89 / 180
巨竜編(裏)
騎士、再び吼える
しおりを挟む
89-①
守護神を讃える舞を舞いながら、ミトは思っていた。
これ…………絶ッッッッッ対に祈りの儀式なんかじゃない!!
儀式が始まっておよそ30分……さっきからめちゃくちゃ虫が飛んで来る、本当にこれは武光が守護神の加護を得る為の祈りの儀式なのだろうか?
自分達が今やっている事は祈りの儀式などではなく、本当はとんでもなく強力な虫寄せか何かの儀式ではないのか!?
遠くで『さ、酸だー!!』という叫びが微かに聞こえた。やはり何かがおかしい。
ミトは儀式の一時中断を提案しようとナジミに視線を移したが、ナジミは眉一つ動かさずに粛々と儀式を続けていた。
……完全に儀式に入り込んでいる。普段のおっちょこちょいのせいですっかり忘れてしまっていたが、彼女はアスタト神殿という由緒ある神殿を預かる巫女なのだ。
ミトは厳かに舞うナジミの姿に神々しさすら感じた。
「ナジミさん……綺麗……って言うか、カヤ……ナジミさん……光ってない!?」
〔え、ええ……めちゃくちゃ光ってます……!!〕
ナジミの身体が神秘的な光を纏っていた。
これが儀式の力なのか? だとしたら……ミトは思わず唇を噛んだ。
あれほど、何があろうとひたすら儀式をやり続けなければならないと言われていたのに……自分は儀式の中断をナジミに持ちかけようとした。
ミトは首をブンブンと横に振ると、負けじと舞を踊り続けた。
89-②
ショウダ=イソウは作戦会議室にて、突如として出現した魔蟲達の対応に追われていた。一体何がどうしてなどと考える暇も無い。次から次へと飛び込んで来る報告に対し、迎撃指示を出してゆく。
「ひ、東門が魔蟲の群れに突破されました!!」
「重装歩兵隊を向かわせる、何とか踏み留まれ!!」
「は……ハイ!!」
「み、南門が破られそうです!! え、援軍を……!!」
「テバンニの歩兵隊を向かわせる!! 何としても門を守り抜くのだ!!」
「わ、分かりました!!」
伝令の兵が次々と現れては戻ってゆく。また一人、兵士がすっ転びそうになりながら部屋に入って来た。
「第二広場で巫女がしている儀式が──」
それを聞いたショウダは、思わず兵士を怒鳴りつけた。
「馬鹿者!! 今はそれどころではない!! 侵入してきた魔蟲共を迎撃──」
「……あの巫女達の儀式が魔蟲を呼び寄せている模様です!!」
「今すぐやめさせろおおおおお!!」
89-③
「い……いたぞーーー!!」
「将軍、こちらです!!」
ナジミとミトが儀式を続けていると、第二広場にショウダが兵士を引き連れて現れた。三十名程の兵士がナジミ達をぐるりと取り囲む。
「貴様らーーー!! 今すぐその怪しげな儀式をやめろおおおおお!!」
叫ぶショウダを見て、ミトは焦ったが、この儀式の成否は、今頃巨竜と戦っているであろう武光の命に関わるのだ。武光を護る為にも……今ここで儀式をやめるわけにはいかない!!
ミトはショウダの警告を無視して儀式を敢行した。
「ええい、力ずくでやめさせてくれる!! ……行け」
ショウダの命令で二人の兵士が、踊り続けるナジミとミトに近付いた。
(ダメ……儀式を妨害されたら……あのバカが……武光が……っ!!)
ミトは泣きそうになりながらも必死で舞い、歌い続ける。
兵士達がミト達を取り押さえようと手を伸ばしたその時だった。
「ぬぅおあああああああっ!!」
突如として現れた影が、体当たりで兵士達を弾き飛ばした。
「あ……貴方は!?」
ミトはその大きく、力強い背中に見覚えがあった。
「大丈夫ですか……姫様!!」
「……ベン!! ベン=エルノマエ!!」
駆け付けたのは、意識を取り戻したベン=エルノマエだった。
「ベン、お願い……私達を守って!!」
「かしこまりましたなんだな!! ぬぅおああああ!!」
ベンは笑顔で頷くと、近くに立っていた細い木に近付き幹を掴むと、凄まじい怪力で引っこ抜いた。
3mはあろうかという木を薙刀代わりに構え、心優しき騎士は主を守るべく再び吼えた。
「ここから先は……アリの子一匹通さねえ!!」
守護神を讃える舞を舞いながら、ミトは思っていた。
これ…………絶ッッッッッ対に祈りの儀式なんかじゃない!!
儀式が始まっておよそ30分……さっきからめちゃくちゃ虫が飛んで来る、本当にこれは武光が守護神の加護を得る為の祈りの儀式なのだろうか?
自分達が今やっている事は祈りの儀式などではなく、本当はとんでもなく強力な虫寄せか何かの儀式ではないのか!?
遠くで『さ、酸だー!!』という叫びが微かに聞こえた。やはり何かがおかしい。
ミトは儀式の一時中断を提案しようとナジミに視線を移したが、ナジミは眉一つ動かさずに粛々と儀式を続けていた。
……完全に儀式に入り込んでいる。普段のおっちょこちょいのせいですっかり忘れてしまっていたが、彼女はアスタト神殿という由緒ある神殿を預かる巫女なのだ。
ミトは厳かに舞うナジミの姿に神々しさすら感じた。
「ナジミさん……綺麗……って言うか、カヤ……ナジミさん……光ってない!?」
〔え、ええ……めちゃくちゃ光ってます……!!〕
ナジミの身体が神秘的な光を纏っていた。
これが儀式の力なのか? だとしたら……ミトは思わず唇を噛んだ。
あれほど、何があろうとひたすら儀式をやり続けなければならないと言われていたのに……自分は儀式の中断をナジミに持ちかけようとした。
ミトは首をブンブンと横に振ると、負けじと舞を踊り続けた。
89-②
ショウダ=イソウは作戦会議室にて、突如として出現した魔蟲達の対応に追われていた。一体何がどうしてなどと考える暇も無い。次から次へと飛び込んで来る報告に対し、迎撃指示を出してゆく。
「ひ、東門が魔蟲の群れに突破されました!!」
「重装歩兵隊を向かわせる、何とか踏み留まれ!!」
「は……ハイ!!」
「み、南門が破られそうです!! え、援軍を……!!」
「テバンニの歩兵隊を向かわせる!! 何としても門を守り抜くのだ!!」
「わ、分かりました!!」
伝令の兵が次々と現れては戻ってゆく。また一人、兵士がすっ転びそうになりながら部屋に入って来た。
「第二広場で巫女がしている儀式が──」
それを聞いたショウダは、思わず兵士を怒鳴りつけた。
「馬鹿者!! 今はそれどころではない!! 侵入してきた魔蟲共を迎撃──」
「……あの巫女達の儀式が魔蟲を呼び寄せている模様です!!」
「今すぐやめさせろおおおおお!!」
89-③
「い……いたぞーーー!!」
「将軍、こちらです!!」
ナジミとミトが儀式を続けていると、第二広場にショウダが兵士を引き連れて現れた。三十名程の兵士がナジミ達をぐるりと取り囲む。
「貴様らーーー!! 今すぐその怪しげな儀式をやめろおおおおお!!」
叫ぶショウダを見て、ミトは焦ったが、この儀式の成否は、今頃巨竜と戦っているであろう武光の命に関わるのだ。武光を護る為にも……今ここで儀式をやめるわけにはいかない!!
ミトはショウダの警告を無視して儀式を敢行した。
「ええい、力ずくでやめさせてくれる!! ……行け」
ショウダの命令で二人の兵士が、踊り続けるナジミとミトに近付いた。
(ダメ……儀式を妨害されたら……あのバカが……武光が……っ!!)
ミトは泣きそうになりながらも必死で舞い、歌い続ける。
兵士達がミト達を取り押さえようと手を伸ばしたその時だった。
「ぬぅおあああああああっ!!」
突如として現れた影が、体当たりで兵士達を弾き飛ばした。
「あ……貴方は!?」
ミトはその大きく、力強い背中に見覚えがあった。
「大丈夫ですか……姫様!!」
「……ベン!! ベン=エルノマエ!!」
駆け付けたのは、意識を取り戻したベン=エルノマエだった。
「ベン、お願い……私達を守って!!」
「かしこまりましたなんだな!! ぬぅおああああ!!」
ベンは笑顔で頷くと、近くに立っていた細い木に近付き幹を掴むと、凄まじい怪力で引っこ抜いた。
3mはあろうかという木を薙刀代わりに構え、心優しき騎士は主を守るべく再び吼えた。
「ここから先は……アリの子一匹通さねえ!!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる