【完結】生贄にされた第九皇子、邪神に見込まれて最強の使徒になる。

アキ・スマイリー

文字の大きさ
11 / 33

第11話 空からの襲撃①。

しおりを挟む
「本当に間違いないんだろうな、カート」  

 傭兵上がりの冒険者ジョアン・ジョバンニは、冒険者仲間である狩人カートに再度確認を取る。

「しつけぇなぁジョアン。本当だって。俺は今朝方、確かに見つけたのさ。あれはゴブリンの巣穴への入り口だ。間違いねぇ」

 自信たっぷりに言い切るカートに、ジョアンは半信半疑ながらも賛同する事にした。

 この町の冒険者、総勢三十五人。そのうちの一人だけを残して、まだ眠っている筈のゴブリンを襲撃する。

 ゴブリンにとっては夜が活動時間。朝や昼は、眠る時間帯なのだ。

 ギルド出張所内の冒険者ギルド前に集まった冒険者達。中心に立つカートが全員に作戦の詳細を告げる。

「ゴブリンの巣穴はダムサーランの丘にある! 行けば分かるが、岩陰に隠れるようにして地下への穴があるんだ。そこへ油を流し込んで火を放つ。奴らは黒焦げよ! だが逃げ出して来たゴブリン共を仕留めるのは俺たちの仕事だ! 一匹たりとも逃すんじゃねぇぞ!」

 オオー! と拳を掲げて叫ぶ冒険者達。だがその中の一人が疑問を口にする。

「なぁ、リオンの嬢ちゃんが見えねぇが......誰か知らねぇか?」

「おお、そういや確かに見えねぇな」

「俺はあの爆乳を拝むのが楽しみでギルドに来てんだが」

 ざわめく冒険者達に、カートが声を張り上げる。

「リオンは女だ! ゴブリン狩りには連れて行けねぇ! 俺は目の前で嫁さんと娘をゴブリンに犯され、そして殺された! リオンをあんな目に遭わせてぇ奴はいるか! いるならリオンを呼んで来い!」

 静まり返る。誰も返事をする者はいなかった。

「そう言う事だ! じゃあ出発するぞ!」

 先頭に立つカート。その後ろに、ジョアン、そして神官のファルマ、魔法使いのセロガストンが続く。

 彼らを先行隊として、総勢三十四名の冒険者達は出発した。ダムサーランの丘へは徒歩で一時間程の距離。馬車や早馬でこの人数を運ぶのは金もかかるし音もうるさい。徒歩が最良の選択だった。

(リオン......彼女の強さは間違いなく戦力になる筈だが......彼女をゴブリン退治に参加させる為の入隊試験だったが、カートの言う事にも一理あるしな。仕方ないか)

 ジョアンはリオンの美しい姿を思い浮かべて胸を高鳴らせたが、頭を振って雑念を消す。

 (それにしても、ダムサーランの丘は一度調べた筈なんだがな。その時はどんなに探してもゴブリンの素穴は見つからなかった。俺たちの調べ方が甘かったんだろうか)

 ジョアンはいまだに、カートの言葉を信じられずにいた。あれだけ確信を持っていたから皆を招集したが、骨折り損のくたびれもうけになる可能性は高いと感じていた。

(まぁ、まずは行ってみない事には始まらないけどな)

 そう考えをまとめ、カートの背中を追うジョアン。

 しばらく歩き続け、ようやくダムサーランの丘が見えてきた。

「もうちょっとだぜ、みんな! ようやくゴブリン共を始末出来る!」

 カートが声を張り上げ、冒険者達もオオー! と叫ぶ。

(ふぅ、いよいよか)

 ジョアンが丘を登り始めた時、ふと地面を大きな影が覆った。

(なんだ? 雨雲か?)

 ぼんやりとそんな事を考えた、その時。

(ジョアン、上!)

 頭に響く、女の声。

(リオン!?)

 それはリオンの声だった。

(上だと!?)

 何故リオンの声が頭に響いたのか、それを考えるよりも先に、ジョアンは上を見た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...