転職に失敗したおっさん、異世界転生し事務職無双する

ほぼ全裸体のハシラジマ

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おじさん、異世界に転生する

商会との法廷攻防!そしてゴリラは拳を握る

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 「……この契約、明らかにおかしい。  
 『相手側に瑕疵がある場合でも、代金の全額は支払う』……って、バカか! 誰がサインした!?」

 

 ファルコの叫びが、書類山に響く。

 

 「烈火のゴリラたちですね」

 リンネが静かに補足する。

 

 ――脳筋ゆえに、難しい文字は読まない → ノリでサインという黄金コンボを決めた結果、  
 烈火の牙にはいま、数千万G相当の支払義務っぽい契約が山積みとなっていた。

 

 

 「くそ、こうなったら――法律と契約のプロを連れてくるしかない!」

 

 

 そして、その日の夕方。

 

 馬車の中から現れたのは、整った白髪を後ろで結んだ、涼しげな目元に上質なローブを纏った老紳士――ジール=バルナーク。

 星雲の盾の外交担当でアークメイジ。元・大商会の頭。
 全身から知と交渉の権化オーラが滲み出ている。

 

 「日雇い、という言葉には若干心外だが……君の依頼とあれば、喜んで引き受けよう、ファルコくん」

 

 「助かります、先生……! ギャラは日当12,000G+契約成立ボーナスで」

 「良い。あと宿は温泉付きがいい」

 「わかってる! ご案内します!」

 

 

 その頃、別室――

 

 「聞いたか!? 商会に乗り込むらしいぞ!」

 「とうとう戦争か!? 弾薬よし、火砲よし、爆薬よし!!」

 「ドアを粉砕突破する練習も済んでる!!」

 

 ――脳筋たちは交渉という概念を爆破していた。

 

 リンネが一言。

 「……この人たちに、書類で殴るって言葉、説明すべきでしょうか?」

 「むしろ、書類=爆発のほうが伝わる説あるな……」

---

翌日・商会本部前――

 

 「烈火の牙の使者がいらしたそうですが……ご予約は?」

 

 と、受付嬢が言い終わる前に、背後で何かがズドンと鳴った。

 

 視線の先には、火砲を片手に肩で風を切る脳筋たち。

 

 「交渉と聞いて口撃の準備は完了済みだァ!!」

 「こっちは火力で意見通すぞオラァ!」

 

 「やめろバカァァ!! 武装解除! 今すぐ!!」

 

 ファルコとジールは慌てて止めに入ったが、
商会の受付は妙に冷静だった。

 

 「あ、はい。烈火の牙様ですね。こちらへどうぞ」

 

 (……なぜ通された?)

 

 その理由は、会議室に入った瞬間、理解した。

 

 そこにいたのは、ギラついた目をした商会の代表・ガルド商会長。

 彼は書類を広げながら、にっこりと笑って言った。

 

 「ようこそ烈火の牙の皆さん。今日は、未払いの契約について話し合いに来ていただけたとか?」

 

 (うわー……完全に獲物が勝手に罠に飛び込んできた目してる……)

 

 ジールが前に出て、帽子を取りながら微笑んだ。

 

 「いえ、我々のほうこそ感謝申し上げます。あなた方の契約の不備を、法の場で明らかにできる機会をいただけたのですから」

 

 笑顔の火花が散る。

 ファルコが続いた。

 

 「瑕疵があっても金を払うって文言、あれ、契約無効です。こっちの現場責任者が契約内容を理解していない証拠も揃ってます。認識の齟齬に基づく契約は――」

 「――王国法第147条、同意能力の不備によって無効だ」

 ジールが完璧に補足。

 

 

 商会代表が顔をしかめた。

 

 「なるほど……これは、思ったより骨がある交渉になりそうだ……」

 

 リンネが無表情でファイルを開く。

 「参考資料1、2、3、および裏面にうっかりハンコ押してる証拠付き台帳があります」

 「証拠多すぎる!!」

---

 数時間後。

 烈火の牙は、未払い金の4割カット・再契約による再納品の合意・追加利息の無効化を勝ち取った。

 

 ジールはくるりとペンを回し、ボーナス契約にサインしたあと言った。

 

 「……さて、温泉に行ってくる。腰が冷えた」

 「ありがとうございましたァァァ!!」

 

---

 外に出たファルコに、脳筋たちが近づく。

 

 「どうだった!?」

 「交渉って、どんな技だったんだ!?」

 

 ファルコは、にこっと笑って言った。

 

 「数字でぶん殴って、法でフィニッシュ……それが俺たちの勝ち方だ」

 

 その言葉に、なぜか感動するゴリラたち。

 「カッケェ……」

 「法って強ぇんだな……」

 

 その背後で、リンネが小さく、でも確かに呟いた。

 

 「……師匠は、やっぱり、すごいです。誰にも譲りません」

 「……え? 何か言った?」

 「証拠が揃ってたって言いました」

 「言ってない気がするけどまぁいいや!」
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