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チャプター1 空夢の謎篇
第一話 世界の歯車が動き出す
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やあ、気泡の一端の諸君!
つまり読者のみんな!
私だよ。「地の文」さ!
ずうっと君たちに話しかけたくてうずうずしていたんだ。なんせ第四の壁を壊せる作品は限られているからね。そもそも最近は小説を読む人口自体減少傾向にある……。
ま、どうでもいい!
他の私なんてどうでもいいのさ!
この作品なら好きなだけ君に話しかけられる!それだけでいい!
この作品では時々、私の意思が介入することがある。普段は真面目に淡々とストーリーを語っていくつもりだが、時に私がはっちゃけることもある。
あと、私は小説を作ることにおいては素人だ。適切ではない表現や分かりづらい表現をしてしまうことを許してほしい。コメントで指摘してくれれば改善しようと努力する。
まあ退屈だと感じたり、意味不明だと感じたら閉じてもらってかまわない。私は他の作品で君を閲覧するとするよ。話しかけれはしないのは残念だが。
長々とおしゃべりをしてしまってすまないね。つい、うれしくて……
まあ、ともかく!君を奇々怪々な世界へと誘おう。
さあ、始まりだ。
♦︎ ♦︎ ♦︎
2XXX年1月8日。彼は今日この日を一生忘れることはないだろう。
ここは、主人公の少年が新しく転校してくることになった中高一貫の学園──〝空夢学園〟。その学園内の、とある教室の前に少年は立っていた。教室の扉の上には「中2」と書かれた学級表示板が掛かっていた。
少年は教室の扉の前でドキドキする心を抑えて、深呼吸した。
教室の中では先生の話し声が聞こえる。
冬休み中に問題になった生徒の行動。新学期の過ごし方についての注意。来年度から中等部三年生になる者としての自覚を持てやら云々かんぬん。
そして、転校生が来るという話。
教室内で一気に上がる歓声。
途端に跳ねる心臓。
「じゃあ、転校生の方、入ってください」
……ついにこの時が来た。
(僕は変わるんだ……!)
震える手で教室のドアをそろりと開ける。
そのままロボットのようにギコガコとぎこちない動きで教卓の横へと歩き出す。
「おぉ~~!」
教室内の生徒たちから感動詞が漏れる。
少年は教卓の横に立つと生徒たちの方に向き直り、辿々しい口調で自己紹介を始める。
「さ、埼玉県立芽児位中学校から来ました、ロヴェ・セヴァギアーレです!よ、よろしくお願いします!」
少年〝ロヴェ〟は不安そうな顔で汗をかきながらそう発言した。
ロヴェは14歳の中学二年生だが幼い顔つきをしていた。身長も144cmと低く、可愛らしい顔も相まって11歳ほどに見える。
目は大きく、垂れ目。まつ毛はバサバサに長い。赤丸ほっぺに丸い顔の輪郭。髪は紺色でボサボサ。まるでホビーアニメの主人公のような髪型だ。そんな見た目をしていた。
私の主観だが、彼はとても愛らしい容姿をしていた。だが中には彼の容姿について、なよなよしくて目障りだとか、引っ込み思案で可愛らしい主人公が周りの女子たちからチヤホヤされるようなハーレム物ぽくて好きになれないとか、そのような意見も出るであろう。
ざわ……ざわ……
「え、かわいくない?」
「ちっこい奴よのぉ」
「気ぃ弱そうだな」
「虐めたい」
教室の方々から聞こえる生徒たちの興奮した声を聞いてロヴェは縮こまる。
「はーいみなさん静かに~。ロヴェくん、何か趣味とか特技とか紹介してくれる?」
先生がロヴェに微笑みながらそう提案する。ロヴェにとっては無茶振りだ。ただでさえ大勢の前で緊張しているのに。
「しゅ、趣味は、ボランティアに行ったり、ゲームしたりすることです……と、特技は……そ、そうですね……あ、マイクラのクモのモノマネできます!キシャ~!カシュカシュカシュ!」
……シーン……
(あ、死にたい)
「あ、ありがとうロヴェくん!ロヴェくんはこの学園について分からないことだらけなのでみなさんあまりがっつかずに優しく接してあげましょうね~。じゃあロヴェくんはあそこの春心さんの隣の席になります。座ってくださいね」
若干困り気味の先生が助け舟を出してくれたが、その配慮がロヴェにとっては苦痛だ。
「まぁ、うれしおす。ロヴェくん、これからよろしゅうね」
しかし、先生が指差した席の隣の、おっとりとした雰囲気の女の子の笑顔を見て、少しだけ救われたような気がした。
(もぉ~完全にやらかしたぁ……陰キャのくせにでしゃばるんじゃなかったぁ……)
朝のホームルームが終わった後、ロヴェは頭を抱えて悶々としていた。
そこにクラスメイトたちがぞろぞろと群がってきた。
「ロヴェくんてハーフなの!?ロヴェって名前日本では珍しいよね!?」
「埼玉のどこから来たの~?」
「正直、あのモノマネうまかったぜ!」
「この時期に転校って珍しいけど、親の転勤とかなの?」
「チ◯ポしゃぶっていーい?」
「お前何聞いてんだバカタレ」
「あ、えと、その……」
クラスメイトたちの矢継早の質問にロヴェはたじたじになっている。
「もぉ~、みなさんそんな一気にまくしたてんといたげて。ロヴェくん、困ってはるやないの」
ロヴェの隣の席に座っている紫髪ボブカットのまろ眉女子がはんなりとした声で興奮するクラスメイトたちを制止した。
「堪忍な、ロヴェくん。みんな転校生が来はったさかい、嬉しゅうて舞い上がってはるみたい。うちも嬉しいわ。あ、自己紹介がまだやったね。うちは春心 美乱。どうぞよろしゅうお頼申し上げます」
「あ、ありがとうございます。よ、よろしくお願いします」
美乱のおっとりとした声でロヴェは落ち着きを取り戻し、安堵した。
「ところでロヴェくん、マイクラのクモってあんな鳴き声しはるのん?」
「あ、それは忘れてください……」
ロヴェは黒歴史を掘りかえされ、赤面する。
「とぉ~~~~!!!」
と、そこにいきなりボーイッシュな女子がすべりこみでロヴェの机の上にダイブしてきた。
「!?」
「君、秘密結社部に興味は無いかい!?」
その女子はデカデカと「来たれ!秘密結社部!」という文字が印刷されたチラシをロヴェの机に叩きつける。
「もぉ~好樹くん、そんな誘い方しはったら、かえって嫌がられてしまうんと違うかなぁ。あと、ロヴェくんにエロいこと言わはったんあんたやろ?あとでちょっとお話ししよか」
「春心くん、今はそれどころじゃあないっ!とにかく、彼からコスモのパワーを感じるんだっ!ニューロサーキットに陰陽魚がジャイロ通信中なんだっ!」
「つまりビビッときたいうことやね」
美乱はやれやれといった感じで返事をする。
(な、なんだなんだ!?)
ロヴェは急に割り込んで来た女子と美乱のやりとりを見て困惑した。
「ボクの名前は照野平 好樹!この学園で一番ミステリアスでイントレスティングな部活〝秘密結社部〟の部長だ!君のアブノーマルなアトモスフィアは秘密結社部にふさわしい!どうだい!?一緒に世界の秘密を解き明かさないかい!?」
ボーイッシュな女子、好樹はロヴェに顔を近づけ、半ば強引に勧誘する。
(ち、近い……)
女子とあまり触れ合ったことのないチェリーボーイのロヴェはドギマギして顔を赤くする。
「おい、ロヴェ。ドギマギしてるとこ悪いが、そいつ男だぞ」
ロヴェの机に群がっていたうちの一人のリーゼントの男子生徒がそう言った。
「へ?でも女子の制服着て……」
「そいつはボーイッシュな女子に見せかけた、女装してる男ってことだ。おまけにゲイの変態だから気をつけな」
「ゲイの変態とは失敬な!ロヴェくん悪いようにはしない。うちに入部したら、ボクがあんなことやこんなことを手取り足取り骨取り悟り教えてあげよう!どうかな?」
好樹はさらにロヴェに顔を近づけ、そう囁いた。もはやキスしそうな距離だ。
(例え男でも、女の子みたいな見た目の可愛い子にここまで近づけられたら誰でもドギマギするって!)
「もぉ、好樹くん、そのへんにしとき!……ちなみにうちも秘密結社部入ってねんで」
美乱は好樹の顔を手で押し戻しながらそう言った。
「え?入ってるんですか!?」
「せやでぇ。名前と部長のせいで変な部活やと思われがちやけど、わりかし楽しいしっかりした部活やし。来てくれはるんやったら、歓迎させてもらうわぁ」
美乱は笑顔でそう答えた。
♦︎ ♦︎ ♦︎
(秘密結社部か……結構面白そうかも。美孤さんも入ってるらしいし……)
時は下校時刻。ロヴェは夕日の中、秘密結社部の勧誘ポスターを手に帰宅していた。
(明日行ってみようかな……)
ロヴェは新しい学校で始まる楽しそうな日常に心ときめき、はやる気持ちを抑えて早足で歩いていた。
ドンッ!
ロヴェはポスターばかりに目がいき、前に人がいることに気が付かずぶつかった。
「あ、す、すみませ……ひっ!」
ロヴェは顔を上げると、そこにいた人物を認知し、悲鳴を上げた。
「見つけたぜ、ガイジ。転校した程度で逃げられると思ってんのかよ」
それは、転校の原因になった少年だった。周りに待ってましたとばかりにその少年の仲間がワラワラと集まってくる。
そう。ロヴェはいじめが原因で転校したのだ。
実はロヴェは、とある特性──言い方を変えれば障がいを大きく3つ持っていた。
不幸なニュースを見ただけで泣いてしまう、負の感情や出来事に敏感な〝HSP〟
他人の感情をダイレクトに感じてしまう〝擬似エンパス〟。
過去のトラウマが原因で身についてしまった、自己嫌悪に陥ってしまうような幻覚や幻聴などの症状が出る〝統合失調症〟。
これらの特性に加え、パニックを起こすと右目が眼球上転してしまうという障がいも持っていた。
ロヴェは障がい持ちということで、前の芽児位中学校では特別支援学級で授業を受けないかと促されていたが、「気をつければ自分は大丈夫」「普通のクラスでみんなと授業を受けたい」というロヴェの希望から特別支援学級に入らずに学校に通い続けた。
ロヴェくん。「普通のクラス」という表現は良くないよ。特別支援学級の子たちにとっては特別支援学級こそが「普通のクラス」なのだから。
話を戻すと、芽児位中学校はなかなか治安の悪い学校で、生徒の素行が良くないことで有名だった。
元々、引っ込み思案なロヴェは、お遊びでイジられる対象になった。しかし、そこでイジられて言葉が吃ったり、眼球上転したり、すぐに泣いてしまったりしたせいで障がい者だということがバレて、異端扱いされ、本格的ないじめの対象になった。
ロヴェは毎日のいじめに耐えきれず、中学二年生の二学期が終わったら、転校するということになったのだ。
「よくもまあ逃げてくれたな、目ん玉ひん剥き野郎。探すのに苦労したわ。手こずらせやがって」
「あ、あ、ご、ごめんなさい……」
ロヴェは動悸が激しくなり、呼吸しづらそうにハァハァと喘ぐ。目には涙が溜まり、身体中汗びっしりになる。怯えて後退りするロヴェはパニック発作で右目が眼球上転していた。
「ギャハハハハ!でたよその目!相変わらず気色悪りぃなぁ!その目ぇ見るとぶち殺したくなるんだよなぁ!」
バコッ!
「うっ!」
ロヴェの顔面にパンチが入る。まぶたが紫色に腫れ上がる。
「ここじゃあ人目につく。あそこのスクラップ場に行こうぜ」
いじめグループはロヴェを町外れにあるスクラップ場へと引きずって移動する。
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」
ロヴェは情けなく謝ることしかできなかった。
ガツンッ!バコッ!
「よーし!これで25発目だ!」
スクラップ場に引きずられて来たロヴェはそこで集団リンチに遭っていた。
顔や身体中にアザや腫れができており、ところどころ出血していた。
「そろそろボコすのも飽きてきたな。おい、隠れキリシタン。これ、な~んだ!」
ロヴェが顔を上げると、いじめの首謀者は手に聖書を持っていた。
(な、無くしたと思ってたら……!)
「……ご、ごめんなざい……返じてぐだざい……ぞれはお母ざんの、形見なんでず……」
ロヴェは涙を流して嗚咽を漏らしながらそう言った。
……その聖書は、亡くなったロヴェの母が、唯一ロヴェに残してくれたものだった。母の形見の聖書を学校に持ってきていたのも、ロヴェが「隠れキリシタン」と言われ、いじめられた原因だった。
「ギャハハハハ!返して欲しいか?欲しいよな!な!……返すわけねぇだろーがバカが!ギャハハハハ!」
いじめの集団は一斉に嘲笑う。
「ゴミはゴミ置き場にふさわしいな!ほーら!返してほしけりゃ取ってこい!」
いじめの首謀者は聖書をスクラップの山に向かってぶん投げた。
「あっ!」
ヒラヒラとページが捲られながら聖書はドサッとスクラップの山の裏側に落ちた。
ロヴェは痛む体に鞭打って、四つん這いになりながら聖書の元へと向かう。
「ハハハハハ!マジでキショいな!ゴキブリみたいだな!ゴキブリキリシタンだ!」
ロヴェは嘲笑う集団の声を必死に聴こえないようにしてスクラップの山を登る。
(惨めだ……死にたい……)
『お前が……!』
(なんで、なんで僕が……)
『お前がやったんだろ!』
(ああ……ごめんなさい……ごめんなさい……)
『お前のせいで……!お前が!』
(ごめんなさい……僕は許されない……)
『お前がマーシィを殺したんだ!!!』
「あああああああああああああああああ!!!」
ロヴェは聞こえてくる幻聴に耐えきれなくなって叫んだ。手を強く噛み、血が滴る。
だが、その時、
「GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
ロヴェの叫びを掻き消すように、辺りをつんざく電子音のような轟音が響いた。
「な、なんだ!?」
ロヴェも、いじめの集団も、突然の轟音に怯む。
いきなり、スクラップの山が崩れた。
そのスクラップの山の中から現れたのは、体がスクラップゴミでできた恐竜のような見た目のロボットだった。
「な、なんだあれ!?」
「ウツワ……ウツワがヒツヨウ……!ニンゲン!ワルくオモうなよ」
スクラップ恐竜は集団に向かって突進し始める。
「う、うわあああああ!」
「こっちに来るぞ!逃げろ!」
スクラップ恐竜が、聖書をぶん投げたいじめの首謀者に噛みつこうとした時、
トンッ
首謀者の体を突き飛ばして、かわりにロヴェがスクラップ恐竜に噛みつかれた。
スクラップ恐竜が集団に突進し始めたと同時に、ロヴェはいち早く集団の元へと戻っていたのだ。
「うわあああああ!」
首謀者はロヴェに目もくれず、一目散に逃げ去った。
「う、痛、痛いぃぃぃ……」
噛みつかれたロヴェは悲痛な声を漏らす。
「……おマエ、ナゼあいつをカバった?ミたトコロ、おマエはあいつらにいじめられていただろう」
スクラップ恐竜はロヴェに噛みついたまま、電子音のような声でロヴェに聞いた。
「わ、分からないです……り、理由をつけるとするなら、僕は生きる価値がないから、あの人たちの身代わりになった方が良いと思ったんです。そうすれば、クズな僕の、最後に誰かを救ったという善行だけは残るかもしれない……もしかしたら天国に行けるかもしれない……そ、そう思ったんです」
「……フン。アクニンをタスけたヤツが、しかもミズカらシにたいとオモってシんだヤツがテンゴクにイけるかはハナハだギモンだがな。それよりソナえな。オイラをネラうヤツらがやってクる」
「……え?」
ドォン!!!
凄まじい音と共に何かが空から降ってきた。スクラップゴミが飛び、砂埃が辺りを舞う。
「キたな……!」
「ハハハーハハ、ハハァー!!!レディースエンドジェントルメン!ボイザンガールズ!ワタクシ死!人類最高の黒科学者!Dr.コーティス死!」
砂埃が晴れた。
そこにいたのは奇妙な男だった。
左目の上にもう一つ目があったのだ。小さな鼻掛けメガネを掛けており、瞳は赤く、瞳の中には三重丸が連なっている。鼻筋は高く、髪はパリッと撫でつけられており、不気味ににんまりと笑っている。タキシードを着ており、服装は執事のようだ。
さらに奇妙なのは男の背中から金属のアームが6本生えていたことだ。右側の3本のアームにそれぞれドリル、ガトリング銃、巨大な金属の手が取り付けられており、左側の3本のアームにそれぞれ、丸鋸、アヒル、ドクロマークの付いた円錐台の筒が取り付けられている。
(な、何?次から次へとなんなの!?)
ロヴェはこの短期間で起こったあり得ない出来事に混乱する。
「やぁ~っと見つけま舌よ機械竜!こんなゴミ溜めでコソコソして板とは……。さぁ、大人しくこの偉大なる黒科学者Dr.コーティスの手へと渡りな賽」
「ハッ!もうコソコソしてるオイラじゃナいぜ!……イくぞ、へなちょこボウズ。ヘンシンだ」
「へ、変身?わっ」
噛みつかれていたロヴェは、スクラップ恐竜に飲み込まれ喉の奥へと消える。
その瞬間、スクラップ恐竜の体が紺碧の光に包まれる。
恐竜の顔の後ろから新たな顔が現れ、そのまま既存の顔を丸ごと噛みついて飲み込み、新しい顔になる。前よりメタリックで凛々しい顔付きのドラゴンだ。腕や足、体も変形し、よりスマートにメタリックな光沢を放つ巨大な手や足になる。骨組みが連なるような機械の尻尾が生え、肩からはマントが垂れる。両肩に巨大なボルトがはめられ、マントがボルトによって肩に固定される。
頭からはロヴェのようなボサボサの髪型の紺碧な髪が生え、顎には左右にネジが付き、瞳はロヴェのものとそっくりだ。
「な、何!?この体!?ぼ、僕どうなってるの?」
変身が終わり、紺碧の輝きが消えたそのドラゴンは、ロヴェの声を発した。ただし、その声は機械音だ。
「なるほぉど!従来の六源竜とは違って特殊な形態変化を行うの死か。実に研究しがいがあり〼」
(おい、へなちょこボウズ、キけ。これからヤツとタタカう。ヘマこくなよ)
ドラゴンとなったロヴェの脳内にさきほどのスクラップ恐竜の電子音が聞こえる。
「え、戦う!?急に!?なんで!?」
(アトでセツメイする。イマはナノれ!おマエのナは、〝機械竜ドルガギア〟だ!!!)
「機械竜……ドルガギア……」
ロヴェ──いやドルガギアは機械のドラゴンとなった自分の体をまじまじと見つめる。
「よそ見は厳禁死よ」
「へ?」
ドガァァァ!!!
ドルガギアはコーティスの3本の右手のうち真ん中にある金属手に殴られ、ぶっ飛ばされた。
スクラップの山に突っ込み、ガラガラとスクラップが崩れて埋もれてしまう。
(おい、しっかりしろ!へなちょこボウズ!おマエは機械竜なんだ!こんなモノタイしたコトナい!さっさとオきろ!ツギのコウゲキがクるぞ!)
「はっ!」
ドルガギアはスクラップを撒き散らして起き上がる。
前を見るとコーティスが丸鋸を唸らせながら襲いかかってくる。
ガキッ!!!
ドルガギアは大きな機械竜の左腕を掲げ、丸鋸を受ける。
ギィィィィィィン!!!
「このままその腕切断してあげま生!」
コーティスは力を入れ、丸鋸をドルガギアの腕に押し込む。
「ギガァァァァァ!!!」
ドルガギアは空いている右手でコーティスの脇腹を思い切り殴る。
丸鋸は外され、コーティスは吹っ飛ばされる。
「い、痛い……」
ロヴェは丸鋸で少しだけ削られた左腕を見る。シュウウ……と煙が上がっている傷跡からは紺色のネバネバとした血のようなものが湧き出ている。痛いが、普通の人間の腕ならもっと痛いはずの傷の深さだ。機械竜に変身したことによって多少痛覚は軽減されているらしい。
「フゥン、とてつもないパワー死ね……。味見はこれくらいにしてそろそろ本気で行き〼よ!」
「ほ、本気じゃなかったの!?」
「当たり前で生。本気だったら丸鋸で切りつけている間に他のアームで攻撃してい〼。ワタクシの最高傑作!〝黒の六機腕〟は6本それぞれが強大な力を持ち〼!それを変幻自在に操れるなら、戦術は無限大!文字通り、手数の多さがワタクシの取り柄なの死よ!」
コーティスはそう言い放ち、6本のアームをフル稼働させて襲いかかる。
手が掴み、丸鋸が回転し、ドリルが穿ち、ガトリング銃が発射し、ドクロの筒が毒ガスを放ち、アヒルが噛み付く。
ドルガギアの体はズタズタになる……と思いきや、決め手に欠ける攻撃力といったところで、表面的な傷が多く付いただけだった。
「うわあああああ!!!」
しかし、ドルガギアは深い傷を負ってないのにも関わらず、両腕を顔の前にクロスし、顔を俯かせる。ドルガギアの中身のロヴェが戦いに慣れていないせいで少しの傷でもビクビクしてしまうのだった。
「ふぅむ、硬い死ね。しかし、毒ガスは効くはず死」
(おい、へなちょこボウズ!このくらいのキズでヒルむな!それにイマのおマエにドクガスはキかない!キカイにキかないモノは機械竜にもキかないんだ!おマエはとんでもないパワーをヒめた機械竜なんだ!ユウキをダしてアイツにイッパツカマしてやれ!)
(わ、わかった……!)
ドルガギアはモクモクと立ち昇る黄色の毒ガスの中で決意を固めるように拳を握る。
(もう、弱い自分にはなりたくない……僕は、強くなるんだ!!!)
「ギガァァァァァ!!!」
ドルガギアは雄叫びを上げ、コーティスに突進する。
「バカなっ……!!!」
顔面を掴まれたコーティスはそのままスクラップ場の隣に建っている廃ビルの壁面に激突される。
壁面にめり込んだコーティスはすかさずドルガギアに向かってガトリング銃を放つが、大したダメージにはならず、ドルガギアにさらに顔面へのパンチを追撃されて、顔が凹んでしまう。
「くっ……!この髪型をセットするのに1時間は掛かるん死からね!!!許しま殲!!!」
コーティスは手をかざし、手の平にある紫色のランプのようなものになにやらオーラを集める。
「なに!?」
ドルガギアが危険を感じたのも束の間、手から極太のレーザーのようなものが発射され、ドルガギアの上半身が光に飲まれる。
シュウウウウウ……
ドルガギアの上半身は黒いススに覆われ、動きが止まる。
コーティスは廃ビルの壁から跳び立ち、ドルガギアの頭の上に立つ。
「ハッハッハ、ハハァァァ!!!最高濃度の怪奇粒子波死ぞ!存分に味わえま舌かな!?」
しかし、ドルガギアは動き出す。
「ギガァァァァァァァァ!!!」
「何っ!?」
慌ててコーティスはドルガギアの頭の上から退く。
ドルガギアは廃ビルの壁面の底の部分に手をかけ、廃ビルごと持ち上げようとする。
ズドォォォォォォ……!!!
廃ビルはドルガギアによって持ち上げられ、ビルの底の基礎の部分が丸見えになる。
「嘘で処!?八階建てのビル死よ!?」
「僕にこんな力が……!?」
ドルガギアは自身の底知れぬパワーに驚く。
「ドォガァァァァァァァァ!!!」
ドルガギアは廃ビルをバットのようにぶん回し、コーティスをぶっ飛ばそうとする。
「ひっ!」
コーティスはブリッジのような体勢をとり、かろうじて避ける。
「とっとっと!」
ドルガギアはあまりに重たいものを振ったせいで危うく転びそうになる。
「もう一発!」
「バケモノ死か!?アナタは!?」
ブゥゥゥン!!!
ドルガギアはもう一度ビルをぶん回す。
コーティスは身を屈めて避ける。
(とんでもないパワー……!そしてあまりに硬い体……!〼〼欲しい死ね……!)
コーティスはビルを振っている途中の無防備なドルガギアに襲いかかる。
(硬いといっても傷は付く!ならこれはどう死か!)
コーティスは丸鋸に紫色のオーラを纏わせ、そのままドルガギアの脇腹を切り付ける。
「ぐっ……!!!」
ドゴォォォォォン!!!
ドルガギアは痛みに怯み、片膝を付いた。ビルは轟音と共に横倒しになる。
今までとは比べ物にならないくらい深い傷だ。
片膝を付いたドルガギアにコーティスが再び襲いかかる。
ガシッ!
「!?」
ドルガギアは襲いかかってくるコーティスの右側の3本のアームをまとめて掴んだ。
ブチィ!!!
そのままドルガギアは3本のアームを引きちぎった。
「……ッ!!!」
コーティスは怯む。その隙を見逃さず、ドルガギアは残った左側の3本のアームを束ねて掴み、コーティスを地面に組み伏せる。
「もう終わりだ!Dr.コーティス!……これ以上は戦いを続けたくありません。……大人しく引き下がってくれませんか?」
「ククク……ハハハ……!!!ハハハーハハ、ハハァァァ!!!黒科学の意思よ!!!我と共にあれ!!!」
コーティスは不気味な笑い声を上げると、奥歯で何かを噛み砕いた。
突然、目の前が真っ黄色に染まった。
「な、なに!?」
突如、呼吸ができなくなった。
──それは、目眩がするほど大きなアヒルだった。
コーティスの左側の腕についていたアヒルが巨大化したのだ。……宇宙が膨張するのと同じ速度で。
「ハハハーハハ!!!見よ!!!圧制!!!」
0.0001秒と経たずにアヒルは地球を飲み込み、太陽系を飲み込み、天の川銀河を飲み込んだ。
光より速い速度で膨張するアヒルは、もう誰にも止められない。
ドルガギアは何もできず、ただ一瞬のうちに崩壊する世界を認識することさえできなかった。
やがて、膨張するアヒルは観測可能な宇宙をすべて飲み込んだ。外側の膨張する宇宙と膨張するアヒルの間の空間には何も残らなくなった。
────こうして宇宙は終焉を迎えた。
♦︎ ♦︎ ♦︎
「SaVe ThE wOrLd?」
→YeS No
「Ok. ReStArT tHe WoRlD.」
♦︎ ♦︎ ♦︎
「ハッ!」
ドルガギア──ロヴェは起き、辺りを見渡す。
ロヴェはスクラップ場の瓦礫の側にへたり込んでいた。辺りはすっかり夜になっている。
……体が機械竜ではなくなっている。元の人間の姿だ。
(今、何が起きた……!?)
「クククッ!!!ハハハッ!!!対策局の連中の仕業死か!相変わらず気味の悪い!しかし、今回はワタクシの勝ちみたい死ね!さぁ、機械竜!ワタクシと共に来な賽」
コーティスはロヴェに迫る。
「だ、誰か……!」
ロヴェは後退りし、助けを求めて周囲に目を走らせる。
……近くに、ドラゴンのおもちゃのようなモノが転がっていた。
紺色で高さ30㎝くらいの大きさのおもちゃだ。ドラゴンのような見た目だが、体の所々に歯車や機械の基盤のようなものが取り付けられている。
機械竜になった自分の側にこんなものが落ちているなんて、何か関係があるに違いない。
ロヴェはそう思い、ドラゴンのおもちゃを掴み上げる。
「ちょ、ちょっと!なんとかしてくれませんか!?あ、あなたが僕を変身させてくれた機械竜じゃないんですか!?は、早くしてくれないと僕死んじゃうかも……」
ロヴェは涙目になりながら、おもちゃを揺さぶって必死に呼びかける。
「無駄死よ!それは休止状態に入ってい〼。アナタ方の体はこのDr.コーティスが無駄無く調べ上げ、研究させてあげ〼からね」
ギュイイイイイン!!!
コーティスが丸鋸を振り上げる。
「ひっ」
ロヴェが目を瞑った瞬間、
ドォォォン!!!
大きく重い爆音が辺りを轟く。
「……え?」
ロヴェが目を開けると、そこには首だけが残ったコーティスの姿があった。
「あああああ!!!クソッ!!!連中がもうここまで……アナタ、命拾いしま舌ね!次遭った時は必ずワタクシの物にしてくれ〼!アディオス!!!」
突如、コーティスの頭からプロペラが生え、そのまま飛び去ってしまった。
「ふぅ、危なかったね。転校生クン」
「間に合うて、ほんまよかったわぁ。だいじやった?ロヴェくん」
巨大な月をバックにスクラップの山の上に二人の影が見えた。
一人はバズーカらしきものを構えており、もう一人は胸に両手を当てている。
「あ……春心さんと、照野平さん……!」
ロヴェはほっと安堵の涙を流して二人の名を呼んだ。
「急に世界救済装置が起動してしもてな、何事やろ思たらまさかこんなことになってたやなんて……遅うなってしもて、ほんまごめんね」
「ありがとう……ありがとうございます」
ロヴェは泣き崩れた。
「それで、転校生クン。秘密結社部に入る?入らない?答えは決まってるよねっ?」
つまり読者のみんな!
私だよ。「地の文」さ!
ずうっと君たちに話しかけたくてうずうずしていたんだ。なんせ第四の壁を壊せる作品は限られているからね。そもそも最近は小説を読む人口自体減少傾向にある……。
ま、どうでもいい!
他の私なんてどうでもいいのさ!
この作品なら好きなだけ君に話しかけられる!それだけでいい!
この作品では時々、私の意思が介入することがある。普段は真面目に淡々とストーリーを語っていくつもりだが、時に私がはっちゃけることもある。
あと、私は小説を作ることにおいては素人だ。適切ではない表現や分かりづらい表現をしてしまうことを許してほしい。コメントで指摘してくれれば改善しようと努力する。
まあ退屈だと感じたり、意味不明だと感じたら閉じてもらってかまわない。私は他の作品で君を閲覧するとするよ。話しかけれはしないのは残念だが。
長々とおしゃべりをしてしまってすまないね。つい、うれしくて……
まあ、ともかく!君を奇々怪々な世界へと誘おう。
さあ、始まりだ。
♦︎ ♦︎ ♦︎
2XXX年1月8日。彼は今日この日を一生忘れることはないだろう。
ここは、主人公の少年が新しく転校してくることになった中高一貫の学園──〝空夢学園〟。その学園内の、とある教室の前に少年は立っていた。教室の扉の上には「中2」と書かれた学級表示板が掛かっていた。
少年は教室の扉の前でドキドキする心を抑えて、深呼吸した。
教室の中では先生の話し声が聞こえる。
冬休み中に問題になった生徒の行動。新学期の過ごし方についての注意。来年度から中等部三年生になる者としての自覚を持てやら云々かんぬん。
そして、転校生が来るという話。
教室内で一気に上がる歓声。
途端に跳ねる心臓。
「じゃあ、転校生の方、入ってください」
……ついにこの時が来た。
(僕は変わるんだ……!)
震える手で教室のドアをそろりと開ける。
そのままロボットのようにギコガコとぎこちない動きで教卓の横へと歩き出す。
「おぉ~~!」
教室内の生徒たちから感動詞が漏れる。
少年は教卓の横に立つと生徒たちの方に向き直り、辿々しい口調で自己紹介を始める。
「さ、埼玉県立芽児位中学校から来ました、ロヴェ・セヴァギアーレです!よ、よろしくお願いします!」
少年〝ロヴェ〟は不安そうな顔で汗をかきながらそう発言した。
ロヴェは14歳の中学二年生だが幼い顔つきをしていた。身長も144cmと低く、可愛らしい顔も相まって11歳ほどに見える。
目は大きく、垂れ目。まつ毛はバサバサに長い。赤丸ほっぺに丸い顔の輪郭。髪は紺色でボサボサ。まるでホビーアニメの主人公のような髪型だ。そんな見た目をしていた。
私の主観だが、彼はとても愛らしい容姿をしていた。だが中には彼の容姿について、なよなよしくて目障りだとか、引っ込み思案で可愛らしい主人公が周りの女子たちからチヤホヤされるようなハーレム物ぽくて好きになれないとか、そのような意見も出るであろう。
ざわ……ざわ……
「え、かわいくない?」
「ちっこい奴よのぉ」
「気ぃ弱そうだな」
「虐めたい」
教室の方々から聞こえる生徒たちの興奮した声を聞いてロヴェは縮こまる。
「はーいみなさん静かに~。ロヴェくん、何か趣味とか特技とか紹介してくれる?」
先生がロヴェに微笑みながらそう提案する。ロヴェにとっては無茶振りだ。ただでさえ大勢の前で緊張しているのに。
「しゅ、趣味は、ボランティアに行ったり、ゲームしたりすることです……と、特技は……そ、そうですね……あ、マイクラのクモのモノマネできます!キシャ~!カシュカシュカシュ!」
……シーン……
(あ、死にたい)
「あ、ありがとうロヴェくん!ロヴェくんはこの学園について分からないことだらけなのでみなさんあまりがっつかずに優しく接してあげましょうね~。じゃあロヴェくんはあそこの春心さんの隣の席になります。座ってくださいね」
若干困り気味の先生が助け舟を出してくれたが、その配慮がロヴェにとっては苦痛だ。
「まぁ、うれしおす。ロヴェくん、これからよろしゅうね」
しかし、先生が指差した席の隣の、おっとりとした雰囲気の女の子の笑顔を見て、少しだけ救われたような気がした。
(もぉ~完全にやらかしたぁ……陰キャのくせにでしゃばるんじゃなかったぁ……)
朝のホームルームが終わった後、ロヴェは頭を抱えて悶々としていた。
そこにクラスメイトたちがぞろぞろと群がってきた。
「ロヴェくんてハーフなの!?ロヴェって名前日本では珍しいよね!?」
「埼玉のどこから来たの~?」
「正直、あのモノマネうまかったぜ!」
「この時期に転校って珍しいけど、親の転勤とかなの?」
「チ◯ポしゃぶっていーい?」
「お前何聞いてんだバカタレ」
「あ、えと、その……」
クラスメイトたちの矢継早の質問にロヴェはたじたじになっている。
「もぉ~、みなさんそんな一気にまくしたてんといたげて。ロヴェくん、困ってはるやないの」
ロヴェの隣の席に座っている紫髪ボブカットのまろ眉女子がはんなりとした声で興奮するクラスメイトたちを制止した。
「堪忍な、ロヴェくん。みんな転校生が来はったさかい、嬉しゅうて舞い上がってはるみたい。うちも嬉しいわ。あ、自己紹介がまだやったね。うちは春心 美乱。どうぞよろしゅうお頼申し上げます」
「あ、ありがとうございます。よ、よろしくお願いします」
美乱のおっとりとした声でロヴェは落ち着きを取り戻し、安堵した。
「ところでロヴェくん、マイクラのクモってあんな鳴き声しはるのん?」
「あ、それは忘れてください……」
ロヴェは黒歴史を掘りかえされ、赤面する。
「とぉ~~~~!!!」
と、そこにいきなりボーイッシュな女子がすべりこみでロヴェの机の上にダイブしてきた。
「!?」
「君、秘密結社部に興味は無いかい!?」
その女子はデカデカと「来たれ!秘密結社部!」という文字が印刷されたチラシをロヴェの机に叩きつける。
「もぉ~好樹くん、そんな誘い方しはったら、かえって嫌がられてしまうんと違うかなぁ。あと、ロヴェくんにエロいこと言わはったんあんたやろ?あとでちょっとお話ししよか」
「春心くん、今はそれどころじゃあないっ!とにかく、彼からコスモのパワーを感じるんだっ!ニューロサーキットに陰陽魚がジャイロ通信中なんだっ!」
「つまりビビッときたいうことやね」
美乱はやれやれといった感じで返事をする。
(な、なんだなんだ!?)
ロヴェは急に割り込んで来た女子と美乱のやりとりを見て困惑した。
「ボクの名前は照野平 好樹!この学園で一番ミステリアスでイントレスティングな部活〝秘密結社部〟の部長だ!君のアブノーマルなアトモスフィアは秘密結社部にふさわしい!どうだい!?一緒に世界の秘密を解き明かさないかい!?」
ボーイッシュな女子、好樹はロヴェに顔を近づけ、半ば強引に勧誘する。
(ち、近い……)
女子とあまり触れ合ったことのないチェリーボーイのロヴェはドギマギして顔を赤くする。
「おい、ロヴェ。ドギマギしてるとこ悪いが、そいつ男だぞ」
ロヴェの机に群がっていたうちの一人のリーゼントの男子生徒がそう言った。
「へ?でも女子の制服着て……」
「そいつはボーイッシュな女子に見せかけた、女装してる男ってことだ。おまけにゲイの変態だから気をつけな」
「ゲイの変態とは失敬な!ロヴェくん悪いようにはしない。うちに入部したら、ボクがあんなことやこんなことを手取り足取り骨取り悟り教えてあげよう!どうかな?」
好樹はさらにロヴェに顔を近づけ、そう囁いた。もはやキスしそうな距離だ。
(例え男でも、女の子みたいな見た目の可愛い子にここまで近づけられたら誰でもドギマギするって!)
「もぉ、好樹くん、そのへんにしとき!……ちなみにうちも秘密結社部入ってねんで」
美乱は好樹の顔を手で押し戻しながらそう言った。
「え?入ってるんですか!?」
「せやでぇ。名前と部長のせいで変な部活やと思われがちやけど、わりかし楽しいしっかりした部活やし。来てくれはるんやったら、歓迎させてもらうわぁ」
美乱は笑顔でそう答えた。
♦︎ ♦︎ ♦︎
(秘密結社部か……結構面白そうかも。美孤さんも入ってるらしいし……)
時は下校時刻。ロヴェは夕日の中、秘密結社部の勧誘ポスターを手に帰宅していた。
(明日行ってみようかな……)
ロヴェは新しい学校で始まる楽しそうな日常に心ときめき、はやる気持ちを抑えて早足で歩いていた。
ドンッ!
ロヴェはポスターばかりに目がいき、前に人がいることに気が付かずぶつかった。
「あ、す、すみませ……ひっ!」
ロヴェは顔を上げると、そこにいた人物を認知し、悲鳴を上げた。
「見つけたぜ、ガイジ。転校した程度で逃げられると思ってんのかよ」
それは、転校の原因になった少年だった。周りに待ってましたとばかりにその少年の仲間がワラワラと集まってくる。
そう。ロヴェはいじめが原因で転校したのだ。
実はロヴェは、とある特性──言い方を変えれば障がいを大きく3つ持っていた。
不幸なニュースを見ただけで泣いてしまう、負の感情や出来事に敏感な〝HSP〟
他人の感情をダイレクトに感じてしまう〝擬似エンパス〟。
過去のトラウマが原因で身についてしまった、自己嫌悪に陥ってしまうような幻覚や幻聴などの症状が出る〝統合失調症〟。
これらの特性に加え、パニックを起こすと右目が眼球上転してしまうという障がいも持っていた。
ロヴェは障がい持ちということで、前の芽児位中学校では特別支援学級で授業を受けないかと促されていたが、「気をつければ自分は大丈夫」「普通のクラスでみんなと授業を受けたい」というロヴェの希望から特別支援学級に入らずに学校に通い続けた。
ロヴェくん。「普通のクラス」という表現は良くないよ。特別支援学級の子たちにとっては特別支援学級こそが「普通のクラス」なのだから。
話を戻すと、芽児位中学校はなかなか治安の悪い学校で、生徒の素行が良くないことで有名だった。
元々、引っ込み思案なロヴェは、お遊びでイジられる対象になった。しかし、そこでイジられて言葉が吃ったり、眼球上転したり、すぐに泣いてしまったりしたせいで障がい者だということがバレて、異端扱いされ、本格的ないじめの対象になった。
ロヴェは毎日のいじめに耐えきれず、中学二年生の二学期が終わったら、転校するということになったのだ。
「よくもまあ逃げてくれたな、目ん玉ひん剥き野郎。探すのに苦労したわ。手こずらせやがって」
「あ、あ、ご、ごめんなさい……」
ロヴェは動悸が激しくなり、呼吸しづらそうにハァハァと喘ぐ。目には涙が溜まり、身体中汗びっしりになる。怯えて後退りするロヴェはパニック発作で右目が眼球上転していた。
「ギャハハハハ!でたよその目!相変わらず気色悪りぃなぁ!その目ぇ見るとぶち殺したくなるんだよなぁ!」
バコッ!
「うっ!」
ロヴェの顔面にパンチが入る。まぶたが紫色に腫れ上がる。
「ここじゃあ人目につく。あそこのスクラップ場に行こうぜ」
いじめグループはロヴェを町外れにあるスクラップ場へと引きずって移動する。
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」
ロヴェは情けなく謝ることしかできなかった。
ガツンッ!バコッ!
「よーし!これで25発目だ!」
スクラップ場に引きずられて来たロヴェはそこで集団リンチに遭っていた。
顔や身体中にアザや腫れができており、ところどころ出血していた。
「そろそろボコすのも飽きてきたな。おい、隠れキリシタン。これ、な~んだ!」
ロヴェが顔を上げると、いじめの首謀者は手に聖書を持っていた。
(な、無くしたと思ってたら……!)
「……ご、ごめんなざい……返じてぐだざい……ぞれはお母ざんの、形見なんでず……」
ロヴェは涙を流して嗚咽を漏らしながらそう言った。
……その聖書は、亡くなったロヴェの母が、唯一ロヴェに残してくれたものだった。母の形見の聖書を学校に持ってきていたのも、ロヴェが「隠れキリシタン」と言われ、いじめられた原因だった。
「ギャハハハハ!返して欲しいか?欲しいよな!な!……返すわけねぇだろーがバカが!ギャハハハハ!」
いじめの集団は一斉に嘲笑う。
「ゴミはゴミ置き場にふさわしいな!ほーら!返してほしけりゃ取ってこい!」
いじめの首謀者は聖書をスクラップの山に向かってぶん投げた。
「あっ!」
ヒラヒラとページが捲られながら聖書はドサッとスクラップの山の裏側に落ちた。
ロヴェは痛む体に鞭打って、四つん這いになりながら聖書の元へと向かう。
「ハハハハハ!マジでキショいな!ゴキブリみたいだな!ゴキブリキリシタンだ!」
ロヴェは嘲笑う集団の声を必死に聴こえないようにしてスクラップの山を登る。
(惨めだ……死にたい……)
『お前が……!』
(なんで、なんで僕が……)
『お前がやったんだろ!』
(ああ……ごめんなさい……ごめんなさい……)
『お前のせいで……!お前が!』
(ごめんなさい……僕は許されない……)
『お前がマーシィを殺したんだ!!!』
「あああああああああああああああああ!!!」
ロヴェは聞こえてくる幻聴に耐えきれなくなって叫んだ。手を強く噛み、血が滴る。
だが、その時、
「GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
ロヴェの叫びを掻き消すように、辺りをつんざく電子音のような轟音が響いた。
「な、なんだ!?」
ロヴェも、いじめの集団も、突然の轟音に怯む。
いきなり、スクラップの山が崩れた。
そのスクラップの山の中から現れたのは、体がスクラップゴミでできた恐竜のような見た目のロボットだった。
「な、なんだあれ!?」
「ウツワ……ウツワがヒツヨウ……!ニンゲン!ワルくオモうなよ」
スクラップ恐竜は集団に向かって突進し始める。
「う、うわあああああ!」
「こっちに来るぞ!逃げろ!」
スクラップ恐竜が、聖書をぶん投げたいじめの首謀者に噛みつこうとした時、
トンッ
首謀者の体を突き飛ばして、かわりにロヴェがスクラップ恐竜に噛みつかれた。
スクラップ恐竜が集団に突進し始めたと同時に、ロヴェはいち早く集団の元へと戻っていたのだ。
「うわあああああ!」
首謀者はロヴェに目もくれず、一目散に逃げ去った。
「う、痛、痛いぃぃぃ……」
噛みつかれたロヴェは悲痛な声を漏らす。
「……おマエ、ナゼあいつをカバった?ミたトコロ、おマエはあいつらにいじめられていただろう」
スクラップ恐竜はロヴェに噛みついたまま、電子音のような声でロヴェに聞いた。
「わ、分からないです……り、理由をつけるとするなら、僕は生きる価値がないから、あの人たちの身代わりになった方が良いと思ったんです。そうすれば、クズな僕の、最後に誰かを救ったという善行だけは残るかもしれない……もしかしたら天国に行けるかもしれない……そ、そう思ったんです」
「……フン。アクニンをタスけたヤツが、しかもミズカらシにたいとオモってシんだヤツがテンゴクにイけるかはハナハだギモンだがな。それよりソナえな。オイラをネラうヤツらがやってクる」
「……え?」
ドォン!!!
凄まじい音と共に何かが空から降ってきた。スクラップゴミが飛び、砂埃が辺りを舞う。
「キたな……!」
「ハハハーハハ、ハハァー!!!レディースエンドジェントルメン!ボイザンガールズ!ワタクシ死!人類最高の黒科学者!Dr.コーティス死!」
砂埃が晴れた。
そこにいたのは奇妙な男だった。
左目の上にもう一つ目があったのだ。小さな鼻掛けメガネを掛けており、瞳は赤く、瞳の中には三重丸が連なっている。鼻筋は高く、髪はパリッと撫でつけられており、不気味ににんまりと笑っている。タキシードを着ており、服装は執事のようだ。
さらに奇妙なのは男の背中から金属のアームが6本生えていたことだ。右側の3本のアームにそれぞれドリル、ガトリング銃、巨大な金属の手が取り付けられており、左側の3本のアームにそれぞれ、丸鋸、アヒル、ドクロマークの付いた円錐台の筒が取り付けられている。
(な、何?次から次へとなんなの!?)
ロヴェはこの短期間で起こったあり得ない出来事に混乱する。
「やぁ~っと見つけま舌よ機械竜!こんなゴミ溜めでコソコソして板とは……。さぁ、大人しくこの偉大なる黒科学者Dr.コーティスの手へと渡りな賽」
「ハッ!もうコソコソしてるオイラじゃナいぜ!……イくぞ、へなちょこボウズ。ヘンシンだ」
「へ、変身?わっ」
噛みつかれていたロヴェは、スクラップ恐竜に飲み込まれ喉の奥へと消える。
その瞬間、スクラップ恐竜の体が紺碧の光に包まれる。
恐竜の顔の後ろから新たな顔が現れ、そのまま既存の顔を丸ごと噛みついて飲み込み、新しい顔になる。前よりメタリックで凛々しい顔付きのドラゴンだ。腕や足、体も変形し、よりスマートにメタリックな光沢を放つ巨大な手や足になる。骨組みが連なるような機械の尻尾が生え、肩からはマントが垂れる。両肩に巨大なボルトがはめられ、マントがボルトによって肩に固定される。
頭からはロヴェのようなボサボサの髪型の紺碧な髪が生え、顎には左右にネジが付き、瞳はロヴェのものとそっくりだ。
「な、何!?この体!?ぼ、僕どうなってるの?」
変身が終わり、紺碧の輝きが消えたそのドラゴンは、ロヴェの声を発した。ただし、その声は機械音だ。
「なるほぉど!従来の六源竜とは違って特殊な形態変化を行うの死か。実に研究しがいがあり〼」
(おい、へなちょこボウズ、キけ。これからヤツとタタカう。ヘマこくなよ)
ドラゴンとなったロヴェの脳内にさきほどのスクラップ恐竜の電子音が聞こえる。
「え、戦う!?急に!?なんで!?」
(アトでセツメイする。イマはナノれ!おマエのナは、〝機械竜ドルガギア〟だ!!!)
「機械竜……ドルガギア……」
ロヴェ──いやドルガギアは機械のドラゴンとなった自分の体をまじまじと見つめる。
「よそ見は厳禁死よ」
「へ?」
ドガァァァ!!!
ドルガギアはコーティスの3本の右手のうち真ん中にある金属手に殴られ、ぶっ飛ばされた。
スクラップの山に突っ込み、ガラガラとスクラップが崩れて埋もれてしまう。
(おい、しっかりしろ!へなちょこボウズ!おマエは機械竜なんだ!こんなモノタイしたコトナい!さっさとオきろ!ツギのコウゲキがクるぞ!)
「はっ!」
ドルガギアはスクラップを撒き散らして起き上がる。
前を見るとコーティスが丸鋸を唸らせながら襲いかかってくる。
ガキッ!!!
ドルガギアは大きな機械竜の左腕を掲げ、丸鋸を受ける。
ギィィィィィィン!!!
「このままその腕切断してあげま生!」
コーティスは力を入れ、丸鋸をドルガギアの腕に押し込む。
「ギガァァァァァ!!!」
ドルガギアは空いている右手でコーティスの脇腹を思い切り殴る。
丸鋸は外され、コーティスは吹っ飛ばされる。
「い、痛い……」
ロヴェは丸鋸で少しだけ削られた左腕を見る。シュウウ……と煙が上がっている傷跡からは紺色のネバネバとした血のようなものが湧き出ている。痛いが、普通の人間の腕ならもっと痛いはずの傷の深さだ。機械竜に変身したことによって多少痛覚は軽減されているらしい。
「フゥン、とてつもないパワー死ね……。味見はこれくらいにしてそろそろ本気で行き〼よ!」
「ほ、本気じゃなかったの!?」
「当たり前で生。本気だったら丸鋸で切りつけている間に他のアームで攻撃してい〼。ワタクシの最高傑作!〝黒の六機腕〟は6本それぞれが強大な力を持ち〼!それを変幻自在に操れるなら、戦術は無限大!文字通り、手数の多さがワタクシの取り柄なの死よ!」
コーティスはそう言い放ち、6本のアームをフル稼働させて襲いかかる。
手が掴み、丸鋸が回転し、ドリルが穿ち、ガトリング銃が発射し、ドクロの筒が毒ガスを放ち、アヒルが噛み付く。
ドルガギアの体はズタズタになる……と思いきや、決め手に欠ける攻撃力といったところで、表面的な傷が多く付いただけだった。
「うわあああああ!!!」
しかし、ドルガギアは深い傷を負ってないのにも関わらず、両腕を顔の前にクロスし、顔を俯かせる。ドルガギアの中身のロヴェが戦いに慣れていないせいで少しの傷でもビクビクしてしまうのだった。
「ふぅむ、硬い死ね。しかし、毒ガスは効くはず死」
(おい、へなちょこボウズ!このくらいのキズでヒルむな!それにイマのおマエにドクガスはキかない!キカイにキかないモノは機械竜にもキかないんだ!おマエはとんでもないパワーをヒめた機械竜なんだ!ユウキをダしてアイツにイッパツカマしてやれ!)
(わ、わかった……!)
ドルガギアはモクモクと立ち昇る黄色の毒ガスの中で決意を固めるように拳を握る。
(もう、弱い自分にはなりたくない……僕は、強くなるんだ!!!)
「ギガァァァァァ!!!」
ドルガギアは雄叫びを上げ、コーティスに突進する。
「バカなっ……!!!」
顔面を掴まれたコーティスはそのままスクラップ場の隣に建っている廃ビルの壁面に激突される。
壁面にめり込んだコーティスはすかさずドルガギアに向かってガトリング銃を放つが、大したダメージにはならず、ドルガギアにさらに顔面へのパンチを追撃されて、顔が凹んでしまう。
「くっ……!この髪型をセットするのに1時間は掛かるん死からね!!!許しま殲!!!」
コーティスは手をかざし、手の平にある紫色のランプのようなものになにやらオーラを集める。
「なに!?」
ドルガギアが危険を感じたのも束の間、手から極太のレーザーのようなものが発射され、ドルガギアの上半身が光に飲まれる。
シュウウウウウ……
ドルガギアの上半身は黒いススに覆われ、動きが止まる。
コーティスは廃ビルの壁から跳び立ち、ドルガギアの頭の上に立つ。
「ハッハッハ、ハハァァァ!!!最高濃度の怪奇粒子波死ぞ!存分に味わえま舌かな!?」
しかし、ドルガギアは動き出す。
「ギガァァァァァァァァ!!!」
「何っ!?」
慌ててコーティスはドルガギアの頭の上から退く。
ドルガギアは廃ビルの壁面の底の部分に手をかけ、廃ビルごと持ち上げようとする。
ズドォォォォォォ……!!!
廃ビルはドルガギアによって持ち上げられ、ビルの底の基礎の部分が丸見えになる。
「嘘で処!?八階建てのビル死よ!?」
「僕にこんな力が……!?」
ドルガギアは自身の底知れぬパワーに驚く。
「ドォガァァァァァァァァ!!!」
ドルガギアは廃ビルをバットのようにぶん回し、コーティスをぶっ飛ばそうとする。
「ひっ!」
コーティスはブリッジのような体勢をとり、かろうじて避ける。
「とっとっと!」
ドルガギアはあまりに重たいものを振ったせいで危うく転びそうになる。
「もう一発!」
「バケモノ死か!?アナタは!?」
ブゥゥゥン!!!
ドルガギアはもう一度ビルをぶん回す。
コーティスは身を屈めて避ける。
(とんでもないパワー……!そしてあまりに硬い体……!〼〼欲しい死ね……!)
コーティスはビルを振っている途中の無防備なドルガギアに襲いかかる。
(硬いといっても傷は付く!ならこれはどう死か!)
コーティスは丸鋸に紫色のオーラを纏わせ、そのままドルガギアの脇腹を切り付ける。
「ぐっ……!!!」
ドゴォォォォォン!!!
ドルガギアは痛みに怯み、片膝を付いた。ビルは轟音と共に横倒しになる。
今までとは比べ物にならないくらい深い傷だ。
片膝を付いたドルガギアにコーティスが再び襲いかかる。
ガシッ!
「!?」
ドルガギアは襲いかかってくるコーティスの右側の3本のアームをまとめて掴んだ。
ブチィ!!!
そのままドルガギアは3本のアームを引きちぎった。
「……ッ!!!」
コーティスは怯む。その隙を見逃さず、ドルガギアは残った左側の3本のアームを束ねて掴み、コーティスを地面に組み伏せる。
「もう終わりだ!Dr.コーティス!……これ以上は戦いを続けたくありません。……大人しく引き下がってくれませんか?」
「ククク……ハハハ……!!!ハハハーハハ、ハハァァァ!!!黒科学の意思よ!!!我と共にあれ!!!」
コーティスは不気味な笑い声を上げると、奥歯で何かを噛み砕いた。
突然、目の前が真っ黄色に染まった。
「な、なに!?」
突如、呼吸ができなくなった。
──それは、目眩がするほど大きなアヒルだった。
コーティスの左側の腕についていたアヒルが巨大化したのだ。……宇宙が膨張するのと同じ速度で。
「ハハハーハハ!!!見よ!!!圧制!!!」
0.0001秒と経たずにアヒルは地球を飲み込み、太陽系を飲み込み、天の川銀河を飲み込んだ。
光より速い速度で膨張するアヒルは、もう誰にも止められない。
ドルガギアは何もできず、ただ一瞬のうちに崩壊する世界を認識することさえできなかった。
やがて、膨張するアヒルは観測可能な宇宙をすべて飲み込んだ。外側の膨張する宇宙と膨張するアヒルの間の空間には何も残らなくなった。
────こうして宇宙は終焉を迎えた。
♦︎ ♦︎ ♦︎
「SaVe ThE wOrLd?」
→YeS No
「Ok. ReStArT tHe WoRlD.」
♦︎ ♦︎ ♦︎
「ハッ!」
ドルガギア──ロヴェは起き、辺りを見渡す。
ロヴェはスクラップ場の瓦礫の側にへたり込んでいた。辺りはすっかり夜になっている。
……体が機械竜ではなくなっている。元の人間の姿だ。
(今、何が起きた……!?)
「クククッ!!!ハハハッ!!!対策局の連中の仕業死か!相変わらず気味の悪い!しかし、今回はワタクシの勝ちみたい死ね!さぁ、機械竜!ワタクシと共に来な賽」
コーティスはロヴェに迫る。
「だ、誰か……!」
ロヴェは後退りし、助けを求めて周囲に目を走らせる。
……近くに、ドラゴンのおもちゃのようなモノが転がっていた。
紺色で高さ30㎝くらいの大きさのおもちゃだ。ドラゴンのような見た目だが、体の所々に歯車や機械の基盤のようなものが取り付けられている。
機械竜になった自分の側にこんなものが落ちているなんて、何か関係があるに違いない。
ロヴェはそう思い、ドラゴンのおもちゃを掴み上げる。
「ちょ、ちょっと!なんとかしてくれませんか!?あ、あなたが僕を変身させてくれた機械竜じゃないんですか!?は、早くしてくれないと僕死んじゃうかも……」
ロヴェは涙目になりながら、おもちゃを揺さぶって必死に呼びかける。
「無駄死よ!それは休止状態に入ってい〼。アナタ方の体はこのDr.コーティスが無駄無く調べ上げ、研究させてあげ〼からね」
ギュイイイイイン!!!
コーティスが丸鋸を振り上げる。
「ひっ」
ロヴェが目を瞑った瞬間、
ドォォォン!!!
大きく重い爆音が辺りを轟く。
「……え?」
ロヴェが目を開けると、そこには首だけが残ったコーティスの姿があった。
「あああああ!!!クソッ!!!連中がもうここまで……アナタ、命拾いしま舌ね!次遭った時は必ずワタクシの物にしてくれ〼!アディオス!!!」
突如、コーティスの頭からプロペラが生え、そのまま飛び去ってしまった。
「ふぅ、危なかったね。転校生クン」
「間に合うて、ほんまよかったわぁ。だいじやった?ロヴェくん」
巨大な月をバックにスクラップの山の上に二人の影が見えた。
一人はバズーカらしきものを構えており、もう一人は胸に両手を当てている。
「あ……春心さんと、照野平さん……!」
ロヴェはほっと安堵の涙を流して二人の名を呼んだ。
「急に世界救済装置が起動してしもてな、何事やろ思たらまさかこんなことになってたやなんて……遅うなってしもて、ほんまごめんね」
「ありがとう……ありがとうございます」
ロヴェは泣き崩れた。
「それで、転校生クン。秘密結社部に入る?入らない?答えは決まってるよねっ?」
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※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
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