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はいぱーむてき大作戦編
斬られ役(影)と巫女(姉)、駆け出す
しおりを挟む245-①
影光とオサナは宿舎の窓から魔王城を眺めていた。
暗黒樹出現からおよそ八十日が経過し、鉄と職人の街、マイク・ターミスタでは、移動城塞メ・サウゴ・クーの修復と超弩級穿影槍の搭載作業が進められていた。
サンガイハオウの自爆特攻によって折れてしまった魔王城の右前脚は、この八十日あまりの期間ですっかり元の状態に再生していた。
建造当時を知るゲンヨウは、魔王城の脚に使われている特殊な材質や技術について、複雑怪奇な解説を延々としていたが、現代日本人としての知識しか持ち合わせていない影光には、『エビとかカニみたいな甲殻類がもげた脚を再生させるようなものらしい』という極めてザックリとした理解しか出来なかった。
暗黒樹撃滅はいぱーむてき大作戦の第一段階、『楔の破壊』はもう間も無く完了しようとしていた。
天照武刃団や新生魔王軍、そして各地の王国軍の奮戦により、暗黒教団の信徒達によって各地に設置された楔は一掃されつつある。
暗黒樹に生命の力を送り込み続けていた楔を一掃する事で、暗黒樹の成長速度は低下し、核の超再生能力も封じられるはずだ。
しかし、それでも残された時間はあまりない。シルエッタの計算によれば、暗黒樹の枝に実った『実』が落下し始めるまであと十日あるかないからしい。
かつてシルエッタが影光達に対するデモンストレーションで実の一つを落下させた際、割れた実の中からは5~6体の影魔獣が現れた。
そしてその災厄の木の実は暗黒樹の枝に、数え切れない程ビッシリと実っている。それらが一斉に落下し始め、数え切れない程の影魔獣が解き放たれてしまったら、この国は……いや、この地に生きる全ての生命は滅ぶ。
ここ数日、影光とオサナはずっとソワソワしていた。予定通りに事が運んでいるとするならば、あと数日で遊撃部隊として城から降りたナジミ達がマイク・ターミスタに到着するはずなのだ。
ナジミ達が遊撃隊として城から降りる事となった時、影光とオサナはナジミに付いて行こうとしたのだが、影光は『軍を統率すべき総大将が一緒に降りてどうする!!』と魔族達にボコボコにされ、オサナはナジミから『城内にはまだまだ怪我人が大勢います。皆の治療の為に、ここに残ってあげて下さい』とお願いされ、二人は仕方無く魔王城に残ったのだ。
「「はぁ……」」
ナジミを心配し、深い溜め息を吐く二人のもとへ、つい先日、遊撃隊としての任務を終え、マイク・ターミスタに到着したガロウがやって来た。
「影光、オサナ、天照武刃団とやらが戻って来たらしいぞ」
「「マジかーーーーー!!」」
「お、おい!? 待てお前達!!」
影光とオサナは激しく立ち上がると、倒れた椅子もそのままに、部屋の壁をブチ破らんばかりの勢いで駆け出した。
245-②
ナジミ達は予定よりも数日早くマイク・ターミスタに到着する事が出来た。
「ふぅ……ようやく到着したな、姐さん」
「ええ、予定よりかなり早く到着する事が出来ました。これも皆の頑張りと神々のお力添えあっての事です」
ナジミの言葉にクレナ達は頷いた。
神々から授かった武器はその凄まじい威力を存分に発揮した。
クレナの火神穿影槍の放つ閃光は影魔獣を瞬時に消滅させ、
ミナハの水神驚天動地が放つ水刃は影魔獣の群れを薙ぎ払い、
キクチナの風神弩は百発百中で敵を射抜き、
アルジェの地神剣盾の起こす地割れや地震は敵の前進を許さなかった。
おかげで楔の破壊は圧倒的に捗りまくり、余勢を駆って本来別の遊撃隊が担当する予定だった楔をも片っ端から破壊して回り、その上更に苦戦している他の部隊の救援をして回るという、『回り道』をしてなお、本来想定していた日数よりも早くマイク・ターミスタに到着する事が出来たのだ。
天照武刃団の八面六臂の活躍は、他の遊撃隊の負担を大幅に減らし、作戦の第一段階の達成に大いに貢献していた。
「よし、それじゃあとりあえずミト姫様に報告をしに──」
フリードが指示を出そうとしたその時、クレナがフリードの肩を叩いた。
「ねぇ、フー君……アレ何?」
「えっ……うおっ!? 何だありゃ!!」
クレナが指差した方向から、土煙と雄叫びを上げながら、二つの影が急速に接近してくる。
「「うおおおおおおおおお-----っ!!」」
あまりの迫力にフリードは思わずクレナ達に防御陣形の指示を出そうとしたが、突進してきた二つの影はフリード達を弾き飛ばし、ナジミの前で急停止した。
「「ハァ……ハァ……」」
「あ、貴方達は……」
影光が 現れた!!
オサナが 現れた!!
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