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フェイの足跡とミントの呪い編。

第33話 ようやくフェイに会えました。

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 大臣の姿になったフェレルは、堂々とした立ち振る舞いで扉のノッカーを鳴らす。

「私だ! 魔法省大臣だ!」

 すると、金色のキノコヘアをした少女が扉を開ける。

「これは大臣様。本日は、どのようなご用件でございましょう」

 かしこまるキノコヘア。フェレルは彼女の姿を借り、勝手にフィオと名乗ったが、実際は違うだろう。

「フェイにこれを渡しに来たのだ。例の件でな。伝えてくれるか」

 フェレルはそう言って、印が押された封書をキノコヘアに見せた。

「かしこまりました。ではお預かり致します」

 キノコヘアが封書に手を伸ばすが、フェレルはヒョイ、と封書を動かしてそれをかわす。

「直接渡したいのだ。私を中に入れろ」

 キノコヘアはハッとした表情となり、「フェイ様に確認して参ります」と言い残して奥へ引っ込んだ。

 少ししてキノコヘアが戻って来て、扉を大きく開けた。

「フェイ様がお待ちです。どうぞ」

「うむ」

 キノコヘアの先導で、館の中を進む。中々に広い。先導がなければ迷ってしまうかも知れない。

「こちらの部屋です」

 キノコ部屋は数ある部屋の一つの前で立ち止まり、扉をノックした。

「フェイ様、魔法省大臣、アーティー様をお連れしました」

 キノコヘアがそう報告する。どうやら大臣の名前はアーティと言うらしい。興味は無いが、知っておいて損はないだろう。

「わかったわ。ご苦労様、もう下がっていいわよ」

 フェイの声だ。リゼに聞いて、フェレルが再現したものとほぼ変わらない声。

「はい、かしこまりました」

 キノコヘアが扉に向かって、ペコリとお辞儀をする。

「では、私は失礼します」

「うむ、ご苦労」

 フェレルにもお辞儀をして立ち去るキノコヘア。彼女を一瞥し、フェレルは「入るぞ」と声をかけた。

「ええ、どうぞ入ってアーティ。遠慮はいらないわ」

 そう返答が来た。フェイの口ぶりから察するに、二人は親しい間柄のようだ。大臣自身は、どうやらフェイの事を良く思っていない様子ではあったが。

「うむ」

 フェレルはそう言って扉を開け、中に入る。すると部屋の中には煙が充満していた。思わず咳き込むフェレル。

「あら、どうしたのアーティ。あなたもタバコ、吸うでしょ?」

 そう言ってプカァーッと煙の輪っかを吐き出すフェイ。左手には煙草の葉を燃やして喫煙する為の道具「パイプ」を持っている。

「いや、今は少し、やめている」

「あら、そうなの。こんなに美味しいのに。ところで、封書を持って来たらしいわね。早くよこしなさい。それと例の件なら、もう少し研究が必要だわ。ベルゼクラムの協力も必要だしね」

「ああ、封書はこれだ」

 フェイの要求に応え、封書を渡す。フェレルはアーティーが書状に何を書いたのかは知らないが、それでも問題はないと考えていた。

 今のやり取りで、フェレルは確信した。この女は、フェイではない。スーティアだ。ならば、暗殺する。正体がバレようが、死人に口なしだ。

 彼女がスーティアだと決定付ける要因は様々あるが、決定的なのは、タバコだ。本物のフェイはタバコの煙を嫌っている。そんな彼女がタバコを吸って美味しいと言うわけが無い。

 だが、フェレルはもう少し探りを入れる事にした。タバコの煙で咳き込みそうなのを堪えるのは大変だったが、どうにか我慢する。

「例の件だが、具体的にどの程度の進捗状況なのだ?」

「そうねぇ......あのお方が欲しているのは、いかに魂を効率良く回収するか。重要なのはそこでしょう? だけど現状じゃ、少し離れた場所にいる対象の魂を奪う程度かしら。まぁ、それでも充分有用だとは思うけど、十人以上の魂を一度に回収、って言うご要望にはまだ応えられそうにもないわね」

「なるほどな。まぁ、確かに難しいだろうな。しかしお前なら、きっと出来る筈だ」

 フェレルは頷く。あのお方、と言うのが誰なのかは分からないが、恐ろしい事を考える。そしてやはり、スーティアはシェイプシフターだ。そして、魔法省大臣アーティも。

「ところで......あなた本当は何者なのかしら? まぁ、もうどうでも良いけどね。私の毒を吸って生きていられた者は、いないから」

「何!」

 フェレルは咄嗟に鼻と口を塞ぎ、部屋を飛び出す。正体を見破られたのは初めての事だった。さすがは本物のフェイの能力。スーティアはそれを使える。

 彼女は「ニーベルゲン家に伝わる秘技」である「心理術」を会得している。さらにはフェレルの前の暗殺係。生まれつき持つユニークスキル「毒の支配者」により、毒を自在に操る、とリゼに聞いていた。

 油断していた訳では無いが、いきなり殺しに来るとは、予想外だった。

 おそらくタバコの煙に毒を混ぜていたのだ。このままでは死ぬ。早く、解毒しなくては。

 しかしどうやって?

(フェレル、ワシじゃ。光速剣を使って移動し、リゼに会え。あやつの信仰する法の神アドファニカは、解毒の魔法が使える筈じゃ)

 フェレルの守護霊である剣聖ライナの声が、頭の中に響いた。

(ライナ師匠! アドバイスあざっす!)

 フェレルは左手の腕輪に変化させていた剣を元に戻し、光速剣を使って館を脱出。そのままリゼのいる憲兵庁舎を目指す。

 ちなみに。光速剣は剣に関わるユニークスキルの為、使用には条件が二つある。

 一つは、剣を使える状態である事。もう一つは、斬るべき対象、又は敵対者が存在する事。

 現在は二つとも条件を満たしている為、光速剣を発動出来たのだ。

 憲兵庁舎に着くなり、フェイの姿に変身したフェレル。物陰での変身なので、誰にも見られてはいない筈だ。リゼの元へ再び光速剣で移動する。意識が朦朧として来た。もう時間が無い。

「リゼ姉......」

 リゼは「能対課」の部屋にいた。部屋に入るなり、倒れるフェイフェレル。それと同時に、壁にかけられていた絵がスパンと切れる。フェイが光速剣の発動条件を満たす為、斬ったのだ。

「フェイ! どうした!」

 リゼが駆け寄って来る。クライス、ミント、シャルティアもフェイの周りに集まって来た。

「フェイ、しっかりしろ!」

「フェイ、大丈夫か!」

「フェイさん!」

「フェイちゃん!」

 四人の声が、遠くに聞こえる。リゼの「形状記憶」をかけてもらっておけば良かった。だが、もう手遅れだ。

「原因は分からないが、フェイは毒に侵されているようだ。だが大丈夫だ。私の白魔法【自浄作用強化】で解毒出来る。大丈夫、大丈夫。フェイ、大丈夫だからね」

 リゼは涙を流しながらフェイを抱きしめ、祈りの言葉を唱える。

「我が偉大なる神、秩序を司りしアドファニカよ。この者に、穢れを吐き出し取り払う力を与えたまえ」

 リゼの白杖が輝く。フェイの体が、暖かい光に包まれる。

(あったかい......)

 フェイは遠のく意識の中で、不思議な夢を見た。スーティアでは無い本物のフェイが、自分に語りかけて来る。そんな夢だった。













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