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第27話 疫病消滅。
しおりを挟むオレは華麗に着地すると、崩れ落ちる灰を球体に閉じ込め、消滅させた。
さて、あとはみんなの治療だ。まぁ今のオレにとっては、造作もない事。
両手を広げ、天を見上げる。オレの体から光が放たれ、周囲の不浄なものが消滅して行く。そして傷を負った者、全てが癒されるだろう。
皆がゆっくりと目覚め始める。オレは白金に駆け寄った。
「白金! わしじゃ! 輝夜じゃ!」
倒れている白金の頭を膝に乗せ、髪を撫でる。白金はゆっくりと目を開け、オレを見て微笑んだ。
「おお、銀杏。俺たちキスの途中だったよな? あれ、なんでこんな......そういや俺、血ぃ吐かなかったか? んー、思い出せねぇ。おっ、銀杏、覚醒したのか? 色っぽいぜ」
オレは白金のほっぺたを、照れ隠しにペチンと叩いた。でもそんな軽口を聞けるようになって、嬉しい。
「照れるなよ。まぁそんな所も可愛いけどな」
「色っぽいとか言うから......。それより人の話を聞いとるのかお主は。わしは輝夜じゃと、そう申したのじゃぞ。わしの前世の名じゃ。聞き覚えはないかの? ちなみにそなたは、大和と言う名だったのじゃ。そ、そのう、わしらは、その時から、愛しあっていたのじゃ。何度も二人で夜を明かし、愛を語り合ったのじゃ......」
オレは潤んだ目で白金を見つめた。
「輝夜? 確か紅蓮様の亡くなった妹君がそんな名だったはずだぜ。何百年も昔の話らしいけどな。んじゃ俺がその大和って奴で、おまえが輝夜で、恋人同士だったと。そう言うこったな」
「そうじゃ。思い出したかの?」
「うーん、悪りぃ、思い出せねぇ。もちろん前世の記憶は夢で見るし、そのおかげでお前との接点も出来た。だけど俺は俺だし、俺にとっちゃお前は銀杏だ。それ以外の何者でもねぇさ」
そう言って歯を見せて笑う白金。
「そうか......ではあの熱い夜を覚えておるのはわしだけか。残念じゃのう」
少し寂しくなって、落ち込むオレ。白金が突然ガバッと起き上がり、座ったままオレを抱きしめる。
「馬鹿。確かに俺は前世の事なんて覚えてねぇ。だけど思い出はこれから二人で作ればいいじゃねぇか!そうだろ? だって俺は、誰よりもお前を、銀杏を愛してる。やっと思いが通じたんだ。絶対に離さねぇ。どんな事があっても、命がけでお前を守ってみせる。それじゃ駄目か?」
「駄目じゃないぞよ。嬉しい。わしも、同じ気持ちじゃ白金。わしは銀杏。そなたを愛する、一人の女じゃ」
見つめ合うオレたち。唇が重なり合う。
「あー!銀杏おねぇちゃんたち、またキスしてる!」
ドラザエモンの声に、素早く離れるオレたち。
「全く、油断も隙もあったもんじゃないわ! 銀杏様! 私だって、白金様と接吻したいのに!独り占めは駄目ですよ!」
「うう、すまぬ、累火」
謝るべきかどうかの判断が追いつかず、とりあえず謝るオレ。ん?てか累火は恋のライバルな訳だけど、「恋愛成就」の能力の対象にはならないんだろうか......力が働かない。
と言うより、もうすっかり力は消え失せていた。きっと白金が元気になったし、オレを愛してくれている事がわかったから、自動的に解除されたんだろう。
と、同時に、前世の記憶も消えて行く。ああ、もう少し覚えていたかったなぁ。
「まぁ何にせよ、緑爪を退治出来たようで良かったですね。一度全員倒れてしまったようですが......銀杏様が解決してくださったのでしょう?」
さすが亜水。状況判断に長けている。
「うむ、その通りじゃ。皆もっと感謝するが良い。特に累火。白金はわしのものじゃ。手を出すでないぞ」
「むー! それとこれとは別です! 銀杏様の事は尊敬してますけど、白金様を好きな気持ちに、嘘はつけません!」
くっ、結構手強いなこやつ。
「まぁまぁ累火。白金と銀杏様は両想いのようだし、邪魔するべきじゃないんじゃないか?」
憤る累火を、そっとたしなめる木蓮。
「お兄ちゃんだって、銀杏様の事が好きなんでしょ! だったら負けずにアタックしたらいいじゃないの!そうしたら私も白金様と一緒になれて、ハッピーよ!」
何故か英語を多用する累火。どこで覚えたんだ?
木蓮は真っ赤な顔をしてオレを見る。何度もチラ見する。
「い、いや、オレはいいんだ。銀杏様のお気持ちがはっきりとわかっただけで、充分満足だよ。俺の事、もしかしたら好きになってくれるかも知れないって思ってたけど、もう脈はないみたいだし、いいんだ! ぜんっぜん、未練はないんだ!」
いや、絶対あるでしょそれ。なんかごめんね木蓮。オレがふわふわした態度とっちゃったから。でも初めて抱きしめられた時、キュンとしちゃったのは確かだよ。
でもオレは、それでもやっぱり白金が好きだ。この気持ち、絶対譲れない。例えば相手が累火でも、負ける訳にはいかないんだ!
オレは木蓮を励ます累火を見つめた。累火もオレの視線に気がつき、お互いの視線がぶつかり合う。ばちばちと火花が散っているような錯覚すら覚える。
「あらあら。白金様も大変ねぇ。まぁ、色男の宿命だと思って諦めなさいな。ほらみんな、帰るわよ。そろそろ夜が明けるわ。朝食の準備をしなくっちゃね」
「僕も手伝うよ! お母さん!」
帰宅の準備を始める葉月に、日凛が抱きつく。
「んじゃオレも手伝う!」
ドラザエモンも葉月に抱きつく。
「ドラはいいよ! だってお母さんにいたずらするだろ!」
「しねぇって! ちゃんと手伝うからさ!」
「ほらほら、喧嘩しないの。行くわよ」
「はーい!」
二人の声が元気に合わさる。亜水も二人の頭を撫でながら、葉月に続く。
「俺たちも行こう、累火」
「うん、お兄ちゃん」
そう言って歩き始める兄妹。累火が何か言いたそうにしていたが、木蓮に肩を叩かれて、そのまま去っていった。
「オレたちも行こうか、銀杏」
「うむ。じゃが、出来れば二人っきりになりたいのう」
立ち上がる白金に、オレは甘えるように抱きついた。
「俺も同じ事を考えてた。朝飯、食わなくても平気か?」
「平気じゃ。もし腹が減ったら、その時はわしが作る」
「おっ、いいねぇ。お前の手料理、食べてみたいと思ってたんだ」
「まぁ、得意ではないがのう。術を使えばなんとかなるじゃろ」
「おいおい、そりゃ反則だろ。まぁいいけどよ。さ、行こうぜ」
そう言ってスタスタと歩き出す白金。オレはテテテッと小走りしてついて行く。
「のう、抱っこ、抱っこしてほしいぞよ!」
「はははっ! ったくしょうがねぇお姫様だ!」
白金は笑いながら、オレをお姫様抱っこしてくれた。
「やっぱ軽いなぁ、銀杏は」
「あはは。のう、さっきの続き......」
オレが恥ずかしさをこらえて言うと、白金がニヤリとする。
「なんだよ、我慢できねぇのか?」
「うむ。出来ぬ」
白金はオレを抱っこしたまま、キスしてくれた。とても濃厚で、甘いキスだった。
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