14 / 26
Chapter 2 山奥の別荘
第十三話 待ち合わせ
しおりを挟む
軽い朝食を済ませたジョージとアーサーは宿をあとにし、待ち合わせの廃墟へと向かった。
二人が廃墟についたとき、既にオリバーが先に来ていた。彼は廃墟の周りに張り巡らされている黒い鉄の柵に寄りかかって、うつむいていた。
昨日は寝坊して仲間に置いて行かれたと言っていたが、今日は起きることができたようでジョージは一安心した。
二人の姿に気が付くと、オリバーはスッと顔をあげた。
「おはようございます」
「よぉ」
「おはよう」
オリバーは、目深にかぶったニット帽を右手で触りながら言った。
昨日はよく見えなかった彼の姿が、朝日に照らされてよく見える。
オリバーは青色のニット帽に薄手のコートを羽織っていて、その茶色い巻き毛の前髪が、ニット帽からちょろっとのぞいていた。
ジョージは彼の右手を見て、驚いた。
昨日は気づかなかったのだが、なんと彼は……右手の人差し指がないのだ。
(事故で失ったのだろうか……)
ジョージはオリバーに聞いてみようか一瞬迷ったが、突然聞くのは失礼な気がしたのでやめた。そのかわり、ジョージは、今朝アーサーと話し合って決めたことを、さっそく彼に話すことにした。
「別荘まで、馬に乗っていこうと思う」
「馬ですか……」
彼は一瞬同意しかけたが、その細い目を見開いてすぐに聞き返した。
「え、徒歩じゃなくて、馬ですか?」
彼はとても早口に言った。
「そうだ。別荘は山奥にあるから、徒歩で半日かかってしまう。時間を無駄にしたくない」
アーサーが答えた。
「俺、生まれてから一度も馬に乗ったことがないんです」
オリバーは目を伏せた。
「俺の後ろに乗ればいいよ!」
ジョージが楽しそうに答えた。
「屋敷にある馬屋で、何頭か飼っているんだ。人慣れしているから、安心だよ!」
そう軽く言うと、オリバーはさらに目を見開いた。
「馬を飼っているだなんて……」
そう呟いた彼は、興味深そうにジョージを見る。彼の目線がジョージの胸元にあるペンダントを捕らえた。
「そういえば、まだ聞いていなかったんですけれど、貴方何て名前ですか?」
「ん? あぁ。自己紹介がまだだったね。ごめん」
そういうとジョージはせき払いをして言った。
「俺の名前はジョージ・ウィリアムズ。隣の彼はアーサー・モリスだ」
それをきいたオリバーは、驚いて息をのんだ。
「……。ウィリアムズって、あのウィリアムズ家の坊ちゃんか……」
「俺のこと知ってるのか! びっくりだな、あまり有名じゃないと思ってた」
「俺らの界隈じゃ、そこそこ有名人ですよ。貧民街に出入りする、奇特な貴族がいるってね。そいつをカモにすると、恐ろしいことが待っているという噂が流れてる。そうか、あんたがそいつなのか」
「そ、そうなのか」
ジョージは有名人と聞いて一瞬嬉しそうな顔をしたが、カモときいてがっくりと肩を落とした。アーサーが哀れな目でジョージを見ている。
アーサーは再起不能なジョージを尻目に、オリバーに告げた。
「こいつの屋敷まで、馬車で小一時間くらいかかるんだ。時間がもったいねぇから、急ぐぞ」
二人が廃墟についたとき、既にオリバーが先に来ていた。彼は廃墟の周りに張り巡らされている黒い鉄の柵に寄りかかって、うつむいていた。
昨日は寝坊して仲間に置いて行かれたと言っていたが、今日は起きることができたようでジョージは一安心した。
二人の姿に気が付くと、オリバーはスッと顔をあげた。
「おはようございます」
「よぉ」
「おはよう」
オリバーは、目深にかぶったニット帽を右手で触りながら言った。
昨日はよく見えなかった彼の姿が、朝日に照らされてよく見える。
オリバーは青色のニット帽に薄手のコートを羽織っていて、その茶色い巻き毛の前髪が、ニット帽からちょろっとのぞいていた。
ジョージは彼の右手を見て、驚いた。
昨日は気づかなかったのだが、なんと彼は……右手の人差し指がないのだ。
(事故で失ったのだろうか……)
ジョージはオリバーに聞いてみようか一瞬迷ったが、突然聞くのは失礼な気がしたのでやめた。そのかわり、ジョージは、今朝アーサーと話し合って決めたことを、さっそく彼に話すことにした。
「別荘まで、馬に乗っていこうと思う」
「馬ですか……」
彼は一瞬同意しかけたが、その細い目を見開いてすぐに聞き返した。
「え、徒歩じゃなくて、馬ですか?」
彼はとても早口に言った。
「そうだ。別荘は山奥にあるから、徒歩で半日かかってしまう。時間を無駄にしたくない」
アーサーが答えた。
「俺、生まれてから一度も馬に乗ったことがないんです」
オリバーは目を伏せた。
「俺の後ろに乗ればいいよ!」
ジョージが楽しそうに答えた。
「屋敷にある馬屋で、何頭か飼っているんだ。人慣れしているから、安心だよ!」
そう軽く言うと、オリバーはさらに目を見開いた。
「馬を飼っているだなんて……」
そう呟いた彼は、興味深そうにジョージを見る。彼の目線がジョージの胸元にあるペンダントを捕らえた。
「そういえば、まだ聞いていなかったんですけれど、貴方何て名前ですか?」
「ん? あぁ。自己紹介がまだだったね。ごめん」
そういうとジョージはせき払いをして言った。
「俺の名前はジョージ・ウィリアムズ。隣の彼はアーサー・モリスだ」
それをきいたオリバーは、驚いて息をのんだ。
「……。ウィリアムズって、あのウィリアムズ家の坊ちゃんか……」
「俺のこと知ってるのか! びっくりだな、あまり有名じゃないと思ってた」
「俺らの界隈じゃ、そこそこ有名人ですよ。貧民街に出入りする、奇特な貴族がいるってね。そいつをカモにすると、恐ろしいことが待っているという噂が流れてる。そうか、あんたがそいつなのか」
「そ、そうなのか」
ジョージは有名人と聞いて一瞬嬉しそうな顔をしたが、カモときいてがっくりと肩を落とした。アーサーが哀れな目でジョージを見ている。
アーサーは再起不能なジョージを尻目に、オリバーに告げた。
「こいつの屋敷まで、馬車で小一時間くらいかかるんだ。時間がもったいねぇから、急ぐぞ」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる