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魔王から奴隷へ。
第9話 約束は守ってもらう。
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「きっ、貴様ら! こんな事が許されると思っているのか!? 我がオークラルド大監獄の大事な番犬を殺すとは! 重罪だ! 死刑だ! 処刑人、今すぐあいつらを処刑しろ!」
観戦席から叫ぶパンデリン。フォリーとミルダは信じられない、と言った顔でパンデリンを見ている。
「やっぱりそう来たかぁ。どうするネリス。約束は反故にされちゃったけど」
私はネリスの豊かな胸に顔を埋めたまま、彼女を見上げてそう尋ねた。
「問題ないさ。約束は力尽くで守らせる」
そう言って右手で拳を作るネリス。その手は赤く燃え光っている。
「ネリスったら素敵! カッコいい......! 大好き!」
私はネリスの胸に顔をスリスリと擦り付ける。
「あはは、くすぐったいよアリエッタ」
そんな感じで私達がいちゃついていると、ヘルハウンドの入って来た入り口の奥から、一人の男が姿を現す。
「ったくめんどくせぇなぁ。俺は人を殺すのが嫌いなんだよ。わかるか? ヘルハウンドが頑張ってくれるお陰で俺は最近出番無しだった。平和な毎日を過ごしてたって言うのによぉ。おめぇらのせいで台無しだよ。まったく」
ぶつぶつと一人事を言いながら入って来る男。どうやら彼がパンデリンの言う「処刑人」のようだ。筋骨隆々の巨体で、巨大な鎌を肩に乗せて歩いて来る。
「アリエッタ、下がってて。こいつ、ヘルハウンドより強いみたいだ」
「うん、そうみたいだね。油断しちゃダメだよ」
私はネリスの邪魔にならないように、後ろに下がる。私が戦えばあんな男は瞬殺だが、それによって発動する「隷従の首輪」の激痛は意識を失うほどだ。大人しくしていた方がいいだろう。
「二人とも女か。殺したくねぇなぁ。あんたらには、結婚して幸せな家庭を築いて欲しかったぜ。ああ、殺したく......ねぇ!」
男は喋っている途中で、突然地面を蹴ってネリスに突進して来た。突進と同時に鎌を振り下ろす。そのスピードは常人には見えない程の速度。だが。
次の瞬間。処刑人の男は反対側の壁にぶち当たり、壁に亀裂と血しぶきを残して床に突っ伏した。その体からは、ブスブスと燃える音と、黒煙が立ち昇っている。
「危ないなぁ。喋ってる途中で攻撃なんて卑怯だよ。それに殺したくないなら黙って帰ればいいのに」
ネリスは拳の炎を「フッ」と吹き消し、私を振り向いて両手を広げた。
「おいで、アリエッタ!」
「ネリス! 大好きー!」
私はダッシュでネリスの胸に飛び込む。
「なっ、なっ、なっ......!」
パンデリンは予想外な事態の連続に、言葉を失いワナワナしている。
「行こう、アリエッタ」
「うん!」
ネリスは私を抱きしめ、跳躍して処刑場の壁を飛び越えた。着地した先は観戦席。パンデリンは驚いて腰を抜かす。
「私に近寄るな! おい、こいつらを捕まえろ!」
パンデリンを守っている近衛兵達が、私とネリスを取り囲む。フォリーとミルダは無事だろうか。少し視線を巡らすと、隅っこの方で抱き合いながら震えているのが見えた。とりあえず無事のようで安心した。
近衛兵達はジリジリと近寄っては来るが、決して襲って来ることはなかった。それはそうだろう。目の前でヘルハウンドと処刑人が倒されているのだ。近衛兵はどうみてもそれより格下。勝てる算段は持てない筈だ。
「ええい! どうした貴様等! さっさと捕まえろ! こんな小僧と小娘を恐れるな! 情けない奴らだ! こんな奴らは私の一言でどうにでもなる! ネリス、アリエッタ! 抵抗するな!」
パンデリンは勝ち誇ったように言い放つ。その言葉を受けて、近衛兵達はようやく私達を捕らえ、縄で縛った。
「くくく。どうだ。隷従の首輪がある限り、貴様等は私には逆えまい。それにその縄は特殊な素材で出来ておるからな。貴様等如きにどうにか出来る筈もない。さて、では処刑と行こうか。おい、そこのお前とお前。こいつ等の首を斬れ」
パンデリンは近くにいた近衛兵達に命令を下した。二人はお互い目を合わせ、ゴクリと唾を飲むと私とネリスの前に立ち、剣を構えた。
「やめてくださいパンデリン様! お願いです! 二人を殺さないでください!」
「何でもします! それか私を代わりに殺してください! お願いします!」
フォリーとミルダが泣き叫び、懇願する。私とネリスは良い友人を持った。それはとても喜ばしい事だった。だがもちろん、二人を犠牲にするつもりはない。
「くくく。お前等はまだまだ役に立ってもらうが、この二人は別だ。もはや私にとってストレスの原因でしかないのだ。よしいいぞ貴様等、やれ!」
パンデリンが近衛兵に号令を出す。二人は私達に向かって剣を振るった。その切っ先は、首を横一直線に斬り裂くライン。
私とネリスは両手首と両足首、腕と太ももをガッチリと縄で縛られていた。だがその状態でも屈伸くらいは出来る。
襲いくる剣先を素早くしゃがんでかわし、そのまま軽く跳躍する。そして空中で両手両足を全開、縄をちぎり飛ばした。
「おい、抵抗するなと......!」
言いかけたパンデリンを、素早く距離を詰めたネリスが殴り飛ばす。
「ぶべぇっ!」
もちろん手加減はしているだろう。じゃなければ即死だ。パンデリンは生きていた。鼻血を吹き出し、歯は折れているけれども。
「うぐぅぅっ!」
ネリスは苦しそうに顔を歪めた。隷従の首輪が、彼女を苦しめているのだ。だが気を失ってはいない。凄まじい精神力だ。
彼女は苦悶に歪んだ顔のまま、近衛兵達をまとめて処刑場へと蹴り飛ばす。そして無様に倒れている、パンデリンの前に立った。
「約束は、守ってもらうぞ、パンデリン!」
「わ、わかった! 守る! 守るから殺さないでください!」
パンデリンは素早く土下座し、床に頭を擦り付けた。
「やったよ、アリエッタ」
ネリスはそう言って、私に微笑んだ。私はネリスに駆け寄って「大好き!」と叫ぶ。そしてその胸に飛び込み、彼女と唇を重ねたのだった。
観戦席から叫ぶパンデリン。フォリーとミルダは信じられない、と言った顔でパンデリンを見ている。
「やっぱりそう来たかぁ。どうするネリス。約束は反故にされちゃったけど」
私はネリスの豊かな胸に顔を埋めたまま、彼女を見上げてそう尋ねた。
「問題ないさ。約束は力尽くで守らせる」
そう言って右手で拳を作るネリス。その手は赤く燃え光っている。
「ネリスったら素敵! カッコいい......! 大好き!」
私はネリスの胸に顔をスリスリと擦り付ける。
「あはは、くすぐったいよアリエッタ」
そんな感じで私達がいちゃついていると、ヘルハウンドの入って来た入り口の奥から、一人の男が姿を現す。
「ったくめんどくせぇなぁ。俺は人を殺すのが嫌いなんだよ。わかるか? ヘルハウンドが頑張ってくれるお陰で俺は最近出番無しだった。平和な毎日を過ごしてたって言うのによぉ。おめぇらのせいで台無しだよ。まったく」
ぶつぶつと一人事を言いながら入って来る男。どうやら彼がパンデリンの言う「処刑人」のようだ。筋骨隆々の巨体で、巨大な鎌を肩に乗せて歩いて来る。
「アリエッタ、下がってて。こいつ、ヘルハウンドより強いみたいだ」
「うん、そうみたいだね。油断しちゃダメだよ」
私はネリスの邪魔にならないように、後ろに下がる。私が戦えばあんな男は瞬殺だが、それによって発動する「隷従の首輪」の激痛は意識を失うほどだ。大人しくしていた方がいいだろう。
「二人とも女か。殺したくねぇなぁ。あんたらには、結婚して幸せな家庭を築いて欲しかったぜ。ああ、殺したく......ねぇ!」
男は喋っている途中で、突然地面を蹴ってネリスに突進して来た。突進と同時に鎌を振り下ろす。そのスピードは常人には見えない程の速度。だが。
次の瞬間。処刑人の男は反対側の壁にぶち当たり、壁に亀裂と血しぶきを残して床に突っ伏した。その体からは、ブスブスと燃える音と、黒煙が立ち昇っている。
「危ないなぁ。喋ってる途中で攻撃なんて卑怯だよ。それに殺したくないなら黙って帰ればいいのに」
ネリスは拳の炎を「フッ」と吹き消し、私を振り向いて両手を広げた。
「おいで、アリエッタ!」
「ネリス! 大好きー!」
私はダッシュでネリスの胸に飛び込む。
「なっ、なっ、なっ......!」
パンデリンは予想外な事態の連続に、言葉を失いワナワナしている。
「行こう、アリエッタ」
「うん!」
ネリスは私を抱きしめ、跳躍して処刑場の壁を飛び越えた。着地した先は観戦席。パンデリンは驚いて腰を抜かす。
「私に近寄るな! おい、こいつらを捕まえろ!」
パンデリンを守っている近衛兵達が、私とネリスを取り囲む。フォリーとミルダは無事だろうか。少し視線を巡らすと、隅っこの方で抱き合いながら震えているのが見えた。とりあえず無事のようで安心した。
近衛兵達はジリジリと近寄っては来るが、決して襲って来ることはなかった。それはそうだろう。目の前でヘルハウンドと処刑人が倒されているのだ。近衛兵はどうみてもそれより格下。勝てる算段は持てない筈だ。
「ええい! どうした貴様等! さっさと捕まえろ! こんな小僧と小娘を恐れるな! 情けない奴らだ! こんな奴らは私の一言でどうにでもなる! ネリス、アリエッタ! 抵抗するな!」
パンデリンは勝ち誇ったように言い放つ。その言葉を受けて、近衛兵達はようやく私達を捕らえ、縄で縛った。
「くくく。どうだ。隷従の首輪がある限り、貴様等は私には逆えまい。それにその縄は特殊な素材で出来ておるからな。貴様等如きにどうにか出来る筈もない。さて、では処刑と行こうか。おい、そこのお前とお前。こいつ等の首を斬れ」
パンデリンは近くにいた近衛兵達に命令を下した。二人はお互い目を合わせ、ゴクリと唾を飲むと私とネリスの前に立ち、剣を構えた。
「やめてくださいパンデリン様! お願いです! 二人を殺さないでください!」
「何でもします! それか私を代わりに殺してください! お願いします!」
フォリーとミルダが泣き叫び、懇願する。私とネリスは良い友人を持った。それはとても喜ばしい事だった。だがもちろん、二人を犠牲にするつもりはない。
「くくく。お前等はまだまだ役に立ってもらうが、この二人は別だ。もはや私にとってストレスの原因でしかないのだ。よしいいぞ貴様等、やれ!」
パンデリンが近衛兵に号令を出す。二人は私達に向かって剣を振るった。その切っ先は、首を横一直線に斬り裂くライン。
私とネリスは両手首と両足首、腕と太ももをガッチリと縄で縛られていた。だがその状態でも屈伸くらいは出来る。
襲いくる剣先を素早くしゃがんでかわし、そのまま軽く跳躍する。そして空中で両手両足を全開、縄をちぎり飛ばした。
「おい、抵抗するなと......!」
言いかけたパンデリンを、素早く距離を詰めたネリスが殴り飛ばす。
「ぶべぇっ!」
もちろん手加減はしているだろう。じゃなければ即死だ。パンデリンは生きていた。鼻血を吹き出し、歯は折れているけれども。
「うぐぅぅっ!」
ネリスは苦しそうに顔を歪めた。隷従の首輪が、彼女を苦しめているのだ。だが気を失ってはいない。凄まじい精神力だ。
彼女は苦悶に歪んだ顔のまま、近衛兵達をまとめて処刑場へと蹴り飛ばす。そして無様に倒れている、パンデリンの前に立った。
「約束は、守ってもらうぞ、パンデリン!」
「わ、わかった! 守る! 守るから殺さないでください!」
パンデリンは素早く土下座し、床に頭を擦り付けた。
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