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学園生活は7年間
アクア
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目を開けたらそこは大きな庭園だった。
目の前には噴水と薔薇のアーチが広がり、俺を楽しませてくれる。
―――じゃ、ねーよ。
ここはどこだ。
俺は気づけば部屋着のままで大きな庭の中にいた。
そうだと分かったのは、ここが四方を建物で囲まれていたから。
いや待て、マジでなんでだ。今日はゲームして、くそなエンディング見させられて、でも続けるを押して…。
やばい。その後の記憶が全くない。
もしかしたら、これは夢の中か?
しかし、差すような風の冷たさに、肌がひりりと痛み、ここが現実なのだと知る。
「ここは…ごこだ?」
すると、少し後に少年のような低すぎず高すぎない声が聞こえてきた。
「こんばんは。異世界からの来訪者さん。ごめんね、急に呼び出して。」
後ろをばっと振り返る。すると、スチルでよく見た「主人公」にそっくりな人物が立っていた。
空色の髪に同じ色の瞳を持った青年。「アクア」に。
「うん、びっくりしてるところ悪いけど、手短に話すね。君、「ゲーム」で「続ける」を押してくれただろう?だから呼び寄せたんだ。そっちの方がって取り早いってね。」
「!!」
「俺には前世の記憶がある。名前は「梅枝碧斗」―――転生者ってやつだよ。」
「転…生者?」
「ああ、それも多分君と同じ時代を生きていると思う。…交通事故で死んじゃったけどね。」
「そ…それはお悔やみ申し上げます。」
「まあ、そんなことはどうだっていいんだ。問題はそれをかわいそうに思った神様が、俺を幸せにしようとこの世界に転生させてくれたんだけど、その時俺に大きな力を持たせすぎたせいでその反作用がハルディオに起きてしまった。…俺が幸せであればあるほど、ハルディオは不幸せになる。そして、俺の起こした罪も、彼が賄ってしまう状態になってしまった。」
「罪?」
「…自分が、幸せを選ばないこと。」
彼…アクアは目を伏せ、俺にすべてを打ち明けてくれた。
俺がゲームで追体験したことは、全て本当に起こったこと。それを時間を巻き戻してして何回もやり直しをしたこと。その中で、修道士になった時、初めて神様に再会し、今迄の謎を教えてもらったこと。何故ハルディオに自分のすべての不幸が降り注ぐかということ…。
「ハルディオはな、俺に一番最初に優しくしてくれたんだ。何の悪意も、欲もなく。ただ、純粋に…。だけどそれがいけなかった。欲を持たない人間は隙だらけだ。人間はある程度の欲を持つからこそ自分を守れる。それなのに…ハルディオは…ハルは…俺を親友のように接してくれていた。ハルから聞いたことがある。公爵家の人間は領民を愛し、守り、慈しむために存在している。決して余計な欲など持ってはいけないって。俺はその時感心したけど…今思えば、あのバカ。自分をずっと殺して生きてきたってことじゃねーか。呪いにも付け入られるはずだよ。」
そう、自嘲気味に笑うアクアの目には涙が溜まっていた。
「その呪いを解く方法はないのか?」
「ハルに欲を持たせること…。とにかく何でもいい。手あたり次第欲を持たせてやりたい。神様にはそこまでしか教えてもらっていないから。ハル自身が強く願うこと。それがハルが自分を守れる唯一の方法なんだってさ。…だから、あんた手伝ってくれ。」
アクアから頭を下げられる。
「あのゲームは一つの呪文だったんだよ。この世界にあんたみたいな人を招き入れるための…。けど、俺が『幸せ』ってやつを手に入れちまうから、ほとんどのユーザーはそこでゲーム終わらせたんだろうな。…来てくれたのはあんたが初めてだ。…お願いだ。ここまで来れたってことは、ハルのことを心配してくれたんだろう?ちゃんと元の世界に帰すことを約束するから、俺を手伝ってくれ!!」
俺は、一もにもなくうなずいた。
「もちろんだ。ハルディオたんは俺が責任もって幸せまでナビゲートする!!」
瓶底眼鏡をくいっとかけなおし、俺は意気揚々と叫んだ。
「え…?ハルディオ「たん」?」
アクアの視線が突き刺さる。
「なあ、もしかしてお前って…オタク?」
アクアはそれはもう綺麗にドンびいたようであった。
「なっ…!それがなんだ!!オタクに人は救えぬとでも!!?」
夜が明けかけた早朝―――王立魔法学園の中庭に一人のオタクの声がこだました。
目の前には噴水と薔薇のアーチが広がり、俺を楽しませてくれる。
―――じゃ、ねーよ。
ここはどこだ。
俺は気づけば部屋着のままで大きな庭の中にいた。
そうだと分かったのは、ここが四方を建物で囲まれていたから。
いや待て、マジでなんでだ。今日はゲームして、くそなエンディング見させられて、でも続けるを押して…。
やばい。その後の記憶が全くない。
もしかしたら、これは夢の中か?
しかし、差すような風の冷たさに、肌がひりりと痛み、ここが現実なのだと知る。
「ここは…ごこだ?」
すると、少し後に少年のような低すぎず高すぎない声が聞こえてきた。
「こんばんは。異世界からの来訪者さん。ごめんね、急に呼び出して。」
後ろをばっと振り返る。すると、スチルでよく見た「主人公」にそっくりな人物が立っていた。
空色の髪に同じ色の瞳を持った青年。「アクア」に。
「うん、びっくりしてるところ悪いけど、手短に話すね。君、「ゲーム」で「続ける」を押してくれただろう?だから呼び寄せたんだ。そっちの方がって取り早いってね。」
「!!」
「俺には前世の記憶がある。名前は「梅枝碧斗」―――転生者ってやつだよ。」
「転…生者?」
「ああ、それも多分君と同じ時代を生きていると思う。…交通事故で死んじゃったけどね。」
「そ…それはお悔やみ申し上げます。」
「まあ、そんなことはどうだっていいんだ。問題はそれをかわいそうに思った神様が、俺を幸せにしようとこの世界に転生させてくれたんだけど、その時俺に大きな力を持たせすぎたせいでその反作用がハルディオに起きてしまった。…俺が幸せであればあるほど、ハルディオは不幸せになる。そして、俺の起こした罪も、彼が賄ってしまう状態になってしまった。」
「罪?」
「…自分が、幸せを選ばないこと。」
彼…アクアは目を伏せ、俺にすべてを打ち明けてくれた。
俺がゲームで追体験したことは、全て本当に起こったこと。それを時間を巻き戻してして何回もやり直しをしたこと。その中で、修道士になった時、初めて神様に再会し、今迄の謎を教えてもらったこと。何故ハルディオに自分のすべての不幸が降り注ぐかということ…。
「ハルディオはな、俺に一番最初に優しくしてくれたんだ。何の悪意も、欲もなく。ただ、純粋に…。だけどそれがいけなかった。欲を持たない人間は隙だらけだ。人間はある程度の欲を持つからこそ自分を守れる。それなのに…ハルディオは…ハルは…俺を親友のように接してくれていた。ハルから聞いたことがある。公爵家の人間は領民を愛し、守り、慈しむために存在している。決して余計な欲など持ってはいけないって。俺はその時感心したけど…今思えば、あのバカ。自分をずっと殺して生きてきたってことじゃねーか。呪いにも付け入られるはずだよ。」
そう、自嘲気味に笑うアクアの目には涙が溜まっていた。
「その呪いを解く方法はないのか?」
「ハルに欲を持たせること…。とにかく何でもいい。手あたり次第欲を持たせてやりたい。神様にはそこまでしか教えてもらっていないから。ハル自身が強く願うこと。それがハルが自分を守れる唯一の方法なんだってさ。…だから、あんた手伝ってくれ。」
アクアから頭を下げられる。
「あのゲームは一つの呪文だったんだよ。この世界にあんたみたいな人を招き入れるための…。けど、俺が『幸せ』ってやつを手に入れちまうから、ほとんどのユーザーはそこでゲーム終わらせたんだろうな。…来てくれたのはあんたが初めてだ。…お願いだ。ここまで来れたってことは、ハルのことを心配してくれたんだろう?ちゃんと元の世界に帰すことを約束するから、俺を手伝ってくれ!!」
俺は、一もにもなくうなずいた。
「もちろんだ。ハルディオたんは俺が責任もって幸せまでナビゲートする!!」
瓶底眼鏡をくいっとかけなおし、俺は意気揚々と叫んだ。
「え…?ハルディオ「たん」?」
アクアの視線が突き刺さる。
「なあ、もしかしてお前って…オタク?」
アクアはそれはもう綺麗にドンびいたようであった。
「なっ…!それがなんだ!!オタクに人は救えぬとでも!!?」
夜が明けかけた早朝―――王立魔法学園の中庭に一人のオタクの声がこだました。
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