【完結】生贄にされた第九皇子、邪神に見込まれて最強の使徒になる。

アキ・スマイリー

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第9話 ゴブリンの棲家。

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「ふあー、よく寝た」

 ベッドから身を起こし、体を伸ばす。寝心地が良いベッドや布団ではなかったが、帝国にいた頃は兄達に早朝から叩き起こされ、眠るどころではなかった。それを考えれば、充分に満足出来る環境だといえる。

 部屋に備え付けられた鏡を見て、自分が今女なのだと思い出す。美しく整った顔。神秘的な金色の瞳。流れるような銀色の髪。大きなおっぱい。くびれた腰つき。大きなお尻。眺めていると、なんだか少し変な気持ちになる。

 そしてふと、自分が邪神の使徒である事を思い出して胸元のペンダントを見る。

「おはよう、ベル」

「おお、おはようリオン。挨拶を欠かさず、偉いなリオンは」

 ペンダントにあしらわれた目玉が、笑うように細くなる。

「褒めてくれてありがとう。まぁ、習慣だからね」

 ベルに笑顔を返し、女の体のままでトイレ。やっぱりまだ慣れない。

「今日はゴブリンの巣を見つけなくちゃ。一度男に戻ろう」

 僕は女の体を少し名残惜しく思いつつも、男に戻って鏡を見る。華奢な体。女の時と同じく、美しい銀髪と金色の瞳。女の子みたいに美形な顔。これは男の人にもモテちゃうかも知れない。

「ふぅ。やっぱりこの姿の方が落ち着くな。だけどチェックインは女の体でしたから、出る時はまた変身しなきゃ」

「そうだな。うっかりそのまま出掛けないように気をつけろ」

「うん。気をつける」

 ベルと少しおしゃべりをした後、僕は「千里眼」でゴブリンの巣を探す事にした。

「千里眼は便利だが、尋常じゃない疲労を伴う。戦闘狂の能力もそうだが、連発は出来ん。使い時を見誤るなよ」

「うん、わかった」

  目を閉じ、千里眼を発動。この能力は過去視や未来視、物質の持つ一部の情報、この世界全土の視認など、様々な事が出来るらしい。使い方は、直感で分かる。

 ちなみに千里眼を発動中の僕は、自分自身の状況が全く分からない。完全に無防備な状態だ。だけど今は敵に襲われる心配は無いから、安心して使用出来る。

 まず僕の現在地である「ランカスト村」の周囲を上空から確認。そして徐々に視認する範囲を広げていく。

 おかしい。かなり広域まで視野を広げているのだが、ゴブリンの巣やアジトは見当たらない。

 だけど、事実ゴブリンは現れている。なら、必ず棲家がある筈だ。僕はもう一度最初から確認をやり直した。

 小一時間程経った。流石に疲労が限界だ。そろそろ能力を解除しないと、気絶してしまいそうである。

 その時、突如脳裏に映像が浮かぶ。大勢の冒険者達が、ゴブリンの群れに蹂躙されている。それは残酷な光景だった。ある者は胸に剣を突き立てられ、またある者は首を切り落とされ、またある者は内臓や眼球を引きずり出され。

 これは未来視だと直感した。おそらく、未来視は自分の意思では発現出来ないのだ。何か危険が迫っている時だけ、勝手に発動するに違いない。

「ジョアン!」

 未来視の中で、仲間を庇って全身に傷を受けているジョアンを抱き起す。

「リオン、君だけでも逃げるんだ。俺はもう助からない。まさか、空から降ってくる、なんて......」

 そこまで言って、ジョアンは血を吐き白目を剥いた。

「ううッ!」

 激しい頭痛に、僕はうめいた。そして映像はそこで途切れる。

 ジョアンは確かに言った。「空から降ってくるなんて」と。

 僕は急いで、千里眼の視認範囲をさらに拡大。このランカスト村はロマンシア王国の南にある辺境の村。そしてさらにその南には、険しい岩山であるラガダスト山がある。

 僕はラガダスト山の視認映像を拡大した。

「あった!」

 思わず叫ぶ。そう。そこには僕の予想を遥かに超えるものがあったのだ。

 ラガダスト山の中腹。人が近づかないその場所に、その城はあった。

 ゴブリンの王城。そして城壁に囲まれた城下町。これは王国。その規模、ざっと千を超えるゴブリン達。そこから飛び立つ、数十機の気球。魔法を動力とした、空飛ぶ乗り物だ!

「くっ、ハァッ! ハァッ!」

 集中力が限界を迎え、千里眼を解除した僕。疲労がピークに達し、ベッドに倒れ込む。

「これは、ただのゴブリン討伐なんかじゃ無い。戦争だ。人間とゴブリンの」

 そう言いながら、僕は寒気が止まらなかった。
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