霧の向こう ~ 水の低きに就くが如し ~

隅枝 輝羽

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情報収集の旅へ

320.ロッドで魔法

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 なんか、段々とルイの動きが早くなってる気がするんだけど……。一応、俺もなんとか動きにはついていってるけどね? とはいえ、結構ぎりぎりだ。

「イクミ、腰入れて! バランス崩すよ」

 わかってるっての。でも、身体が追いつかないんだよ。ルイは打ってこいって言うけど、受けるだけで精一杯だ。これでもかなり手加減してくれてるんだろうけどさ。

「あっ」
「っと……」

 俺がとうとう力が入らなくて尻もちをつきそうになった途端、ルイが俺の手を掴んでくれた。そのおかげで、俺はふわっと着地する。さっきまで剣を振り回してたのに、どんな反射神経だよ……。

「いやぁ、イクミすごいすごい。オレとたまに練習してたとはいえ、最近はやってなかったのによく動けてたよ」
「全然基礎じゃないじゃん。すごくきつかったけどっ?」
「えー、それはオレじゃなくてルイに言いなよ」
「ぶー」
「すまない」

 そう素直に謝られちゃうとね。俺はルイに弱いからな。
 ヴァンは今の俺の動きから良かったところと、改善したほうがいいところを教えてくれた。俺はどうしても軽く弾いてしまうクセがあるから、攻撃の質を見極めて受け止めるものはしっかり受け止めたほうがいいって。

「あと、ちょっと左手の動きが気になるな」
「あー、それね。オレもちょっと思った」
「左手?」
「ときどきだが、無駄な動きというか……狙われそうな隙のある動きをしている」
「そ、そう? 無意識だった」
「無意識は良くないよ。戦闘中は身体の全ての動きに意識しないと」

 ごもっとも。たぶん、変な動きになっちゃったときとかにバランス取ろうとして手を使っちゃうのかも。弓ちゃんを使ってるときは、左手は弓ちゃんをしっかり握ってるから関係ないんだよな。やっぱり敵に近づくのって怖いよね。

「でもまあ、ルイの動きにちゃんとついていってたし、いいと思う」
「手加減してくれてるからね」
「多少は。だが、結構速度上げたんだぞ」
「え?」

 ヴァンも頷いている。本当に早いスピードでやってたのか……いや、そんな気はしてたけど。ってことは頑張ってついていこうとして変な動きが混ざっちゃうのはしょうがなくない?

「ま、本格的な近接やるなら不安しかないけど、元々のイクミを知ってるからさ。めっちゃ成長したなーって思うよ」
「褒められてると思っておく」
「よし、ちょっと型の復習をしたら魔法やろうか」

 さっき俺がバランスを崩したときの動きとか、そういうのをヴァンが再現してくれて、その時の動き方を教えてくれる。こうやってゆっくりやればなんとなくわかるんだけどね。

「組み手はヒト相手だけど、これが魔物だったら……例えば、突進してきた相手の角だと仮定するじゃん? そしたら、真正面で受けたらやばいのはわかるよね?」
「うん。それは、吹っ飛ぶね」
「そうそう。だから、こう、受け止めつつ、そこを支点に斜めに流す」

 ははぁん。自分の身体を逃がすために、ある程度しっかり受け止める必要もあるってことか。怖くてやりたくないけど!
 ヴァンは魔物じゃなくて相手が盗賊とかだったらまた違うからねって言ってきて、俺は勘弁してくれって思ったよ。

「イクミは基本弓を使うだろうけど、いざというとき短剣使って敵をいなして距離を取れるようにしときなね」
「う……わかった」
「イクミの素直なところっていいところだよねぇ」
「イクミに悪いところなんてあるか?」
「あるよ! ルイはちょっと冷静になって!」

 ルイに嫌われてないのはよくわかってるけど、ちょっとルイはどうかしてると思うよ。悪いところがひとつもないなんてあるわけないじゃん。俺の良くないところは飽きっぽいところとか、平和ボケしてるところとか? 2人に注意されてもつい油断して危険に巻き込まれてるもんな。

「ま、魔法! 魔法やろう。って、俺は生活魔法の基礎しかできてないけど」
「わかってるよ。まずは水風火土の生活魔法をやってから、イクミの得意な水魔法で感覚を掴もう」
「イクミは俺に水魔法のアドバイスをくれるくらいだから、きっとできる」
「またそうやって、根拠のないことを……」
「イクミ、できるって思わなきゃだめだよ。オレもできると思ってるし」

 そ……そうか。そうだよな、気持ちは大事だよな、うん。

 とりあえず、ロッドを持たずに生活魔法を使うところから。これは大丈夫だ。出すのだけは上手くなったと思うし。最後までなかなか操れなかった土魔法も、ちょっともこもこさせて形を作るくらいならできるようになったもんね。

「いいね。じゃあ、オレのあげたロッドを持ってみて。まずは意識するところからね。イクミの弓と同じような感じと思って、ロッドに集中してみて」
「弓ちゃんは意識しなくても繋がる感じだよ?」
「うーん、じゃあまあ、意識して繋げてみてよ。イクミの身体が広がった感じ? みたいな」
「やってみる」

 ヴァンにもらった新品のロッドを持つと、俺は言われたとおり集中してみた。

 もらったときも思ったけど、なんか持ちやすくてしっくりくるな。太さがちょうどいいのかな……不思議だ。

 なんていうか、某魔法使いの映画みたいなおしゃれで細いのとも違うし、ゲームの魔法使いのおじいさんが持ってるようなでかいやつとも違う。
 なんて言ったらいいんだろう。もちろんベースは木なんだけど、程よいゴツゴツ感の太さが馴染む。それにこれはヴァンが加工したからなのか、魔石が上下に配置されてるんだ。

 ま、一応少しだけ細くなってる方を上側にして持ってるんだけど、何も言われないからきっとそれでいいんだろう。でも、指示棒みたいにしゅっと細くはなってなくて……ああ、あれだ、すりこぎ棒みたいな感じ!
 いやいや、魔導士用のロッドにすりこぎって、俺は何を言ってるんだろう。

「やりにくい?」
「まだ意識を集中しきれてなかった……コツをつかむまで待って」
「そうだぞ、ヴァンは急かしすぎだ」
「ごめんごめん」
「俺こそ遅くてごめんね」

 原因は『すりこぎ』とか思ってたことだなんて口に出せないよ……ごめん。

 気持ちを改めて、ちゃんと集中しよう。
 弓ちゃんと繋がるみたいな感じでって言ってたよな。俺の内側の空間が伸びる感じ……あ、うん、うん、こんな感じ?

「ヴァン、なんか面白い。持ってる手のところと繋がるっていうより、なんか全体的に広がった感じする」
「へぇ? イクミはそう感じるんだ?」
「違うの?」
「あ、それはヒトによって違うから、どれが正解とかはないよ」
「それじゃできてるかわからないじゃん」

 でもヴァンはできてるから心配するなって言うんだよね。なんでできてるって断言できるんだよ……。

「その状態で、そうだなぁ……土魔法やってみようか。壺でも作ってみて」
「壺……って、そんな難しいことを」
「いいからさ」
「うん」

 土魔法はできるようになったって言っても、苦手意識はまだあるんだよな……って思いながら、ロッドを持った右手と左手を前に出す。
 俺の内側の空間の手で土をコネコネするイメージだ。

「あ、あれ?」
「うん、いいね!」

 思ったより簡単にきれいな壺が地面から生えたように現れてビックリした。

 
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