11 / 35
第11話 サキュバスの正体は......。
しおりを挟む
ギルドの出入り口をバン!と開け、大股でスーパーを練り歩くホムラ。現在夜の九時。二十四時間営業の店内には、残業を終えたサラリーマンや、飲み会帰りのOLなど、比較的若い年齢層の客が多い。
「あっ! ホムラだ! 冒険者の!」
「おおー! めっちゃ美人! 巨乳!」
「あの、ファンです! 握手して下さい!」
ホムラの周囲は、あっという間に人だかりになる。まぁ、こうなるよね。みんなはここを出る時、一体どうしてるんだろう。
「はーい、どいたどいた!ごめんねー! これからモンスター退治なんでね! 応援してくれてありがとう! だけど通してくれると嬉しいな」
ホムラは満面の笑みを浮かべ、ファンたちを退けていく。周りの人々は残念そうではあったが、「応援してます!」「頑張ってください!」などと言って道を開けた。
意外だった。ホムラの性格なら、周囲の人々を殴り飛ばして進むと思っていたのに。思っていた程野蛮ではないようだ。
私はと言えば、そんなホムラを囮にして既に脱出していた。「気配遮断」のスキルにより、誰も気づかなかった筈だ。
スーパーの駐車場で自販機の陰に隠れつつ、私はホムラが出てくるのを待った。数分後、ようやく出てきた彼女の背後から、「わっ!」と脅かしてやった。
「うぎゃー!!!!!」
ホムラはぴょんっとウサギみたいに飛び上がり、「おのれモンスター!」と拳を振り回した。
うぷぷっ! めっちゃ可愛いじゃんこいつー!また今度からかってやろっと。
「ごめんごめん。私だよ! もー、可愛いんだからホムラってば。 うぎゃーっ!って。あはは」
「お前な! タチの悪い冗談はやめろ本当に! 心臓が口から飛び出すかと思ったぞ! イグニスだって驚いたんだ! なぁイグニス!」
「吾輩は別に......い、いや、驚いた! 心底驚いたぞ!!!」
赤豹イグニスは何かを察したように、大声で驚きを表現した。
「ほらな! 私はいいが、イグニスが可哀想だろう! もう絶対やるなよ! いいな!」
「へーい」
やるなと言われると、やりたくなっちゃうんだよなぁ。
「ねぇ、ホムラ。あんたどうせイグニスに乗って行くんでしょ? それだと私追いつけないからさ、行き先教えといてくれない? あとサキュバスの正体も」
イグニスのスピードは、通常の豹の約二倍以上。時速百キロでの走行が可能なのだ。
「ああ、仕方ないな。教えてやる。 行き先はローレライというドイツ料理屋だ。サキュバスの正体は色城恭子という女で、奴は毎日男を取っ替え引っ替えしている。だが使う店は曜日ごとに決まっていて、今日は金曜日だからローレライなんだ」
ホムラはえっへんと、ドヤ顔をキメる。
「へー、諜報活動が苦手なあんたにしちゃ、しっかり調べたじゃない。見直した」
「そうだろう! もっと褒めていいぞ!」
体を思いっきり反らし、豪快に笑うホムラ。まぁここは、おだてておこう。
「いやー、ほんとすごいよホムラ! サキュバスの正体まで掴んじゃうなんてさ! 色城恭子か......ん?」
色城恭子って、なんか知ってる気が......。
「ああー! 」
「なんだ! どうした!?」
私が叫び出したのを見て、ホムラが目を丸くする。
「その女、私の会社の受付! 私の彼氏を寝取った女!」
「え!?」
ホムラは私の顔をじっと見る。
「奇遇だな。私も......いや、何でもない。それなら顔はわかるな? さっきも言ったが、獲物は早い者勝ちだ。そして早く獲物に到着できるのは、この私とイグニスさ!」
ホムラはそう言ってイグニスに乗り込み、あっという間に走り去って行った。
「あっ! ホムラだ! 冒険者の!」
「おおー! めっちゃ美人! 巨乳!」
「あの、ファンです! 握手して下さい!」
ホムラの周囲は、あっという間に人だかりになる。まぁ、こうなるよね。みんなはここを出る時、一体どうしてるんだろう。
「はーい、どいたどいた!ごめんねー! これからモンスター退治なんでね! 応援してくれてありがとう! だけど通してくれると嬉しいな」
ホムラは満面の笑みを浮かべ、ファンたちを退けていく。周りの人々は残念そうではあったが、「応援してます!」「頑張ってください!」などと言って道を開けた。
意外だった。ホムラの性格なら、周囲の人々を殴り飛ばして進むと思っていたのに。思っていた程野蛮ではないようだ。
私はと言えば、そんなホムラを囮にして既に脱出していた。「気配遮断」のスキルにより、誰も気づかなかった筈だ。
スーパーの駐車場で自販機の陰に隠れつつ、私はホムラが出てくるのを待った。数分後、ようやく出てきた彼女の背後から、「わっ!」と脅かしてやった。
「うぎゃー!!!!!」
ホムラはぴょんっとウサギみたいに飛び上がり、「おのれモンスター!」と拳を振り回した。
うぷぷっ! めっちゃ可愛いじゃんこいつー!また今度からかってやろっと。
「ごめんごめん。私だよ! もー、可愛いんだからホムラってば。 うぎゃーっ!って。あはは」
「お前な! タチの悪い冗談はやめろ本当に! 心臓が口から飛び出すかと思ったぞ! イグニスだって驚いたんだ! なぁイグニス!」
「吾輩は別に......い、いや、驚いた! 心底驚いたぞ!!!」
赤豹イグニスは何かを察したように、大声で驚きを表現した。
「ほらな! 私はいいが、イグニスが可哀想だろう! もう絶対やるなよ! いいな!」
「へーい」
やるなと言われると、やりたくなっちゃうんだよなぁ。
「ねぇ、ホムラ。あんたどうせイグニスに乗って行くんでしょ? それだと私追いつけないからさ、行き先教えといてくれない? あとサキュバスの正体も」
イグニスのスピードは、通常の豹の約二倍以上。時速百キロでの走行が可能なのだ。
「ああ、仕方ないな。教えてやる。 行き先はローレライというドイツ料理屋だ。サキュバスの正体は色城恭子という女で、奴は毎日男を取っ替え引っ替えしている。だが使う店は曜日ごとに決まっていて、今日は金曜日だからローレライなんだ」
ホムラはえっへんと、ドヤ顔をキメる。
「へー、諜報活動が苦手なあんたにしちゃ、しっかり調べたじゃない。見直した」
「そうだろう! もっと褒めていいぞ!」
体を思いっきり反らし、豪快に笑うホムラ。まぁここは、おだてておこう。
「いやー、ほんとすごいよホムラ! サキュバスの正体まで掴んじゃうなんてさ! 色城恭子か......ん?」
色城恭子って、なんか知ってる気が......。
「ああー! 」
「なんだ! どうした!?」
私が叫び出したのを見て、ホムラが目を丸くする。
「その女、私の会社の受付! 私の彼氏を寝取った女!」
「え!?」
ホムラは私の顔をじっと見る。
「奇遇だな。私も......いや、何でもない。それなら顔はわかるな? さっきも言ったが、獲物は早い者勝ちだ。そして早く獲物に到着できるのは、この私とイグニスさ!」
ホムラはそう言ってイグニスに乗り込み、あっという間に走り去って行った。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。
かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。
謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇!
※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる