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フェイの足跡とミントの呪い編。

第40話 隠さなくていいって、最高ですね!

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 フェイトは何の勝負をするか、フェイに持ちかけていない。にも関わらず、彼女は承諾した。

 つまり、フェイは相当の自信家だ。普通に考えれば、魔法使いであるフェイトは魔法を使ってフェイを苦しめる算段だと予想がつく。それでもなお勝負を受けると言うことは、フェイは剣術、もしくは体術に長けているという事。

 だが、そんな話は聞いた事が無い。フェイは捜査官。彼女を守る護衛官も存在する事から、戦闘力は低いと判断出来る。

 それでもフェイトと対峙するとは、ただの愚か者か、それとも......。

 全てはこの一撃でわかる筈だ。

「極大爆裂球!」

 フェイトは魔法を使うのに詠唱すら必要としない。ただ、魔法の名前を念じるか、声に出すだけだ。

 極大爆裂球は、フェイトの手のひらを中心に爆発が巻き起こり、彼以外のあらゆるものを破壊する究極の破壊呪文。その規模は、王都を全て飲み込み程だ。無論、禁呪とされている危険な魔法である。

 普通はこれで死ぬ。どんな強者であれ、生き残る事は出来ない。フェイがこれで死ぬなら、それまでだったと言う事。フェイ・ワズナック殺害の容疑で死刑に処した。そう皆に伝えるだけだ。

 ここは何もない異空間。破壊出来るものは何もない。よってフェイトの極大爆裂球は赤く輝く爆発と、衝撃波を産むだけであった。

 魔法による衝撃が去った後、フェイトはゆっくりと周囲を見渡す。

 何もない。それはそうだろう。極大爆裂球は全てを破壊する。死体など、塵となってしまった筈だ。

「期待ハズレだったか」

 フェイトはため息をつき、この異空間から帰還する為の魔法を心に思い浮かべようとした。だが。

「ねぇ、ちょっとやりすぎじゃない?」

 背後からした声に、フェイトは心臓が止まりそうになった。素早く振り返り、声の主を確認する。

「フェイ......!」

 フェイトの声には驚きと同時に、喜びが混じっていた。ようやく好敵手に出会えたと言う喜び。

「なんで喜んでるのかわからないけどさ、確か勝利条件は相手を降参させたら、だったよね? 消し炭にされちゃったら降参なんて出来ないんですけど!?」

 両手を腰に当て、身長の低いフェイトの目線まで腰を曲げるフェイ。たぷんと揺れる豊かな胸の谷間が、フェイトの目に飛び込んで来る。

「そ、そそ、それもそうだね! ちょっとやりすぎたみたいだ。だけど今のでわかっただろう、僕の恐ろしさが! 降参した方が、いいんじゃないかな!」

 フェイトは顔を真っ赤にしつつも虚勢を張る。だがフェイはクスッと笑ってフェイトの髪を撫でた。

「もー、それを言ったらさ。その恐ろしい魔法を簡単に避けちゃった私の事は怖くないの?」

「ば、ば、馬鹿にするな! 怖いわけないだろ! それに僕は、まだ本気じゃないんだ!」

「ふーん。私もまだ、本気出してないけどねぇー、クスクス。オッケー、じゃあお互い本気出そうよ。どうせここには、他人はいない。私もね、ちょっと退屈してたんだ。実力を隠すのって、結構疲れるからさ」

 やはりこのフェイは只者ではなかったようだ。何せ王都を飲み込む程の爆発で生き残ったのだ。それも無傷で。どんな仕掛けがあるのだろうか。何か、特別なスキルを持っているのかも知れない。まさか、あの巨大な爆発を避けたなんて事はないだろう。絶対に、それだけはあり得ない。

「よ、よーし! 今度のは絶対に防げないぞ。不死の巨人、スカルジャイアントの召喚だ!」

 今回も禁呪。しかもこれは、古代の呪われた魔法。使用者の精神を蝕み、魂をがんじがらめにして永劫に苦しめ続けると言われている魔法だ。

 普通はこんな魔法を使う事は出来ない。だが生まれながらの魔法の天才、そして魔法に制約のないフェイトだからこそ使いこなす事が出来る。使用者の頭を悩ませる呪いさえも、既に跳ね除ける方法を会得していた。

「へぇー、そんな魔法があるんだ。知らなかった! すごいね、フェイト!」

 フェイは関心したように目を輝かせている。フェイトは名前を呼び捨てにされ、若干イラッとした。

「ふん! そのふざけた態度もこれまでさ! いでよ、スカルジャイアント!」

 周囲に渦巻く闇が、巨大な人の姿を形作る。やがてそれは、恐ろしい骸骨の姿になった。右手にはとてつもなく大きく長い剣を携えている。フェイトはスカルジャイアントの頭の辺りまで飛翔し、フェイの姿を見下ろした。

「よし、やれ、スカルジャイアント! その女を殺せ!」

 ブオンッと剣を振り上げるスカルジャイアント。そのスピードは驚く程早い。巨体に似合わぬ、恐ろしいスピードだ。

 しかもスカルジャイアントは、目標を殺すまで絶対に攻撃をやめない。そしてその体は決して滅びる事のない不死。どんなに砕かれても即座に再生する。もはや、フェイに勝機はないだろう。

 スカルジャイアントの剣が、地面に振り下ろされる。きっとフェイは、真っ二つになっている筈だ。

「はははッ! 僕に逆らうからこうなるんだ!」

 勝ち誇るフェイト。だが、またしても背後から声がする。

「いや、だからさー。殺しちゃダメでしょって」

「な、何!?」

 フェイはいつの間にか、後ろからフェイトの腰に捕まっている。そしてフェイトの頭に自身の顎を乗せ、言葉を続けた。

「ねー、そろそろ降参する?」

「ふざけるな! する訳......!」

 そう言いかけた時、スカルジャイアントの巨体がガラガラと音を立てて崩れた。再生は、しないようだ。

「なっ、何で!?」

「ふふっ、どうしてでしょうねー。不思議だねぇ」

 呆気に取られるフェイト。その首筋に、フェイの持つ剣の刃が当てられる。

「さぁーもう一度聞くよ、フェイト。降参、する?」

「ぼ、僕は、僕の実力はこんなもんじゃない! くそ、魔法の選択を間違えた! もっと、もっと早い魔法を......」

 チクリ、と首筋に痛みが走る。そしてつぅー、と温かいものが首を伝った。血だ。少し遅れて、痛みがやってくる。

「ほらほら。このままだと首が胴体から離れちゃうよー。いいの?」

「よ、良くない!」

 フェイトが叫ぶと、フェイはクスッと笑う。

「じゃあ、降参しよっか?」

「くっ......」

 フェイトの目から涙が溢れた。悔しい。悔しいが、この女には勝てない。そう思った。

 世界最強の魔法使いとしてのプライドは、もはやズタズタだった。

「降参する」

 少し震える声で、フェイトはようやくそう言ったのだった。


 
 






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