244 / 282
はいぱーむてき大作戦編
聖勇者、拷問される
しおりを挟む244-①
「ここは……何処だ?」
目を覚ましたエイグは体を動かそうとしたが……
「くっ、何だこれは!?」
石造りの壁に囲まれた小さな部屋で、エイグは椅子にギッチギチに縛りつけられていた。両足は椅子の脚に、両手首は肘掛けに、ご丁寧に腰の部分も背もたれに縛り付けられている。
何とか脱出しようとガタガタと足掻いていたら、音を聞きつけたのか、足音が足早に近付いてきた。
エイグは耳を澄ました。足音のバラつき具合から考えて数は……おそらく二人。眼前の扉の前で止まった足音に、エイグは生唾を飲み込んだ。
僅かな軋みを立てながら木の扉が開く。
「おっ、目ぇ覚ましたな」
部屋に入ってきたのは武光とリヴァルだった。
リヴァルはすっかり身なりを整えていた。伸び放題だった髭は綺麗に剃られ、ボサボサの髪は梳かれていた。服装こそ最下級兵士が装着するような簡素な鎧姿だったが、その姿は凛々しく、雄々しく、まさに勇者という雰囲気を纏っていた。
リヴァルは『身なりを気にしている場合では……』と断ろうとした。しかし、武光が『いいや、ヴァっさんは皆の希望やからな。皆の希望がいつまでも小汚い格好してたらアカン、皆を安心させる為や!!』と、体を洗わせ、救出活動ついでにかっぱらって来た服や鎧を着せ、救出された街の人々もノリノリで協力して、リヴァルは、あれよあれよという間に、身なりを整えさせられたのだ。
リヴァルはエイグに鋭い視線を向けた。
「お前は暗黒教団の幹部だったはず、あの地下の教団施設から外へと繋がる抜け道があるはずだ、それを教えてもらおう!!」
リヴァルの言葉に、悪役モードの武光が続く。
「ヘッヘッヘ……断ったらどうなるか分かってんだろうなぁオイ!? 最初に言うといたるけどなぁ……俺の拷問は妖禽族の王女ですら泣いて命乞いする程苛烈やぞ」
「拷問だと!? き、貴様……っ!!」
武光は拘束されているエイグの袖を捲って肌を露わにすると、勢いよく腕を振り上げた。
まさか、刃物を突き刺す気か!! エイグは身を固くし、キツく目を閉じた。そして──
“ベチィィィィィン!!”
……武光のしっぺが炸裂した。
地味に痛い、そして地味に腹立つ。エイグは眉間に皺を寄せた。
「くくく……あまりの激痛に声も出ぇへんようやなぁ!! 今ので全力の半分や、ちなみにちょっとした遊びの罰ゲームで今のを喰らったアスタトの巫女がマジ泣きして、俺が女子一同にボロカスに怒られたという、曰く付きの恐怖の拷問だ……」
地味に腹立つが、どうやら拷問の方は警戒しなくて良さそうだ。エイグは、リヴァルに対し、憎しみの込もった視線を向けた。
「リヴァル=シューエン……私はお前が憎いッッッ!!」
ただ単に『敵対しているから』という理由だけではない、凄まじい怨念にリヴァルは困惑した。
「圧倒的な力!! 特別な才能!! お前は、三年前私がどれほど努力しても、どれほど求めても決して手に入らなかったものを当たり前のように持っている。なぁ……どう考えても不公平だろう!? それだけじゃない……名声……人望……容姿……私だって……私だってお前のように勇者になりたかった!!」
エイグはドス黒い感情の赴くままに、恨み言をブチ撒け続ける。
「暗黒教団は、そんな私に力をくれた!! 私を聖なる勇者だと認めてくれた!! それなのに貴様らは……私の居場所を破壊して……また私から夢を奪おうと言うのか!?」
苦い表情を浮かべるリヴァルをエイグが嘲笑う。
「最初から力を持つお前のような男は考えた事もあるまい……自分がどれほど望んでも決して得られないものを全て持っている人間を前にした時の惨めさと無力感を!! 言っておくが、私だけではない……お前は『希望の光』などと持て囃されていたが……光が強ければ強いほど、それによって生み出される影は暗くなる。お前という存在は暗い影を生み出し続け──」
「しっぺ!!」
「痛っ!?」
武光のしっぺが炸裂した。
「理不尽な言いがかりをつけんなコラァ!!」
「唐観武光……リヴァルに媚びへつらう犬め!!」
「誰が犬だワン!? ぶっ飛ばすワン!!」
〔この大阪人っ!!〕
イットー・リョーダンは思わずツッコんだ。
「唐観武光……貴様とて心の奥底ではリヴァルを羨んでいるはずだ」
「ふざけんな、俺は心の奥底で羨んだりなんかしてへん!!」
「フン、口では何とでも──」
「奥底やない……俺は、露骨にヴァっさんを羨んどるッッッ!!」
「…………は?」
「お前、俺の人間の出来てなさナメんなよ? お前がっ!! ヴァっさんにっ!! 抱いとるっ!! 感情なんざっ!! 俺はっ!! とっくの昔にっ!! 抱いとんねんっ!! アホンダラっ!!」
エイグは腕にベチベチとしっぺをされまくり、オマケにデコピンまで喰らわされた。
武光の言葉に驚いたのはエイグだけではない。当のリヴァルはエイグ以上に驚いていた。
「た、武光殿!? それは本当なのですか!?」
「いや、天然かっ!?」
武光はエイグに照れ隠しのしっぺを喰らわすと、困惑しているリヴァルに笑いかけた。
「そんなもん、目の前であんな華麗で格好良過ぎる活躍を見せつけられて、『羨ましいなー、俺もヴァっさんみたいになれたらなぁ』とか思わへんわけないやん」
エイグはそんな武光に吠えた。
「……ならば、お前には暗黒教団の存続を……勇者でありたいと願う私の気持ちが理解出来るはずだ!!」
「いや、別に」
「な、何故だ!?」
「何故も何も、弱かろうが惨めやろうが……勇者なんか勇気さえあれば誰でもなれるやん。斬られ役と違って、特別な訓練したり芝居の稽古せんでもええねんで?」
あっけらかんとした答えだった。
「暗黒教団があろうが無かろうが関係あらへん、勇気ある行動を取れる奴こそが勇者やと俺は思う」
武光はエイグの両肩に手を置き、目を真っ直ぐ見た。
「その上で、お前を勇者と見込んで頼む。暗黒教団とは決別して、皆を助ける手助けをしてくれへんか?」
「…………嫌だと言ったら?」
「皆の前で、フ○ちん逆エビ固めの刑」
「…………フ」
エイグは武光の意図に気付いた。
……これは脅しではない。いや、幾分かは脅しの意味もあるのだろうが、それ以上に、リヴァルと武光に散々に罵詈雑言を浴びせた手前、素直に謝罪して『分かった』と言えない自分に対する助け船だと。
きっと、奴も自分と同じで捻くれた部分があるのだろう。
「……食えない男だな」
「さぁ、何の事だか?」
エイグの心は決まった。勇者である為にするべき事。それは……
「良いだろう、そのような残虐な拷問には耐えられそうにない」
「ふふん、ええ判断や」
エイグが 仲間になった!!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる