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予想外の攻撃
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――若草色の機人が倒されてから1か月後。
俺はイギニスの議会を流用した、「同盟議事堂」に居る。
大変な苦労の末、オーマ、インダ、イギニス、ムンゴル、そしてオブザーバーとして「目本」が加わった会議がここで行われている。
ようやくこの世界で(一応)連絡の取りあえる国家群が、世界の行く末を語る会議が開かれることになったのだ。
ちなみにオーマの聖職者のツテをたどって「ラメリカ合衆国」にもコンタクトを取ったのだが、「国民によらぬ政府を相手せず」という、返答が帰ってきただけだった。
どうやら、ラメリカはガチガチの民主主義国家らしい。
伝え聞く話だと、国民の多様性を認めるのがお国柄らしいが、多様性を認めるっつって、ポトポトやオーマみたいな王政は認めないって、なんかおかしくねえか?
まあいいや。それより会議の方に集中だ。
さて国同士で集まって何かを決めるというのは、とても大変な事なのだ。
国家や文明を運営する、シミュレーションゲームのマルチプレイに慣れた俺は、それが痛いほどにわかっている。
なにせクッソ当たり前なことに、人の考えとは「人それぞれ」だ。
わかりやすい例えで説明しよう。
世界とは、国際的な社会とは、例えるなら共同風呂みたいなもんだ。
熱い風呂にさっと入るのが好きな奴もいるし、ぬるい風呂に長くつかりたいやつだっている。水風呂の方が良いってやつ、足湯だけでいい奴もいる。
ここで温度や入浴時間をひとつに決めよう!
そんなこと言いだしたら、大戦争が起こるのは目にみえてるだろう?
何が快適なのかなんて「人それぞれ」なのは当たり前だ。
たしかにそうだろう。それぞれの温度で入れりゃベストだ。
しかし「それぞれ」だと困る時、そういうのは、絶対に出てきてしまう。
日によって温かったりクソ熱い銭湯に、誰が行きたいとおもうだろう?
決めなきゃいけないもんはたくさんある。
そしてそれをバチッっと決めると、意見の合わない誰かが犠牲になる。
正義の味方になるという事は、誰かの悪役になるという事だ。
悪役になるのを避けることができる、非常に良識ある行為というものは、もっともらしく話をして、中身が何もないフレーズを連呼するということだ。
決意をもって抜本的な改革を!無駄をなくそう!平和のために!弱者のために!
どうしてそんなことをするのか?
まず第一に、真面目に政治を語ると、退屈だからだ。
第二に、「こうするべきだ!こういう政策をとるべきなんだ!」なんて政治家が具体的な事を述べようものなら、誰かの悪役になる部分を強調されて、無事選挙に落選して無職になるのだ。
意味の無いことをすることが、生存戦略として非常に正しい。
検討します、考慮します、適切に判断します。これらは理に適った判断なのだ。
明らかに間違っているにもかかわらず。
これが政治と政治家の難しい所だな。
誰でも快適に感じる、「理想の温度」を求める必要があるのは誰でもわかる。
そして、それを求めるうえで、誰かが犠牲になってはいけない。
これには政治家本人も含まれている。
誰かを生贄にしたら、次は自分が生贄になった時に断れなくなってしまう。
政治や国際社会とは、そういうものなのだ。
だからこそ、フレーズではなく、意見を戦わせる必要があるのだ。
答えは出ないのはわかりきっている。求める姿勢が大事なのだ。
――大事、なんだが……うーん。
『インダのカンジーのボディープレース!!!これは痛ァィ!!!』
『激しいラッシュの応酬だぁぁぁ!イギニス王とデイツ王のラッシュ合戦!!』
『おっとー!インダのリューが火を吹いたぁ!これはいけません!口から出るものならセーフと言っていますが……おっとここで、レフェリーによるストップです!!!リューは退場です!!!』
いつの間にか議長席が実況席になってるし!!!
あのゴングとか、どこから持ってきたんだよ?!!!
クソッ!意見を戦わせるっていう「戦わせる」の部分が悪かったか?!
ええい、この蛮族共が!!!!!
(Cis. やはり有機生命体に政治は難しすぎるのでは?)
(同意せざるを得ないのが非常に無念だ)
「……前途多難といった感じだな」
「はい。とても悲しい事です。またここで人と人が争い合うとは」
戦いの喧噪がひろがる議会の中。
そのさなかでもスッっと入ってくる、鈴の音のように澄んだ声でもって、俺に内なる気持ちを告げたのはミリアさんだ。
あれ?真っ先にローキックを食らわしに行くかと思ったのに、あれれれ???
デドリーならわかる、だがなぜミリアさんがこんなに冷静なんだ?
よく見ると、ポトポトの議員席のエルフたちは皆冷静だ。そしてその手前に、一様に同じような形、色の白いツボが並んでいる。
んんんんん……????あんな備品、用意したか?
よく見ると、戦いに参加していない各国の議員の前にも、似たようなツボがある。
「先祖の霊の苦しみを癒すためにも、私たちは平和を求めねばなりません。過去の歴史を精算するために、『父なる太陽』に祈りを捧げましょう」
「ええ、彼ら、サタンの価値観に蝕まれている者たちにも救い有らんことを」
「あのようなことを繰り返しては、先祖が不幸になりますし、子孫が天界で祝福されなくなります」
「「「太陽あれ」」」
「……。」
(ナビッ!――やれるかッ?!)
(Cis. 機人様!!)
『審判の雷轟!!!!!』
俺はオートキャノンの銃身を天に掲げ、パイルバンカーの全エネルギーをそこへと流した。
プロレスをしている連中、怪しいツボを前にしている連中、有象無象の区別なく、俺から発せられる、青白い電撃が議会の中を奔った!!!
「「「アビャビャビャビャビャビャ!!!!」」」
(今すぐにこのツボの出どころを調べる!!いくぞナビ!)
(CIs. 急ぎましょう。イヤな予感がします)
俺はイギニスの議会を流用した、「同盟議事堂」に居る。
大変な苦労の末、オーマ、インダ、イギニス、ムンゴル、そしてオブザーバーとして「目本」が加わった会議がここで行われている。
ようやくこの世界で(一応)連絡の取りあえる国家群が、世界の行く末を語る会議が開かれることになったのだ。
ちなみにオーマの聖職者のツテをたどって「ラメリカ合衆国」にもコンタクトを取ったのだが、「国民によらぬ政府を相手せず」という、返答が帰ってきただけだった。
どうやら、ラメリカはガチガチの民主主義国家らしい。
伝え聞く話だと、国民の多様性を認めるのがお国柄らしいが、多様性を認めるっつって、ポトポトやオーマみたいな王政は認めないって、なんかおかしくねえか?
まあいいや。それより会議の方に集中だ。
さて国同士で集まって何かを決めるというのは、とても大変な事なのだ。
国家や文明を運営する、シミュレーションゲームのマルチプレイに慣れた俺は、それが痛いほどにわかっている。
なにせクッソ当たり前なことに、人の考えとは「人それぞれ」だ。
わかりやすい例えで説明しよう。
世界とは、国際的な社会とは、例えるなら共同風呂みたいなもんだ。
熱い風呂にさっと入るのが好きな奴もいるし、ぬるい風呂に長くつかりたいやつだっている。水風呂の方が良いってやつ、足湯だけでいい奴もいる。
ここで温度や入浴時間をひとつに決めよう!
そんなこと言いだしたら、大戦争が起こるのは目にみえてるだろう?
何が快適なのかなんて「人それぞれ」なのは当たり前だ。
たしかにそうだろう。それぞれの温度で入れりゃベストだ。
しかし「それぞれ」だと困る時、そういうのは、絶対に出てきてしまう。
日によって温かったりクソ熱い銭湯に、誰が行きたいとおもうだろう?
決めなきゃいけないもんはたくさんある。
そしてそれをバチッっと決めると、意見の合わない誰かが犠牲になる。
正義の味方になるという事は、誰かの悪役になるという事だ。
悪役になるのを避けることができる、非常に良識ある行為というものは、もっともらしく話をして、中身が何もないフレーズを連呼するということだ。
決意をもって抜本的な改革を!無駄をなくそう!平和のために!弱者のために!
どうしてそんなことをするのか?
まず第一に、真面目に政治を語ると、退屈だからだ。
第二に、「こうするべきだ!こういう政策をとるべきなんだ!」なんて政治家が具体的な事を述べようものなら、誰かの悪役になる部分を強調されて、無事選挙に落選して無職になるのだ。
意味の無いことをすることが、生存戦略として非常に正しい。
検討します、考慮します、適切に判断します。これらは理に適った判断なのだ。
明らかに間違っているにもかかわらず。
これが政治と政治家の難しい所だな。
誰でも快適に感じる、「理想の温度」を求める必要があるのは誰でもわかる。
そして、それを求めるうえで、誰かが犠牲になってはいけない。
これには政治家本人も含まれている。
誰かを生贄にしたら、次は自分が生贄になった時に断れなくなってしまう。
政治や国際社会とは、そういうものなのだ。
だからこそ、フレーズではなく、意見を戦わせる必要があるのだ。
答えは出ないのはわかりきっている。求める姿勢が大事なのだ。
――大事、なんだが……うーん。
『インダのカンジーのボディープレース!!!これは痛ァィ!!!』
『激しいラッシュの応酬だぁぁぁ!イギニス王とデイツ王のラッシュ合戦!!』
『おっとー!インダのリューが火を吹いたぁ!これはいけません!口から出るものならセーフと言っていますが……おっとここで、レフェリーによるストップです!!!リューは退場です!!!』
いつの間にか議長席が実況席になってるし!!!
あのゴングとか、どこから持ってきたんだよ?!!!
クソッ!意見を戦わせるっていう「戦わせる」の部分が悪かったか?!
ええい、この蛮族共が!!!!!
(Cis. やはり有機生命体に政治は難しすぎるのでは?)
(同意せざるを得ないのが非常に無念だ)
「……前途多難といった感じだな」
「はい。とても悲しい事です。またここで人と人が争い合うとは」
戦いの喧噪がひろがる議会の中。
そのさなかでもスッっと入ってくる、鈴の音のように澄んだ声でもって、俺に内なる気持ちを告げたのはミリアさんだ。
あれ?真っ先にローキックを食らわしに行くかと思ったのに、あれれれ???
デドリーならわかる、だがなぜミリアさんがこんなに冷静なんだ?
よく見ると、ポトポトの議員席のエルフたちは皆冷静だ。そしてその手前に、一様に同じような形、色の白いツボが並んでいる。
んんんんん……????あんな備品、用意したか?
よく見ると、戦いに参加していない各国の議員の前にも、似たようなツボがある。
「先祖の霊の苦しみを癒すためにも、私たちは平和を求めねばなりません。過去の歴史を精算するために、『父なる太陽』に祈りを捧げましょう」
「ええ、彼ら、サタンの価値観に蝕まれている者たちにも救い有らんことを」
「あのようなことを繰り返しては、先祖が不幸になりますし、子孫が天界で祝福されなくなります」
「「「太陽あれ」」」
「……。」
(ナビッ!――やれるかッ?!)
(Cis. 機人様!!)
『審判の雷轟!!!!!』
俺はオートキャノンの銃身を天に掲げ、パイルバンカーの全エネルギーをそこへと流した。
プロレスをしている連中、怪しいツボを前にしている連中、有象無象の区別なく、俺から発せられる、青白い電撃が議会の中を奔った!!!
「「「アビャビャビャビャビャビャ!!!!」」」
(今すぐにこのツボの出どころを調べる!!いくぞナビ!)
(CIs. 急ぎましょう。イヤな予感がします)
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