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機人裁判 結 そして完全に忘れてたアイツ

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「陪審員の投票によると、有罪5、無罪6」

「よって判決は~無罪!だと……思う、よお!!!!」

 裁判長は俺に対して判決を読み上げた。
 辛くも勝利、か……。

 いや、なんであの内容でギリギリなんだよ?!
 おかしいだろ!!!!

「……身の潔白を証明できたようで何よりだ」

 実際のとこ、ダンジョンクソたわけが出来たのは100%あのオバハンが入り込んだのが原因だし、オバハン100%ジュースも俺がキツネさんたちに「やれ」っていったわけじゃないからな。

 マジでとばっちりだよもう!
 いいかげんにして!おうちかえして!!
 かえりたいのもう!!

(帰っちゃだめですよ機人様)
(え~だめかなぁ?わりと帰りたいんだけどもう)

(この国、一応文明は発達してますから、このまま崩壊するにしても、周りを巻き込んで倒れる場合、ポトポトにも波及しますから)

(イギニスや目本みたいに何とかしろって?)

(Cis.)

(そうはいってもナビさんや、ネット掲示板なんかで面白がって仲間内で話題にするとは別種のヤバさですよコレ。現実問題になっちゃってるんだもん)

(だからこそ何とかしてほしいんですが……)

 俺は逃げるように裁判所を後にすることにした。
 ミリアとデドリーを連れ、ラメリカに滞在するにしてもアテがないんだよなぁ。

 重マグロ駆逐艦にもどるってのもなぁ?
 何かいい手はないものか……。

 俺は裁判所の前の公園のベンチにミリアやデドリーを座らせ、ランチボックスから中身を取り出し、もきゅもきゅと食べている二人を見つめていた。

 そのとき、なにか二人に対して熱い視線を飛ばしている存在に気が付いた。

「……あいつは、なんでこんなところに?!」

 シルクハットをかぶったうさん臭い男がひとり。

 その男は、はちきれんばかりの大胸筋をもっていた。そして膨れ上がった上腕二頭筋のせいで仕立ての良いスーツは筋肉の形に沿ってピチピチになっている。

 だが、間違いない。奴はイギニスの大使だったチャールスだ!!!!
 あいつ死んでなかったのかよ?!

 しかもなんかすげームキムキになってるし?!

(あー、きっと機人様がエリクサーとかいって使ってるアレのせいですね)

(アレってやっぱやべーお薬なんだ)

(はい、簡単に言えば体の細胞を完全な新品に取り換えてるのでああなります。たぶんチャールスさん、頑張れば300歳くらいまで生きるのでは?)

(OH……俺はなんちゅう恐ろしいもんを奴にあげてしまったのだろう)

「ンッンー!!これは奇遇!ラメリカでまさか機人様にお会いできるとは!!」

「……親し気に話しかけて、いまさら何のつもりだ?イギニスでお前がやったことを忘れたとは言わせんぞ?」

「ンン!!その節は大変ご迷惑をおかけしました!!機人様に合わせる顔が無く、こうして女王陛下とラメリカに亡命した次第でして!」

「……寝言は寝て言えとはよく言ったものだな、で、なんのつもりだ?金の無心なら他をあたってくれ」

「ンッンー!!その逆ですぞ機人殿!むしろビジネスの話を持ってきたのです!」

「また胡散臭い話だろう」

「ンン!!いえいえ、金を転がして金を稼がせる。それも一つの手段ではありますが、所詮は空虚なビジネスと私は気付いたのですよ!!金が金を生んでも、そこで何かが生まれているわけでは無いのですからな!!」

 いまさらかい!

「……それでなんだというのだ?」

「ンッンー!この世界はつらく悲しい……ですので、我々は人々に日々のつらさを癒すために、アイドル産業をはじめたのです!これをご覧ください!」

 うん?パンフレットか?「ヴィクトリーBAR?」なんだこれ

 あ、表紙、よくみたらソデザベス女王じゃん?!
 しかもなんか若い……これは薬、エリクサーやってますねぇ。

「我々はヴィクトリーBARで、ソデザベス女王がお客さんとゲームやクイズなどで交流し、楽しんでいただける場を用意したのですが、これが大当たりしたのですぞ」

「さらなる需要を満たすため、我々はアイドルとなる人材を探し求めていたのです!ンッンー!ミリア嬢とデドリー女史はその点申し分ないですからな!」

「……まさかとは思うがスカウトか?」

「ンン!機人様、そのまさかです!」

「しかし、BARだけだと物理的な制限もありますから、新しい試みとして、目本のテレビを利用することを考えておりましてな?」

「……なるほど、生中継で客を接待すると?」

「ンン!さすがは機人様だ!お目が高い!そしてさらなるアイデアがありましてな?生中継中に電話を使い、実際にお客様と触れ合うのです!」

 ん……それって?

「ンン!!名付けて、VヴィクトリーなまちゅうけいBAR!!これはきっと成功するはずですぞ!!」

 うん、オッサンの世界でも結構デカいビジネスになってたよそれ。

「ンッンー!どうですかな?!わが友、機人様!!!」

「……ラメリカの滞在費、全てそちらが持つならば引き受けよう。もちろん、ミリアやデドリーがやりたくないと言いだしたらその場で打ちきりだ」

「ンッンー!!!さすが機人様、パートナーを第一に考える姿勢はよくわかっていらっしゃると言えますな!!」

「……当たり前だ」

「ンー!しかしご安心を、ビジネスの観点からも私はそう言った事には気を使っておりますゆえ!ン!お客様は敏感ですぞ、そういったやりたくないのにやっているという感情にはすぐ気づかれます。そうした舞台裏のドタバタはすぐに炎上して、事業そのものを危うくしますですぞ!!」

「……イギニスで学んだことが役に立っているようだな?」

「ハハハ!さすがは我が友機人様!!このチャールス、実に耳が痛いですぞ」

「……まあともかく、どういうものか見るだけ見よう。やるかどうかはその後だ」

「ンッン!!それはもちろん!!ささ、こちらへ!!」

 こうして俺たちはイギニスでの一見以降、久しぶりに出会ったチャールスの案内で、奴がラメリカで展開している事業に関わることになった。

 問題しかないやつだが、他に頼れるものもいないしな。

 そして俺はこの事業に関わった事が、結果としてラメリカに大きなくさびを打ち込むことになるとは、まだこの時は思いもしていなかった。
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