斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
249 / 282
はいぱーむてき大作戦編

出撃の日、迫る(中編)

しおりを挟む

 249ー①

 フリードが『ヨミ様を愛でる会』とすったもんだしたり、ガロウとフォルトゥナが対決したりしていたその頃、天照武刃団の三人娘とアルジェは、ミト=アナザワルドに呼び出しを受けていた。
 魔王城内でミトに割り当てられた王族用の部屋の前までやって来た四人は、扉の前で警備していた巨漢……親衛隊長のベン=エルノマエに一礼した。

「おう、よく来たな娘っこ達……ん? おめぇは確かロイ将軍トコの?」
「はい、おら……アルジェ=シルヴァルフって言いますだ。ソウザン城では気絶していたオラを守って頂いたみたいで……ありがとうごぜぇましただ。貴方様は命の恩人ですだ」
「なんのなんの、困っている人を助けるのが騎士だかんな。それに怪我を治してくれたのはアスタトの巫女様だ」

 深々と頭を下げたアルジェに、ベンは大らかな笑顔を見せた。鬼のような厳つい顔をしているが、その心根を表すような優しく純朴な笑顔に四人は思わず笑顔になった。

「さ、姫様がお待ちだぞう、失礼の無ぇようにな」

 そう言うと、ベンはドアをノックしてミトにクレナ達が来た事を告げた。

「……四人共、入室を許します。お入りなさい」

 返事を聞いた四人は『失礼致します』と、一礼して部屋に入った。

 部屋の中ではミトが執務席に座って待っていた。

 クレナ達は豪華な装飾を施された執務机を挟んでミトの前に整列した。四人を代表してミナハが告げる。

「姫様、ミナハ=ブルシャーク以下四名、お召しにより参上致しました」
「よろしい、楽になさい」

 そう言うと、ミトは微笑んだ。

「ハイ、じゃあ堅苦しいのはここまで!! 皆、そこの円卓に着きなさい、お茶を淹れてあげるから」

 それを聞いた四人は、『姫様にそんな畏れ多い真似をさせる訳には!!』と慌てたが、ミトは笑いながらそれを手で制した。

「良いから座って待ってなさい、これは命令よ?」

 命令だと言われてしまっては引き下がらざるを得ない。四人は言われた通りに、人数分用意されていた席に着いた。

 しばらくして、人数分のカップとティーポットを運んで来たミトは、思わず見惚れてしまいそうな優雅な手つきで人数分のお茶を注いだ。

「さぁ、召し上がれ」
「有り難く、頂戴致します」

 ミトの淹れたお茶を一口飲んだ四人は、思わず目を見開いた。とても美味い。

「ふふん、美味しいでしょう? 三年前、武光達と旅をしていた時も私が一番上手だったのよ? 武光が淹れるとやたらと濃いし、ナジミさんはよく茶葉の分量を間違えるから、妙に薄かったり濃かったり……でしょう?」

 それを聞いたクレナとミナハとキクチナは笑いながら頷いた。

「ふふ……姫様の仰る通りです。ね、ミーナ、キクちゃん?」
「ああ、隊長殿の淹れる茶はいつも濃くて苦い」
「な、ナジミ副隊長はよく分量を間違えてます」
「ふふ……変わらないわね。ところで貴女達を呼んだのは他でもありません、暗黒樹との決戦では……私を守る必要はありません」

 椅子から転がり落ちそうなほど驚く四人を見て、ミトは苦笑した。

「私にはベンを始めとする多くの精兵が護衛に付きます。だから貴女達は暗黒樹の破壊よりも、武光の捜索と救出に全力を尽くしなさい。必要とあらば貴女達の個別行動も許可します」
「でも……」
〔良いんですよ、姫様は愛しの武光さんが心配で心配で仕方ないんですから〕

 ミトの身を案じるクレナ達に、部屋の壁に掛けられていたミトの愛剣、宝剣カヤ=ビラキが声をかけた。

〔四人共、立場上自由に動き回れない姫様の代わりに頑張って下さい、武光さんが安否不明と聞いてから、姫様は涙で枕を濡らす日々なのです……〕

 カヤ・ビラキの発言を聞いたミトは、顔を真っ赤にして慌てた。

「ちょっ、ちょっとカヤ!? 適当な事言わないでくれる!?」
〔武光さんに成長した格好良い姿を見せようとして、王都に戻ったりなんかしなければ……初めから素直に、『愛しい貴方について行きます』って言えば良かったと……あぁ、おいたわしやおいたわしや……ぷぷぷっ〕
「こ、コラーーー!? ちょっと!? 貴女達も何ニヤニヤしてるの!?」
「いえ、それより姫様……一つ聞いても良いですか?」
「何かしら?」

 クレナは前々から気になっていた事をミトに聞いた。

「隊長が姫様に剣の勝負で勝った事あるって本当ですか?」
「…………それ、武光が言ってたの?」
「はい、他にも『俺は勇者リヴァルと親友』とか『ロイ将軍をシバき倒したった!!』とか……私達も最初は『そんなワケあるか!!』って、そういう事を口にする度にボコボコにしちゃってたんですけど……」
「ロイ将軍の件は、御本人から事実であると確認しましたし……」
「り、リヴァル様と本当に親友だという事も神様から聞きました」
「なるほど……それで今までの仕打ちについて謝罪したいと?」

 申し訳無さそうに頷いた三人娘を見て、ミトは胸を張った。

「安心なさい!! リヴァルとロイ将軍の件は確かに事実ですけれど、私があのバカに負けた事など、一度たりともありません!!」
〔えー? 姫様、アナザワルド城の謁見の間で初めて武光さんとお会いした時に──〕
「あんなものは無効試合です!! もし仮に、どうしても勝敗を決めろと言うのなら、あのバカの反則負けで私の勝ちです!!」
〔うわー〕

 宝剣カヤ・ビラキのリアクションを見た三人は、『姫様に勝ったというのも本当だったんだ……!!』と確信した。

「貴女達……絶対にあのバカを見つけて、私の前に引きずり出しなさい!! 貴女達に嘘を吹き込んだ罪を償わせてやるわ!! あら? アルジェ……貴女顔が真っ青よ!? それにさっきから彫像のように固まって……」
「い、いえ!! おら……じゃなかった、私はその……上流階級の言葉遣いも振る舞いも、おおおおお知りあそばさないものですから!! ひ、姫様の前で、ししししし失礼な言動があってはなんねぇと!!」
「ふふ、あのバカに貴女を見習わせたいものね。貴女の働きにも期待しています、クレナ達の力になってあげて頂戴」
「は、ハイッッッ!!」

 クレナ、ミナハ、キクチナの三人は互いに顔を見合わせ、力強く頷くと、ミトに熱く真剣な眼差しを向けた。

「姫様、安心して下さい!!」
「我々の名誉と誇りにかけて!!」
「ぜ、絶対に!!」

 三人は、力強く宣言した。

「「「姫様の愛しい人を救出してみせますッッッ!!」」」

「い……愛しいとか言うなーーーーーーーーー!?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...