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28.手裏剣とマキビシ
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次元が違う――目の前の光景を目の当たりにして、ニンジャは初めての敗北感を味わっていた。
本気で殺すつもりで、手当たり次第に攻撃魔法をノアに放った。血の滲むような努力で習得してきた、人の命を奪う魔法である。
しかしノアは、謂わばニンジャの人生そのものであるそれらを、腕の一振りだけで相殺させてしまうのだ。
(こいつの『魔』の属性は、全属性を無力化しやがる……こんな奴に勝てるわけがねぇ……!)
絶望的な気持ちで、ニンジャはエヴァンとルルを見る。
「ふざけんなよ……」
ニンジャにはもう、指先に明かりを灯す魔力すらも残っていない。それなのに、彼の倍ほどの魔法を放ち続けるエヴァンとルルの顔には笑顔が浮かんでいた。
「魔王の息子もおかしいけど、お前らもバケモノじゃねーか!」
「女の子に対してバケモノとか言わないでくれる!?」
浄化の槍をノアに放ちながら、ルルが非難の声を上げる。
「ノアの癇癪は迷惑極まりないけど、ゲームだと思えば楽しいんだよね。こんなに気兼ねなく攻撃魔法を使える相手なんて、なかなかいないでしょ?」
楽しそうに言うエヴァン。
物心ついた時から、エヴァンもルルもノアの癇癪に振り回されてきた。チャッピーを失ってからは3日に1度、これの対処をしてきたのである。必然的に2人とも魔法の腕は上達し、魔力の許容量もどんどんと底上げされていった。
「でもねルル。僕、そろそろ限界かも」
「奇遇ね、エヴァン。私もだわ」
弾む息を整えながら、エヴァンはノアが垂れ流す魔力を確認した。
かなり減ってはいるが、まだ暴れ足りないと渦巻いている。
「今回は僕たちの負けかなぁ」
「何言ってんだ! お前ら勇者だろ!? 諦めんなよ!」
エヴァンの呟きに、ニンジャが青い顔で悲痛に叫ぶ。
「そもそも勇者じゃないし……大体あんた、私たちを殺しに来たんじゃなかったの?」
「そ、それは……」
ノアの目線がニンジャを捉えた。一歩、また一歩――その足取りは重く、暗黒の瘴気が地面に影を落として揺らめく。
「ひぃっ!?」
ノアが近づくたび、冷たく鋭い瘴気がニンジャの心臓を締めつける。
頭では理解している。この男は人を眠らせる力しか持たないのだと。しかし目の前に立つ男から滲み出る禍々しさは、理性を呑み込むように本能を震わせた。
(この男は危険だ……!)
「お、俺の負けだ! 2度とお前たちには近付かない! サインも書く!」
しかしノアは右手に魔法剣を顕現させ、柄を握った。その漆黒の刀身は、闇そのものを引き裂くような冷気を振り撒いている。
「手裏剣は?」
「は? し……手裏剣?」
「手裏剣やマキビシは持っていないのか!?」
「この後すぐに購入して、持ち歩くようにしますぅっ!」
「それ、もうニンジャじゃなくない?」
半眼でルルがツッコむが、ノアの耳には届いていない。
漆黒の刀身を頭上に翳し、それをニンジャに向かって振り下ろそうとしたその時――
「ノア様っ!」
息を切らし、ここまで裸足で駆けてきたレティシアが飛び込んできた。
頬は上気し、肩が大きく上下している。
「ティア様! どうしてここに……!?」
ルルはなけなしの魔力を振り絞り、レティシアの周りで弾けたノアの魔力を防壁で防ぐ。
「私、皆様のお役に立つと――壁になるとお約束いたしましたから!」
「駆け付けてくださって有り難いのですが、今のノアは殆ど周りが見えていない。眠るだけとは言え、王女様に手を掛けたらノアが大罪人に――」
「大丈夫です」
レティシアはエヴァンに微笑み、それからノアを見つめた。
次元が違う――目の前の光景を目の当たりにして、ニンジャは初めての敗北感を味わっていた。
本気で殺すつもりで、手当たり次第に攻撃魔法をノアに放った。血の滲むような努力で習得してきた、人の命を奪う魔法である。
しかしノアは、謂わばニンジャの人生そのものであるそれらを、腕の一振りだけで相殺させてしまうのだ。
(こいつの『魔』の属性は、全属性を無力化しやがる……こんな奴に勝てるわけがねぇ……!)
絶望的な気持ちで、ニンジャはエヴァンとルルを見る。
「ふざけんなよ……」
ニンジャにはもう、指先に明かりを灯す魔力すらも残っていない。それなのに、彼の倍ほどの魔法を放ち続けるエヴァンとルルの顔には笑顔が浮かんでいた。
「魔王の息子もおかしいけど、お前らもバケモノじゃねーか!」
「女の子に対してバケモノとか言わないでくれる!?」
浄化の槍をノアに放ちながら、ルルが非難の声を上げる。
「ノアの癇癪は迷惑極まりないけど、ゲームだと思えば楽しいんだよね。こんなに気兼ねなく攻撃魔法を使える相手なんて、なかなかいないでしょ?」
楽しそうに言うエヴァン。
物心ついた時から、エヴァンもルルもノアの癇癪に振り回されてきた。チャッピーを失ってからは3日に1度、これの対処をしてきたのである。必然的に2人とも魔法の腕は上達し、魔力の許容量もどんどんと底上げされていった。
「でもねルル。僕、そろそろ限界かも」
「奇遇ね、エヴァン。私もだわ」
弾む息を整えながら、エヴァンはノアが垂れ流す魔力を確認した。
かなり減ってはいるが、まだ暴れ足りないと渦巻いている。
「今回は僕たちの負けかなぁ」
「何言ってんだ! お前ら勇者だろ!? 諦めんなよ!」
エヴァンの呟きに、ニンジャが青い顔で悲痛に叫ぶ。
「そもそも勇者じゃないし……大体あんた、私たちを殺しに来たんじゃなかったの?」
「そ、それは……」
ノアの目線がニンジャを捉えた。一歩、また一歩――その足取りは重く、暗黒の瘴気が地面に影を落として揺らめく。
「ひぃっ!?」
ノアが近づくたび、冷たく鋭い瘴気がニンジャの心臓を締めつける。
頭では理解している。この男は人を眠らせる力しか持たないのだと。しかし目の前に立つ男から滲み出る禍々しさは、理性を呑み込むように本能を震わせた。
(この男は危険だ……!)
「お、俺の負けだ! 2度とお前たちには近付かない! サインも書く!」
しかしノアは右手に魔法剣を顕現させ、柄を握った。その漆黒の刀身は、闇そのものを引き裂くような冷気を振り撒いている。
「手裏剣は?」
「は? し……手裏剣?」
「手裏剣やマキビシは持っていないのか!?」
「この後すぐに購入して、持ち歩くようにしますぅっ!」
「それ、もうニンジャじゃなくない?」
半眼でルルがツッコむが、ノアの耳には届いていない。
漆黒の刀身を頭上に翳し、それをニンジャに向かって振り下ろそうとしたその時――
「ノア様っ!」
息を切らし、ここまで裸足で駆けてきたレティシアが飛び込んできた。
頬は上気し、肩が大きく上下している。
「ティア様! どうしてここに……!?」
ルルはなけなしの魔力を振り絞り、レティシアの周りで弾けたノアの魔力を防壁で防ぐ。
「私、皆様のお役に立つと――壁になるとお約束いたしましたから!」
「駆け付けてくださって有り難いのですが、今のノアは殆ど周りが見えていない。眠るだけとは言え、王女様に手を掛けたらノアが大罪人に――」
「大丈夫です」
レティシアはエヴァンに微笑み、それからノアを見つめた。
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