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世界大統領との戦い

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『ようこそブラックハウスへ機人!!!!』

 空中で胸を張ったポーズをとる大統領専用機「オレ・フォース・ワン」。

 背面の飛行ユニット、両肩には合計4つのミサイルコンテナ。
 そして右腕には背中にある弾薬コンテナから弾を供給されている、長大なヘビーガトリングガンと来たか。クソッ!獲物は俺よりカッコいいな!!!!

 しかし、武装からして、格闘戦能力はイマイチとみた。

 ライトセーバーを隠し持っている可能性はあるから、白兵を匂わせるような接近をして探って、なさそうなら接近戦に持ち込んでグシャッとするのがいいか?

『キサマは無知な愚民を引き連れて、私に勝ったつもりだろうが、まだ戦いは終わっておらぁん!』

『そう、戦いは終わらん……私の中のラメリカが生きている限りなぁ!!』

「……そのラメリカを否定されてるのだ。何故わからん!!」

(あ、ナビさん、飛行制御よろしく!)
(Cis. 大見得をきった割に、あっさりと任せますね。まあやりますけど)

 俺は飛行ユニットをナビさんに委任して、ガンナーとして戦いに集中する。

 さすがナビさんといったところで、回避しながら移動しているのにもかかわらず、ときに動きを止め、俺が射撃しやすいような攻撃タイミングを作ってくれる。

(もはや夫婦二人三脚か?)
(バカ言ってないで早く撃ち落としてください)

 ミニガンを空に向け、黒い機人に向かって発砲する。とぎれとぎれのオレンジ色の光線は、ゆるい弧を描いて彼方へと消えていった。

 思ったより速いな、大統領専用機!

『スローリィ!!スローリィだぞ!!ポトポトの機人!!』

『次はこちらからだ!!ペイデイローンミサイル!!』

 大統領専用機の肩のコンテナから、だばばばばばと大量のミサイルが吐き出される。

「なんて数のミサイルだ!!金かかってそう!!」

『だろう?!実際すごいかかるから、さっさと当たれ!!』

「いやなこった!しかし、こんな大量のミサイルをどうやって……?」

『簡単なことだ……スポンサーだよ!』

「……なるほど!!」

『ククク……ラメリカでは月内返済の金利は法律で制限されていない、2週間ごとの給料日を借金返済期日とすれば、年利300%に相当する金利も掛けられるのだ!!』

『これをペイデイローンという!規制を望む声を握り潰すことによって、私は業界から多額の資金を手に入れた……つまりこの力をなぁぁぁぁぁぁ!!!!』

「……普通に汚職を暴露してる?!」

 俺は無数のミサイルをミニガンで迎撃する。数は多いが、そこまで精密な誘導はしていない、目の前のミサイルだけ撃ちおとせば十分だ。

『癒着とお仲間政治は常に最善の策なのだよ!!人は助け合わなくてはなぁ!!』

「堂々という事かぁぁぁぁ!!」

 クソッ!意味が解らな過ぎて、知能にデバフがかかる!
 これが奴の狙いか!

(いいえ、アホなだけだと思います。なんでこの人が当選したんでしょうか?)

 アホだが操縦の腕前は普通に良いな。
 銃弾では避けられる。ならマルチミサイルでどうだ?!

 黒い機人に照準をあわせ、ロックオンをしてミサイルをぶっ放す。
 ミサイルの支援のために、やつの進行方向にミニガンやオートキャノンの弾を置くように打ち続ける。どっちに当たるか選びな!!

 大統領専用機はミサイルに向き直り、空手だったほうの左手から光の刃を伸ばしてマルチミサイルを切り払った。

 黒い影の後ろでふたつの爆発が起きる。
 白兵武器持ちか。これは近寄らなくてよかったな。さて、どう攻めるか?

「普通にエースパイロットしてて笑うわ」

『大統領とは、ラメリカの力の代表であり、最強でなければならんのだ!!次はこちらからだ!!』

 しばらく俺は「オレ・フォース・ワン」とミサイルと弾丸の応酬をしていた。

 いやしかし、単騎の性能としてはこれまで戦った度の相手より高い。
 俺とはトントンか、向こうの方がちょっと上くらいだ。

 うちにはナビさんがいるから、操縦者の腕と、役割分担のおかげで、すこしこっちが優位だが、そうでなかったら結構きつかったんじゃないか、コレ?

 でもこれなら「時間稼ぎ」はできるからいいか。
 そう、これはなんてことない時間稼ぎだ。

 世界大統領様は全く気付いていないようだが、俺たちがじゃれ合ってるうちに横をバンバン戦車や装甲車が首都めがけて入っていっている。

 最強の戦力が遊んでいるので、城の中にどんどん中に入られている状態だ。
 うん、こいつが底なしのアホで良かった。

 ほどなくしてすべての防衛線を取っばしたラメリカ人たちがブラックハウスを占拠する。俺はそれを飛び交う無線通信で知った。

『機人様!すべての防衛線を突破、中枢は完全に占拠しました!』

「……よし、ブラックハウスについては、決めた通りに。あとはこっちだな」

『世界大統領さま、ブラックハウスが!うわぁぁぁぁ!!<パパパパン>』

『まさか、この私をここに引き付けて、首都の占領を優先したというのか?!』

「……そもそもの話、「俺を倒せば勝ち」なんて誰も言ってないからな?」

『ぐぬぬぬぬ……!』

 まあ、よくあるよな。

 ゲームなんかでも、旗を取ったり、タワーを破壊するのが勝利条件なのに、それを無視して決闘みたいにプレイヤー同士の戦いに集中して負けるやつ。

 これは、まさにそれだな。

『クッ!なんて卑劣な!!!!こうしてはおれん!!』

 そういうと、大統領専用機はくるっと反転し、まっすぐブラックハウスへ帰っていった。やることがいちいち極端だなぁ……。

★★★

『クソクソ!!クソムシがぁぁぁ!!』

 大統領専用機でブラックハウスに戻った世界大統領カイデンは、ヘビーミニガンを振り回して、手当たり次第に周りのものぶち壊しながらブラックハウスに入った。

『ナメた真似を!!人の世は、人によって統治されることに意味がある……人民の、人民による、人民の為の搾取と支配が必要なのだ!!』

『飯も食えないポトポトの機人に、人の搾取と支配が理解出来ようはずが無い!!』

『愚民どもは何故理解しない!!飯を食えない機人に、搾取が理解できなければ、つまり汚職のしようがねえええええだろおおおおおがあああああああ!!!!!!!』

『ちゅーちゅー税金を吸わせてくれない機人になぜ群がる!!理解できん!!』

<ピッピッピッ>

『なんだ、電子音……?』

 電子音は、ブラックハウスに乗り付けているトラックから聞こえてくる。
 それを見たカイデンは血の気を失った。

 荷台に積まれていたのは、大量のプラスチック爆薬だ。
 そして、耳に入ってきた電子音は、この爆薬にセットされたタイマーが時を刻みつづけていた音であった。

『クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

★★★

 俺は前もって指示を出し、爆薬を満載したトラックをブラックハウスの中に突っ込ませていた。それは長年ラメリカの象徴だった建物を、跡形も残さず爆破した。

 その爆発で発生した「おしおきだべぇ」といわんばかりのキュートなキノコ雲は、上空にいた俺からも見ることができた。

「他人を押さえつけている限り、自分もそこから動くことはできないだっけか?」

『ジョージ・ワシントンの格言ですか。機人様は意外と博学ですね』

「ゲームの知識だけどな」


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