21 / 48
おじさん、異世界に転生する
商会との法廷攻防!そしてゴリラは拳を握る
しおりを挟む
「……この契約、明らかにおかしい。
『相手側に瑕疵がある場合でも、代金の全額は支払う』……って、バカか! 誰がサインした!?」
ファルコの叫びが、書類山に響く。
「烈火のゴリラたちですね」
リンネが静かに補足する。
――脳筋ゆえに、難しい文字は読まない → ノリでサインという黄金コンボを決めた結果、
烈火の牙にはいま、数千万G相当の支払義務っぽい契約が山積みとなっていた。
「くそ、こうなったら――法律と契約のプロを連れてくるしかない!」
そして、その日の夕方。
馬車の中から現れたのは、整った白髪を後ろで結んだ、涼しげな目元に上質なローブを纏った老紳士――ジール=バルナーク。
星雲の盾の外交担当でアークメイジ。元・大商会の頭。
全身から知と交渉の権化オーラが滲み出ている。
「日雇い、という言葉には若干心外だが……君の依頼とあれば、喜んで引き受けよう、ファルコくん」
「助かります、先生……! ギャラは日当12,000G+契約成立ボーナスで」
「良い。あと宿は温泉付きがいい」
「わかってる! ご案内します!」
その頃、別室――
「聞いたか!? 商会に乗り込むらしいぞ!」
「とうとう戦争か!? 弾薬よし、火砲よし、爆薬よし!!」
「ドアを粉砕突破する練習も済んでる!!」
――脳筋たちは交渉という概念を爆破していた。
リンネが一言。
「……この人たちに、書類で殴るって言葉、説明すべきでしょうか?」
「むしろ、書類=爆発のほうが伝わる説あるな……」
---
翌日・商会本部前――
「烈火の牙の使者がいらしたそうですが……ご予約は?」
と、受付嬢が言い終わる前に、背後で何かがズドンと鳴った。
視線の先には、火砲を片手に肩で風を切る脳筋たち。
「交渉と聞いて口撃の準備は完了済みだァ!!」
「こっちは火力で意見通すぞオラァ!」
「やめろバカァァ!! 武装解除! 今すぐ!!」
ファルコとジールは慌てて止めに入ったが、
商会の受付は妙に冷静だった。
「あ、はい。烈火の牙様ですね。こちらへどうぞ」
(……なぜ通された?)
その理由は、会議室に入った瞬間、理解した。
そこにいたのは、ギラついた目をした商会の代表・ガルド商会長。
彼は書類を広げながら、にっこりと笑って言った。
「ようこそ烈火の牙の皆さん。今日は、未払いの契約について話し合いに来ていただけたとか?」
(うわー……完全に獲物が勝手に罠に飛び込んできた目してる……)
ジールが前に出て、帽子を取りながら微笑んだ。
「いえ、我々のほうこそ感謝申し上げます。あなた方の契約の不備を、法の場で明らかにできる機会をいただけたのですから」
笑顔の火花が散る。
ファルコが続いた。
「瑕疵があっても金を払うって文言、あれ、契約無効です。こっちの現場責任者が契約内容を理解していない証拠も揃ってます。認識の齟齬に基づく契約は――」
「――王国法第147条、同意能力の不備によって無効だ」
ジールが完璧に補足。
商会代表が顔をしかめた。
「なるほど……これは、思ったより骨がある交渉になりそうだ……」
リンネが無表情でファイルを開く。
「参考資料1、2、3、および裏面にうっかりハンコ押してる証拠付き台帳があります」
「証拠多すぎる!!」
---
数時間後。
烈火の牙は、未払い金の4割カット・再契約による再納品の合意・追加利息の無効化を勝ち取った。
ジールはくるりとペンを回し、ボーナス契約にサインしたあと言った。
「……さて、温泉に行ってくる。腰が冷えた」
「ありがとうございましたァァァ!!」
---
外に出たファルコに、脳筋たちが近づく。
「どうだった!?」
「交渉って、どんな技だったんだ!?」
ファルコは、にこっと笑って言った。
「数字でぶん殴って、法でフィニッシュ……それが俺たちの勝ち方だ」
その言葉に、なぜか感動するゴリラたち。
「カッケェ……」
「法って強ぇんだな……」
その背後で、リンネが小さく、でも確かに呟いた。
「……師匠は、やっぱり、すごいです。誰にも譲りません」
「……え? 何か言った?」
「証拠が揃ってたって言いました」
「言ってない気がするけどまぁいいや!」
『相手側に瑕疵がある場合でも、代金の全額は支払う』……って、バカか! 誰がサインした!?」
ファルコの叫びが、書類山に響く。
「烈火のゴリラたちですね」
リンネが静かに補足する。
――脳筋ゆえに、難しい文字は読まない → ノリでサインという黄金コンボを決めた結果、
烈火の牙にはいま、数千万G相当の支払義務っぽい契約が山積みとなっていた。
「くそ、こうなったら――法律と契約のプロを連れてくるしかない!」
そして、その日の夕方。
馬車の中から現れたのは、整った白髪を後ろで結んだ、涼しげな目元に上質なローブを纏った老紳士――ジール=バルナーク。
星雲の盾の外交担当でアークメイジ。元・大商会の頭。
全身から知と交渉の権化オーラが滲み出ている。
「日雇い、という言葉には若干心外だが……君の依頼とあれば、喜んで引き受けよう、ファルコくん」
「助かります、先生……! ギャラは日当12,000G+契約成立ボーナスで」
「良い。あと宿は温泉付きがいい」
「わかってる! ご案内します!」
その頃、別室――
「聞いたか!? 商会に乗り込むらしいぞ!」
「とうとう戦争か!? 弾薬よし、火砲よし、爆薬よし!!」
「ドアを粉砕突破する練習も済んでる!!」
――脳筋たちは交渉という概念を爆破していた。
リンネが一言。
「……この人たちに、書類で殴るって言葉、説明すべきでしょうか?」
「むしろ、書類=爆発のほうが伝わる説あるな……」
---
翌日・商会本部前――
「烈火の牙の使者がいらしたそうですが……ご予約は?」
と、受付嬢が言い終わる前に、背後で何かがズドンと鳴った。
視線の先には、火砲を片手に肩で風を切る脳筋たち。
「交渉と聞いて口撃の準備は完了済みだァ!!」
「こっちは火力で意見通すぞオラァ!」
「やめろバカァァ!! 武装解除! 今すぐ!!」
ファルコとジールは慌てて止めに入ったが、
商会の受付は妙に冷静だった。
「あ、はい。烈火の牙様ですね。こちらへどうぞ」
(……なぜ通された?)
その理由は、会議室に入った瞬間、理解した。
そこにいたのは、ギラついた目をした商会の代表・ガルド商会長。
彼は書類を広げながら、にっこりと笑って言った。
「ようこそ烈火の牙の皆さん。今日は、未払いの契約について話し合いに来ていただけたとか?」
(うわー……完全に獲物が勝手に罠に飛び込んできた目してる……)
ジールが前に出て、帽子を取りながら微笑んだ。
「いえ、我々のほうこそ感謝申し上げます。あなた方の契約の不備を、法の場で明らかにできる機会をいただけたのですから」
笑顔の火花が散る。
ファルコが続いた。
「瑕疵があっても金を払うって文言、あれ、契約無効です。こっちの現場責任者が契約内容を理解していない証拠も揃ってます。認識の齟齬に基づく契約は――」
「――王国法第147条、同意能力の不備によって無効だ」
ジールが完璧に補足。
商会代表が顔をしかめた。
「なるほど……これは、思ったより骨がある交渉になりそうだ……」
リンネが無表情でファイルを開く。
「参考資料1、2、3、および裏面にうっかりハンコ押してる証拠付き台帳があります」
「証拠多すぎる!!」
---
数時間後。
烈火の牙は、未払い金の4割カット・再契約による再納品の合意・追加利息の無効化を勝ち取った。
ジールはくるりとペンを回し、ボーナス契約にサインしたあと言った。
「……さて、温泉に行ってくる。腰が冷えた」
「ありがとうございましたァァァ!!」
---
外に出たファルコに、脳筋たちが近づく。
「どうだった!?」
「交渉って、どんな技だったんだ!?」
ファルコは、にこっと笑って言った。
「数字でぶん殴って、法でフィニッシュ……それが俺たちの勝ち方だ」
その言葉に、なぜか感動するゴリラたち。
「カッケェ……」
「法って強ぇんだな……」
その背後で、リンネが小さく、でも確かに呟いた。
「……師匠は、やっぱり、すごいです。誰にも譲りません」
「……え? 何か言った?」
「証拠が揃ってたって言いました」
「言ってない気がするけどまぁいいや!」
30
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる