泣きたいくらい幸せよ

仏白目

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チェルシー.ハサウェイ

ひとつの光 

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「どうか、次の生では幸せに・・・」

それがマルクスの願い、マルクスの子とされる2人の子供は血の繋がりはない、
その事は王家の文献にも記されていて

マルクスは生涯独身で終えている



チェルシーは目を覚ますと、前のソファで膝の上で本を広げたまま、頬に涙を流れるままにしている、アインリヒに気がついた


「マルクスは言ったのに、ルシアンは幸せに暮らせるって、なのに・・・」

アインリヒが一人呟いている



「アインリヒ様?もしかして森の中の出来事を今見られたのですか?」

チェルシーは今自分も見たマルクスとルシアンの事をアインリヒも見ていた事に気がついて声をかけたが、


チェルシーを見るアインリヒの表情は幼く少し雰囲気が違っていた

「 君は? 」

「アインリヒ様?」

「・・・僕はリヒトだよ 君は・・・ああ、そうか、これは精霊王・・・・・様の導き?」

そう言った後のアインリヒ様の表情は本来の少し眉間に皺をよせたいつもの表情だった

・・・


「アインリヒ様?私が分かりますか?」

チェルシーは声をかけてみる

「チェルシー・・分かるよ、大丈夫だ 精霊の悪戯を読んでいるうちに シュバルツの初代国王の白昼夢を見た 君も森の中の出来事を見たんだね?」

「ええ 」

「僕はリヒトだよ その声が頭の中に響いて 精霊王様の意図を理解したよ 私はリヒトの生まれ変わりだった あの本はこの時の為の、彼の方のだったんだ」

「そんなことが・・・」



「記憶の中で、 リヒト達妖精は森を出ては行けないと精霊王様に言われていたんだ それがルールであり 森から離れた者は精霊樹の力が届かなくなりいずれは消えてしまうと教えられていた 

それでもリヒトはルシアンの幸せを願ってしまった ルシアンの事が大好きだったんだよ 

幼い考えだと今なら分かる 

ルシアンは幸せなんだと思ったまま 消えていった もうその時にはルシアンはいなかったなんて・・・」

リヒトの想いなのだろう、アインリヒの頬に涙が伝う


チェルシーはアインリヒの横に座り、手を握った


「それでも、リヒトは頑張ったんですよ
リヒトのお陰でリリアンの命は助かりました」


「リリアン・・? ああそうだ あの子を助けたくて・・ そうか・・
僕はあの子を助けれたんだ・・あの時 あの場所にいた事に意味はあった・・・」

両手で顔を覆い隠してしまったアインリヒを心配してチェルシーは彼の背中をさする


すると、アインリヒは不思議と懐かしい感じがして、チェルシーを見る

「うん、ごめんねリヒト、兄さんがした事は酷い事だよね 僕はまだ子供で兄さんから君を守ってあげれなかった
リヒトは僕の事を幸せにしてくれようとしていたなんて・・」

そう言ってチェルシーは涙を流した

「チェルシー、君はルシアンなの?」


驚いたアインリヒはチェルシーの肩を掴み尋ねる、


「そうだよ、でも彼女はルシアンの生まれ変わりだけど僕の記憶はたぶん無いよ」


「?」


「きっと精霊王様が今だけ、僕の想いを伝えさせてくれているんだと思う」


「ルシアン!」


そう名前を呼び、アインリヒはチェルシーを抱きしめた


「ハハ、変な感じだよね、あんなに可愛かったリヒトが気難しい顔立ちの青年になっていて、僕はこんなに可愛い女の子に生まれ変わるなんて」


「ルシアンは僕を可愛いって思っていたのかい?」


「うん、可愛いくて大好きだったよ、リヒトが人間の女の子だったらいいのにって、思っていたくらいね」


「妖精には性別は無かったから・・でもルシアンの事は大好きだったよ いつも君がくるのを待っていたんだ」


「うん、知っていたよ、リヒトに会いたくて森に行くと君はいつも可愛い笑顔ですぐに飛んで来てくれていたから・・・
だから、また君に会えるなんて夢のようだよ」


「うん、これからはずっと一緒だよ」


「リヒト、ううん君はアインリヒだよ その名前の意味の光に僕は導かれたんだ、チェルシーに僕の記憶が無くてもチェルシーは僕だ、ずっと一緒にいるからね

・・・いいことを教えてあげる、チェルシーは君のことを『可愛い人』って思っているよ」

そう言った後、アインリヒに抱きしめられたチェルシーは急に驚き アインリヒから離れた

「アインリヒ様 ま、ま、まだ結婚前ですので、距離が近すぎます」

真っ赤な顔のチェルシーをみてアインリヒは更に強く抱きしめた


「アインリヒ様!」

「ああ、すまない君が可愛いくてつい・・」

恥ずかしくて真っ赤になりながらも、
チェルシーはさっきまでのアインリヒとの態度の違いに驚いている
ルシアンの死を知り泣いていたはず?
リリアンが助かった事を知り・・そして?

・・可愛くてつい?  

「い、いえ、嫌なわけじゃ無いです 
ふふ、アインリヒ様も可愛いですよ?」

「可愛いなど、言われた事はないが・・」

アインリヒの顔も赤くなる

「ふふふ」

「君に逢えて良かった」

アインリヒとチェルシーは見つめ合い、
お互いに笑いあった







そして一年が経ち シュバルツ国王とチェルシーの婚儀が行われた、国中がお祝いの色に染まるなか

シュバルツ王国には沢山の光の粒が舞いその光景はまさに、光の王国そのもので、精霊王の祝福だと人々は喜び感謝した



『愛しい子よ 束の間の時を 謳歌せよ
そして、幸せに・・・』






       fin











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