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第11話 空からの襲撃①。
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「本当に間違いないんだろうな、カート」
傭兵上がりの冒険者ジョアン・ジョバンニは、冒険者仲間である狩人カートに再度確認を取る。
「しつけぇなぁジョアン。本当だって。俺は今朝方、確かに見つけたのさ。あれはゴブリンの巣穴への入り口だ。間違いねぇ」
自信たっぷりに言い切るカートに、ジョアンは半信半疑ながらも賛同する事にした。
この町の冒険者、総勢三十五人。そのうちの一人だけを残して、まだ眠っている筈のゴブリンを襲撃する。
ゴブリンにとっては夜が活動時間。朝や昼は、眠る時間帯なのだ。
ギルド出張所内の冒険者ギルド前に集まった冒険者達。中心に立つカートが全員に作戦の詳細を告げる。
「ゴブリンの巣穴はダムサーランの丘にある! 行けば分かるが、岩陰に隠れるようにして地下への穴があるんだ。そこへ油を流し込んで火を放つ。奴らは黒焦げよ! だが逃げ出して来たゴブリン共を仕留めるのは俺たちの仕事だ! 一匹たりとも逃すんじゃねぇぞ!」
オオー! と拳を掲げて叫ぶ冒険者達。だがその中の一人が疑問を口にする。
「なぁ、リオンの嬢ちゃんが見えねぇが......誰か知らねぇか?」
「おお、そういや確かに見えねぇな」
「俺はあの爆乳を拝むのが楽しみでギルドに来てんだが」
ざわめく冒険者達に、カートが声を張り上げる。
「リオンは女だ! ゴブリン狩りには連れて行けねぇ! 俺は目の前で嫁さんと娘をゴブリンに犯され、そして殺された! リオンをあんな目に遭わせてぇ奴はいるか! いるならリオンを呼んで来い!」
静まり返る。誰も返事をする者はいなかった。
「そう言う事だ! じゃあ出発するぞ!」
先頭に立つカート。その後ろに、ジョアン、そして神官のファルマ、魔法使いのセロガストンが続く。
彼らを先行隊として、総勢三十四名の冒険者達は出発した。ダムサーランの丘へは徒歩で一時間程の距離。馬車や早馬でこの人数を運ぶのは金もかかるし音もうるさい。徒歩が最良の選択だった。
(リオン......彼女の強さは間違いなく戦力になる筈だが......彼女をゴブリン退治に参加させる為の入隊試験だったが、カートの言う事にも一理あるしな。仕方ないか)
ジョアンはリオンの美しい姿を思い浮かべて胸を高鳴らせたが、頭を振って雑念を消す。
(それにしても、ダムサーランの丘は一度調べた筈なんだがな。その時はどんなに探してもゴブリンの素穴は見つからなかった。俺たちの調べ方が甘かったんだろうか)
ジョアンはいまだに、カートの言葉を信じられずにいた。あれだけ確信を持っていたから皆を招集したが、骨折り損のくたびれもうけになる可能性は高いと感じていた。
(まぁ、まずは行ってみない事には始まらないけどな)
そう考えをまとめ、カートの背中を追うジョアン。
しばらく歩き続け、ようやくダムサーランの丘が見えてきた。
「もうちょっとだぜ、みんな! ようやくゴブリン共を始末出来る!」
カートが声を張り上げ、冒険者達もオオー! と叫ぶ。
(ふぅ、いよいよか)
ジョアンが丘を登り始めた時、ふと地面を大きな影が覆った。
(なんだ? 雨雲か?)
ぼんやりとそんな事を考えた、その時。
(ジョアン、上!)
頭に響く、女の声。
(リオン!?)
それはリオンの声だった。
(上だと!?)
何故リオンの声が頭に響いたのか、それを考えるよりも先に、ジョアンは上を見た。
傭兵上がりの冒険者ジョアン・ジョバンニは、冒険者仲間である狩人カートに再度確認を取る。
「しつけぇなぁジョアン。本当だって。俺は今朝方、確かに見つけたのさ。あれはゴブリンの巣穴への入り口だ。間違いねぇ」
自信たっぷりに言い切るカートに、ジョアンは半信半疑ながらも賛同する事にした。
この町の冒険者、総勢三十五人。そのうちの一人だけを残して、まだ眠っている筈のゴブリンを襲撃する。
ゴブリンにとっては夜が活動時間。朝や昼は、眠る時間帯なのだ。
ギルド出張所内の冒険者ギルド前に集まった冒険者達。中心に立つカートが全員に作戦の詳細を告げる。
「ゴブリンの巣穴はダムサーランの丘にある! 行けば分かるが、岩陰に隠れるようにして地下への穴があるんだ。そこへ油を流し込んで火を放つ。奴らは黒焦げよ! だが逃げ出して来たゴブリン共を仕留めるのは俺たちの仕事だ! 一匹たりとも逃すんじゃねぇぞ!」
オオー! と拳を掲げて叫ぶ冒険者達。だがその中の一人が疑問を口にする。
「なぁ、リオンの嬢ちゃんが見えねぇが......誰か知らねぇか?」
「おお、そういや確かに見えねぇな」
「俺はあの爆乳を拝むのが楽しみでギルドに来てんだが」
ざわめく冒険者達に、カートが声を張り上げる。
「リオンは女だ! ゴブリン狩りには連れて行けねぇ! 俺は目の前で嫁さんと娘をゴブリンに犯され、そして殺された! リオンをあんな目に遭わせてぇ奴はいるか! いるならリオンを呼んで来い!」
静まり返る。誰も返事をする者はいなかった。
「そう言う事だ! じゃあ出発するぞ!」
先頭に立つカート。その後ろに、ジョアン、そして神官のファルマ、魔法使いのセロガストンが続く。
彼らを先行隊として、総勢三十四名の冒険者達は出発した。ダムサーランの丘へは徒歩で一時間程の距離。馬車や早馬でこの人数を運ぶのは金もかかるし音もうるさい。徒歩が最良の選択だった。
(リオン......彼女の強さは間違いなく戦力になる筈だが......彼女をゴブリン退治に参加させる為の入隊試験だったが、カートの言う事にも一理あるしな。仕方ないか)
ジョアンはリオンの美しい姿を思い浮かべて胸を高鳴らせたが、頭を振って雑念を消す。
(それにしても、ダムサーランの丘は一度調べた筈なんだがな。その時はどんなに探してもゴブリンの素穴は見つからなかった。俺たちの調べ方が甘かったんだろうか)
ジョアンはいまだに、カートの言葉を信じられずにいた。あれだけ確信を持っていたから皆を招集したが、骨折り損のくたびれもうけになる可能性は高いと感じていた。
(まぁ、まずは行ってみない事には始まらないけどな)
そう考えをまとめ、カートの背中を追うジョアン。
しばらく歩き続け、ようやくダムサーランの丘が見えてきた。
「もうちょっとだぜ、みんな! ようやくゴブリン共を始末出来る!」
カートが声を張り上げ、冒険者達もオオー! と叫ぶ。
(ふぅ、いよいよか)
ジョアンが丘を登り始めた時、ふと地面を大きな影が覆った。
(なんだ? 雨雲か?)
ぼんやりとそんな事を考えた、その時。
(ジョアン、上!)
頭に響く、女の声。
(リオン!?)
それはリオンの声だった。
(上だと!?)
何故リオンの声が頭に響いたのか、それを考えるよりも先に、ジョアンは上を見た。
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