92 / 165
そうだ、新聞を作ろう
しおりを挟む
「……次は、こういう風な記事を考えてみたのだが……どうだろう!」
「ダメですね。ダメダメです!こんな話、読者には難しすぎます!」
「クッ……!」
俺はバーストという男と、机をつきあわして、「ある物」を作っている。
イギニスでニューペーパ―と呼ばれるもの。つまりは新聞だ。
「機人様、あなたはご自身の価値を過小評価しておられる。あなたはイギニス人にとっては未知の存在、夢の塊なんですよ!」
「……むむむ」
「なにが、むむむですか!!」
俺はあるニューペーパ―の会社を買収し、「ポトポト新聞」という新しい新聞を作ることにしたのだ。
これはイギニスでの、ポトポトと俺の知名度、そして評価を上げるのが目的だ。
「イギニス人は、常に刺激に飢えています。明日の天気は見ても、政治とか経済とかどうでもいいんですよ!」
バーストは俺の用意した政治、経済記事をわきにどけた。
えーんえーん……頑張って作ったのになあ。
「ふぅむ。では思い切ってこういうのはどうだろう」
俺は政治記事の代わりに、デドリーの星占いコーナーを用意することにした。「あなたが思うより、あなたはきっと幸せ」とかいうキャッチコピーを付けてみよう。
ちなみにデドリーのイラストは俺の直筆だ。結構かわいく描けたと思う。
「ふむ、悪くないですな。だがメインとするには弱いですな。」
「そしてこうする。」
俺はミリアをモデルにして描かれた、イギニス紀行をテーマにした4コマ漫画を左上に置く。順番を抜かされるとか、よくあるムカっとすることに出会った彼女が、そのローキックですべてを解決する痛快マンガだ。
ちなみにこれも直筆だ。
これはそのうち、だれかに代わりを書いてもらおう。
「ほう!風刺画はありふれていますが……連続性を持たせるとは面白い!これは良いですよ!うん!実にイイ!!」
ほう、バーストのお墨付きをもらえるとは、この方向性で良いんだな?
「……ふぅむ」
俺は自分で用意した政治記事を見る。
ポトポトに派遣された全権大使大使チャールスによって、イギニスにやってきた機人は、ソデザベス女王と面会中、突如乱入した古代竜との交渉の結果、イギリスのみならず、古代竜とも友好条約を結ぶことになった。これは三国の緊張を緩和し、新たな時代の地平線を開くものである。これはつまりウンヌンカンヌン……
「冷静になって見返してみると、確かに難しいことを書きすぎた。ちょっとこれをこうして……これでどうだ?」
イギニスの女王と、インダのドラゴンさん、そしてポトポトの機人さんは、話し合って、もうけんかをしないことにしました。これからもみんなで仲良くなれるといいですね。
「ふむ、これなら普通の読者にも読めるでしょう、しかしまだ……」
「で、これをさらにこうする」
イギニスの女王さま、
インダのドラゴンさん、
ポトポトの機人さん。
みんなで話し合って、けんかをやめました。
これからも、みんなで仲良くなれるといいですね。
「エーーークセレントォォ!!!!!」
「機人様は、政治記事の本質がお分かりだ。実に……イイ!!」
「……活字をワンサイズ大きくして、小見出し用の物を本文にして、さらに行間をわざと1段空けて見たのだ。かなり読みやすくなったと思う」
「ええ、これは他のニューペーパーに比べても、格段に読みやすい。これならばイギニスの市民も手に取りやすいでしょう!」
「そして、事件の因果関係やデータはばっさりカット。『けんかをやめた』という結果に『仲良くなれるといいですね』と、こっそり記者の意見をプラスする!!」
「余計な一言、これが世論誘導ですよ……、機人様!あなたは実にイイ!!」
「……ククク!!バースト君、キミもなかなかの悪じゃないか!」
「「ヌーハッハッハハ!!!」」
俺が買い取ったニューペーパー会社のバーストという男、こいつがとんだ掘り出しものだった。
この男は、真実を伝えるとかいう事には、これっぽっちも興味がない。
興味があるのはただ一つ。ニューペーパーを通して、世間の意見に変化を与える。この快感に取りつかれてしまった怪物なのだ。
こうして俺はイギニスの市民に対して直接、自身の意見を伝え、押し付けるという手段を手に入れた。
ここで、彼らが実際に何が悪いとか言いとか思う事は関係ない。
彼らが家族、職場の友人の間で、情報通、あるいは世間に対して見識ある人物として見られるために、ぱっと覚えられ、他人と共有できる「ストーリー」。
耳障りが良く、正義の側に立てる「ストーリー」ならなおよい。
これが必要なのだ。
これさえあれば、実際には何が起こっていようが、味方を増やしていける。
この味方、というのは、ミリアをはじめとする、ポトポトのエルフのような同盟者とは違う。消極的で、行動を起こさない、傍観者としての味方を指す。
そう、彼らが何もしないでいる限り、俺たちの共犯者にできるのだ。
よし、あとはポトポトやオーマの、あることない事を書いて、面白おかしくしてやろう。刺激的であればあるほど、この新聞を手に取ってくれる確率は上がるはずだ。
やるぞー!!
「ダメですね。ダメダメです!こんな話、読者には難しすぎます!」
「クッ……!」
俺はバーストという男と、机をつきあわして、「ある物」を作っている。
イギニスでニューペーパ―と呼ばれるもの。つまりは新聞だ。
「機人様、あなたはご自身の価値を過小評価しておられる。あなたはイギニス人にとっては未知の存在、夢の塊なんですよ!」
「……むむむ」
「なにが、むむむですか!!」
俺はあるニューペーパ―の会社を買収し、「ポトポト新聞」という新しい新聞を作ることにしたのだ。
これはイギニスでの、ポトポトと俺の知名度、そして評価を上げるのが目的だ。
「イギニス人は、常に刺激に飢えています。明日の天気は見ても、政治とか経済とかどうでもいいんですよ!」
バーストは俺の用意した政治、経済記事をわきにどけた。
えーんえーん……頑張って作ったのになあ。
「ふぅむ。では思い切ってこういうのはどうだろう」
俺は政治記事の代わりに、デドリーの星占いコーナーを用意することにした。「あなたが思うより、あなたはきっと幸せ」とかいうキャッチコピーを付けてみよう。
ちなみにデドリーのイラストは俺の直筆だ。結構かわいく描けたと思う。
「ふむ、悪くないですな。だがメインとするには弱いですな。」
「そしてこうする。」
俺はミリアをモデルにして描かれた、イギニス紀行をテーマにした4コマ漫画を左上に置く。順番を抜かされるとか、よくあるムカっとすることに出会った彼女が、そのローキックですべてを解決する痛快マンガだ。
ちなみにこれも直筆だ。
これはそのうち、だれかに代わりを書いてもらおう。
「ほう!風刺画はありふれていますが……連続性を持たせるとは面白い!これは良いですよ!うん!実にイイ!!」
ほう、バーストのお墨付きをもらえるとは、この方向性で良いんだな?
「……ふぅむ」
俺は自分で用意した政治記事を見る。
ポトポトに派遣された全権大使大使チャールスによって、イギニスにやってきた機人は、ソデザベス女王と面会中、突如乱入した古代竜との交渉の結果、イギリスのみならず、古代竜とも友好条約を結ぶことになった。これは三国の緊張を緩和し、新たな時代の地平線を開くものである。これはつまりウンヌンカンヌン……
「冷静になって見返してみると、確かに難しいことを書きすぎた。ちょっとこれをこうして……これでどうだ?」
イギニスの女王と、インダのドラゴンさん、そしてポトポトの機人さんは、話し合って、もうけんかをしないことにしました。これからもみんなで仲良くなれるといいですね。
「ふむ、これなら普通の読者にも読めるでしょう、しかしまだ……」
「で、これをさらにこうする」
イギニスの女王さま、
インダのドラゴンさん、
ポトポトの機人さん。
みんなで話し合って、けんかをやめました。
これからも、みんなで仲良くなれるといいですね。
「エーーークセレントォォ!!!!!」
「機人様は、政治記事の本質がお分かりだ。実に……イイ!!」
「……活字をワンサイズ大きくして、小見出し用の物を本文にして、さらに行間をわざと1段空けて見たのだ。かなり読みやすくなったと思う」
「ええ、これは他のニューペーパーに比べても、格段に読みやすい。これならばイギニスの市民も手に取りやすいでしょう!」
「そして、事件の因果関係やデータはばっさりカット。『けんかをやめた』という結果に『仲良くなれるといいですね』と、こっそり記者の意見をプラスする!!」
「余計な一言、これが世論誘導ですよ……、機人様!あなたは実にイイ!!」
「……ククク!!バースト君、キミもなかなかの悪じゃないか!」
「「ヌーハッハッハハ!!!」」
俺が買い取ったニューペーパー会社のバーストという男、こいつがとんだ掘り出しものだった。
この男は、真実を伝えるとかいう事には、これっぽっちも興味がない。
興味があるのはただ一つ。ニューペーパーを通して、世間の意見に変化を与える。この快感に取りつかれてしまった怪物なのだ。
こうして俺はイギニスの市民に対して直接、自身の意見を伝え、押し付けるという手段を手に入れた。
ここで、彼らが実際に何が悪いとか言いとか思う事は関係ない。
彼らが家族、職場の友人の間で、情報通、あるいは世間に対して見識ある人物として見られるために、ぱっと覚えられ、他人と共有できる「ストーリー」。
耳障りが良く、正義の側に立てる「ストーリー」ならなおよい。
これが必要なのだ。
これさえあれば、実際には何が起こっていようが、味方を増やしていける。
この味方、というのは、ミリアをはじめとする、ポトポトのエルフのような同盟者とは違う。消極的で、行動を起こさない、傍観者としての味方を指す。
そう、彼らが何もしないでいる限り、俺たちの共犯者にできるのだ。
よし、あとはポトポトやオーマの、あることない事を書いて、面白おかしくしてやろう。刺激的であればあるほど、この新聞を手に取ってくれる確率は上がるはずだ。
やるぞー!!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる