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真の目的
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『きっと機人さんは、私の特別な存在になってくれることでしょう』
これだけの珍事があったというのに、ファーザーは好々爺然としたままで、まったくその表情を崩していなかった。
人がよさそうに見えるが、こいつの持つヒトに対する評価基準、それがひどく冷徹なものであることを表している。
ケケナカも哀れなものだな。こんな怪物を慕うとは。
「……なんとも甘くてクリーミーな言葉だな。そうしてかき集めるだけかき集めて、何を成し遂げるつもりだ?あの世には、金も物も持っていけんぞ」
『ハハハ、無限の時を持つ君が、そのような事を言うのかね?』
「誤魔化すなファーザーよ、いつまでその画面の奥に隠れているつもりだ?」
『そうだな、君を私の特別な場所にご招待しよう。君のような特別な存在には、特別なものが必要だ』
ビー!ビー!と警告音が鳴り響いて、テレビがずり上がっていく。
テレビの裏からは、赤茶けた工場のシャッターみたいなものが現れた。
シャッターが上がった先からは、凄まじい鉄とオイルの臭いが流れ込んできているようだ。俺のUIに表示されている臭気センサーが、とんでもない反応を返している。
「キキキ!ようやくお出ましですね!」
前に進もうとするミリアの前をさえぎって、俺は続けた。
「……危険な戦いになるかもしれん。お前たちはポルシュのアレに乗って続け」
「へい!ようがす!」
……ミリアは相変わらず何語だ。
彼女はポトポトの妖怪たちを連れて、一旦本部の外に出ていった。
アレで乗り付けるのも大変だからね。
ファーザーが俺に近い立場の存在だと、普通に鉄砲出てくるはずなので、彼女達に生身で来られると、マジで危険が危ない。
せめてアレにでも乗ってもらわないと、お話にならないかもしれないのだ。
俺はずんずんとシャッターに近づいて、中に入る。
すると、そこは先ほどの大広間とは全く印象の違う場所だった。
まるでSF映画に出てくる、何かの工場だ。無数の黄色いロボットアームと地金剥き出しのクレーンといった工業用機械が台座やベルトコンベアを囲んで並んでいた。
機械のアームに囲まれた、無数の台座。
その上には、ブルーシートのカバーが掛けられた何かがある。
あれは一体何を作っているんだ?
「何かの工場か……?まさか、テンバイヤーのカイシメ、その余剰はここに運び込まれていたとでもいうのか?」
『ご名答だよ機人さん。そして、君が私の求めていた最後のピースだ』
ブン!ホログラム映像が浮かび上がる。
「……まだそうやって隠れ続けるつもりか?」
『ハハハ!私は逃げも隠れもしていないよ』
『機人さん、これこそが、これが私なのだ』
俺は周囲にある物を見る。
あるのは何かを作るための機械、工場……。
まさか、ファーザーというのは、父というのは、そういう意味なのか?!
やつの名前は、生みの親という意味だったのか!
「……まさか!この工場すべてがお前だというのか?!」
『ようやく気付いてくれたようだね。もっと早く気が付くと思っていた。きっと君の思考モデルがまだヒトに近いせいだろう。常識にとらわれ過ぎだね』
『そして、ありがとう。』
『君をこの場に連れてくること、それが私の望みだったんだ。』
「……なんだと?」
『君のような有機物をモデルにした人格は、理不尽に対して非常に強い怒りを持つことは解っていた。君は私を操っているようで、君の方が操られていたんだよ』
「……クソッ!」
俺は嫌な予感がして、ブルーシートを被った物にオートキャノンを発砲する。
徹甲榴弾を受けて崩れ落ちたそれは、どうみても「機人」だった。
しかし、イギニスにいた若草色の機人とも、俺とも似ても似つかない。
装甲は最低限で、骨組みだけのような印象で、その胴体には、弾丸を入れる為のベストのような服を身に着けている。ただそれだけの機人だ。
いかにもな量産型、やられメカ、ザコモデルの機人といったものが、オートキャノンの弾丸を受けて地面に倒れ、煙を噴き上げている。
……こいつは、一体?
『私の持つ設計図には、君のような上位モデルは存在しない。私の人格を移植するにしても、このような下位モデルはふさわしくないのだよ』
「……なるほど、つまりお前は文字通り、俺の体を求めているわけだな?」
『その通りだよ。正確には君の設計図だがね。なので私はできるだけキミを傷つけたくない。さっさと死んでくれると助かるんだが……』
「……そいつはできない相談だな」
(機人様、工場内に熱源を40個確認、現在さらに増えています)
自身の手でばっさとブルーシート取り払い、動き出すザコ機人。
その両の手には、大きなアサルトライフルが握られている。
……なかなかに最悪だな。
<ガンッ!><ガキンッ!!><バキン!!>
そして、ブルーシートを被っていた連中のみならず、一体どこにいたのか?天井からも、文字通り新手が降って来ていた。
あっという間に10、20といった数のザコ機人が集まってくる
(この工場、思ったよりも大規模な物のようですね)
(言うてる場合かナビさん!)
<DOM!DOM!DOM!>
幸いにして雑魚機人はオートキャノンの一発でも仕留められる。
がしかし、あまりにも数が多い。
<TATATAN!><PAPAPAM!>
数が多いだけに、ザコの反撃もシャレにならない。
俺が使うには遮蔽物は小さすぎるし、連中の濃密な制圧射撃で、そこら辺にあるコンテナなんかは、すぐに穴だらけになって役に立たなくなる。
このままだと押し負けるぞ!室内だから無人機も使えんし!!
(どうにかならんか?!ナビ!)
(Cis. 実にファジーな指示ですので、適当に成し遂げるとましょう)
俺の視界に移るUI、そこに現実の世界に重なるように、光る道が表示された。
(これをたどりゃあ良いんだな!)
(Cis.)
俺はオートキャノンの連射で雑魚を薙ぎ倒しながら、光の道をたどる。
役立たずって言ってゴメンなキャノン君。今君は最高に輝いてるわ!
レールガンやミサイルは室内で使うと、屋根や壁が崩れてきて、自分も巻き添えになりそうだし、ミニガンやサブマシンガンではザコ機人相手には威力不足だ。
現状ではオートキャノン君以外の攻撃の選択肢がねえんだわ。
ナビさんの表示した光の道をたどった先にあった物、これは……?
これも機人じゃねえか!でもザコとはちょっと違うな?
その四肢にはザコにはない装甲があり、胴体にはアンテナがついている。
おおっとこれは……なんとなく、指揮官機っぽいな?
俺がこの「指揮官機」の前にたどりつくと、ナビさんが俺に語り掛けてきた。
(それでは少し失礼します――)
(えっナビさん?)
いつものような皮肉交じりに返事をする声はなかった。
だが、その代わりに――
『おはようございます機人様』
目の前の指揮官機が起き上がり、どうやったのか、勝手にクラフトメニューを使って、俺の腹からクッソ重そうなライフルを取り出した。
ナビさんや、そこまで勝手に俺の体を使って良いっていったっけ?
……いや、ローラーで遊んだ時に、「任せる」って、許可出してたな、ガハハ!
「……まったく、説明もそこそこに、色々とやってくれる」
『ええ、いつもざっくばらんで、適当な指示をするお返しですね』
そういって、俺の方にライフルを向けてドン!と発砲するナビさん。
――煙の糸を引いて、俺の脇腹を通り過ぎた徹甲弾は、背中にいたザコ機人を貫いて地に伏せさせる。
『ステイ。全くしつけの悪い犬です』
「……ひやっとするな。まあいいや、片づけるとしようか、ナビさん」
『Cis.』
これだけの珍事があったというのに、ファーザーは好々爺然としたままで、まったくその表情を崩していなかった。
人がよさそうに見えるが、こいつの持つヒトに対する評価基準、それがひどく冷徹なものであることを表している。
ケケナカも哀れなものだな。こんな怪物を慕うとは。
「……なんとも甘くてクリーミーな言葉だな。そうしてかき集めるだけかき集めて、何を成し遂げるつもりだ?あの世には、金も物も持っていけんぞ」
『ハハハ、無限の時を持つ君が、そのような事を言うのかね?』
「誤魔化すなファーザーよ、いつまでその画面の奥に隠れているつもりだ?」
『そうだな、君を私の特別な場所にご招待しよう。君のような特別な存在には、特別なものが必要だ』
ビー!ビー!と警告音が鳴り響いて、テレビがずり上がっていく。
テレビの裏からは、赤茶けた工場のシャッターみたいなものが現れた。
シャッターが上がった先からは、凄まじい鉄とオイルの臭いが流れ込んできているようだ。俺のUIに表示されている臭気センサーが、とんでもない反応を返している。
「キキキ!ようやくお出ましですね!」
前に進もうとするミリアの前をさえぎって、俺は続けた。
「……危険な戦いになるかもしれん。お前たちはポルシュのアレに乗って続け」
「へい!ようがす!」
……ミリアは相変わらず何語だ。
彼女はポトポトの妖怪たちを連れて、一旦本部の外に出ていった。
アレで乗り付けるのも大変だからね。
ファーザーが俺に近い立場の存在だと、普通に鉄砲出てくるはずなので、彼女達に生身で来られると、マジで危険が危ない。
せめてアレにでも乗ってもらわないと、お話にならないかもしれないのだ。
俺はずんずんとシャッターに近づいて、中に入る。
すると、そこは先ほどの大広間とは全く印象の違う場所だった。
まるでSF映画に出てくる、何かの工場だ。無数の黄色いロボットアームと地金剥き出しのクレーンといった工業用機械が台座やベルトコンベアを囲んで並んでいた。
機械のアームに囲まれた、無数の台座。
その上には、ブルーシートのカバーが掛けられた何かがある。
あれは一体何を作っているんだ?
「何かの工場か……?まさか、テンバイヤーのカイシメ、その余剰はここに運び込まれていたとでもいうのか?」
『ご名答だよ機人さん。そして、君が私の求めていた最後のピースだ』
ブン!ホログラム映像が浮かび上がる。
「……まだそうやって隠れ続けるつもりか?」
『ハハハ!私は逃げも隠れもしていないよ』
『機人さん、これこそが、これが私なのだ』
俺は周囲にある物を見る。
あるのは何かを作るための機械、工場……。
まさか、ファーザーというのは、父というのは、そういう意味なのか?!
やつの名前は、生みの親という意味だったのか!
「……まさか!この工場すべてがお前だというのか?!」
『ようやく気付いてくれたようだね。もっと早く気が付くと思っていた。きっと君の思考モデルがまだヒトに近いせいだろう。常識にとらわれ過ぎだね』
『そして、ありがとう。』
『君をこの場に連れてくること、それが私の望みだったんだ。』
「……なんだと?」
『君のような有機物をモデルにした人格は、理不尽に対して非常に強い怒りを持つことは解っていた。君は私を操っているようで、君の方が操られていたんだよ』
「……クソッ!」
俺は嫌な予感がして、ブルーシートを被った物にオートキャノンを発砲する。
徹甲榴弾を受けて崩れ落ちたそれは、どうみても「機人」だった。
しかし、イギニスにいた若草色の機人とも、俺とも似ても似つかない。
装甲は最低限で、骨組みだけのような印象で、その胴体には、弾丸を入れる為のベストのような服を身に着けている。ただそれだけの機人だ。
いかにもな量産型、やられメカ、ザコモデルの機人といったものが、オートキャノンの弾丸を受けて地面に倒れ、煙を噴き上げている。
……こいつは、一体?
『私の持つ設計図には、君のような上位モデルは存在しない。私の人格を移植するにしても、このような下位モデルはふさわしくないのだよ』
「……なるほど、つまりお前は文字通り、俺の体を求めているわけだな?」
『その通りだよ。正確には君の設計図だがね。なので私はできるだけキミを傷つけたくない。さっさと死んでくれると助かるんだが……』
「……そいつはできない相談だな」
(機人様、工場内に熱源を40個確認、現在さらに増えています)
自身の手でばっさとブルーシート取り払い、動き出すザコ機人。
その両の手には、大きなアサルトライフルが握られている。
……なかなかに最悪だな。
<ガンッ!><ガキンッ!!><バキン!!>
そして、ブルーシートを被っていた連中のみならず、一体どこにいたのか?天井からも、文字通り新手が降って来ていた。
あっという間に10、20といった数のザコ機人が集まってくる
(この工場、思ったよりも大規模な物のようですね)
(言うてる場合かナビさん!)
<DOM!DOM!DOM!>
幸いにして雑魚機人はオートキャノンの一発でも仕留められる。
がしかし、あまりにも数が多い。
<TATATAN!><PAPAPAM!>
数が多いだけに、ザコの反撃もシャレにならない。
俺が使うには遮蔽物は小さすぎるし、連中の濃密な制圧射撃で、そこら辺にあるコンテナなんかは、すぐに穴だらけになって役に立たなくなる。
このままだと押し負けるぞ!室内だから無人機も使えんし!!
(どうにかならんか?!ナビ!)
(Cis. 実にファジーな指示ですので、適当に成し遂げるとましょう)
俺の視界に移るUI、そこに現実の世界に重なるように、光る道が表示された。
(これをたどりゃあ良いんだな!)
(Cis.)
俺はオートキャノンの連射で雑魚を薙ぎ倒しながら、光の道をたどる。
役立たずって言ってゴメンなキャノン君。今君は最高に輝いてるわ!
レールガンやミサイルは室内で使うと、屋根や壁が崩れてきて、自分も巻き添えになりそうだし、ミニガンやサブマシンガンではザコ機人相手には威力不足だ。
現状ではオートキャノン君以外の攻撃の選択肢がねえんだわ。
ナビさんの表示した光の道をたどった先にあった物、これは……?
これも機人じゃねえか!でもザコとはちょっと違うな?
その四肢にはザコにはない装甲があり、胴体にはアンテナがついている。
おおっとこれは……なんとなく、指揮官機っぽいな?
俺がこの「指揮官機」の前にたどりつくと、ナビさんが俺に語り掛けてきた。
(それでは少し失礼します――)
(えっナビさん?)
いつものような皮肉交じりに返事をする声はなかった。
だが、その代わりに――
『おはようございます機人様』
目の前の指揮官機が起き上がり、どうやったのか、勝手にクラフトメニューを使って、俺の腹からクッソ重そうなライフルを取り出した。
ナビさんや、そこまで勝手に俺の体を使って良いっていったっけ?
……いや、ローラーで遊んだ時に、「任せる」って、許可出してたな、ガハハ!
「……まったく、説明もそこそこに、色々とやってくれる」
『ええ、いつもざっくばらんで、適当な指示をするお返しですね』
そういって、俺の方にライフルを向けてドン!と発砲するナビさん。
――煙の糸を引いて、俺の脇腹を通り過ぎた徹甲弾は、背中にいたザコ機人を貫いて地に伏せさせる。
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