どんなルートでも必ずざまぁされる悪役令息(?)を幸せなルートに導きたいプレイヤーの俺の話

さひこ

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学園生活は7年間

君に出逢う

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「俺を、この屋敷で雇っていただけませんか?」

「お父さま、只今戻りました。」

俺が願い出たそのすぐ後に、男にしては高い声が聞こえた。
俺はすぐにその声の主の方へと顔を向ける。

すると、そこには…。
サラサラの金の髪、エメラルドグリーンの潤んだ瞳、頬の色は薔薇色で、唇はかぶりつきたくなるほどプルプルとしたその人。俺のハルディオたんがそこに立っていた。

「…お父さま、その方は?」
ハルディオたんは俺の方を向き、じっと見つめてくる。
俺もハルディオたんの方を向いて、目が離せなかった。―――かわいい…。
もちろん、画面の中のハルディオたんはSSR級に可愛かった。だが、目の前のハルディオたんはそれすら凌駕するほどの可愛さだ。

「あー…、彼は、この家の客人だよ。彼と少し話がある。呼び出しておいて悪いが、部屋で休んでいなさい。」
トバルトは、ふんわりと笑いながらハルディオたんに部屋で休むよう勧めた。
…ん?なんか思ってたんと違うな。彼の言葉にはハルディオたんを気遣う優しさがある。慌ててトバルトを見ると、その瞳には息子を思いやる優しさが込められていた。

「はい、お父さま。」
ハルディオたんの声からは、少し残念そうな惜しむような響きがあった。



パタンと扉が閉まる。
俺はそれを見届けてから、改めてトバルト…メルリージュ公爵の方へと向き直した。

「メルリージュ公爵様。先ほども言いましたが、俺をこの屋敷においてやっていただけませんか?…この通り、俺は浮浪者です。信用など何もない俺が、いきなり公爵家に仕えることは出来ないと思っておりますが、行く当てもなく…。厚かましいとは思っておりますが、どうか…。」

「あー、待ちたまえ。君を不審者だとは思っていないよ。目を見ていれば分かる。君は実に誠実そうだ。」
その時、メルリージュ公爵の目がこちらを審査するように見た。先ほどまでの柔らかな雰囲気とは違い、…鋭い目だった。

「なので、その話は考えてもいい。だけどね。その前に我が家で働くにはそれなりの経験を積んでもらわねばならない。…君、年齢は?」
「…今年で18になります。」
本当は1つ上だが、ハルディオたんを守るためには、あの卒業パーティに出席しなければならない。同じ学年でいる必要がある。
「…なるほど。うちの息子と同じだね。丁度いい。」

公爵は、俺に向かってニヤリと笑い、こちらが狙っていた通り以上の提案をしてくれた。

「まずは、私の息子に仕えなさい。22歳まで学園に通い、社会常識を学ぶ権利がある。息子も同じように学園に通っていてね。あと5年は学園で己の研鑽をせねばならない。要はその間の身の回りの手伝いを君に行ってほしんだ。」
「…え?!よろしいのですか?」
俺は驚いた。普通、こんな身元不明の人物に自分の息子を任せるのだろうかと。
「君がいいんだ。どうやら、息子も君が気になっているようだしね。」
ニヤニヤと俺に向かって公爵は笑う。俺はさすがに意図が分からず頭の中を?マークが飛んでいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お父さま、ハルディオです。」
控えめなノックの後、ハルディオたんのかわいい声が聞こえた。
「ああ、入りなさい。」
公爵は柔らかな声でハルディオたんを招き入れた。

「失礼します。…!!」
目を見開いて彼は俺の方を見る。まさか俺がまだいるとは思ってもみなかったのだろう。
「ハルディオ、掛けなさい。」
そう言って、公爵は俺の隣の椅子を指した。
俺は慌てて立とうとする。すると静止の声が上がった。
「トウゴ。君も座っていなさい。」
名前は先ほど、ハルディオたんが来る前に公爵に教えた。
俺は浮かした腰を椅子に下ろす。

「ハルディオ。お前に話したかったことと内容が変わってしまったんだが…彼はトウゴ・ユーキ。今年度から学園に入ってもらい、お前の世話をしてくれることになった。挨拶しなさい。」
「え…。」
公爵からの突然の言いつけに戸惑ったのか、ハルディオたんは一瞬固まり、俺の方を見た。
エメラルドグリーンの瞳が、とろりと蕩けるようにこちらに向けられる。
なんだこのかわゆさ!!俺の理性が壊れる!!

ハルディオたんは緊張しているのか、耳を赤く染めながら俺へ自己紹介してくれた。

「はじめまして、ハルディオ・メルリージュと言います。よろしくお願いします。」

ああ、そのかわゆさ天元突破。俺も顔に熱がこもるのを感じつつ自己紹介をした。
「初めまして。ハルディオた…様。俺はトウゴ・ユーキです。よろしくお願いいたします。あなた様のお世話係となりました。これからは俺に何でもお申し付けください。」

あぶねえ。思わずハルディオたん言いかけた。
これからは気を付けないとな。

冷や汗をかきながら、にこりと笑うと、ハルディオたんは顔が真っ赤に染まった。…緊張しやすいのかな?
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