇は慌てて階段の踊り場から二階の床へと飛び降り、間一髪で斬撃を回避した。
「おう、どうした? 永遠不滅の……何や? 巨人軍か?」
肘まで縦に裂けた右腕を再生させながら、教皇は踊り場からこちらを見下ろしている武光を忌々しげに睨みつけた。
教皇は焦った。完全に想定外である……まさかあの白銀の死神ロイ=デストですら傷一つ付けられなかったこの肉体をいとも容易く斬り裂くとは。いつぞやのシルエッタの言葉が脳裏を過ぎった。
『敵は……聖剣イットー・リョーダンを持っている』
聖剣イットー・リョーダン……およそ300年前に魔王を討ち取り、この地の王となったアナザワルド王朝始祖、古の勇者アルト=アナザワルドの封印されし聖剣。
その聖剣に込められた力は、たった一振りで千の悪鬼天魔を薙ぎ払い滅する事が出来るという。
「馬鹿な……何故だ、王家の血を引かぬ貴様が何故!?」
「知りたかったら教えたってもええけど……web小説やったら179話分くらいあるで?」
「くっ……だが!!」
教皇は肉体の一部を武光目掛けて発射した。発射されたスライム状の塊は、武光の両脚にまとわり付き、武光の動きを封じてしまった。
「ゲッ!? 何やコレ足が……お、重たっ!?」
教皇が再生させた右手の五指を先の尖った長い触手に変化させつつ、足掻く武光を嘲笑う。
「フハハハハハ……何と無様な!! 例え貴様が聖剣イットー・リョーダンを持っていようとも、その様では私を斬る事など到底出来まい!! さぁ……ここからこの指で刺し貫いてくれようぞ!!」
絶体絶命のピンチに見えたが、武光は不敵な笑みを浮かべると、イットー・リョーダンを鞘に納めた。
「何、心配には及ばへん……………クレナ!!」
「ハイッ!!」
武光はクレナに『とっておきマル秘スペシャルアタック』のハンドサインを送ると、納刀したイットー・リョーダンを鞘ごと素早く帯から引き抜き、階下のクレナに放り投げた。
イットー・リョーダンを受け取ったクレナは鞘を投げ捨て、教皇に向かって突撃した。
〔行くぞクレナ!! 武光の教えを思い出すんだ!!〕
「ハイ!! 隊長直伝……!! 《しんぷるな真っ向斬り》ッッッ!!」
“ズバッッッ!!”
クレナの一振りが、今まさに武光に襲いかかろうとしていた教皇の右腕を斬り落とした。右腕を斬り落とされた教皇は慌てた。
「ば、馬鹿な!? あの異界人だけでなく、この小娘も聖剣イットー・リョーダンを扱えるというのか!?」
「ミーナ!!」
「うむ!! 任せろ!!」
クレナは、教皇の反撃を回避しながら、自分と入れ替わりに教皇に突撃するミナハに、すれ違いざまイットー・リョーダンを手渡した。
〔ミナハ、《基本中の基本》通りにな!!〕
「お任せを!! 喰らえ……隊長殿直伝!! 《基本的な逆袈裟斬り》ッッッ!!」
“ザンッッッ!!”
「ぐおっ!? ば、馬鹿な」
「行け、キクチナ!!」
「は、ハイッ!!」
ミナハは教皇の左腕を斬り飛ばすと、尻尾による反撃を回避しつつ、自分と入れ替わりに教皇に向かって突撃するキクチナに、すれ違いざまイットー・リョーダンを手渡した。
〔キクチナ、難しく考えるな、無心でやるんだ!!〕
「は、ハイッ……やぁぁぁぁぁっ!!」
“ズバッッッ!!”
「こ、この小娘もか!? この小娘も聖剣を!?」
キクチナが袈裟懸けに振るったイットー・リョーダンが教皇の左脚の大腿から下を斬り飛ばし、片脚を失った教皇は体勢を崩した。
「ふ、フリードさん!!」
「おっしゃ任せろ!!」
キクチナからイットー・リョーダンを受け取ったフリードが教皇に肉迫する!!
〔行くぞ……フリード!!〕
「応ッ!! でやあああああっ!!」
“すん”
白刃一閃、フリードが左逆手で横薙ぎに振るった一撃によって、教皇は首を刎ね飛ばされた。
両腕と片脚、そして首を刎ねられてなお、影魔獣と化した教皇は生きている。
「そんな馬鹿な……!! 伝説によれば聖剣イットー・リョーダンを扱えるのは選ばれし勇者ただ一人だけのはずだ!! なのに、何故どいつもこいつも聖剣を扱えるのだ!?」
混乱する教皇にフリードと三人娘は堂々と言い放った。
「それは!!」
「私達が!!」
「武光隊長に!!」
「時代劇俳優としての心得を徹底的に叩き込まれてるからだぁーーーーーッ!!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる