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第13話 戦いの後。
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「今度は間に合ったって、どう言う意味だ?」
不思議そうに僕を見つめるジョアンにハッとなる。
「あ、いや、深い意味はないんだ。前に人助けが間に合わなかった事があってね。その時の事と重なっちゃった」
そう言い訳する。未来が見える事を話すのは、なんだか良くない気がしたからだ。
「そっか。だけどすごいなリオンは。あれだけいたゴブリンを、全部倒してしまうなんて」
ジョアンはそう言いながら、周囲を見回す。
「必死だったからね。それにしても酷いよジョアン。ボクを置いて行くなんてさ。入隊試験には合格したでしょ?」
「す、すまん。カートが女はゴブリンに犯されちまうから、連れて行くなって言うもんだからさ。君の強さを信じきれなかった俺の判断ミスだ。面目ない」
うなだれるジョアン。僕は彼を励ますつもりで、その髪を優しく撫でた。僕が小さい頃、母上がこうやって撫でてくれた。もう、この世にはいないけれど。
「リオン......」
ジョアンは僕を強く抱きしめ、じっと見つめる。そして僕の顎を持ち上げ、顔を近づけて来た。
「どうしたの、ジョアン」
「リオン、俺は君の事が......」
僕はジョアンがこんなにくっついて来る理由が分からず、困惑していた。するとその時、セロガストンが僕を呼ぶ声が聞こえた。
「リオン殿! 良くぞ来てくれた!」
「セロ! 無事で良かった!」
僕はジョアンに微笑みながら、抱きしめているその腕を解いた。
「ジョアン、話の続きは後で聞くよ。カートを縄で縛って置いてくれる? ボクはちょっとセロと話して来る」
「あ、ああ。わかった」
なんだか釈然としないジョアンをその場に残し、僕はセロの元へ走る。
「セロ! みんなを魔法で守ってくれたんでしょ!? ありがとう!」
「ファッファッ、まるで見ていたかのような口ぶりだな。まぁ、確かに死力は尽くしたぞ。だがお主が来なければ、ワガハイもおそらく死んでいたであろうな。カートが裏切るとは夢にも思わなんだ。しかし、お主の活躍はまさしく天下無双の戦神であった。おなごとは思えぬ強さよ」
「ははは、褒めすぎだよ。ところでファルマは?」
「奴ならばホレ、あそこで怪我人の手当てをしておる」
セロガストンが指差した方向を見ると、十人程の冒険者がファルマの周囲に集まっていた。
彼らの顔は覚えている。Cランクの冒険者六人と、Dランクの冒険者四人だ。全員が流血を伴う怪我を負っているが、どうやら軽傷で済んだようだ。
「我が敬愛なる勇気の神よ。この勇敢なる者に、癒しをお与え下さい」
ファルマの神聖魔法が、冒険者達の怪我を治して行く。僕は彼の邪魔にならないように、離れた場所から手を振った。
ファルマも僕に気付いて、治療をしながら微笑んでくれた。
「リオン、俺も少しなら癒しの術が使える。ファルマを手伝おう」
ベルがそう提案した。
「本当!? ならそうしよう! ファルマ! ボクも手伝うよ!」
僕はファルマの元へ駆ける。そしてペンダントから放たれるベルの魔法を、自分が使っているかのように振る舞った。
「ありがとうリオン。あなたのお陰で手当てがはかどりました」
「出来る事をしたまでだよ。ファルマもお疲れ様」
僕はファルマと握手を交わし、再び周囲を見回した。ジョアンはカートをロープで縛り終えたようだし、冒険者達も落ち着きを取り戻している。
(演説するならば、今だろうな)
(そうだね)
僕はベルと打ち合わせし、ジョアンの元へ走る。
「ジョアン!」
「おお、リオン!」
ジョアンは両手を広げて微笑んでいる。僕は彼の手前で急停止し、くるりと冒険者達の方へ振り返った。
「どわぁ!」
ジョアンは両腕をブンッと空振りさせ、前につんのめる。
「ん? どうしたのジョアン」
「い、いや、なんでもない」
苦笑いしながら、ジョアンが僕の横に立つ。
「一体どうしたんだ、リオン」
「あのね、これからみんなに大事な話があるんだ。ジョアン、みんなを集めてくれないかな。君が頼りなんだ。お願い」
僕は両手を合わせてジョアンを真っ直ぐ見つめた。ジョアンは顔を真っ赤にし、鼻の頭をポリポリと掻いた。
「ああ、お安い御用だ。任せてくれ」
ジョアンは大声で冒険者達を集め始めた。さすがBランク冒険者。人望がある。
よぉし。あとはみんなに、ベルゲニウスを信仰してもらうだけだ!
不思議そうに僕を見つめるジョアンにハッとなる。
「あ、いや、深い意味はないんだ。前に人助けが間に合わなかった事があってね。その時の事と重なっちゃった」
そう言い訳する。未来が見える事を話すのは、なんだか良くない気がしたからだ。
「そっか。だけどすごいなリオンは。あれだけいたゴブリンを、全部倒してしまうなんて」
ジョアンはそう言いながら、周囲を見回す。
「必死だったからね。それにしても酷いよジョアン。ボクを置いて行くなんてさ。入隊試験には合格したでしょ?」
「す、すまん。カートが女はゴブリンに犯されちまうから、連れて行くなって言うもんだからさ。君の強さを信じきれなかった俺の判断ミスだ。面目ない」
うなだれるジョアン。僕は彼を励ますつもりで、その髪を優しく撫でた。僕が小さい頃、母上がこうやって撫でてくれた。もう、この世にはいないけれど。
「リオン......」
ジョアンは僕を強く抱きしめ、じっと見つめる。そして僕の顎を持ち上げ、顔を近づけて来た。
「どうしたの、ジョアン」
「リオン、俺は君の事が......」
僕はジョアンがこんなにくっついて来る理由が分からず、困惑していた。するとその時、セロガストンが僕を呼ぶ声が聞こえた。
「リオン殿! 良くぞ来てくれた!」
「セロ! 無事で良かった!」
僕はジョアンに微笑みながら、抱きしめているその腕を解いた。
「ジョアン、話の続きは後で聞くよ。カートを縄で縛って置いてくれる? ボクはちょっとセロと話して来る」
「あ、ああ。わかった」
なんだか釈然としないジョアンをその場に残し、僕はセロの元へ走る。
「セロ! みんなを魔法で守ってくれたんでしょ!? ありがとう!」
「ファッファッ、まるで見ていたかのような口ぶりだな。まぁ、確かに死力は尽くしたぞ。だがお主が来なければ、ワガハイもおそらく死んでいたであろうな。カートが裏切るとは夢にも思わなんだ。しかし、お主の活躍はまさしく天下無双の戦神であった。おなごとは思えぬ強さよ」
「ははは、褒めすぎだよ。ところでファルマは?」
「奴ならばホレ、あそこで怪我人の手当てをしておる」
セロガストンが指差した方向を見ると、十人程の冒険者がファルマの周囲に集まっていた。
彼らの顔は覚えている。Cランクの冒険者六人と、Dランクの冒険者四人だ。全員が流血を伴う怪我を負っているが、どうやら軽傷で済んだようだ。
「我が敬愛なる勇気の神よ。この勇敢なる者に、癒しをお与え下さい」
ファルマの神聖魔法が、冒険者達の怪我を治して行く。僕は彼の邪魔にならないように、離れた場所から手を振った。
ファルマも僕に気付いて、治療をしながら微笑んでくれた。
「リオン、俺も少しなら癒しの術が使える。ファルマを手伝おう」
ベルがそう提案した。
「本当!? ならそうしよう! ファルマ! ボクも手伝うよ!」
僕はファルマの元へ駆ける。そしてペンダントから放たれるベルの魔法を、自分が使っているかのように振る舞った。
「ありがとうリオン。あなたのお陰で手当てがはかどりました」
「出来る事をしたまでだよ。ファルマもお疲れ様」
僕はファルマと握手を交わし、再び周囲を見回した。ジョアンはカートをロープで縛り終えたようだし、冒険者達も落ち着きを取り戻している。
(演説するならば、今だろうな)
(そうだね)
僕はベルと打ち合わせし、ジョアンの元へ走る。
「ジョアン!」
「おお、リオン!」
ジョアンは両手を広げて微笑んでいる。僕は彼の手前で急停止し、くるりと冒険者達の方へ振り返った。
「どわぁ!」
ジョアンは両腕をブンッと空振りさせ、前につんのめる。
「ん? どうしたのジョアン」
「い、いや、なんでもない」
苦笑いしながら、ジョアンが僕の横に立つ。
「一体どうしたんだ、リオン」
「あのね、これからみんなに大事な話があるんだ。ジョアン、みんなを集めてくれないかな。君が頼りなんだ。お願い」
僕は両手を合わせてジョアンを真っ直ぐ見つめた。ジョアンは顔を真っ赤にし、鼻の頭をポリポリと掻いた。
「ああ、お安い御用だ。任せてくれ」
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