140 / 165
ラメリカ合衆国サイド
しおりを挟む
思えば遠くに来たものだ。
私は神聖オーマ帝国宰相にして、ムンゴル帝国参謀にして、サバミソ組若頭にして、そして今はラメリカ合衆国の「非営利団体」の「正常会」会長、ネコマだ。
非営利団体とは、福祉、教育、文化、環境など社会を正常にする活動を行う団体だ。なので正常会は、活動で得られた「利益」を構成員に分配することを目的としない。
収益を目的とする事業を行うこと自体はセーフだが、その収益はポケットに入れるのではなく、活動の維持に使わねばならない。
ラメリカ合衆国はこの「非営利団体」という仕組みにとても力を入れている。
政府という枠組みよりも、民間人による互助を重視しているそうだ。
上から与えるのではなく、横に広くつながって助け合う。
「非営利団体」のコンセプトは非常に素晴らしい。
しかし……。
「この者は我々『正常会』の活動に『いかがなものか』と反抗した!これは社会正義に反する教育です!!なのでこれより彼を『真人間』に転生させます!」
「人間になあれ!!」「人間になあれ!!」「人間になあれ!!」
グシャ!ボカッ!ドカッ!
囲んで棒で叩かれているのは、「正常会」の活動に対して疑問を呈した男性だ。
「正常会」は常に【正義】でなくてはならない。
非営利である我々は社会正義のために働いているのだ。
正義を否定するという事は、非営利団体ではなく営利団体ということになる。
なのでこういった批判は一切許さず、物理的に抹殺しないといけないのだ。
我々の存在を揺るがすものは敵であり、一切容赦しない。
正常会とは、非営利武装組織でもあるのだ。
「正常会」の持つ戦力は、主力戦車120両、第10世代戦闘攻撃機30機、そしてさらに、機械化歩兵の兵員は30万を数える。
しかしこれでも新興団体であり、正常会はそこまで大きい組織ではない。
ラメリカ合衆国でもっとも大きな非営利団体は「協力生産党」だ。
彼ら「協力生産党」に比べれば、我々は豆粒のような団体だ。
因みに我が「正常会」の活動内容は単純だ。
社会正義にそぐわない「非人間的」存在を抹消して、「人間」にする。そうしてこの地上に楽園をつくり、住みよいまちづくりをすること。
これが我々の活動内容であり目的だ。
オス化した男性、正常会を批判する絵や文章を書く活動家、そしてもっぱらに我々が不快と感じる者を撲殺したり、壁に並べ銃殺することで浄化する。
最近は火炎放射器や火器を人間にすることに使えないのが不便だな。
だが我々正常会が二酸化炭素を大きく排出する兵器を使う訳にはいかない。
もっとも先進的で社会正義に則した近代兵器は「石」と「棒」だ。
調達が容易で、製造に二酸化炭素を排出せず、廃棄も容易で自然環境に悪影響を与えない。「木の棒」はまさに「社会正義」を象徴する武器だ。
……ということらしいが、正直バカバカしくてやってられない。
私がこれまで訪れた中で、もっとも近代的な文明をもつラメリカがこの有様って、一体何が起きてるんだ?正直な話、オーマの方が文明的だぞ?
「社会正義」とやらに振り回されて、完全に正常な判断力を失っている。
だがしかし、この暴走する正義を正そうとすると、今度はこちらが棒でぶたれる番となる。自浄作用なんてとうに無くなっている。
どうしてこうなった……?
ひどくバカバカしいが、流れに身を任せる以上に、できることなど無い。
暴力が荒れ狂う時代を生き抜く、最も確実な手段というのは、「暴力をふるう側」に自分自身を置く事だからだ。
つまり、暴力をふるえば振るうほど、危険性を増せば増すほど、非営利団体に関わろうとする、あるいは直接メンバーになろうとするものが増える構造なのだ。
そして非営利団体はその団体が存続する限り、運営者は利益を得ることが可能だ。
最初に言ったと思うが、繰り返そう。
正常会は、活動で得られた「利益」を構成員に分配することを目的としない。
収益を目的とする事業を行うこと自体はセーフだ。
収益はポケットに入れるのではなく、活動の維持に使わねばならない。
――わかるだろうか。
活動の維持、つまり指導者と団体がイコールならば、活動で生まれる利益の全てがリーダーのポケットに入ってるのと同じことだ。
つまりだ、非営利団体とは「親の総取り」を約束しているシステムでもあるのだ。
コンセプトは素晴らしいが、悪意を持って運用する者にとっては、これほど都合のいいシステムは存在しない。
ラメリカ合衆国で最初にこれを言いだしたものはよくわかっていない。
ただ「ドリーマー」という称号が残っているだけだ。
こいつのせいでラメリカには非営利団体を作って立身出世する、ラメリカン・ドリーマーなんていう言葉まで生まれてしまった。
最初の非営利団体、「協力者《コーポ》」を率いたのは「ドリーマー」という伝説的人物だ。すでに表舞台を去って久しいが、とんでもないことをしてくれたものだ。
いまさらオーマにもどったとしても、恐らく私はお尋ね者だ。
ならばここで居場所を見つける他は無い。
どうか神様お願いです。
ラメリカのバカが、ポトポトの機人にちょっかいを出しませんように。
そうなったらすべてが終わる。
機人がこのような惨状を目にして、暴れ出さないはずがないからだ。
私は青い空にそれを祈るしかなかった。
私は神聖オーマ帝国宰相にして、ムンゴル帝国参謀にして、サバミソ組若頭にして、そして今はラメリカ合衆国の「非営利団体」の「正常会」会長、ネコマだ。
非営利団体とは、福祉、教育、文化、環境など社会を正常にする活動を行う団体だ。なので正常会は、活動で得られた「利益」を構成員に分配することを目的としない。
収益を目的とする事業を行うこと自体はセーフだが、その収益はポケットに入れるのではなく、活動の維持に使わねばならない。
ラメリカ合衆国はこの「非営利団体」という仕組みにとても力を入れている。
政府という枠組みよりも、民間人による互助を重視しているそうだ。
上から与えるのではなく、横に広くつながって助け合う。
「非営利団体」のコンセプトは非常に素晴らしい。
しかし……。
「この者は我々『正常会』の活動に『いかがなものか』と反抗した!これは社会正義に反する教育です!!なのでこれより彼を『真人間』に転生させます!」
「人間になあれ!!」「人間になあれ!!」「人間になあれ!!」
グシャ!ボカッ!ドカッ!
囲んで棒で叩かれているのは、「正常会」の活動に対して疑問を呈した男性だ。
「正常会」は常に【正義】でなくてはならない。
非営利である我々は社会正義のために働いているのだ。
正義を否定するという事は、非営利団体ではなく営利団体ということになる。
なのでこういった批判は一切許さず、物理的に抹殺しないといけないのだ。
我々の存在を揺るがすものは敵であり、一切容赦しない。
正常会とは、非営利武装組織でもあるのだ。
「正常会」の持つ戦力は、主力戦車120両、第10世代戦闘攻撃機30機、そしてさらに、機械化歩兵の兵員は30万を数える。
しかしこれでも新興団体であり、正常会はそこまで大きい組織ではない。
ラメリカ合衆国でもっとも大きな非営利団体は「協力生産党」だ。
彼ら「協力生産党」に比べれば、我々は豆粒のような団体だ。
因みに我が「正常会」の活動内容は単純だ。
社会正義にそぐわない「非人間的」存在を抹消して、「人間」にする。そうしてこの地上に楽園をつくり、住みよいまちづくりをすること。
これが我々の活動内容であり目的だ。
オス化した男性、正常会を批判する絵や文章を書く活動家、そしてもっぱらに我々が不快と感じる者を撲殺したり、壁に並べ銃殺することで浄化する。
最近は火炎放射器や火器を人間にすることに使えないのが不便だな。
だが我々正常会が二酸化炭素を大きく排出する兵器を使う訳にはいかない。
もっとも先進的で社会正義に則した近代兵器は「石」と「棒」だ。
調達が容易で、製造に二酸化炭素を排出せず、廃棄も容易で自然環境に悪影響を与えない。「木の棒」はまさに「社会正義」を象徴する武器だ。
……ということらしいが、正直バカバカしくてやってられない。
私がこれまで訪れた中で、もっとも近代的な文明をもつラメリカがこの有様って、一体何が起きてるんだ?正直な話、オーマの方が文明的だぞ?
「社会正義」とやらに振り回されて、完全に正常な判断力を失っている。
だがしかし、この暴走する正義を正そうとすると、今度はこちらが棒でぶたれる番となる。自浄作用なんてとうに無くなっている。
どうしてこうなった……?
ひどくバカバカしいが、流れに身を任せる以上に、できることなど無い。
暴力が荒れ狂う時代を生き抜く、最も確実な手段というのは、「暴力をふるう側」に自分自身を置く事だからだ。
つまり、暴力をふるえば振るうほど、危険性を増せば増すほど、非営利団体に関わろうとする、あるいは直接メンバーになろうとするものが増える構造なのだ。
そして非営利団体はその団体が存続する限り、運営者は利益を得ることが可能だ。
最初に言ったと思うが、繰り返そう。
正常会は、活動で得られた「利益」を構成員に分配することを目的としない。
収益を目的とする事業を行うこと自体はセーフだ。
収益はポケットに入れるのではなく、活動の維持に使わねばならない。
――わかるだろうか。
活動の維持、つまり指導者と団体がイコールならば、活動で生まれる利益の全てがリーダーのポケットに入ってるのと同じことだ。
つまりだ、非営利団体とは「親の総取り」を約束しているシステムでもあるのだ。
コンセプトは素晴らしいが、悪意を持って運用する者にとっては、これほど都合のいいシステムは存在しない。
ラメリカ合衆国で最初にこれを言いだしたものはよくわかっていない。
ただ「ドリーマー」という称号が残っているだけだ。
こいつのせいでラメリカには非営利団体を作って立身出世する、ラメリカン・ドリーマーなんていう言葉まで生まれてしまった。
最初の非営利団体、「協力者《コーポ》」を率いたのは「ドリーマー」という伝説的人物だ。すでに表舞台を去って久しいが、とんでもないことをしてくれたものだ。
いまさらオーマにもどったとしても、恐らく私はお尋ね者だ。
ならばここで居場所を見つける他は無い。
どうか神様お願いです。
ラメリカのバカが、ポトポトの機人にちょっかいを出しませんように。
そうなったらすべてが終わる。
機人がこのような惨状を目にして、暴れ出さないはずがないからだ。
私は青い空にそれを祈るしかなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
49
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる