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第2章
第15話 一晩明けたその翌日。
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サンドリクス率いる冒険者達と「猪突猛進亭」で大騒ぎし、一晩明けたその翌日。
ステインはいつもより少し遅い朝を迎え、今日も冒険者ギルドへとやって来ていた。
依頼を探すべく掲示板を見ていると、昨日助けた冒険者達がステインを囲む。
「今日はどんな依頼を受けるんですか、ステインさん!」
「ランクアップしないんですか、ステインさん!」
「一緒にパーティー組みましょう、ステインさん!」
昨日の飲み会での会話の延長だった。ステインは微笑を浮かべつつ、やんわりと答える。
「私が受ける依頼は、基本的に素材収集ですね。あまりリスクの高い仕事はしないんです。ランクアップする程の手柄はたてていませんし、地味な仕事を一人でコツコツやるのが性に合っているようで」
そう返した。だが英雄を前に目を輝かせる冒険者達は、なかなかステインを解放しなかった。そこへサンドリクス達「流麗なる剣撃団」がやって来た。
「おいおいお前ら、ステインが困ってるじゃねぇか。この人はな、あんまり目立ちたくねぇお人なんだ。まぁ、昨日散々持ち上げた俺が言うのもなんだけどよ。だからその辺で勘弁してやんな」
サンドリクスが間に入った事で、冒険者達は自分達が迷惑をかけている事に気づいたようだった。
「すみませんステインさん。悪気はなかったんです」
「とんでもないです。話しかけてもらえて、嬉しかったですよ」
冒険者達を笑顔で見送り、ステインはサンドリクス達「流麗なる剣撃団」へと振り返る。
「皆さんも、私に用があるのですね?」
ステインが笑うと、サンドリクスは口の端をニヤッと吊り上げる。
「バレたか。あいつらにはああ言ったが、俺達もあんたが欲しいんだ。どうだ、ウチのパーティーに入らないか?」
「申し訳ありません。やはり私は一人が性に合っておりますので......」
ステインが困ったように言うと、サンドリクスは大声で笑った。
「はっはっはっ! やっぱりそうだよなぁ! いや、わかっていたさ! 仕方ない、諦めるぜ! だがまたダンジョンで会った時は、共闘でもしようぜ! じゃあな!」
「ふふっ。そうですね。では」
立ち去る「流麗なる剣撃団」を見送るステイン。ちなみにステインの実力が冒険者ギルドの噂にのぼる事はなかった。
サンドリクスや他の冒険者達は必要以上にその話をしなかったし、それを盗み聞きした者も「その話」を信じたりはしなかったからだ。
Eランクの中年冒険者が、Sランク以上の力を持つ変異型オンスロート・コングを一撃で斬り伏せた。
常識を知る人間にとっては、もはやジョークですらない。
(それにしても、どうして地下一階にあんなモンスターが出現したのだろう)
ステインは疑念を抱きつつも、考えてもわからない事は後回しにした。
そしてダンジョン内に生えている「光苔(ひかりごけ)」の収集依頼書を掲示板から剥ぎ取って、受付に持っていく。ちなみに今日は、フィルとしての仕事は休業だ。緊急性の高い依頼がなかった、というのが理由である。
緊急でないのなら、このギルドには高ランクの冒険者が多い。彼らが解決してくれるだろうとステインは考えていた。
「ティアナ、今日はこれを頼むよ」
「は、はい! ステインさん!」
冒険者ギルドの受付嬢ティアナは顔を真っ赤にし、依頼書を受け取った。そして受理手続きを済ませ、ステインに巻物筒を渡す。
「あ、あの、ステインさん、今夜の約束......」
「ああ、もちろん覚えているよ。七時に猪突猛進亭で待ち合わせよう」
「は、はい!」
ティアナとステインは、今夜一緒に食事をする約束をしてあった。ティアナは赤い顔をさらに真っ赤にし、頬を両手で覆った。
「じゃあ、行ってくるよ」
「はい! 行ってらっしゃいませ、ステインさん♡」
ティアナはうっとりとステインを見つめて、彼の後ろ姿を見送った。
そしてギルドを出た所で、ティアナに思いを寄せる冒険者達に取り囲まれる。
「おいおっさん! テメェちょいとツラかせや!」
「別に構いませんが、一体何をそんなに怒っているんですか?」
「るせぇ! 底辺の癖に生意気なんだよ!」
路地裏に連れ込まれたステインは、戸惑いながらも彼らの気の済むようにさせた。つまりボコボコに殴打され、バキバキに蹴りまくられた。しばらくして、彼は地面に突っ伏す。だがあくまでもこれはやられた振り。実際には痛くも痒くもなかった。
「ふぅ、これくらいで勘弁してやるぜ!」
散々暴行を加え、冒険者達はとりあえずスッキリしたようだ。
「これに懲りたら、もう調子のんじゃねぇぞおっさん! 特に女にデレデレすんのはもうやめるんだな! モテてると勘違いしてるようだがよ!」
「ケッ、てんで弱えなぁ。所詮はEランク。やっぱりあの噂はガセネタかよ」
「あったりめぇだろう。こんなザコがオンスロート・コングの変異種なんざ倒せる訳がねぇぜ。俺たち『剛腕の狼』がその場にいれば、そんなモンスター瞬殺だったけどな!」
「ちげぇねぇ!」
ガハハと笑いながら去って行く冒険者達。ステインは訳が分からなかったが、おそらく自分は力を試されたのだろうと判断した。
ステインは立ち上がり、服の埃を払う。そしてのんびりした足取りで、ダンジョンへ向かったのだった。
ステインはいつもより少し遅い朝を迎え、今日も冒険者ギルドへとやって来ていた。
依頼を探すべく掲示板を見ていると、昨日助けた冒険者達がステインを囲む。
「今日はどんな依頼を受けるんですか、ステインさん!」
「ランクアップしないんですか、ステインさん!」
「一緒にパーティー組みましょう、ステインさん!」
昨日の飲み会での会話の延長だった。ステインは微笑を浮かべつつ、やんわりと答える。
「私が受ける依頼は、基本的に素材収集ですね。あまりリスクの高い仕事はしないんです。ランクアップする程の手柄はたてていませんし、地味な仕事を一人でコツコツやるのが性に合っているようで」
そう返した。だが英雄を前に目を輝かせる冒険者達は、なかなかステインを解放しなかった。そこへサンドリクス達「流麗なる剣撃団」がやって来た。
「おいおいお前ら、ステインが困ってるじゃねぇか。この人はな、あんまり目立ちたくねぇお人なんだ。まぁ、昨日散々持ち上げた俺が言うのもなんだけどよ。だからその辺で勘弁してやんな」
サンドリクスが間に入った事で、冒険者達は自分達が迷惑をかけている事に気づいたようだった。
「すみませんステインさん。悪気はなかったんです」
「とんでもないです。話しかけてもらえて、嬉しかったですよ」
冒険者達を笑顔で見送り、ステインはサンドリクス達「流麗なる剣撃団」へと振り返る。
「皆さんも、私に用があるのですね?」
ステインが笑うと、サンドリクスは口の端をニヤッと吊り上げる。
「バレたか。あいつらにはああ言ったが、俺達もあんたが欲しいんだ。どうだ、ウチのパーティーに入らないか?」
「申し訳ありません。やはり私は一人が性に合っておりますので......」
ステインが困ったように言うと、サンドリクスは大声で笑った。
「はっはっはっ! やっぱりそうだよなぁ! いや、わかっていたさ! 仕方ない、諦めるぜ! だがまたダンジョンで会った時は、共闘でもしようぜ! じゃあな!」
「ふふっ。そうですね。では」
立ち去る「流麗なる剣撃団」を見送るステイン。ちなみにステインの実力が冒険者ギルドの噂にのぼる事はなかった。
サンドリクスや他の冒険者達は必要以上にその話をしなかったし、それを盗み聞きした者も「その話」を信じたりはしなかったからだ。
Eランクの中年冒険者が、Sランク以上の力を持つ変異型オンスロート・コングを一撃で斬り伏せた。
常識を知る人間にとっては、もはやジョークですらない。
(それにしても、どうして地下一階にあんなモンスターが出現したのだろう)
ステインは疑念を抱きつつも、考えてもわからない事は後回しにした。
そしてダンジョン内に生えている「光苔(ひかりごけ)」の収集依頼書を掲示板から剥ぎ取って、受付に持っていく。ちなみに今日は、フィルとしての仕事は休業だ。緊急性の高い依頼がなかった、というのが理由である。
緊急でないのなら、このギルドには高ランクの冒険者が多い。彼らが解決してくれるだろうとステインは考えていた。
「ティアナ、今日はこれを頼むよ」
「は、はい! ステインさん!」
冒険者ギルドの受付嬢ティアナは顔を真っ赤にし、依頼書を受け取った。そして受理手続きを済ませ、ステインに巻物筒を渡す。
「あ、あの、ステインさん、今夜の約束......」
「ああ、もちろん覚えているよ。七時に猪突猛進亭で待ち合わせよう」
「は、はい!」
ティアナとステインは、今夜一緒に食事をする約束をしてあった。ティアナは赤い顔をさらに真っ赤にし、頬を両手で覆った。
「じゃあ、行ってくるよ」
「はい! 行ってらっしゃいませ、ステインさん♡」
ティアナはうっとりとステインを見つめて、彼の後ろ姿を見送った。
そしてギルドを出た所で、ティアナに思いを寄せる冒険者達に取り囲まれる。
「おいおっさん! テメェちょいとツラかせや!」
「別に構いませんが、一体何をそんなに怒っているんですか?」
「るせぇ! 底辺の癖に生意気なんだよ!」
路地裏に連れ込まれたステインは、戸惑いながらも彼らの気の済むようにさせた。つまりボコボコに殴打され、バキバキに蹴りまくられた。しばらくして、彼は地面に突っ伏す。だがあくまでもこれはやられた振り。実際には痛くも痒くもなかった。
「ふぅ、これくらいで勘弁してやるぜ!」
散々暴行を加え、冒険者達はとりあえずスッキリしたようだ。
「これに懲りたら、もう調子のんじゃねぇぞおっさん! 特に女にデレデレすんのはもうやめるんだな! モテてると勘違いしてるようだがよ!」
「ケッ、てんで弱えなぁ。所詮はEランク。やっぱりあの噂はガセネタかよ」
「あったりめぇだろう。こんなザコがオンスロート・コングの変異種なんざ倒せる訳がねぇぜ。俺たち『剛腕の狼』がその場にいれば、そんなモンスター瞬殺だったけどな!」
「ちげぇねぇ!」
ガハハと笑いながら去って行く冒険者達。ステインは訳が分からなかったが、おそらく自分は力を試されたのだろうと判断した。
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