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ダークホース・ジャッキー美央の躍進
第三試合の直前、会場の片隅で容子とSAKIの試合を観ながら「大丈夫かな。私にできるかしら」と、いい知れぬ不安に駆られている選手がいた。本業はおてんば企画のエディトリアルデザイナー。日奈子社長に焚きつけられて、今回のトーナメントに名乗りをあげてはみたものの、こんな大舞台で闘いを演じる自信はまるでなかった。ど、どうしよう? もうすぐ始まってしまう。どきどき。あたふた。
第三試合は、プレジデント日奈子 vs ミスX3。
プレジデント日奈子の対戦相手であるミスX3の正体は、何を隠そう、ジャッキー美央だったのである。果たして何の因果かはわからないが、社長の日奈子と、その従業員である美央が雌雄(いや、ふたりとも雌だわね)を決することになっていた。
「さぁ、遠慮はご無用。どこからでもかかってきなさい」と口にしながら、美央のことを挑発する日奈子。今日は女王をイメージしたパープルのドレス(もちろん通販のコスプレショップから調達したものである)を身につけていた。きつめのド派手メイク。
日奈子自身、格闘技歴はなかったが、部下で恋人のジュリーという訳あり社員の影響で、すっかりプロレスにハマっていた。ジュリーとの関係をひとことで表現するのは難しいので、詳しくは小説『おてんばプロレスの女神たち ~バーニング・スピリット・イン・タイ~』を読んでほしいが、広告や編集を手がけるプロダクションの社長という立場をつい忘れてしまうほど、プロレスの世界にとりつかれていたのである。
これまでの経緯はどうあれ、ついに実現した師弟対決。カ~~~ンというゴングが鳴るやいなや、いきなり仕かけたのは美央の方だった。
「こんちくしょうめ、給料あげろー」とか「残業が多いんだよ」とか、日頃のうっぷんを晴らすかのような叫び声をあげながら、見よう見まねのモンゴリアンチョップで攻め立てる。と思ったら、長い足を活かしたトラースキック。一瞬、日奈子がひるんだ隙を突いて、へそで投げるバックドロップまでくり出した。早くもカウントは――二・五。
「え~っ!?」。
不意を突かれたらしく、しきりに頭を押さえながら「美央ちゃん、一体いつの間に強くなったのよ」と戸惑う日奈子。
「でも、お遊びもここまでね。ここから先は日奈子ズショータイム」と口にすると、今度は日奈子がやり返した。ショートレンジでのローリングソバットから高速のキャプチュード。そこへエルボードロップを二連発。美央の動きが止まったのを見てとると、すかざす美央の長い両足をつかみ、豪快なジャイアントスイングでぶんまわし始めた。
七、八、九~‥‥。
十三、十四、十五‥‥。
観客の声にも後押しされて、最後はなんと二十回転。ちょっと無鉄砲すぎたのか、技を仕かけたはずの日奈子自身、目をまわしてリングに倒れ込んだ。
おーっと、これは大変。ふたりとも立てるのか。「両者ダウン」という宣告のあと、レフェリーのカウントが続く中、ほんの一瞬、日奈子が立ちあがりかけたが、まったく視点が定まらず、大きくよろめきながら、そのまま場外へ。
すると、なんということだろう。すくっと立ちあがった美央が、これはチャンスとばかりに、日奈子に対して人間ロケット砲を放ったのだ。名づけて美央ちゃんロケット。美央にとっては初チャレンジだったが、ピーンと体を伸ばしたトペ・スイシーダは見事としかいいようがなかった。場外では、止(とど)めだといわんばかりの垂直落下式パイルドライバー。
結果は六分八秒、プレジデント日奈子の場外リングアウト負け。会社の部下である美央が、社長の日奈子に爆勝したのである。
「美央ちゃん、おめでとう。悔しいけど、あなたの勝ちね。こうなったら、おてんば企画の代表として二回戦も頑張るのよ」という日奈子からの激励にも、きょとんとした表情を浮かべるだけの美央。じつは胸がいっぱいすぎて、何をどう対応したらいいのか、わからずにいたのだ。ダークホース・美央の全身に拍手のシャワーが降り注いだ。
第三試合は、プレジデント日奈子 vs ミスX3。
プレジデント日奈子の対戦相手であるミスX3の正体は、何を隠そう、ジャッキー美央だったのである。果たして何の因果かはわからないが、社長の日奈子と、その従業員である美央が雌雄(いや、ふたりとも雌だわね)を決することになっていた。
「さぁ、遠慮はご無用。どこからでもかかってきなさい」と口にしながら、美央のことを挑発する日奈子。今日は女王をイメージしたパープルのドレス(もちろん通販のコスプレショップから調達したものである)を身につけていた。きつめのド派手メイク。
日奈子自身、格闘技歴はなかったが、部下で恋人のジュリーという訳あり社員の影響で、すっかりプロレスにハマっていた。ジュリーとの関係をひとことで表現するのは難しいので、詳しくは小説『おてんばプロレスの女神たち ~バーニング・スピリット・イン・タイ~』を読んでほしいが、広告や編集を手がけるプロダクションの社長という立場をつい忘れてしまうほど、プロレスの世界にとりつかれていたのである。
これまでの経緯はどうあれ、ついに実現した師弟対決。カ~~~ンというゴングが鳴るやいなや、いきなり仕かけたのは美央の方だった。
「こんちくしょうめ、給料あげろー」とか「残業が多いんだよ」とか、日頃のうっぷんを晴らすかのような叫び声をあげながら、見よう見まねのモンゴリアンチョップで攻め立てる。と思ったら、長い足を活かしたトラースキック。一瞬、日奈子がひるんだ隙を突いて、へそで投げるバックドロップまでくり出した。早くもカウントは――二・五。
「え~っ!?」。
不意を突かれたらしく、しきりに頭を押さえながら「美央ちゃん、一体いつの間に強くなったのよ」と戸惑う日奈子。
「でも、お遊びもここまでね。ここから先は日奈子ズショータイム」と口にすると、今度は日奈子がやり返した。ショートレンジでのローリングソバットから高速のキャプチュード。そこへエルボードロップを二連発。美央の動きが止まったのを見てとると、すかざす美央の長い両足をつかみ、豪快なジャイアントスイングでぶんまわし始めた。
七、八、九~‥‥。
十三、十四、十五‥‥。
観客の声にも後押しされて、最後はなんと二十回転。ちょっと無鉄砲すぎたのか、技を仕かけたはずの日奈子自身、目をまわしてリングに倒れ込んだ。
おーっと、これは大変。ふたりとも立てるのか。「両者ダウン」という宣告のあと、レフェリーのカウントが続く中、ほんの一瞬、日奈子が立ちあがりかけたが、まったく視点が定まらず、大きくよろめきながら、そのまま場外へ。
すると、なんということだろう。すくっと立ちあがった美央が、これはチャンスとばかりに、日奈子に対して人間ロケット砲を放ったのだ。名づけて美央ちゃんロケット。美央にとっては初チャレンジだったが、ピーンと体を伸ばしたトペ・スイシーダは見事としかいいようがなかった。場外では、止(とど)めだといわんばかりの垂直落下式パイルドライバー。
結果は六分八秒、プレジデント日奈子の場外リングアウト負け。会社の部下である美央が、社長の日奈子に爆勝したのである。
「美央ちゃん、おめでとう。悔しいけど、あなたの勝ちね。こうなったら、おてんば企画の代表として二回戦も頑張るのよ」という日奈子からの激励にも、きょとんとした表情を浮かべるだけの美央。じつは胸がいっぱいすぎて、何をどう対応したらいいのか、わからずにいたのだ。ダークホース・美央の全身に拍手のシャワーが降り注いだ。
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