シン・おてんばプロレスの女神たち ~衝撃のO1クライマックス開幕~

ちひろ

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黒覆面の魔女・ミスX4

 一回戦最後の試合は、ファイヤー松本 vs ミスX4。
 もしかすると、ミスX4は「スーパーアサコじゃないかとか」とか「いや、RKクイーンに違いない」とか、さまざまな憶測を呼んだが、いざふたを開けてみたら、謎の覆面レスラーが会場に現れた。
 遠い昔、白覆面の魔王として絶大な人気を誇った外国人レスラーがいたが、目の前に現れたのは白覆面ならぬ黒覆面の魔女。全身黒ずくめで花道を行ったりきたりしながら、ようやくリングインしたと思ったら、いきなり毒霧らしきものを口から噴射した。
 「おおっ」というどよめき。毒霧の正体はどうやらメロンシロップなのだが(苦笑)、色合い的に毒々しさだけは感じられた。最前列のお子さんが「あっ、ジュースの匂いがする」と叫んだときは、会場の一部がどっと沸いた。
 「一体全体なんだっていうんだよー」といい、苛立ちを隠せないファイヤー松本。「くるならきてみろ、おらー」と叫びながら、いきなりラリアットを放った。リングに崩れ落ちた黒覆面を抱え込むと、強烈なパワースラム。そこへ体重を活かしたサンダードロップをくり出したのだから、たまらない。一発、二発、三発‥‥。レフェリーにカウントを要求する松本だったが、考えてみると、まだ試合が始まっていない。
 「何してやがるんだよ。さっさと試合を始めろ」という松本に促されて、ようやく試合開始のゴングが打ち鳴らされた。カ~~~ン。
 「遅(お)せえんだよ、くそレフェリー」といいながら、相手の覆面をつかむと、余裕しゃくしゃくで、覆面を剥ぎとり始めた松本だったが、なんと驚いたことに、黒覆面の下にはさらにもう一枚の黒覆面が。どちらも黒いだけで、特にデザインらしいデザインは施されていなかった。顔の見えない怪しげなブラックワールド。
 「なんなんだよ。こいつ変態じゃねえのか」と驚きの顔を見せながら、アンダーマスクをも剥ぎとろうとする松本のことを、レフェリーが制止しにかかった。必死の形相で止めにかかろうとするレフェリーを忌み嫌った松本は、つい「うぜぇんだよー」と口にしながら、レフェリングを務めるニューおてんば温泉の社長のことを場外に突き飛ばしてしまったのだが、これがまずかった。レフェリーが折り畳み椅子のパイプ部分に頭を打ちつけてしまい、不意討ちの危険行為ともとれる松本のリアクションに、大慌てでゴングを要請したのだ。
 カンカンカンカンカンカン。な、なんと。ミスX4の正体もわからぬまま、松本が反則負けを喫してしまった。あまりにもあっ気ない幕切れ。
 「なんで私が反則なんだよー」と絶叫しながら、レフェリーの社長に食ってかかる松本。必死の形相で説明を加える社長だったが、納得のいかない松本は、とうとうリング上で大暴れを始めた。いきなりナックルパンチを叩き込んだと思ったら、大きな胸をせり出して、社長にボディーアタックを一悶。レフェリーの社長が、たちまち場外にすっ飛んだ。
 「社長に手を出すなら、私を倒してからにしなさい」と声を張りあげる浅子のお母さん(社長夫人)だったが、ちょっとやりすぎだとでも思ったのか、松本が社長夫人に手を出すことはなかった。松本の体当たりを食らった社長は、最前列のお客さんたちの目の前で大の字になっていた。
 「さぁ、やれるものならやってみなさい。アサコズマザーがお相手をしてあげるわ」という夫人の毅然とした態度に、やんややんやの喝さいが浴びせられた。母というか、ここぞという場面での女は強し。自分が旦那を守るというファイティングスピリットには、すさまじいものがあったのである。
 ところが――どうだろう。そんな混乱の中にあって、すくっと立ちあがったミスX4は、まるで何ごともなかったかのように、リングから立ち去っていくではないか。ギョロッという眼差しだけを場外に向けると、花道で立ち止まり、再び毒霧ジュースを噴射。その不気味さも手伝って、会場が興奮の渦に包まれた。リング上で息まく松本でさえ、あっ気にとられてしまうほど、黒覆面の魔女には異様な雰囲気が立ち込めていたのだ。
 「な、なんなんだよ」。
 「黒ずくめのブラックウーマン」。
 観客の一部から「ジュリー?」という声が聞かれたが、まさかそんなはずはあるまい。上背こそ似通っているが、体型が違いすぎるのだ。どちらかというとスリムなジュリーに対し、胸もお尻もふくよかなミスX4。誰がどう見ても女子そのもの。観客のひとりが、SAKIの口癖を真似て「ウッホウホウホ」という叫び声をあげたが、黒覆面の魔女は、ついにひとことも発することなく、控室という闇の中へ消えていくのであった。
 ぶ、不気味すぎるぞ。ミステリアスウーマン・イン・ブラック。
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