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フェイの足跡とミントの呪い編。

第38話 裁定者はムカつきます。

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 翌日。魔法省とその傘下組織である憲兵庁は大騒ぎになっていた。

 憲兵庁に出勤したリゼとフェイは、その騒ぎに圧倒される。

「君、これは一体何の騒ぎだ?」

 何かの書類を抱えて走っていく憲兵を呼び止め、状況を聞く。

「魔法省大臣アーティー様に、魔導士フェイ・ワズナック殺害の容疑がかかったんです! すいません、急ぐので!」

 素早くお辞儀をして走り去る憲兵。

 その後ろ姿を見ながら、リゼとフェイは顔を見合わせる。

「スーティアが化けたフェイは、苗字がワズナックって言うんだ。じゃあ、私とは別人だと思われてるんだね。まぁ、それは良いとして......アーティが犯人か。そうなるよね、やっぱ。私、スーティアの館にはアーティーの姿で訪れて、使用人の子には姿を見られてるし。そのまま雲隠れしちゃった訳だし」

 フェイは苦笑いする。

「火災は事故ではなく、放火だと判断された訳か。だが、実際のところ、奴はやってない。しかし奴が裁かれて有罪になれば、お前の仕事が一つ減るな」

 能対課の部屋に向かいながら、小声で話すフェイとリゼ。

「そう簡単にはいかないだろうけどね。アーティーは多分適当な犯人をでっち上げて、その人に罪をなすりつける筈」

「うむ。その可能性は高いな。だが、裁定者フェイト様が、大臣ごときに騙されるとも思えんが」

「そうだね。だけど、奴は必死に足掻くと思う。一悶着あると思うよ」

「だな」

 リゼはフェイの予想に頷きながら、「能対課」のドアを開ける。中には既に、他の三人が集まっていた。

「おはようございます課長! 魔法省のトップが捕まるなんざ、えらい事になりましたね!」

 クライスは興奮しているようだ。

「おはようクライス。まぁ、確かに国を揺るがす大事件だろうな。おそらくおおやけになる前に揉み消されるだろうが。ほら、全員席につけ」

 リゼは冷静な口調でクライスを席へ促した。ミントとシャルティアも立ち話をやめ、自分の席へと向かう。

 フェイも自分の席に着き、仲間達に挨拶をした。フェイはシャルティアに色々と話したい事があったが、今はそう言う状況では無さそうなので自粛する。

 リゼも着席すると、ため息をついた。そして両手を机の上で組む。

「みんな、わかっていると思うが、この件についての他言は無用だ。上層部はおそらく、魔法省と憲兵庁の中だけで片付けるつもりだろう。もしも大臣が有罪の場合、おそらく大臣は死罪。新しい大臣が任命される筈だ。世間的には、前大臣は引退し、後任の大臣が引き継ぐ、と言う触れ込みになるだろうな。とにかく、この事件には関わるな。いいな」

「わかりました、課長」

「了解です!」

「わかったわ、リゼ」

「はーい、了解」

 全員の返事を確認し、リゼは事務作業に入る。フェイ達も、各々が自分の抱えている書類仕事にかかる。

 しかし、平和は長くは続かなかった。最初に気付いたのは、クライス。

「おい、ヤベェ魔力持った奴がここに来るぞ!」

「本当だ! しかも、僕たちに敵意を持っている!」

 次にミントが気付く。クライスとミントは自身の黒杖を構え、警戒態勢に入る。

 フェイは周囲を見回しつつ、シャルティアを庇うように立つ。フェイは洞察力はズバ抜けているが魔力を持たない為、魔力感知が出来ないのだ。だから今は、クライスとミント、それからリゼに防衛を頼むしか無い。

「防御結界を張った! 強力な魔法の前では威力を軽減する事しか出来ないが、無いよりはマシだろう!」

 リゼは白杖を振りかざし、「防御結界」の白魔法を使っていた。

「ふふっ、当然そんなものは無意味だよ。僕の前ではね」

 突然、部屋の中心に一人の少年が現れた。今の台詞は、彼が吐いたものだ。

 黒い短髪に、ワイシャツとサスペンダー付きの半ズボンを履いた、いかにも男の子、と言った格好をしている。肌は人形のように白く、大きくクリクリとした目は愛らしい。美少年という言葉がぴったりだ。

「フェイト様......! おい、みんなひざまずけ! このお方は、裁定者フェイト様だ!」

「えっ、このガキが!?」

「こら、クライス! 無礼だぞ! 早くひざまずけ!」

「わかりましたよ!」

 いつになく余裕のないリゼの叱責に、只事ではないと悟ったクライス。言われて即座にひざまずく。クライス以外の三人も、リゼに倣ってひざまずいた。

「あはは、リゼ。教育がなってないみたいだね。また、お仕置きが必要かな?」

「も、申し訳ございません!」

 リゼの声は震えていた。それを聞いたフェイは思う。この子供、ムカつく、と。

「そうか、ムカつくか。ならばどうする、フェイ・ニーベルゲン」

「!」

 裁定者フェイトは、ひざまずくフェイの前にしゃがみ込み、彼女の顔を覗き込んだ。

「君、優秀らしいね。だけど、僕には逆らわない方がいい。妹なら、リゼに聞いてないかい?  僕の恐ろしさを。僕にはね、枷が無い。制約がない。この世のあらゆる事象は、僕を縛れない。裁定者は、目的の為なら法律を破ってもいいんだ。だから、僕にとっての禁呪は存在しない。全ての魔法が、使い放題だ。人を殺しても、もちろん罪には問われない。これが何を意味するか、わかるよね?」

「いつでも私を殺せるって事でしょ? それに、禁呪である筈の魔法【精神感応】で心も読める」

 フェイは一切怯えた様子を見せず、フェイトを睨んだ。
 
「その通り。正解だよ、フェイ。君、面白いね。全然僕を怖がってない。それどころか......ふふッ。殺意まで抱いている」

「当たり前だよ。リゼと仲間に恐怖を与える君は、私にとって敵でしか無い」

 あくまで毅然とした態度を貫くフェイ。

「フェイ! やめるんだ! 殺されるぞ!」

 リゼが悲痛な声を上げる。

「大丈夫だよ、リゼ姉。彼は私を殺したりしない。何故なら、彼は真実を知りたがっている。フェイ・ワズナックを殺した犯人が、誰なのか」

 フェイがそう答えると、フェイトは笑う。

「またも正解だ、フェイ。君は本当に優秀だね。実はアーティーへの尋問で、疑問が生まれたんだ。魔導士フェイ・ワズナックの館で多くの目撃情報があるにも関わらず、アーティーの心にはフェイ・ワズナック殺害の記憶は無い。そして、それと同時に君を疑っているようだった。憲兵庁、能力者対策課の捜査官フェイ・ニーベルゲン。君とフェイ・ワズナックはあらゆる意味で似すぎている。だから君も尋問してみようと思ってね」

「そう。いいよ。何でも聞いて」

 リゼや仲間達は、固唾を飲んでフェイトとフェイのやり取りを見守る。

 だが当のニ人は、何故か少し楽しそうに見えた。




 











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