サムライ異世界に往く ~死に場所を求める最強の剣神、うっかり規格外の無自覚無双をしてしまう~

戯言の遊び

文字の大きさ
7 / 13
第一章 サムライ、異世界へ

第7話:恩人への歓待

しおりを挟む
「――というわけなの。私がトレントに襲われそうになったところを、千代女ちよめお姉ちゃんが助けてくれたの!」

 集落の入り口で両手を広げたミアの必死の訴えに、父親である族長の男は、呆然と大剣を取り落とした。
 カラン、と重い金属音が響く。

「なんだと……? 忌まわしき奴隷商の魔の手から、この人間が、いや、御仁が救ってくれたというのか。しかも、あのトレントの群れを一人で……?」

 父親は信じられないといった様子で、千代女とミアを交互に見つめた。
 普通の人間の剣士が、あの凶悪な魔物を、しかも無傷で倒せるはずがない。

 しかし、無事に帰ってきた娘の姿と、先ほど千代女から放たれた「本物の死線」を潜り抜けた者特有の凄まじいプレッシャーが、それが事実であることを物語っていた。
 父親はふと我に返ると、ゆっくりと片膝をつき、深く、深く頭を下げた。

「……私の早とちりであった。あわや、娘の命を救っていただいた大恩人に刃を向けるところであった。族長として、そして一人の父親として、非礼を詫びよう」
「む……なんだ、立ち合いはせぬのか。あの気迫、久々に血が沸き立つ思いであったのに」

 心底残念そうに肩を落とす千代女。
 その反応に周囲の戦士たちは一様に頬を引きつらせたが、族長の男は苦笑いを浮かべ、娘を救ってくれた大切な「恩人」として、集落の奥へと丁重に迎え入れた。
     
 通されたのは、集落の中央にある族長の家だった。
 獣人たちは人間への警戒心を完全には解いていなかったが、族長の娘の恩人とあっては無碍にもできない。
 出された素朴な果実酒と肉料理を前に、千代女は胡座あぐらをかいてくつろいでいた。

「改めて礼を言う、千代女殿。私はこの集落を束ねる族長で、ガロンという」
「うむ。気に病むな、ガロン殿。それがしはたまたま通りかかり、目の前のトレントを斬ったまでのこと」

 果実酒を美味そうに煽る千代女を見て、ガロンは不思議そうに目を細めた。

「しかし、見慣れぬ身なりだ。その片刃の剣に、動きやすさを重視した独特の衣服……。千代女殿は、一体どこの生まれなのだ?」
「某か? 某は『日ノ本』の生まれだ。ここからどのくらい離れておるのかは見当もつかんがな」
「日ノ本……知らぬ国名だな」

 ガロンの言葉に、千代女は酒の入った杯を見つめ、静かに息を吐いた。

「そうか……」

 やはり、ここは自分の知る世界ではない。
 薄々感づいてはいたが、こうしてはっきりと告げられると、腹の底に落ちるものがある。
 未練があるわけではないが、少しばかりの郷愁が胸を掠めた。
 しかし、ガロンは顎に手を当て、何かを思い出すように続けた。

「だが、千代女殿の様な格好をした人間が、遥か東の大陸に住んでいるというのを商人に聞いた覚えがあるぐらいだ」
「ほう。東の大陸、とな」
「ああ。その商人というのは私の実の弟でな。獣人には珍しく、異常なほど好奇心旺盛な性格をしていて、世界中を渡り歩いて商いをしている変わり者なのだ。数年前に集落に顔を出した際、『東の果てに、奇妙な片刃の剣を振るう強者つよきものたちの国がある』と、目を輝かせて語っていた」

 その言葉を聞いた瞬間、千代女の瞳に、再び剣神としての鋭い光が宿った。

「……強者もののふたちの国」

 その響きは、死に場所と骨のある相手を求める彼女にとって、何よりも甘美な誘惑であった。
 日ノ本と同じような剣術を使う者たちがいるというのなら、自分を満足させてくれる、あるいは自分を殺し得る「真の強者もののふ」がそこにいるかもしれない。

「ガロン殿。その東の大陸とやらには、どう行けばよいのだ?」

 身を乗り出す千代女のただならぬ気迫に、ガロンは思わずたじろいだ。

「ま、待て。東の大陸に行くには、険しい山脈を越え、さらに海を渡らねばならん。それに、弟の話によれば、そこは魔物の強さもこの辺りとは比較にならんほどの『魔境』だぞ?」
「なんと! それは重畳ちょうじょう!」

 千代女はパンッと膝を叩き、満面の笑みを浮かべた。
 危険だと止められたはずなのに、なぜか喜んでいる恩人の姿に、ガロンはただただ困惑するしかなかった。



ここからさらに彼女の勘違いと無双が加速していきます!
少しでも「続きが気になる!」「スカッとした!」と思っていただけましたら、ぜひ【お気に入り登録】と【応援クリック】を
お願いいたします!皆様の応援が一番のモチベーションです!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...