斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
151 / 180
殴り込み編

魔王、現る

しおりを挟む

 151-①

 翌日、拘束されているヨミのもとへ、武光が金属製の鍋をもってやって来た。

「おーす!! しょーもなし子、今日も拷問しに来たったぞー!!」
「チッ……また来たわね。何なのよ……その手に持ってる鍋は?」
「まーまー慌てんなって、今、温めてくるから」

 しばらくして、捕虜収容施設内の調理場を借りて鍋を加熱した武光が戻って来た。

「フフフ……さてと、今日の拷問は今までとは桁違けたちがいに苛烈かれつや……魔王軍の情報を吐くなら今の内やぞ?」
「アンタも学習しないわね……私はアンタの拷問なんか全然平気……」

 “ぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつ………………”

 煮えたぎる関東炊きを見て、ヨミは言葉を失った。

「さぁ……どれから行く? ここは定番の大根 (によく似た異界の野菜)か……いやいや、卵も捨てがたい……このがんもどきによく似た、がんもどきモドキ(武光が命名)もたっぷりとダシを含んでそうやなぁ……ククク」
「くっ……」
「よし……決めた。やっぱりここは大根やな」

 そう言って、武光ははしで大根 (によく似た異界の野菜)をつまみ上げた。

 熱々の関東炊き(=おでん)を顔面に……その発想、正に悪魔!! その所業しょぎょう、正に外道!! 良い子も悪い子も真似しないでね!!

「おい、これが最後の警告や……吐くんやったら今の内やぞ?」
「うぅぅ……わ、私は魔王の花嫁だっ……熱々のダイコンなんかに絶対に屈しない!!」
「ホンマか……ホンマにええんか!? 大根やぞ!? ちょっと自分でも加熱し過ぎちゃうかと思うくらいに熱々やぞ!!」
「う……うるさい!! かかってこいやーーー!!」
「ぬぅ……相分あいわかった、ならば容赦はせぬ……覚悟っ!!」
「ひっ!?」

 “ガシィッ!!”

 武光は《熱々関東炊き地獄》を執行するべく、箸を持つ右手を振り上げたが、振り上げられた武光の右手首を、誰かが背後から掴んで止めた。

「お、お前は……!!」
「武光様、もう……やめて下さい」
「ナジミ……何しに来たんや。聖職者が拷問なんかに関わったらあかんって言うたやろが……」
「魔王軍の情報を聞き出す為とは言え、武光様がこれ以上の残虐行為を続けるのを聖職者として……いえ、例え聖職者じゃなかったとしても見過ごす事はできません!!」
「ナジミ……」
「武光様だってホントはこんな事したくないんでしょう?」
「ああ……俺かてホンマは拷問なんかしたない」
「嘘つけ、アンタ絶対楽しんでたでしょうが!! 私はアンタの心が読め……ひぃぃぃぃぃっ!! い、井戸……あわわ……来るーーー!? きっと来るぅぅぅぅぅ!?」

 武光は有名ホラー映画のワンシーンを頭の中に想像し、心を読もうとしたヨミを黙らせた。

「心配かけてすまん、でもな……少しでも情報が欲しいねん!! 水の神様に会って元の世界へ帰る為には、魔王軍の本拠地に殴り込みかけなあかんねんぞ……」
「武光様……」
「こ、怖くてたまらんねん!!」

 武光はヨミの胸倉を乱暴に掴んだ。

「ちょっ!? 武光様、落ち着いて下さい!!」
「何でもええから吐けや!!」


「……そんなに知りたいなら答えてやろう」


 武光とナジミが振り返ると、いつの間にか漆黒の鎧を全身にまとった男がぽつんと立っていた。

「えっと……どちらさん?」
「さ……さぁ?」

 困惑する武光とナジミをよそに、ヨミは目に涙を浮かべながら言った。

「む……迎えに来てくれたんですね……魔王様!!」

「「は……ハァァァァァッ!?」」

 魔王シンが あらわれた!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...