【完結】生贄にされた第九皇子、邪神に見込まれて最強の使徒になる。

アキ・スマイリー

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第10話 リオン走る。

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 ゴブリンの王国から飛び立った気球。あれは間違いなくこのランカスト村へとやって来る。そしておそらく、他の村にも。

 僕は急いでベルに状況を説明した。

「ふむ。ゴブリンだけで王国をな......少し考えにくい。おそらく、何者かが裏で糸を引いているな。ゴブリンは学習する事は得意だが、自ら何かを作り出したり、発案する事はあまりないのだ」

 ベルはそう言って、考え込むように唸った。

「一体何者だろう。裏で糸を引いているのは」

「それは分からん。だが、ゴブリンより賢い者であるのは確かだろうな。今はとにかく、奴らの進行を止めるのだ。そして、そのまま王国を叩く」

 ベルは力強くそう言った。だけど僕は不安だった。

「でも、出来るかな。だって敵は千匹を超えるゴブリンだよ。こちらの戦力は、冒険者が三十五人に駐在騎士が十五人。総勢五十人だけだ」

「問題ない。女になったリオンは......ええい、言いづらいな。呼称を決めよう。女のリオンは攻撃特化型。そして男のリオンは考察特化型。そう呼ぶ事にしよう」

「うん。異論はないよ」

「うむ。攻撃特化型は、いわば百人力の力を持っている。そして彼女の特殊能力【戦闘狂】を使用すれば、その戦闘力は千人力。ゴブリンどもなど、虫を踏み潰すかのように殺せるだろう」

 ベルはそう断言した。

「だが一つ問題があるとすれば、ゴブリンの王国までの移動方法だな。ラガダスト山へは、例え早馬に乗ったとしても数日はかかる。俺の神聖魔法【空間旅行】を使えば一瞬で行けるが、帝国から脱した事で、邪神としての信仰は地に落ちた。もはや使徒たるお前以外に、俺を信仰する者はいない。神の魔力の源は信者の信仰。つまり、ゴブリンの王国に行くためには、俺の信者を増やさねばならんのだ」

「なるほど。じゃあつまりこう言う事だ。僕はこれから冒険者達と共に、気球で襲撃して来るゴブリンを撃退。それを僕の信仰する【聖なる導きの神】ベルゲニウスのお陰だと言って、みんなの信仰心を得る。そしてベルの魔法で、ゴブリンの王国へ行く」

「うむ。百点だ。よし、では急げ。冒険者達をかき集めるのだ」

「うん!」

 僕は攻撃特化型へと変身し、大きなおっぱいを弾ませながら部屋を飛び出し、宿屋のカウンターで会計を済ませる。

 そして「ギルド出張所」へと移動し、中にある冒険者ギルドのマスターに声をかける。

「マスター! 緊急事態です! 冒険者達を集めて下さい!」

 僕はドスドスと床を踏み鳴らしながら、カウンターにいるギルドマスターに詰め寄る。

「おお、リオンか。おまえさん、聞いてないのか?」

 マスターは不思議そうな顔で僕に問う。だが不思議なのは僕も同じ。

「一体何の話ですか? 僕は何も聞いてませんよ」

「そうなのか!? いや、実は今しがたな。冒険者のみんなは村を飛び出していったんだ。おまえのお仲間、狩人のカートがな。ゴブリンの巣を見つけたって言って、野郎共を焚きつけたのさ」

「えっ......!?」

 ゴブリンの巣!? そんなものは何処にもなかった。それをカートは見つけたと言う。本当だろうか。それとも......。

 僕が千里眼で見た未来視。ゴブリンの空からの襲撃に不意打ちをくらい、ジョアンが息を引き取った。

 きっと、僕が間に合わなかった未来。あの未来は、変えなくてはならない!

「カート達はどっちに向かいましたか?」

「ああ。南にある、ダムサーランの丘だ。そこに地中に通じる穴があって、それがゴブリンの巣なんだと」

「わかりました! ありがとうございます!」

 僕はマスターにお礼を言い、ギルド出張所を飛び出す。そして南に向けて、全速力で駆け出したのだった。
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