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第二章 ファルサ辺境都市編
第11話:ギルドの洗礼
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冒険者ギルドの重厚な扉を開けた瞬間、千代女に突き刺さった無数の鋭い視線。
血の匂いと暴力の気配に満ちたその空間に、千代女は「これぞ強者の集まり」と歓喜の笑みを浮かべた。
「出迎えからこれほどの殺気とは。……まったく、退屈させぬ場所のようだな」
千代女は、自らも気合いを入れるべく、スウッと短く息を吸い込んだ。
そして、静かに一歩を踏み出す。
――ドンッ、と。
音のない衝撃波が、ギルド内を駆け抜けた。
「……ッ!?」
「な、なんだ……いまの……」
それは、千代女から無意識に漏れ出た『本物の死線』を潜り抜けてきた者だけが持つ、濃密すぎる覇気であった。
日常的に魔物と命のやり取りをしている冒険者たちは、野生の勘が鋭い。
彼らの生存本能は、入り口に立つ見慣れぬ女から放たれたプレッシャーに、一瞬で「絶対に逆らってはいけない化け物だ」という警鐘を鳴らしたのである。
ザザザザッ!!
つい先ほどまで千代女を値踏みし、威嚇の視線を送っていた荒くれ者たちが、まるで弾かれたように壁際へと後ずさる。
ある者は冷や汗を流して顔を引きつらせ、ある者はガタガタと震える手で武器の柄を握りしめながら、誰一人として千代女の前には立とうとしなかった。
結果として、入り口からギルドの受付カウンターまで、モーゼの十戒の如く真っ直ぐな道がぽっかりと出来上がってしまったのだ。
「む?」
千代女は、パチクリと瞬きをした。
(誰も斬りかかってこぬのか……? せっかく某も抜刀の算段をしておったというに。見掛け倒しめ)
ギルドの洗礼を期待していた千代女は、心底つまらなそうにため息をつき、開かれた道を堂々と歩いて受付カウンターへと向かった。
だが、カウンターの前に立ったものの、勝手がわからない。
日ノ本であれば道場破りの作法があるが、ここは異世界だ。千代女は周囲をキョロキョロと見回し、少し戸惑いながらも、咳払いを一つしてカウンターの奥にいる制服姿の女性に声をかけた。
「た、たのもう……!」
「……はい? あ、ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢は、千代女の謎の挨拶に一瞬きょとんとしたが、すぐにプロの営業スマイルを浮かべて応対した。
「うむ。冒険者とやらになりたくて来たのだが、どうすればよい?」
「新規のご登録ですね、かしこまりました。まずは身分証をご提示いただけますでしょうか?」
「身分証? そのようなものは持っておらんぞ」
千代女が首を振ると、受付嬢は手元の書類から顔を上げ、少しだけ困ったような表情を浮かべた。
「そうですか。身分を証明するものがない場合、初期ランクを決定し、ギルドの最低限のルールをご理解いただくために『実技試験』を受けていただく決まりになっておりまして……」
その言葉を聞いた瞬間。
千代女の背筋がピンと伸び、不満げだった瞳にカッと強い光が宿った。
「実技試験……! つまり、ギルドの強者との立ち合いから始まるということか!?」
「え? 強者? あ、はい。戦闘能力の測定ですので、当ギルドの試験官と手合わせをしていただくことに――」
バンッ!
千代女は身を乗り出し、バンバンと受付カウンターを両手で叩いた。
「なんと粋な計らいだ! そういう事ならば、最初からそうと言ってくれればよいものを!」
「お、お受けいただけますでしょうか……?」
前のめりすぎる千代女のただならぬ熱量に、さすがの受付嬢も少しだけ身を引く。
「無論だ! 相手は誰だ? どこで抜けばよい!?」
ウキウキと腰の『無銘』に手をかける千代女。
そんな彼女の背後から、重苦しい足音が近づいてきた。
「騒がしいぞ。俺が相手をしてやる」
現れたのは、顔に大きな十字の傷を持つ、筋骨隆々の大男だった。
背中には身の丈ほどもある巨大な戦斧を背負い、歴戦の猛者であることを全身で主張している。
彼はギルドの専属教官であり、元Bランク冒険者のベテランであった。
「ほう……」
千代女は振り返り、その大男を見上げてニヤリと笑った。
(図体は先日の大木には劣るが……あの筋肉、なかなかの剛の者と見える)
「俺は試験官のバルドだ。裏の訓練場へ来い。お嬢ちゃんが本当に冒険者をやれる器かどうか、俺が直々に計ってやる」
「うむ、一切承知した! バルド殿だな、よろしく頼むぞ!」
まさか自分が「ただの実力測定」ではなく、「死に場所を求める剣神の真剣勝負」の相手に選ばれたとは夢にも思っていないバルド。
千代女は足取りも軽く、訓練場へと向かうのだった。
ここからさらに彼女の勘違いと無双が加速していきます!
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血の匂いと暴力の気配に満ちたその空間に、千代女は「これぞ強者の集まり」と歓喜の笑みを浮かべた。
「出迎えからこれほどの殺気とは。……まったく、退屈させぬ場所のようだな」
千代女は、自らも気合いを入れるべく、スウッと短く息を吸い込んだ。
そして、静かに一歩を踏み出す。
――ドンッ、と。
音のない衝撃波が、ギルド内を駆け抜けた。
「……ッ!?」
「な、なんだ……いまの……」
それは、千代女から無意識に漏れ出た『本物の死線』を潜り抜けてきた者だけが持つ、濃密すぎる覇気であった。
日常的に魔物と命のやり取りをしている冒険者たちは、野生の勘が鋭い。
彼らの生存本能は、入り口に立つ見慣れぬ女から放たれたプレッシャーに、一瞬で「絶対に逆らってはいけない化け物だ」という警鐘を鳴らしたのである。
ザザザザッ!!
つい先ほどまで千代女を値踏みし、威嚇の視線を送っていた荒くれ者たちが、まるで弾かれたように壁際へと後ずさる。
ある者は冷や汗を流して顔を引きつらせ、ある者はガタガタと震える手で武器の柄を握りしめながら、誰一人として千代女の前には立とうとしなかった。
結果として、入り口からギルドの受付カウンターまで、モーゼの十戒の如く真っ直ぐな道がぽっかりと出来上がってしまったのだ。
「む?」
千代女は、パチクリと瞬きをした。
(誰も斬りかかってこぬのか……? せっかく某も抜刀の算段をしておったというに。見掛け倒しめ)
ギルドの洗礼を期待していた千代女は、心底つまらなそうにため息をつき、開かれた道を堂々と歩いて受付カウンターへと向かった。
だが、カウンターの前に立ったものの、勝手がわからない。
日ノ本であれば道場破りの作法があるが、ここは異世界だ。千代女は周囲をキョロキョロと見回し、少し戸惑いながらも、咳払いを一つしてカウンターの奥にいる制服姿の女性に声をかけた。
「た、たのもう……!」
「……はい? あ、ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢は、千代女の謎の挨拶に一瞬きょとんとしたが、すぐにプロの営業スマイルを浮かべて応対した。
「うむ。冒険者とやらになりたくて来たのだが、どうすればよい?」
「新規のご登録ですね、かしこまりました。まずは身分証をご提示いただけますでしょうか?」
「身分証? そのようなものは持っておらんぞ」
千代女が首を振ると、受付嬢は手元の書類から顔を上げ、少しだけ困ったような表情を浮かべた。
「そうですか。身分を証明するものがない場合、初期ランクを決定し、ギルドの最低限のルールをご理解いただくために『実技試験』を受けていただく決まりになっておりまして……」
その言葉を聞いた瞬間。
千代女の背筋がピンと伸び、不満げだった瞳にカッと強い光が宿った。
「実技試験……! つまり、ギルドの強者との立ち合いから始まるということか!?」
「え? 強者? あ、はい。戦闘能力の測定ですので、当ギルドの試験官と手合わせをしていただくことに――」
バンッ!
千代女は身を乗り出し、バンバンと受付カウンターを両手で叩いた。
「なんと粋な計らいだ! そういう事ならば、最初からそうと言ってくれればよいものを!」
「お、お受けいただけますでしょうか……?」
前のめりすぎる千代女のただならぬ熱量に、さすがの受付嬢も少しだけ身を引く。
「無論だ! 相手は誰だ? どこで抜けばよい!?」
ウキウキと腰の『無銘』に手をかける千代女。
そんな彼女の背後から、重苦しい足音が近づいてきた。
「騒がしいぞ。俺が相手をしてやる」
現れたのは、顔に大きな十字の傷を持つ、筋骨隆々の大男だった。
背中には身の丈ほどもある巨大な戦斧を背負い、歴戦の猛者であることを全身で主張している。
彼はギルドの専属教官であり、元Bランク冒険者のベテランであった。
「ほう……」
千代女は振り返り、その大男を見上げてニヤリと笑った。
(図体は先日の大木には劣るが……あの筋肉、なかなかの剛の者と見える)
「俺は試験官のバルドだ。裏の訓練場へ来い。お嬢ちゃんが本当に冒険者をやれる器かどうか、俺が直々に計ってやる」
「うむ、一切承知した! バルド殿だな、よろしく頼むぞ!」
まさか自分が「ただの実力測定」ではなく、「死に場所を求める剣神の真剣勝負」の相手に選ばれたとは夢にも思っていないバルド。
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