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ソデザベス女王

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「とりあえず動けるようにするか。」

 俺はボコボコにされたチャールスの尻にエリクサーをぶっ刺す。
 おお、変な方向に曲がった手足が元に戻っていく。キモッ!!

「ンッンー!素晴らしいン!肩こり、腰痛までなくなりました!!」

「……元気になったようで何よりだ」

「ンン!!機人様もお人が悪い!こんなモノがあれば、十分にイギニスと取引できるじゃあないですかンン!」

 自分自身を抱きしめるようなポーズで、くるくると回るチャールス。
 ちょっと薬の麻酔が効きすぎてるんじゃないかこれ。

「……それよりも、お前は象人の暴動を抑えるために、休みを増やせ。警備を雇うよりは安上がりだろう」

「ンッンー!たしかに!人を雇うと高くつきますからな!流石は機人様!商売上手にございますン!」

 行くところ全てにおいて、何かしらの騒動が起きたが、ひとまずイギニス観光はこれで終わりだ。後は……ソデザベス女王との謁見かー。なんかめんどくさそう。

 ミリアさんがもう、完全な飽き飽きモードに入っている蒸気自動車にのって、俺たちはイギニスの王宮へ向かった。

 遅い割にめっちゃ揺れるわで、寝るわけにもいかないのがマジつらそう。

「機人様、古代竜は、いかがなさるおつもりで?」

「……まだ決めてはいないが……」

 あの後、デドリー、ミリアの集めた聞き込みの内容を照らし合わせた。

 大まかには似たような話だったが、デドリーの集めた話によると、古代竜は象人を奴隷にしていたわけではないそうだ。

 古代竜は昔ながらの、世界に寄り添う生活を求めているだけで、イギニスのような世界を削り取るような、そんな生き方はしてほしくないそうだ。

「心が求めるは多くも、すくう手は小さく、世界はそれよりもはかない。その違えの因果いんがにより、我らがの都も、今や幻……」

「……???」

 ところでデドリーさん、なんか変なもんでも食った?

 さて、たどり着いたイギニスの王宮。
 ああこれはあれだ。某千葉のネズミの国。色は赤いが、まさにそれだ。

「星は巡り……刻は進む。かの民を導いて、くらきき天を照らすともしびとならん。と言った所でしょうか」

 マジでデドリーさんどうした???

 なんかミリアの目が点を通り越して、虚無になってんぞ。
 あれか?賢者モードってやつか?まさか象人と……?いやいやまさかね。

 俺たちはソデザベス女王の謁見のために通路を進む。
 ――そして玉座の前に辿り着いた。

「私がソデザベス女王です。機人様、ようやくお目通りできましたね」

 ふむ、女王、という割には普通の服装だ。
 クソデカドレスでオーホホホホ!っていうのを想像していたんだが……。

 女王の目の前には、俺の切り落とした古代竜の腕があった。

 ソデザベスは、その腕を指して言う。

「我らの同名の証として、これほど確かなものはありません。ポトポトとイギニスは、正式に国交を結びましょう」

「……古代竜の脅威が無くなったら、ポトポトは用済みなのでは?」

「いえいえ、そんなことはありません」

 女王は、きらりを目を光らせて、我が意を得たりとばかりに続けた。

「我々イギニスは、関係を持った国『全員を勝たせます』見捨てるなどしません」
 
 ……ほう?

「つまり、3つの国が戦うと例えましょう。」

「A、B、Cの国3つの国がそれぞれ100の兵を持って居ます」

「AとBの国が戦って、Bが勝ち、10人の兵が残りました。そうすると、残ったCに、Bの国は攻められて、滅んでしまいますよね?」

「つまり、戦いを選んだ時点で、すでに負けが決まるわけです」

にっこりとほほ笑むソデザベス。

「イギニスは、そういった場合、3つの国に敗者を作らず、全員を勝たせます」

「そう、商売という手段を通して、共存共栄するのです!」

 ――なんだ、ソデザベス女王って良いやつじゃん!「アビャビャビャ!!!!!」

「ンッンー!どうしました!?機人様ン!」

 俺の体にメチャクチャ電撃が走った。犯人はナビさんだ。

「……む、なんでもない。ただのしゃっくりだ。」

(機人様。こんなクソ簡単な、破綻したロジックに同意しないでください)

(あ、気付かなかったけど、なんかおかしいんですね?)

(ええ。まず現実的に、3国が均等な条件になる事は、あり得ません。)
(あり得ない前提を元にした論理に、貴方は正当性があると思いますか?)

(あっはい、そうですね。)

(ムンゴル150、オーマ50、ポトポト20。これが現在の状態です。この三国を均等状態に置くことで、全てを勝たせるとソデザベスは定義しています)

(しかし、ムンゴルは自身の努力、もしくは環境要因で、すでに勝利している状態です。ムンゴルから見れば、一人負けの状態です)

(なるほど。たまったもんじゃないねそりゃ)

(はい、イギニスの目的は、第三者として影響力を行使し続ける事です。自然状態で、ムンゴルに勝たれたら困るんですよ。だからアヘアヘンを流したんです)

(え、そうだったの!?)

(イギニスは平和の使者に見せかけて、戦争を望む、死の商人ですよ)

(争い続ければ、3国の産業地盤は弱体化して、イギニスが参入しやすくなります。そうなった頃、我々が売れるものは、安い労働者しか残っていないでしょう)

(そう、象人の様に。)

(ごめん、理解が及ばない。ナビさん、もっと簡単にお願い)

(彼らは他人を争わせて、そこから生まれる利益を求めています)
(これまでに出会った勢力で、もっとも邪悪です。)
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