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第1章 無一文から始まる異世界生活
第7話 トトさんとお金のお勉強
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トトさんは机の上に硬貨を10枚を並べた。
「これが今使われている通貨。発行した国によって柄が違うけど、大きさや色や魔力反応が有るのは同じ」
灰色と赤、黄色、青の硬貨は金属と魔石の合金で透け感がある。
「司さんが持ってるの見せてくれる?」
アルフリートさんが店員さんから回収してくれてた硬貨をトトさんに手渡している。それ以外の手持ち通貨を一枚ずつ出して並べて見比べるとよく似ていた。
「うわーこれ見たことあるよ。国の資料館で」
「・・・やっぱり過去の通貨ですか?」
「うん、硬貨の規格が統一される前の物だね。資料館の人類協調の歴史コーナーに展示してあるよ。通貨の単位や、見た目の色と穴が開いてる仕様は同じだったけど通貨って魔道具でしょ?
どうしても製造技術の差が出ちゃって大きさや厚さに国によってばらつきがあったんだけど、技術の進歩と協力が進んでようやく刷新されたんだよね。模様も新しくなったし。今から50年くらい前かな。古いのもちゃんと種類ごとの魔力反応あるねー」
通貨は全て魔道具で、特定波長の魔力を流すと種類ごとの魔力を返すようになっている。発行した国により模様が異なり国が滅ぶか破綻すれば黒く染まり魔力反応も無くなって使用できなくなるそうだ。
OTLでは黒く染まる仕様は有ったかもしれないが知らなかった。事実であれば恐ろしい話である。
EUみなたいな感じなのかな?人が住んでいるのはこの大陸だけと言われており、規模的にはアリなのか。
OTLでは別の大陸も行ったことがある。徒党を組んでの団体旅行である。大体はマナが濃すぎたり気温が人に適してなかったり、高重力の所もあったりした。
EUみたいな感じなら発行権などがどうなっているのか知りたく、てトトさんに訊ねたらしっかりした答えが返ってきた。
「通貨の発行権は世界銀行が持っていて、細かく色々あるけどはダンジョンへ貢献すれば大きくもらえるよ」
「貢献?」
「ダンジョン開発に投資したり、雇用したり、登録冒険者にダンジョン内討伐での報酬を支払ったり、手当てを払ったり」
「どうやったらダンジョンで討伐したって分かるんですか?」
「さっきのタグの左右に穴あったでしょう? あれに討伐数とかを記録する魔石を嵌めて、出入りの時に報告すれば大丈夫」
ギルドカードの機能がタグのサイズの魔石一個とは。本当にカスタマイズの効く万能魔道具ですね・・
「国債乱発する前に投資しろって事ですか」
「もちろん世界銀行に先に預けて計画書の提出も必要だし、監査もある。馬鹿みたいに注ぎ込むだけ儲けが増えるなら何も考えなくなっちゃう」
「信用なかったり吹けば飛ぶような国だと発行権貰っても発行したがりませんよね?」
誰も明日には黒く染まっているかもしれない通貨なんか使いたくないだろう。
「そこは聖教国でも適正な価格で買い取ってるよ」
「まさにwin-win」
「はっ、他の国が適正な価格で買い取れば聖教国も買わずに済むんだけどね。おかげさまで聖教国発行通貨は安心安全だよ」
トトさんが黒い。苦労されたんですね、お疲れ様です。
「インフレしません?」
「してる。一応世界銀行管理下で統制はされてるけどダンジョン内都市はかなり物価が高い。お金が集まってくるシステム上仕方ないんだけど。ベーシックインカムが無かったなら今頃どうなってるかわかんない国もあるのにね」
わお・・やっぱりダンジョンはOTLとかなり様子が違いそうだ。国家共通の危険地帯であるが、財産として育て利用する逞しさを感じる。今から行くのがすごく楽しみ。
一縷の望みで持っていた通貨を全部出してみましたが全滅しました。
無一文確定です。
僕の持っているもので価値のある、売れそうなもの・・・・
「トトさん、ポーションとか薬売れます?」
「個人でも売れるけど薬剤師免許か錬金術師調薬部門の許可証が必要だね。両方試験があるよ」
「試験はいつですか?」
「詳しくは知らないけど薬剤師は年に2回で錬金術師の方はもうちょっと多かったはず・・あったあった」
トトさんはタグを起動させて操作している。真っ黒で何も見えない。
「ここではやってないからどちらにせよ首都かな。薬剤師は4月後、錬金術師は2週間後だけど先に錬金術師としての登録が必要だね」
そうですよね。出所のはっきりしない薬とかダメですよね。素材はアトリエにおきっぱで手元に無し。武器防具やダンジョンで使う物は最終手段。
「魔道具、売れます?」
「種類によるよ。日用的な物ならリサイクルショップで売れるし、珍しいものならオークションが良いね」
「オークションあるんですか?」
「さっきのタグで図書館アクセスしてそこからリンク有るよ。有料だけど出品委託もあるから売った相手には身元明かさなくてもできるし」
「ちなみにこれ売れます?」
僕は自作の銀色の懐中時計を差し出した。僕にしては珍しくもう作りたくないと思えた品物。
「なんだかすごい機構の懐中時計だね・・・どれどれ、デザイン変わってるけど綺麗ないい時計だ」
本来であれば迷子防止の自動地形マッピング&ルート記憶といざと言うときの為の転移機能と緊急回復機能が付いてるが、機能を十全に使うにはタブレット型魔道具もセット売りしないといけないからアピールポイントにもならない。
もしかしてタグでどうにかなるかもしれないが、どうなっているか分からない以上ただの装飾の凝った時計でしかない。
「本当は売りたくないんですけど、それくらいしか売れそうなものが無くて」
「それなら質しちに入れちゃう?」
「それしか・・・あ」
売れそうな素材あった!
ぽふんと鳥に変身する。売れそうなものありましたよ。
「それが変身?」
「です」
「綺麗な魔力だ。滞りなく澄んで美しい。私は薄紫の色は記憶から引っ張り出すしかないけどきっと綺麗な羽をしてるんだろうね」
「ありがとうございます。で、売りたい物なんですけどこの冠羽売れないかなと!」
嘴の際きわから頭にかけてくるんと大き目の羽が生えている。羽の先は濃い目の青紫。オカメインコを想像してもらえれば分かりやすい。
どんな物も魔力を帯びたり持っているが、この羽なら魔力も多分に含み性質を別の物に移したい時に有用。きっと査定してもらえば売れるに違いない。一ヶ月でまた生えてくる。問題ない。
「・・・・・・・・本気で言ってるの?」
「何か問題でも?」
こてん、と首をかしげる。羊形態の毛を刈られてラグを作った事もある。使える素材は使う。
「あ、一月ひとつきでまた生えてきますよ」
「そういう問題じゃなーーーーーい!!!!」
▽
お説教リターン。懇々と諭されました。きゅいと哀れな声が上がる。
「あなたがそこまでズレているとは思っていませんでした」
また生えてくるのに。
「反省してませんね?」
「・・・売ると言ったのはまずかったと思ってます」
「売ること自体をまずいとは思ってないんですね。正直なのは素晴らしい美徳ですが貴方は自分の体を売ることに抵抗が無いんですか?」
「売春とかはダメです。しません、できません」
「それと同じです。安易に売るなど論外。慈善で髪を売るなどは賛成ですが貴方のは・・・・・」
▽
頭がふらふらし始めたところでようやくおはなしがおわった。
なんだか知らないうちに神殿の短期融資を受けて次のダンジョンの稼ぎで返すことで話がまとまっていた。アルフリートさんがうんうん頷いている。僕もう疲れたよパトラッシュ・・
パトラッシュがお迎えに来ている幻想が見えたがお陰でもう一個の聞く事を思い出せた。ありがとうパトラッシュ。
「トトさん、ここら辺で安全に従魔呼べるところありますか?」
「どんなの?」
「飛龍と精霊馬です」
「それなら町の外で呼んだ方がいいね。それと登録が必要になってくるからついでに行ってらっしゃい」
「あと、オラクルって知ってます?」
「変身スキルを活用した神職とアルから聞いていますが私は聞いたことが無いですね。転職を行っている神官がいますので話を聞いてみますか?」
「お願いします」
「転職は神殿の通常業務ですから、転職窓口に行けば話が聞けるはずです。アル、案内を頼みます」
「分かった。明日なら大丈夫だろう」
「その子持って帰っていってね」
何が大丈夫か気になったがもう限界です。ぐったりして机に頭を乗せていたらアルフリートさんが鳥の姿のままの僕をひょいと持ち上げ、小脇に抱えた。
「文字通りですね。ありがとうございます」
「反省があまり見られない気もするが、これ以上は意味が無いだろう。今日は休め」
反省している所はしてます。自分を素材として使う事はやめないというだけです。そして念願のもふもふです。アルフリートさんが軽装でよかった。
▽
「おっと」
「うあ、ごめんなさい」
小脇に抱えられてだらんとしていたらネックレスがゆるんであやうく下に落ちかける。
「仕方ないな」
そういいつつ小脇に抱えた荷物スタイルから胸に抱えた形に持ち替えてくれた。胸毛のほうがもふもふしてますね。さっきの布越しとは大違いです。天国はここにあったんだね・・
「寝るな、そして体を押し付けるな」
「はっ、安眠態勢を探していました」
「大丈夫なのか・・?」
ぼそりと心配したような声が落ちてくる。
「あとは寝るだけなので大丈夫です。アルフリートさんは大きいので腕の中でも安心快適です」
「本当に疲れているようだな。長官の説教は効くから気持ちは分かる」
「あはは、大事にされてるんですね」
「それが分かっているなら、まぁいいだろう」
▽
アルフリートさんが部屋の鍵を開けている音で意識がまた浮上する。
「着いたぞ」
「ついでにベッドに運んでくれますか?」
甘えきってるがもふもふとは離れがたい。明日こそ、明日こそコロナとラクリマを呼ぼう。
「ベッドにぽいしちゃってくれれば良いですから」
はぁと溜息を吐かれる。それでも運んでくれるのだからアルフリートさんは親切だ。
ぽふんと、張りのあるシーツにぽいっとされる。そのままごろんと行きたいが、寝る前の習慣をこなそう、あと最低限の身繕い。
潜在魔力値上昇ポーションを取り出し浮かせて蓋を外す。くちばしで瓶を咥えて上を向いて飲む。苦くて美味しい。ついでに生活魔法も複数発動させ汚れを掃う。寝香水は今日はラベンダー系でいいか。
「何をしている?」
「魔力値の上限を上げるポーションですけど飲みます?苦いですけど」
「苦いのか。務めのために頑張っているのだな」
「務めというか趣味というか、僕はおいしいと思いますよ。人気は無いですけど」
青汁とエスプレッソを混ぜたような味。苦い、もう一本。千里の道も一歩から。ちなみに二本目からは喉を潤すくらいの効果しかありません。
「私はやめておく」
「はーい、素材と道具さえあれば各種能力上昇ポーションは作れると思うので必要なら言って下さい」
「わかった。この香りは何だ?」
「あ、鼻が良いなら気になりますよね。ごめんなさい」
「不快ではない」
「ならよかった。錬金ついでに作ってる香水で今日のはラベンダーです」
「どこかで嗅いだ匂いだと思ったがラベンダーか・・」
「好きなんですよね、ラベンダー」
OTLお気に入りスポットの誰も来ない墓地裏の群生地で採取しました。こっちにあるならまた行きたい。コロナに乗って確認しに行こう。
「懐かしい香りだ」
「分けましょうか?」
「いや、それは遠慮しておこう。明日も朝迎えに来る」
「お願いします。運んでくれてありがとうございました」
ドアの閉まる音がする。今日は本当に色々あった。お説教されて嬉しがる人の気持ちが分かってしまったのがちょっとショック。恥ずかしくて、嬉しくて、ぽかぽかと心は温かかった。
僕の事を考えてくれる人がいる。この世界で自由に生きるという事はどういうことか考えよう。心のまま生きれば良いと創造神様は言う。
とりあえず今の僕の心は夢であなたに逢いたいって言ってますよ。創造神様。
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