98 / 180
鬼退治編
刀匠、依頼する
しおりを挟む
98-①
〔武光……無事……か?〕
武光が折れたイットー・リョーダンを手に呆然と立ち尽くしていると、イットー・リョーダンが声を発した。
「イットー!? お前……何でやねん!! 何で無茶したんや!?」
〔本当だよ、全く……誰に……似たんだろう……ね?〕
「待ってろ!! 今すぐジャトレーさんに見てもらって……」
〔武光……今まで……ありが……〕
「おい!! そんな縁起でも無い事言うなアホっ……おい? イットー……? イットー!!」
武光はイットー・リョーダンに必死に呼びかけたが……返事が無い。
「おい……嘘やろ!? おい!!」
武光は折れたイットー・リョーダンを手に、大急ぎでジャトレーの所へ向かった。
98-②
「ううむ……これは……」
折れたイットー・リョーダンを前に、ジャトレーを始めとするマイク・ターミスタの刀匠達は皆一様に唸っていた。
「ジャトレーさん!! イットーは……イットーは直るんですか!?」
〔父上!! お願いです……イットー・リョーダン様を助けて下さい!!〕
武光とカヤ・ビラキのあまりに悲痛な叫びに、ナジミとミト、そしてリョエンは思わず俯いた。
「武光殿、この剣を直すというのは……はっきり言って至難の技……無茶というものだ」
「そ、そんな……」
ジャトレーの発した言葉に、武光は膝から崩折れた。
〔父上……修復の材料が足りないと言うのなら……この私を溶かしてイットー・リョーダン様の刀身にお使いください!!〕
「ダメよカヤ!! そんな事をしたら貴女まで……!!」
とんでもない事を言い出したカヤ・ビラキをミトが慌てて止める。
「くっ……そぉぉぉぉぉっっっ!!」
武光は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら拳を振り上げた。
「待ちなされ!!」
勢い良く地面を殴りつけようとした武光をジャトレーが制止した。
「早まるな武光殿。これから、この聖剣イットー・リョーダンを修復する為に一働きしてもらわねばならぬというのに……怪我をされては困る」
「……へっ? いや、だって……さっき『直すのは無茶』やって……」
それを聞いたジャトレーはニヤリと笑った。
「言った!! 確かに……儂は先程、直すのは『無茶だ』と言った。じゃが……『無理だ』とは一言も言っておらん!! それに……『無茶』や『無理』には、挑戦し、乗り越えずにはおられぬのが、マイク・ターミスタの職人魂というものよ!! そうであろう……皆の衆!!」
ジャトレーの問いかけに、マイク・ターミスタの職人達が一斉に『応ッッッ!!』と応える。武光は、涙を拭うと、頭を地に着けて感謝した。
「み、皆さん……あ、ありがとうございますっっっ!!」
「うむ、では……お主らにしてもらわねばならぬ事が二つある」
「何ですか!! 俺、何でもやります!!」
「うむ。それでは、まず一つ……ここの設備では剣を打ち直す事は出来ん。儂の工房を奪還してもらいたい」
「二つ目は?」
「もう一度刀身を打ち直す為には素材がいる」
「素材……?」
「どうやらこの剣の刀身には、カヤ・ビラキと同じ、皇帝鋼が使われておるようじゃ」
〔しかし父上、皇帝鋼は超が五つくらい付く程の希少金属……備蓄などあるのですか?〕
「無い、全く無い」
カヤ・ビラキの問いにジャトレーは即答した。
〔そ、そんな……〕
「じゃが……代わりになりそうな物はある」
「な、何なんですかそれは!?」
「……オーガの角じゃ」
「オーガの角……」
「うむ、オーガの角は並の金属よりも遥かに頑強じゃ……それを儂の工房にある特別な炉で、一旦溶かし、純化に純化を重ねて……それを元に刀身を打ち直す!!」
「な、なるほど……で、どれくらいの量が必要なんですか!?」
「一本や二本では到底足りぬ……少なくとも百本は要る」
「ひゃ……百本っ!?」
「うむ……百本じゃ」
「ひゃ、百って……十の十倍の、あの百ですか!?」
「うむ」
「五の二十倍の!?」
「うむ」
「二の五十倍の!?」
「そうじゃ……やれるか? 武光殿?」
百本ものオーガの角……一体どれだけの数のオーガを倒さねばならぬのか……いつもならばビビりまくって尻込みする武光であったが、今日の武光は一味違った。
「おうよ!! やったらあっっっ!!」
イットー・リョーダンは、次に戦えば折れるという恐怖に襲われながら、それでも尚、自分を命がけで救ってくれた……その友情に応える為にも、何が何でもやり遂げねばならない。怖いだのヘチマだの言っている場合ではない。
「武光殿……おそらく時間はあまり無い。時間がかかり過ぎると、刀身を作り直す事が出来たとしても、この剣に宿るイットー・リョーダンの魂は戻らぬかもしれぬ、恐らくは保って数日じゃ……急がれよ」
「分かりました……よっしゃ、手分けしてやんぞ!! ミトと先生はジャトレーさんの工房の奪還に向かってくれ!! 鬼退治は俺とナジミでやる!! 頼むで、皆……イットーを助ける為に力を貸してくれ!!」
武光の言葉に一同は頷いた。
「武光、工房の奪還は任せなさい!!」
〔愛する剣の為……この身に代えても、工房は奪還してみせます!!〕
「武光君達も……無茶はしないで下さいね」
〔ドン ト コイヤー!!〕
ミトとリョエンは、それぞれ宝剣カヤ・ビラキと機槍テンガイを携えて、工房奪還に向けてアジトを出発した。
「よっしゃ……俺達も行くぞナジミ!!」
「ハイっ!! 武光様!!」
武光とナジミも街に蔓延るオーガ共を退治するべく、アジトを勢い良く飛び出した!!
飛び出したのだが、わずか数分で武光とナジミはアジトに戻ってきてしまった。
「いやいやいや……よう考えたら、俺ら丸腰やんけ……」
〔武光……無事……か?〕
武光が折れたイットー・リョーダンを手に呆然と立ち尽くしていると、イットー・リョーダンが声を発した。
「イットー!? お前……何でやねん!! 何で無茶したんや!?」
〔本当だよ、全く……誰に……似たんだろう……ね?〕
「待ってろ!! 今すぐジャトレーさんに見てもらって……」
〔武光……今まで……ありが……〕
「おい!! そんな縁起でも無い事言うなアホっ……おい? イットー……? イットー!!」
武光はイットー・リョーダンに必死に呼びかけたが……返事が無い。
「おい……嘘やろ!? おい!!」
武光は折れたイットー・リョーダンを手に、大急ぎでジャトレーの所へ向かった。
98-②
「ううむ……これは……」
折れたイットー・リョーダンを前に、ジャトレーを始めとするマイク・ターミスタの刀匠達は皆一様に唸っていた。
「ジャトレーさん!! イットーは……イットーは直るんですか!?」
〔父上!! お願いです……イットー・リョーダン様を助けて下さい!!〕
武光とカヤ・ビラキのあまりに悲痛な叫びに、ナジミとミト、そしてリョエンは思わず俯いた。
「武光殿、この剣を直すというのは……はっきり言って至難の技……無茶というものだ」
「そ、そんな……」
ジャトレーの発した言葉に、武光は膝から崩折れた。
〔父上……修復の材料が足りないと言うのなら……この私を溶かしてイットー・リョーダン様の刀身にお使いください!!〕
「ダメよカヤ!! そんな事をしたら貴女まで……!!」
とんでもない事を言い出したカヤ・ビラキをミトが慌てて止める。
「くっ……そぉぉぉぉぉっっっ!!」
武光は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら拳を振り上げた。
「待ちなされ!!」
勢い良く地面を殴りつけようとした武光をジャトレーが制止した。
「早まるな武光殿。これから、この聖剣イットー・リョーダンを修復する為に一働きしてもらわねばならぬというのに……怪我をされては困る」
「……へっ? いや、だって……さっき『直すのは無茶』やって……」
それを聞いたジャトレーはニヤリと笑った。
「言った!! 確かに……儂は先程、直すのは『無茶だ』と言った。じゃが……『無理だ』とは一言も言っておらん!! それに……『無茶』や『無理』には、挑戦し、乗り越えずにはおられぬのが、マイク・ターミスタの職人魂というものよ!! そうであろう……皆の衆!!」
ジャトレーの問いかけに、マイク・ターミスタの職人達が一斉に『応ッッッ!!』と応える。武光は、涙を拭うと、頭を地に着けて感謝した。
「み、皆さん……あ、ありがとうございますっっっ!!」
「うむ、では……お主らにしてもらわねばならぬ事が二つある」
「何ですか!! 俺、何でもやります!!」
「うむ。それでは、まず一つ……ここの設備では剣を打ち直す事は出来ん。儂の工房を奪還してもらいたい」
「二つ目は?」
「もう一度刀身を打ち直す為には素材がいる」
「素材……?」
「どうやらこの剣の刀身には、カヤ・ビラキと同じ、皇帝鋼が使われておるようじゃ」
〔しかし父上、皇帝鋼は超が五つくらい付く程の希少金属……備蓄などあるのですか?〕
「無い、全く無い」
カヤ・ビラキの問いにジャトレーは即答した。
〔そ、そんな……〕
「じゃが……代わりになりそうな物はある」
「な、何なんですかそれは!?」
「……オーガの角じゃ」
「オーガの角……」
「うむ、オーガの角は並の金属よりも遥かに頑強じゃ……それを儂の工房にある特別な炉で、一旦溶かし、純化に純化を重ねて……それを元に刀身を打ち直す!!」
「な、なるほど……で、どれくらいの量が必要なんですか!?」
「一本や二本では到底足りぬ……少なくとも百本は要る」
「ひゃ……百本っ!?」
「うむ……百本じゃ」
「ひゃ、百って……十の十倍の、あの百ですか!?」
「うむ」
「五の二十倍の!?」
「うむ」
「二の五十倍の!?」
「そうじゃ……やれるか? 武光殿?」
百本ものオーガの角……一体どれだけの数のオーガを倒さねばならぬのか……いつもならばビビりまくって尻込みする武光であったが、今日の武光は一味違った。
「おうよ!! やったらあっっっ!!」
イットー・リョーダンは、次に戦えば折れるという恐怖に襲われながら、それでも尚、自分を命がけで救ってくれた……その友情に応える為にも、何が何でもやり遂げねばならない。怖いだのヘチマだの言っている場合ではない。
「武光殿……おそらく時間はあまり無い。時間がかかり過ぎると、刀身を作り直す事が出来たとしても、この剣に宿るイットー・リョーダンの魂は戻らぬかもしれぬ、恐らくは保って数日じゃ……急がれよ」
「分かりました……よっしゃ、手分けしてやんぞ!! ミトと先生はジャトレーさんの工房の奪還に向かってくれ!! 鬼退治は俺とナジミでやる!! 頼むで、皆……イットーを助ける為に力を貸してくれ!!」
武光の言葉に一同は頷いた。
「武光、工房の奪還は任せなさい!!」
〔愛する剣の為……この身に代えても、工房は奪還してみせます!!〕
「武光君達も……無茶はしないで下さいね」
〔ドン ト コイヤー!!〕
ミトとリョエンは、それぞれ宝剣カヤ・ビラキと機槍テンガイを携えて、工房奪還に向けてアジトを出発した。
「よっしゃ……俺達も行くぞナジミ!!」
「ハイっ!! 武光様!!」
武光とナジミも街に蔓延るオーガ共を退治するべく、アジトを勢い良く飛び出した!!
飛び出したのだが、わずか数分で武光とナジミはアジトに戻ってきてしまった。
「いやいやいや……よう考えたら、俺ら丸腰やんけ……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる