斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
245 / 282
はいぱーむてき大作戦編

斬られ役(影)と巫女(姉)、駆け出す

しおりを挟む

 245-①

 影光とオサナは宿舎の窓から魔王城を眺めていた。

 暗黒樹出現からおよそ八十日が経過し、鉄と職人の街、マイク・ターミスタでは、移動城塞メ・サウゴ・クーの修復と超弩級穿影槍の搭載作業が進められていた。

 サンガイハオウの自爆特攻によって折れてしまった魔王城の右前脚は、この八十日あまりの期間ですっかり元の状態に再生していた。
 建造当時を知るゲンヨウは、魔王城の脚に使われている特殊な材質や技術について、複雑怪奇な解説を延々としていたが、現代日本人としての知識しか持ち合わせていない影光には、『エビとかカニみたいな甲殻類がもげた脚を再生させるようなものらしい』という極めてザックリとした理解しか出来なかった。

 暗黒樹撃滅はいぱーむてき大作戦の第一段階、『くさびの破壊』はもう間も無く完了しようとしていた。

 天照武刃団や新生魔王軍、そして各地の王国軍の奮戦により、暗黒教団の信徒達によって各地に設置されたくさびは一掃されつつある。

 暗黒樹に生命の力を送り込み続けていたくさびを一掃する事で、暗黒樹の成長速度は低下し、コアの超再生能力も封じられるはずだ。

 しかし、それでも残された時間はあまりない。シルエッタの計算によれば、暗黒樹の枝に実った『実』が落下し始めるまであと十日あるかないからしい。
 かつてシルエッタが影光達に対するデモンストレーションで実の一つを落下させた際、割れた実の中からは5~6体の影魔獣が現れた。
 そしてその災厄の木の実は暗黒樹の枝に、数え切れない程ビッシリと実っている。それらが一斉に落下し始め、数え切れない程の影魔獣が解き放たれてしまったら、この国は……いや、この地に生きる全ての生命は滅ぶ。

 ここ数日、影光とオサナはずっとソワソワしていた。予定通りに事が運んでいるとするならば、あと数日で遊撃部隊として城から降りたナジミ達がマイク・ターミスタに到着するはずなのだ。
 ナジミ達が遊撃隊として城から降りる事となった時、影光とオサナはナジミに付いて行こうとしたのだが、影光は『軍を統率すべき総大将が一緒に降りてどうする!!』と魔族達にボコボコにされ、オサナはナジミから『城内にはまだまだ怪我人が大勢います。皆の治療の為に、ここに残ってあげて下さい』とお願いされ、二人は仕方無く魔王城に残ったのだ。

「「はぁ……」」

 ナジミを心配し、深い溜め息を吐く二人のもとへ、つい先日、遊撃隊としての任務を終え、マイク・ターミスタに到着したガロウがやって来た。

「影光、オサナ、天照武刃団とやらが戻って来たらしいぞ」

「「マジかーーーーー!!」」

「お、おい!? 待てお前達!!」

 影光とオサナは激しく立ち上がると、倒れた椅子もそのままに、部屋の壁をブチ破らんばかりの勢いで駆け出した。

 245-②

 ナジミ達は予定よりも数日早くマイク・ターミスタに到着する事が出来た。

「ふぅ……ようやく到着したな、姐さん」
「ええ、予定よりかなり早く到着する事が出来ました。これも皆の頑張りと神々のお力添えあっての事です」

 ナジミの言葉にクレナ達は頷いた。

 神々から授かった武器はその凄まじい威力を存分に発揮した。

 クレナの火神穿影槍の放つ閃光は影魔獣を瞬時に消滅させ、
 ミナハの水神驚天動地が放つ水刃は影魔獣の群れを薙ぎ払い、
 キクチナの風神弩は百発百中で敵を射抜き、
 アルジェの地神剣盾の起こす地割れや地震は敵の前進を許さなかった。

 おかげでくさびの破壊は圧倒的にはかどりまくり、余勢を駆って本来別の遊撃隊が担当する予定だったくさびをも片っ端から破壊して回り、その上更に苦戦している他の部隊の救援をして回るという、『回り道』をしてなお、本来想定していた日数よりも早くマイク・ターミスタに到着する事が出来たのだ。

 天照武刃団の八面六臂はちめんろっぴの活躍は、他の遊撃隊の負担を大幅に減らし、作戦の第一段階の達成に大いに貢献していた。

「よし、それじゃあとりあえずミト姫様に報告をしに──」

 フリードが指示を出そうとしたその時、クレナがフリードの肩を叩いた。

「ねぇ、フー君……アレ何?」
「えっ……うおっ!? 何だありゃ!!」

 クレナが指差した方向から、土煙と雄叫びを上げながら、二つの影が急速に接近してくる。

「「うおおおおおおおおお-----っ!!」」

 あまりの迫力にフリードは思わずクレナ達に防御陣形の指示を出そうとしたが、突進してきた二つの影はフリード達を弾き飛ばし、ナジミの前で急停止した。

「「ハァ……ハァ……」」

「あ、貴方達は……」

 影光が 現れた!!
 オサナが 現れた!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...