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おじさん、異世界に転生する
秘書、現る。そして書類ダンジョンへ
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――その日、烈火の牙の応接室。
ファルコは机の上に広がる紙の波を前に、無言で煮詰まっていた。
「うわ……これ、請求書に見せかけた条件付き契約補足覚書じゃないか……。誰が理解できるかこんなもん……」
もう3時間、紙をめくり、睨み、首を傾げ、悩み、そしてため息。
現場では魔獣と戦うが、今ファルコは契約条項と専門用語と戦っていた。
「ファルコ。燃やすか?」
「いややめて!? せめて裁断でお願い!!」
そんな悲鳴が飛び交う中――扉がノックされた。
「入ってるよ。って、今ちょっと紙の地獄だからまた後で……」
ガチャッ。
「お久しぶりです、ファルコ」
……そこには、整った服に身を包んだ少女。
無表情・黒髪ボブ・ファルコの元相棒――リンネ・エストレイヤが立っていた。
「……リンネ!?」
椅子から思わず飛び上がったファルコ。
目をこすって二度見して、三度目には感動の顔になる。
「ちょ、なに、なんで!? 星雲の盾の本部は!?」
「退職届は提出済みです。手続きは完了しています。念のため、写しをお持ちしました」
書類を差し出すリンネ。
「しっかりしてるぅぅ!! てか、なんで急に!?」
「ファルコが、あの山を前にひとりで頭を抱えている夢を見ました」
「予知かよ!!」
「あと、少し……私が、寂しかったので」
小さくつぶやいたその言葉に、室内の温度が一瞬だけ和らぐ。
だがリンネはすぐに事務モードへ。
「状況を教えてください。混乱の主因から整理します」
「う、うん……。えっと、最奥の開かずの間から出てきた、各地の商会・公的機関からの請求書類と契約文書の山が……」
「整理前に分類ルールを決めます。カテゴリは請求系、契約系、詐欺臭い系に分けて」
「詐欺臭い系が最初からあるあたり信頼されてないな烈火の牙!!」
---
こうして、書類地獄(ダンジョン)攻略パーティが結成された。
【メンバー】
・ファルコ(戦闘力=契約書解釈Lv99)
・リンネ(状態異常無効・感情を乱さないバフ持ち)
・脳筋サポーター数名(主に紙を運ぶゴリラ)
ファルコは吠えた。
「目標は、未払いの整理! 支払い可能な債務の確定! 詐欺契約の法的無効化! ――これぞ、我々の戦場だ!」
脳筋1が唸る。
「おう! まずはここから運べばいいんだな!? うおおおお!!」
脳筋2が投げる。
「これ、紙じゃなくて石版だったぞ!!」
リンネがキャッチ。
「……投げないでください。それ、帳簿の起源かもしれません……」
---
途中――
「ファルコさん、書類の扱いが、他の女性に比べて……優しいですね」
「え、えぇ? どゆこと?!」
「少し、ヤキモチ焼きそうになります。……書類に」
「書類に!?!?!?」
リンネは至って真顔。
その表情に込められた感情を、本人も分かっていない。
でも、ファルコと肩を並べ、書類を並べ、未来を並べるのは、当たり前だと思っている。
---
その日――最初の20枚が整理された。
未払い項目3件が発見され、うち2件は相手の契約ミスで請求が無効であることが判明。
「さすがファルコ」
「師匠は、すごい」
ファルコは苦笑した。
「リンネがいると、仕事が捗りすぎる……ああ、帰ってきたな、この感覚」
書類地獄はまだ始まったばかり。
だが、リンネという対・混沌専用秘書を得て――
ファルコは机の上に広がる紙の波を前に、無言で煮詰まっていた。
「うわ……これ、請求書に見せかけた条件付き契約補足覚書じゃないか……。誰が理解できるかこんなもん……」
もう3時間、紙をめくり、睨み、首を傾げ、悩み、そしてため息。
現場では魔獣と戦うが、今ファルコは契約条項と専門用語と戦っていた。
「ファルコ。燃やすか?」
「いややめて!? せめて裁断でお願い!!」
そんな悲鳴が飛び交う中――扉がノックされた。
「入ってるよ。って、今ちょっと紙の地獄だからまた後で……」
ガチャッ。
「お久しぶりです、ファルコ」
……そこには、整った服に身を包んだ少女。
無表情・黒髪ボブ・ファルコの元相棒――リンネ・エストレイヤが立っていた。
「……リンネ!?」
椅子から思わず飛び上がったファルコ。
目をこすって二度見して、三度目には感動の顔になる。
「ちょ、なに、なんで!? 星雲の盾の本部は!?」
「退職届は提出済みです。手続きは完了しています。念のため、写しをお持ちしました」
書類を差し出すリンネ。
「しっかりしてるぅぅ!! てか、なんで急に!?」
「ファルコが、あの山を前にひとりで頭を抱えている夢を見ました」
「予知かよ!!」
「あと、少し……私が、寂しかったので」
小さくつぶやいたその言葉に、室内の温度が一瞬だけ和らぐ。
だがリンネはすぐに事務モードへ。
「状況を教えてください。混乱の主因から整理します」
「う、うん……。えっと、最奥の開かずの間から出てきた、各地の商会・公的機関からの請求書類と契約文書の山が……」
「整理前に分類ルールを決めます。カテゴリは請求系、契約系、詐欺臭い系に分けて」
「詐欺臭い系が最初からあるあたり信頼されてないな烈火の牙!!」
---
こうして、書類地獄(ダンジョン)攻略パーティが結成された。
【メンバー】
・ファルコ(戦闘力=契約書解釈Lv99)
・リンネ(状態異常無効・感情を乱さないバフ持ち)
・脳筋サポーター数名(主に紙を運ぶゴリラ)
ファルコは吠えた。
「目標は、未払いの整理! 支払い可能な債務の確定! 詐欺契約の法的無効化! ――これぞ、我々の戦場だ!」
脳筋1が唸る。
「おう! まずはここから運べばいいんだな!? うおおおお!!」
脳筋2が投げる。
「これ、紙じゃなくて石版だったぞ!!」
リンネがキャッチ。
「……投げないでください。それ、帳簿の起源かもしれません……」
---
途中――
「ファルコさん、書類の扱いが、他の女性に比べて……優しいですね」
「え、えぇ? どゆこと?!」
「少し、ヤキモチ焼きそうになります。……書類に」
「書類に!?!?!?」
リンネは至って真顔。
その表情に込められた感情を、本人も分かっていない。
でも、ファルコと肩を並べ、書類を並べ、未来を並べるのは、当たり前だと思っている。
---
その日――最初の20枚が整理された。
未払い項目3件が発見され、うち2件は相手の契約ミスで請求が無効であることが判明。
「さすがファルコ」
「師匠は、すごい」
ファルコは苦笑した。
「リンネがいると、仕事が捗りすぎる……ああ、帰ってきたな、この感覚」
書類地獄はまだ始まったばかり。
だが、リンネという対・混沌専用秘書を得て――
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