30歳まで童貞でいたので魔法使いになれました!異世界で!

マンゴー山田

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4. ただいまー

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「ん、あれ?」

治癒魔法を無心でかけ続けていたら、腹の辺りが急に温かくなってきた。それからその温かさが身体中を巡り始め、僕は首を傾げる。
なんだろう?
これほど長く治癒魔法をかけていたことがなかったからその反動だろうか?と一人そう思っていると、その温かな何かが気持ちよく感じ始め「んん?!」と流石に声を出した。

「どうかしたのか?」
「あっ、いや。なんでも…」
「ない、とは思えないが」

耳元で聞こえた声に顔を上げるとすぐ近くにお兄さんの顔があった。
お兄さん、顔が近いんですが。っていつの間にこんな密着してたんだ?!
きらきらとエフェクトがかかりそうな整った顔が、僕の肩に乗せられていた。うん、普通に近い。
てか、じいっと見つめてくる空色の瞳の中にたき火の赤が混じり揺らめいている。その不思議な瞳をつい僕もまじまじと見つめ返してしまい、沈黙が訪れる。
するとお兄さんの顔が離れもう一度「何かあったのか」と聞かれた。
なんで残念だと思ったんだろう。
この感情を僕は知っている。童貞だったけど、この気持ちは何度も抱き、そして散っていったものだ。
けれど、どうしてお兄さんにこんな感情が芽生えたんだろう。前は普通に女の子が好きだった、はず。
ゆっくりと瞬きをしてから「えっと」と言葉を紡ぐ。

「なんか気持ちよくて」
「は?」

言葉が足りなさ過ぎるよ! 僕!
怪訝そうな表情で僕を見ているお兄さんの表情に慌てて「あ、いや、その、ね?」と足りていない言葉を続ける。
両手は卵から離せないから、すっごい挙動不審に見えるんだろう。お兄さんの眉が寄って皺になってる。
そしてそっとお兄さんの視線が下に落ちると、僕もつられて視線を下に落とす。

そこにはがっちりと腹に回された逞しい腕があって。

「?!」

なんで?! どうしてお兄さんの腕が僕のお腹にあるの?!
あ、だから密着してるのか、納得!

じゃない!

「ふぉえぁぁぁ?!」

変な悲鳴をあげながらも卵からは手を離さない僕。その代わり魔力の量がぶれたのか、卵が点滅を繰り返す。
ふおぉぉ! 今はこっちに集中しないと!
でもなんで?!

「魔力不足になると倒れるだろ?」
「あぁ、だから…」
「これならすぐにエリキシルを飲ませることができる」
「は、はぁ。助かります?」

お兄さんは僕が魔力不足で倒れそうになるところまで見通して、僕を膝の上に乗せてくれたのか!
ありがとうございます!
なんて騙されると思ったか!

「いや、魔力不足になったらきちんと言うから」
「言ったところで、どうやって飲むつもりだ?」
「むむ」

確かに。僕は卵から手を離せない。でもエリキシルは飲みたい。
どうすればいいんだ?
ストローとかあれば便利なんだけどなー。今度ストローを作ろう。そうしよう。
って話がずれた。確かにエリキシルはどうやって飲めばいいんだ?
お兄さんがウエストポーチからちらっと出した時に見えたエリキシルって、なんか瓶の口が広そうだったしなー。こう、縦長のジャム瓶みたいなやつ。しかもコルク。
僕の村はワグナー瓶。栓はコルクだけど。

「どうすればいいと思います?」

僕は分からずお兄さんに聞けば、なぜかニヤリと笑った。
うん、なんか悪いこと考えてる笑みですよね。それ。

「口移しで飲めばいい」
「普通に飲ませてください」
「そうか、それは残念だ」

本当か冗談か分らないことを言うのやめてもらえませんかね?
今、僕の心臓すごいから。爆発しそうなくらい早いんですよ。

「普通に飲ませてやるから安心しろ」
「オネガイシマス」

ははっと笑って、きゅっと腹に力を込めるお兄さん。その時、また温かなものが身体中を駆け巡っていく。

「ふぁ…」
「おい?」

気持ちいい。本当にこれなんだろう。ふわふわして、身体中を擽られてる感じ。
たまんない。
はぅ、と息を漏らせば腕がぴくりと動く。それに合わせて僕の中にまた温かい物が流れ込む。
たまらずお兄さんの身体に背中を凭れさせ、すり、と後頭部で甘えるように摺り寄せれば、温かいものの量が増えた。
それについ笑みを浮かべると卵を包んでいる緑色の光が明るくなり、パライバトルマリンのような色に変化している事に、気持ちよくなっている僕は目を見開いた。

「なにこれ?!」
「うわっ」

急に身体を持ち上げた僕にお兄さんが驚く。うん、これは驚くよね。ごめん。けどそれどころじゃない!
え、なんで治癒魔法がこんな色してるの?! 大丈夫なの?!
僕の慌てた様子に、頭を巻いた身体の上に乗せていた白蛇様がのそりと擡げると、チロチロと舌を動かす。

「あ、ごめん。ちょっと治癒魔法を解いてもいい? 少しなら大丈夫だから」
「フシュルル」

白蛇様に許可を貰うと僕は一度治癒魔法を解く。そして即席エコーを展開させると、それもまた少し色が変わっていた。
え…なにこれ。怖いんですけど。
困惑している僕に、お兄さんが「何かトラブルか?」と聞いてくるけど分からない。こんなこと初めてだから。
とにかく中の子が無事なのか見ないと、と魔力を流しながら卵を撫でれば「もぞもぞ」と動いている。
よかった無事みたい。それにしてもだいぶ元気になってきたな。これなら、あと30分程かけて終わりにしてもいいかな?

「大丈夫、中の子は元気だよ」
「シュルルル」

チャンスをくださいって言ったのは僕だからね。ちゃんと最後までやらせていただきます。

「で、何を驚いていたんだ?」
「うん…。治癒魔法の色が変わっちゃってて」

お兄さんの質問に素直にそう答えれば「そう言えば」と卵を包んでいる治癒魔法の色を見た。

「もっと緑色っぽかったよな?」
「う、ん…。でも今は明るい青緑色っぽくてさ…」
「ふぅ、ん」

あれ? お兄さんもしかして原因が分ってるっぽい?
興味深そうにそう告げたお兄さんが僕のお腹から腕を離すと、温かなそれも流れなく治癒魔法の色が元の色に戻った。

「うん?」

あれ? 緑色に戻ってる?
お兄さんが原因なの?とちらりと後ろを見れば、にこりと笑うだけ。

「君に説明するには少し早いかもね」

その言い方にかちんときた僕は「もう15歳です! 来年成人します!」と告げれば、空色の瞳が大きく見開かれた。
え、何その反応?!
すると、横を向いて口元を隠しているお兄さん。そして「これで15…嘘だろ」という言葉が耳に届いた。
確かに背は低いよ! 7つ下の近所の子に身長抜かれそうだよ! もう僕の半分だからな!
僕だってこっちで生まれたのにー!
なんで魔法に全振りしちゃったんだろうね!

「ああ、すまない。気を悪くさせた」
「本当にね」

ぷぅっと頬を膨らませ、怒ってますよと態度で示せば「悪かった」と笑いながら言うお兄さん。全然悪いと思ってないじゃん。
背中を向けてぷんすこしながら治癒魔法をかけ続けていると、不意に身体が重くなった。
卵に抱き付いていた腕も途端に重くなって持ちあげることさえ億劫になる程に。そして身体も座っている体勢が保てない。
横にでも倒れるかな?と思った僕だったけど、耳元でお兄さんの「大丈夫か?」という言葉が聞こえ、ぴゃっと少し身体を跳ねさせた。

「びびびびっくりした…」
「そんなに驚くことないだろ。魔力切れか?」
「あ、うん。もう少しなんだけどさ…」

肩の上に顎を置いて卵をじっと見つめるお兄さんに驚きとは違うドキドキが僕を襲う。
さっきまでのぷんすこは売り切れらしい。早いな。
ドキドキと心臓が脈打ち、自然と頬が熱くなる。たぶん、きっと耳まで真っ赤だと思うけど髪で隠れてるからばれてない、よね?

「なら俺の魔力を使うといい」
「へ? エリキシルの方が早いと思うけど?」
「取り出すより送った方が早いだろ?」

そう言うや否や僕の腹に腕を回すと、また温かいものが僕の中へと流れ込んでくる。

「んゃ…ぁ、なに、これ…」

これをされると身体が気持ちよくなっちゃうんだけど…。変な声も出ちゃうし。
びくびくと膝を跳ねさせて声が出ないように唇を噛むけど、そんなことじゃ無理で。すると更に温かなものが流れ込んでくる。

「ぅん…っ、これ、おにいさ…ぁ…」

そうか。これ、お兄さんの魔力だ。
でもなんでこんなに気持ちいいんだろう?
はぅ、とよく分からない吐息が零れると首筋に柔らかい物が触れていて、ちゅ、ちゅという音が聞こえるし、皮膚を少しだけ引っ張られる感覚がする。

「っ…つ?! な、に…?!」

するとピリリと痛みが走りお兄さんを見れば、見えたのは金の髪だけ。そこで首筋にお兄さんの顔があるから髪しか見えないということに気付く。
痛みが走った場所を滑ったものが皮膚を撫でていく。たぶんこれ、お兄さんの舌だ。
気持ち悪いよりも気持ちがいいが勝り、鼻から抜けるような声が自然に出ると、ちゅ、ちゅうと首筋に何度もキスされ吸われる。

「ま、…やぁ…っ!」

ちゅうちゅうと吸われる度に、温かいお兄さんの魔力が流れびくびくと膝が跳ねる。しかも腹に回っている腕がいつの間にか胸を撫でている。
ちょっと待って。なんで胸なんか揉んでるんだよ?!

「やぁ…ンっ、ぼく…おとこだ…からぁ!」
「だから?」

れ、と首筋を下から上へと舐め上げられると、ぞくぞくとしたものが全身を駆け抜ける。それに胸を揉んでいる手がそれを掠るたびに「ひぁ…ぁあっ!」と甘い声が零れてしまう。
そう言えば、魔力枯渇のだるさとか身体の重みが無くなってる。
これ、お兄さんの魔力を取りこんでるからこうなってるだけなのかな? だとしたらお兄さんの魔力が枯渇したら僕と同じようになるのかな?

「ん、おに…さ…ぁあっ!」
「可愛い」

首筋を愛でていた唇が耳へと移動し「名前、教えてくれる?」と甘い声で囁かれる。それにびくりと肩を震わせ「んぅ…っ!」と甘い息が漏れた。

「ダメ?」
「ら…めぇ…きもちい、の…」

すでに卵を治療するどころではなくなり、逆に卵に縋りついている状態。
でもちゃんと治療し終わってるはずだから大丈夫。あとは中身を確認しておしまいだったから。

「あ…っ!」
「気持ちいんだ?」
「みみ…やら…っ!」
「耳、弱いんだ」

そう囁くお兄さんは低く少し掠れてる。それだけでぞくぞくと悪寒のようなものが全身を駆ける。

「ひぅ…っ?!」

僕の反応が楽しいのか、れる、と耳を舐められた。それに過敏に反応してしまえば「まずいな」という声が聞こえる。
まだ僕はそういったことに反応はないからびくびくと腰が震え、喘ぐに留まっているがきっと精通したらズボンの中が大惨事になってそうだ。それくらいお兄さんにイかされている。
逆にお兄さんは反応しまくってそう。というか僕で欲情したお兄さんはすごいな。
はぅはぅと肩を上下に動かし呼吸を荒くしながらお兄さんを見れば「っつ」と息を飲んだ。

なに、どうしたの?

すると何やら下肢の方でごそごそと手が動きはじめたから相当辛いのかな?なんてのんきに呼吸を整えていると、腋に手を入れられひょいと持ち上げられた。

え?! 卵! 落ちちゃう!

と思ったら、どうやら白蛇様が移動させてくれていたみたいで、何重にも身体が巻き付いて見えなくなっている。
あばば、そうだった。誰もいないわけじゃなくて白蛇様が守ってくれてるんだった!
そのことに気付いてしまったがために、急に恥ずかしくなってきて俯くけどちょうどお兄さんと向き合う体勢にさせられちゃったんだよね。うあああ、お兄さんの顔見れない。
すると僕の顎に指をかけられ、くいっと上に向かされた。
あ、これ女の子がめっちゃときめくやつ。もちろん僕もときめきました。
イケメンにやられたらドキッとしない方がおかしい。
そのままお兄さんが近付いてきてそっと唇が重なる。
なんで、という疑問よりもふわりと鼻孔を擽る香りに「そういうことか」と口を開けると瞳を閉じる。するとお兄さんの唇の隙間から少しずつ温くなった液体が送りこまれてきた。
それを躊躇わずに飲み込むともっとちょうだい、とお兄さんの唇をぱくりと食べる。すると口の中の液体が少なくなったからか、舌が侵入し僕の舌を絡めとった。

「ん、ふぅ…っ!」

思わずお兄さんの服を引っ張り「苦しい」と訴えれば、するりとお尻を撫でられる。興奮してるから触りまくってるんだろうけど、これ熱が冷めるとめっちゃ気まずくなるやつ。
だがお兄さんはそれをどう取ったのか、尻から足の付け根へと手を滑らせ内股を撫で始めた。
うわわっ! 違う違う!
お兄さんの身体を跨いでるように座ってるから、内股を撫でられるとそこを指が掠っていくのがまたなんともぞわぞわする。
一度唇が離れ、ぐい、と瓶の中身を煽るお兄さんの喉が上下に動く。あ、やっぱエリキシルだった。
と、いうことはお兄さんの魔力がヤバかったのか。
僕に魔力を渡してたからなー。でもおかげでエリキシルを飲むことなく卵の治癒ができたから助かったけど。
なんでこうなってるのかよく分からないけど。
「ぷはっ」と瓶の中身を気持ちよく一気に飲んだお兄さんがぐいっと腕で口元を拭く前に、僕は首を伸ばして唇を重ねる。
せっかくのエリキシルがもったいない。それだけの理由だったんだけど、お兄さんの手が後頭部を抑えるように伸ばされてそのまま舌を絡ませ合う。

「あ、ん…っ、ふ…」

くちゅくちゅという唾液が混ざり合う音と、ちゅ、と唇を吸う音が重なって辺りに響く。シン、としてるから小さな音でも大きく聞こえて、余計に興奮する。
くっついては離れ、舌を絡めては吸われ、指でツンと勃ったそれを挟まれ関節で捏ねられる。うぁ、それヤバイ。

「おにいひゃ…」
「悪い、もう少し」

口周りを唾液で濡らしながら舌足らずな口調で話せば、その言葉を食べられた。それからお兄さんが満足するまで舌を絡めてキスをして、全身を撫でられて。
お兄さんに全身を愛撫されびくびくと全身を小さく跳ねさせながらぐったりとした僕の頭を撫で「よかったよ」とお兄さんに囁かれながら耳にキスを落とされた。その後も何となく離れがたくて、お兄さんの胸に甘えているとぎゅうと抱き締めてくれた。



「ん…?」

眩しい光が瞼を焼く。それにゆっくりと瞼を開ければ白蛇様にしっかりと守られながら一人横になって眠っていた。

「お兄さん?」

残されたことに急に不安になると、ぱさりと身体から何かが落ちた。それを拾い広げれば、どうやらそれはお兄さんのコートの様で。
それを持ち上げきょろきょろと見渡せば、白蛇様の顔がにゅっと近付いてきた。そしてぺろりと頬を舐められる。

「白蛇様、お兄さんはどこに?」
「シュルルル」

僕の質問に白蛇様は舌をチロチロと動かす。火もすっかりと消えているから、お兄さんが消したのか自然に消えたのか判断がつかない。けれどなんとなくだけど自然に消えたんじゃないかと思う。
どこに行ったんだろう、と起き上がれば魔力は半分ほど回復していた。よかった。枯渇状態からここまで回復したのはお兄さんの魔力とエリキシルのおかげだな、なんて思いながら探しに行くべきか、やめるべきかで少し悩む。
すると白蛇様が「シュルルル」と舌を動かしながら顔を擡げた。その方向へと僕も顔を向ければお兄さんが荷物を持ってこちらへと歩いてきていて。

「お兄さん!」
「目が覚めたか」

思わずお兄さんの元へと駆け寄り、コートをぎゅうと握りしめると「どうした?」と笑いかけられた。
きゅうと唇を噛んで俯けば「ほら」と目の前に卵の側に置いてきたカバンが視界に入った。顔を上げてお兄さんを見れば「中身は見てないからな」と笑った。

「ん、ありがと…」
「どういたしまして。魔石の回収のついでで悪いけど」
「ううん、ついででも嬉しかった」

カバンを受け取ってそれを口元に持っていき、もごもごと話せばお兄さんが「どういたしまして」とふ、と笑う。
ヤバイ。心臓が。
どくんどくんと大きく脈打ちついにカバンで顔を隠す。
するとぱさりと何かが落ちた音がして視線を向ければ、そこにはお兄さんのコートが落ちていて。

「あ、ごめんなさい」
「ああ、気にしなくていい」

慌てて落ちたコートを拾うと、そこで肌触りが全く違う高そうな生地で作られていることに気付く。そんな僕の手から、さっとコートを奪うように受け取るお兄さんが頭を撫でくれる。

「どこかに行くなら起こしてくれればいいのに」
「よく眠ってたから起こすのがしのびなくてね」

ふふっと笑うお兄さんに、唇を尖らせると「ああ、そうだ」と手にしていたもう一つの麻袋を置くと口を開いた。そして手招きをされたからお兄さんの側まで近付くと、麻袋を覗き込む。

「すごいことになってる…」
「これをどうしようかと思って」

麻袋の中には白蛇様が倒したベヒモスの素材が大量に入っていた。肉に牙、角、毛。それに、血の入った瓶。ギルドに卸せば豪遊しても働かなくてもいい程の金額が手に入る。でも逆に貴重すぎて断られる場合もあるけど。
ギルドにそれを買い取る資産がなければ邪魔になる。貴重と言っても困った代物だ。

「うーん…一度帰ってから考えてもいい?」
「そう言えば、君の住んでいる場所は?」

あ、そうだった。言ってなかった。僕が勝手に首を突っ込んだからね。

「この先に」
「…この先?」

僕の言葉にお兄さんの口調が硬くなった。
まぁ、そうだよね。この辺に村なんかあったら王都に知られてるはずだもんね。
なるほど。お兄さんは王都住み確定か。
更にこんなことで口調が硬くなるということは兵か騎士か。どっちにしろ国のために働いてるっぽいな。
ふむ。これはますますお兄さんを逃がすことはできないな。

「とにかくまずは僕の住んでる村に帰りませんか?」
「そう、だな」

顎に指を触れさせ何か考えているお兄さんから了承を得ると、白蛇様を見上げる。

「白蛇様、申し訳ありませんが僕の村に一度来ていただけますか?」
「フシュルルル」
「白蛇を連れて行くのか?!」

白蛇様は「了承した」と舌をチロチロと動かし、お兄さんは驚いたように僕を見た。
だって夜中のどったんばったんは白蛇様がいてくれたら説明しやすいし。

「…村は騒ぎにならないか?」
「あ、そっか」

もしかしてお兄さんが驚いてたのはそっち?
いくら村が魔物に慣れているとはいえ白蛇様をいきなり連れていったら攻撃されかねないな。お兄さんに感謝だ。

「ちょっと待ってて」

そう白蛇様とお兄さんに告げると右腕を折りまげて持ち上げ、そこに魔力を溜め一羽の鳥を作り上げる。

「…すごいな」
「フシュルル」

お兄さんと白蛇様の声が重なったことにふふっと笑うと、魔力でできた鷹がばさりと羽を広げた。

「これから白蛇様とお兄さんを連れていく、って父ちゃんか兄ちゃんずに伝えてきてくれる?」
『ピューイ』

僕の伝言を承った、と鳴く鷹に「よし」と頷くと、鷹は前腕に移動する。それを確認した僕は腰を捻って大きく腕を振り上げた。その勢いで鷹が飛び立つのを見ると、ピューイピューイと鳴きながら頭上をひと回りしてから村の方へと飛んでいった。

「これで村に白蛇様が近付いても大丈夫」
「今のは?」
「あれは魔力で作った鷹。伝言に便利なんだ」

そう言えば、お兄さんが再び顎に指を乗せた。その考えているポーズに苦笑いを浮かべる。

「…まぁいい。それより白蛇と共に行くのなら俺たちの移動が遅くならないか?」
「うーん…。風魔法でびゅーんと行ってもいいけど…」

僕たちの進む距離と白蛇様が進む距離の差がありすぎるんだよな…。僕たちが十メートルほど進んでも白蛇様は一歩の感覚だし。
むむむと悩んでいると、白蛇様の頭がぬうっと現れた。そしてその頭を地面ギリギリまで下げると舌で頭を示す。

「? なんだろう」
「まさか乗れ、と言っているのか?」
「えぇ?!」
「シュルルル」

お兄さんの言葉に白蛇様がこくこくと頷くのを見て「本当にいいんですか?!」と叫んでしまう。

「確かに白蛇に乗れば早いだろうが…」
「白蛇様なら二十分もかからなさそう。あ、でも卵」
「卵はお前の風魔法で運んだらどうだ?ベヒモス戦の時のように」
「なるほど!」

さすがお兄さん!と両手をぽん、と叩くと「それよりも」とちらりと赤い木の実が生っていた木を見つめる。ああ、お兄さんこれ気に入ったのか。
でもまだ半分以上残ってるからもったいないよね。

「なら…」

僕は風魔法でその木から赤い木の実を舞い上がらせると、それを僕のカバンへとしまいこむ。途端パンパンになったカバンがおかしくて、ふひっと笑えば、お兄さんもつられて笑った。
倒れた木々や抉られた大地は僕が直すとして。今は村に帰ることが最優先。
と言うわけでお兄さんが先に白蛇様へと上り、僕はその手を引いてもらい頭へと乗る。うん、風魔法で乗ってもよかったけどお兄さんの手を取らない、なんて選択がなくてさ。

本当にどうしちゃったんだろうね。僕。

「お、おおおお!」
「これは…!」

風魔法で卵を守りながら持ち上げれば白蛇様がずももと頭を擡げた。その高さは四メールくらい。

空が近い!

「落ちたら洒落にならないからな」
「ありがと、お兄さん」

後ろからしっかり支えられ密着した状態で会話をする。なんか恥ずかしいけど、お兄さんがなんだかわくわくしてるのが可愛い。

「白蛇様、ここから東南へ行ってくれますか?」
「シュルルルル」

僕の言葉に「了解した」と舌を動かした白蛇様がゆっくりと身体をくねらせ、音もなく進みだした。

木々をなぎ倒しながら。




白蛇様に乗って十分ほど。バキバキと木をなぎ倒しながら進んできたから後で直さないとまずい。村がばれちゃうからね。

「あれは…」
「うん、あそこ!あそこが僕の村!」

森しかない場所に突如開けた場所が現れる。それは上から見るとまるわかりだけど、森から見るとこんな場所があったのかって感じ。それから少し移動して村の近くまで来るとそこには誰かがいた。
上から見てるから小さくしか見えないんだ。ごめんよ。
村の入り口辺りまでで止まってくれた白蛇様がぬぬっと頭を下げると、そこにいた人たちの姿が徐々にはっきりとしてくる。

「父ちゃん! 兄ちゃんたちも!」

勢いよく降りようとして、腹に回っていた腕がそれを止めた。振り返れば「卵」とお兄さんに言われ「あ」という表情を浮かべる。
それに白蛇様の頭が地面につくまで大人しく待っていると、先にお兄さんが降り手を差し出された。その手を取りずるりと滑るように降り、卵を白蛇様にお返ししたら直ぐに兄ちゃんずが走ってきた。

「ライ! 心配したんだぞ!」
「怪我は?! 変なことされなかったか?!」

身体を二人で確認しながらあれやこれやと話しかけてくる兄ちゃんずに「大丈夫だよ」と笑えば「はぁー…」と力が抜けたようにしゃがんだ。
そんな僕たちを見ていた父ちゃんが頷くと、お兄さんの方へと歩いていく。

「うちの倅が世話になった」
「いえ、こちらこそお世話になりました」

世間話のように聞こえるが、すでにもう腹の探り合いを始めているらしい。
怖いなー。

「あ、父ちゃんそれよりあれやらなくていいの?」

兄ちゃんずに頬摺りされながら父ちゃんにそう言えば「…やるのか」と眉間にしわを寄せた。
だってあれをやるって決めたの父ちゃんじゃないか。

むむ、と渋い顔をした後、コホンと咳払いをするとお兄さんをじっと見つめ、にやりと笑った。

「ようこそ。ディンバー村、通称『訳あり村』へ」

父ちゃんのその言葉に、お兄さんの瞳が大きく見開いた。


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性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
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フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
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【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

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