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最後の決着編
斬られ役、叱られる
しおりを挟む271-①
影光との壮絶な殴り合いを制した武光は、ヨロヨロとナジミの元へ向かった。
「へへ……どうや、勝ったで!!」
「勝ったで……じゃありませんっ!!」
「えーっ!?」
武光はナジミに叱られてしまった。
「あんなに止めたのに、どうして殴り合いなんてするんですか!! もー!!」
「せ、せやかてアイツが、お前の事を陵辱するとか言うからやな……」
「本心なわけないでしょう!!」
「そ、そんなん分からんやろ!?」
「分かります!! だって……影光さんは武光様の分身なんです。例え分身であったとしても……優しい武光様が本心からあんな酷い事言えるわけないじゃないですか……」
「でも実際に言うてたやん!!」
「武光様に本気を出させる為に、自分が絶対に許せないと思う事を口にしたんでしょう。『私を陵辱する』と口にした時、顔には出ていなくても……影光さんからは、とても辛くて悲しい気持ちを感じました」
「う……」
武光は頭が下がる思いだった。ナジミが影光との決闘を止めようとしたのは、彼女がただ単に争いを好まない性格というだけでなく、その優しさで相手の言葉の裏に隠された本心を感じ取ったからなのだ。
おそらくナジミの言った事は正しい。だが、まさかおもっくそ叱られてしまうとは……武光はシュンとしてしまった。
そして、まるで子供のようにシュンとしてしまった武光に、ナジミは優しく笑いかけた。
「……でも、私の為に怒ってくれた事は、とっっっても嬉しかったですよ!!」
「そ、そうか!!」
ナジミは、傷だらけの武光を優しく抱きしめた。そして、そんな武光とナジミを見たフリード達は、即座に肩を組んで輪になると、小声で話し合った。
「アニキと姐さん、ちゅーしようとしてるぞ……!!」
「皆!! 今こそ隊長直伝の演技力を発揮する時だよ!!」
「皆、気配を消して石や木になりきるんだ!!」
「わ、分かりました!!」
「お、おら……自信がねぇだ……」
「アリーだって、ずっとパン屋の店員になりすまして潜入調査してたんだし、大丈夫だよ!!」
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「クレナちゃん、ミナハちゃん、キクチナちゃん、アルジェちゃんも……!!」
当然の如く、フリード達は武光とナジミに見咎められてしまった。
「あっ、アニキも姐さんも俺達の事は気にしないで……へへへ」
「フー君の言う通りですよ!! 私達に構わず……へへへ」
「隊長殿も副隊長殿もどうぞご遠慮なく……へへへ」
「わ、私達の事はそこら辺の石か何かだと思ってください……へへへ」
「んだ、おら達はただの石っころだ……へへへ」
五人共、頬が緩むのをまるで隠せていない。
「お、お前らなぁ……打ち上げの準備でも手伝ってこんかいアホーーーっ!!」
「裏番長命令ですっ!! 五人共早く行きなさい!! 駆け足ですよっ!!」
「わー!! 裏番長が怒ったぞ、逃げろーーーーー!!」
バタバタと走り去るフリード達の背中を見て、ナジミはくすりと笑うと、癒しの力で武光を治療した。
「……終わりましたよ、武光様」
「ありがとう、ほんなら……えっと……その……ええかな?」
「えっ、あっ……ハイ!! よ、よろしくお願いしますっ!!」
武光はガッチガチに緊張しているナジミの両肩に、少し震える両手を置いた。二人の顔がゆっくりと近付き、唇が重なり合おうとしたその時……
「ギャアアアアアアアアア!! 痛い痛い痛い!! 死ぬ!! マジで死ぬううううううううう!?」
核の修復作業中の影光の絶叫によって、二人は思わず口付けを中断してしまった。
「なぁ……アイツ、もっぺんシバいてきてええか?」
「……………………いや、ダメですよ?」
「何やねんその間は!?」
「はぁ……仕方ありませんね、私達も打ち上げのお手伝いをしに行きましょうか?」
「ふふ……せやな」
二人は、手を繋いで魔王城の方へ歩き出した。
……そしておよそ二時間後、勝利を祝う宴が開かれた。
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