どんなルートでも必ずざまぁされる悪役令息(?)を幸せなルートに導きたいプレイヤーの俺の話

さひこ

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学園生活は7年間

寮へ

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メルリージュ邸での生活が、1週間過ぎ、2週間過ぎ。3週間を終えたところで俺たちは学園へ行くことになった。
基本的には王立魔法学園は全寮制であり、長期休暇の時だけ、生徒は家へ帰っているようだった。

「では、旦那様。行ってまいります。」
「お父さま、行ってまいります。」

「ああ、気を付けるんだよ。」

その言葉を見送りに、俺たちは学園へと向かった。




カタカタと馬車に揺られ、たどり着いた先は、1か月前俺が召喚された学園だった。

そう言えば、ハルディオ様から婚約者の話を聞いていない。あれはどうなったんだろうか?
アクアの本命が誰かは知らんが、そいつがハルディオ様の婚約者だと思うと、俺の心は穏やかでなくなった。
それがどこから来るものなのかわからないまま。



「トウゴ。僕たちの部屋はこっちだよ。」

メルリージュ公爵は、俺をハルディオ様の付き人だと学園に報告した。そうしたら、俺はハルディオ様と一緒の部屋で過ごすのを許されたのだ。
まあ、使用人部屋だろうけどな。

そう気楽に思っていた俺の考えは、部屋に着くなり覆された。



「ハルディオ様、ベッドが2つ並んでおります。」

「?そうだよ?だってトウゴは僕の付き人だから。」

俺は慌てているが、ハルディオ様は何の疑問も持っていない。
いや、おかしいだろ。普通付き人ってのは主人の後ろに控えているものだろう。
決して隣に立つ者ではない。

「これでは、ハルディオ様にもメルリージュ家にも示しがつきません。使用人部屋に変えていただき…。」
「トウゴは、僕の隣で寝るのは嫌?」
彼は俺を不安そうに見上げてきた。瞳はウルウルと揺れている。

…俺に、成すすべはなかった。
(結局隣のベッドを使わせてもらうことにした。)



「トウゴ、美味しい?僕はここのピラフが大好きなんだ。」

ハルディオ様はピラフをほおばり、とても美味しそうに食べていた。
対する俺はAランチ。いろいろあるメニューの中から一番無難なものを選んだ。
だが、メインのエビフライのエビはぷりぷりで、衣もサクサクしていて美味い。

「はい、美味しいですよ。ハルディオ様も召し上がられますか?」
俺は、食べやすいようにエビフライを小さく切り、ハルディオ様の口元に運んだ。

「えっ…。」
ハルディオ様は真っ赤になって俺が差し出したエビフライと俺の顔を見ている。
―――しまった!マナー違反だ!!
人との距離感が測れない弊害がここで出てしまうとは!!
しかし、彼は意を決したように、俺の手からエビフライを食べてくれた。

「本当だ。美味しいね。」
にこにこと微笑む彼に、ヒヤリとしていた俺の心は温まった。

「じゃあ、僕のピラフも。あーん。」
ハルディオ様が差し出してくれたスプーンに乗ったピラフに口を付ける。
確かにとても美味しい。ここの料理はどれも美味しいんだな。

「トウゴ、美味しい?」

「はい。ハルディオ様が手ずから食べさせていただいたおかげか、余計に美味しく思えます。」

「…ふふっ。僕もトウゴが食べさせてくれたから、エビフライいつもより美味しかったよ。」

にこりと笑い合う。どこのバカップルだと頭の隅で思いながらも、俺とハルディオ様は主人と使用人の関係だからな。と、自分に突っ込みも入れていた。

しかし生徒がまばらで助かった。俺のマナー違反を咎める様子の者がいない。
俺はいいけど、ハルディオ様にまで被害が及んだら付き人失格だ。
次からは気を付けよう。

…と、思ったが、ハルディオ様がこの食べさせ合いをことのほか気に入ってしまい、これからも定着してしまうのだった。



昼食を終え、それぞれの課題を済ませた後は自由時間だ。
学園内どころか寮内のことも全く知らない俺は、ハルディオ様に案内をしてもらっていた。

そこで、アクアと鉢合わせした。

「あ、アクア。」

「お~、トウゴじゃねーか。それに…ハル!?…ディオ様も。」

俺はちょいちょいっとアクアに手招きされる。付いていこうとすると、ハルディオ様に服の裾を引っ張られた。

「どうしたの?トウゴ。その…彼と知り合いなの?」

「あ、はい。実は彼は俺の魔法の師匠でし…あいた!!」

「余計なこと言ってんじゃねーよ!!はい、すぐ付いてくる!!」

アクアに思いっきりはたかれた俺はそこにハルディオ様を残して、少しだけ遠くに離れた。

「…まあ、首尾よくやってんじゃねーかよ。」
アクアが俺の腕をひっつかんで小声で話しかけてくる。

「ああ、港町で浮浪者やってたら、偶然メルリージュ公爵に拾われたんだ。今はハルディオ様の付き人やってる。」

「へえ…付き人ねえ。なんにしてもよくやった!ここの生徒に編入する作戦は成功だな。」

ニカっと笑いかけられたので俺も笑顔を返す。

「じゃーな。まあ、また連絡するわ。俺も今は逃げてるとこだしな。」

「は?逃げて…?あ。」

そうだった。アクアはあの日から覚醒して、いろんな攻略者…と言うか人間に興味を持たれて大変なんだったな。

「そうか、頑張れよ。」

「ああ、じゃーな!」

ぱっと腕が離されると、次の瞬間には明後日の方向へ駆け抜けていた。
俺はそれを見届けてから、ハルディオ様の元へ戻る。

「お待たせしました。に会ったものですから、つい話し込んでしまいました。」

すると、ハルディオ様は不機嫌そうな顔で俺を見上げた。…可愛い。

「本当にお友達?」

「はい、そうですけど。」

「…うん、だったらいいよ。」

?どうしたんだろうか。
少しの謎を残しながらも、俺は寮内の案内を再開してもらった。
後ろの方からは、「アクア~!」という男性陣の声が聞こえていたが無視することにした。
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