【完結】婚約破棄された猫耳令嬢、転生してOLになる。〜特技は暗殺です〜

第3話 アラサーOL、浮気されて婚約破棄する。

「最っっ底！」

　私は渾身の力を込めて、恋人「助川好平(すけかわ こうへい)」の頬を平手で打った。

「ち、違うんだ美奈子ちゃん！ あれは、仕事の相談に乗ってただけで」

「嘘！ 私見たんだからね！ あんたとあの女がキスしてる所！」

　私が勤務している会社の受付嬢、色城 恭子(しきじょう きょうこ)は、男の噂が絶えない尻軽女。あんな女にホイホイ付いて行くなんて、許せない！ 

「返して！私の一年間、返してよ！ 私、もう二十八だよ！？ 結婚の約束だってしてたのに！ 破棄よ破棄！ 婚約破棄よ！」

「ま、待って！ 誤解なんだ！ 俺の一番は美奈子ちゃんだけだよ！ 結婚だって本気さ！」

「信じられない！ バカ！ 死んじゃえ！」

　私は好平からプレゼントされた指輪を投げつけ、その場を逃げ去った。これ以上彼の顔を見るのが辛かった。婚約破棄。初めてなのに、おかしな既視感があった。

　アパートに戻り、ベッドに飛び込む。ひとしきり泣いた後、シャワーを浴びて高校の時の短パンとTシャツを装備。

　ぐぅぅーっとお腹の虫が鳴いた。夕飯がまだだった事を思い出し、カップ麺にお湯を注ぐ。

　すると眠っていた愛猫「みーたん」が起きてすり寄って来た。

(美奈子大丈夫？ 元気出して)

「うん。ありがとう」

　みーたんは優しいな。元気づけてくれるなんて......っておい！ みーたんは猫だよ！ なんで日本語話してるの！？

　失恋のショックで幻聴まで聞こえるようになったのかな。

(現世界【地球】と異世界【魔球】は表裏一体。言語も共通しているんだ。超ざっくり説明すると、僕は美奈子の力の一部。君が転生する時に漏れ落ちた力と記憶を、猫として再構築したのが僕なんだ)

　みーたんは「みゃー」と鳴いた。彼は喋っている訳ではない。声は私の頭に直接響いて来る。

(転生？ 魔球？ よくわからないけど......思い浮かべるだけで、お話出来るの？)

　と、頭に言葉を浮かべてみた。

(うん。そうさ。ちなみに僕が人語を理解出来るのは、僕が美奈子の一部だからだ。僕と『にゃんこ合体』すれば、君は全ての力と記憶を取り戻す。早速合体するかい？)

(なんなのよ、そのネーミング。でも面白そうだね。合体すれば、全部わかるようになるのかな。んじゃ、やってみよっか『にゃんこ合体』)

(うん！ じゃあ僕の肉球と、美奈子の手の平を合わせて。そして叫ぶんだ『にゃんこ合体』！って)

　みーたんが右前足を掲げる。私はその可愛いあんよに右手のひらを合わせ、深呼吸した。