【完結】のじゃロリ狐娘に転生した俺。守り神として村人を英雄覚醒させ、邪悪な帝にざまぁします。

アキ・スマイリー

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第28話 銀杏と塁火の休戦協定。

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「もー!二人とも遅いですよ! 一体どこに雲隠れしてたんですか?」

 亜水の家に戻ると、累火が頬を膨らませてプンスカ怒っていた。

「ちと、散歩をのう。の?白金」

「ん? あ、ああ」

 白金は馬鹿正直なのですぐに本当の事を言ってしまう。その為、事前に口裏を合わせていた。

「もうお昼ですよ! そんなに長い間お散歩してたんですか!? ちょっと信じられないんですけど!」

 うわー、すっごい食いついてきた。累火って、もっと大人しい娘だと思ってたのに。オレがまだ男の心でいた時は、恋愛感情すら抱いていたのになぁ。恋は盲目ってやつか。

「あー、ほらな銀杏。無理あるんだって。正直に言った方がいいと思うぜ俺は」

「い、いや、それはさすがに......」

 まずいと思うぞ!ドラザエモンも日凛も耳をピクピクさせてるよ!子供には刺激が強いからやめて!木蓮は察した様子で累火をたしなめようとする。が、効果はない。亜水と葉月は、離れた場所から優しく見守っている。

「あのな、累火。俺は銀杏と二人で愛を確かめ合ってた。人目に付かない、森の木陰でな」

 累火と木蓮の顔がボッと赤くなる。日凛はポカンとし、ドラザエモンはニヤついている。

「そ、そんな。白金様、私......白金様の事、お慕い申し上げております。二番目で構わないので、私の事も愛してくださいませんか? 」

 顔を赤らめ、涙をにじませながらも、意を決したようにそう告白する累火。相当な覚悟とみた。

 でもちょっと状況考えて欲しかったなぁ......。葉月は逃げる様に子供たちを連れて家の外へ出て行く。亜水と木蓮も、居心地が悪そうに葉月の後を追った。

「ごめんな累火。俺は銀杏の事を死ぬほど愛してる。同時に二人は愛せねぇんだ。だから俺の事は諦めてくれ。俺なんかよりもいい男は沢山いるさ。せっかくそんなに器量好しなんだからよ」

 そう言って累火の髪をそっと撫でる白金。バカ!それがダメなの!もっと嫌われるような事しないと、累火が諦めつかないだろ!

 まぁ、死ぬほど好きと言われて、ちょっと......いや、かなり嬉しいけど。

 累火はポロポロと涙をこぼし、うつむいた。そして突然、白金に抱きつく。

「白金様のお気持ちは、知ってます。でも、でも、好きなんです。どうしようもないんです。諦めるなんて出来ません。だから......」

 そう言って白金を見つめる累火。そのまま、白金の頰に口づけをした。

「好きでいさせてください。白金様のお気持ちが変わるまで、私はいつまでも待ちます」

 ふむ。敵ながらあっぱれだな。そのガッツを戦いにも生かしてもらおう。

 それに、こんなにも累火が好きになってしまう白金と、オレは両想いなんだ。そう思うと、とっても誇らしい。

「わかった。俺の心変わりはありえねぇが、好きにすりゃいい。だが一つ条件がある」

 白金はピンと指を一本立てた。

「俺と銀杏の邪魔だけはするな。いいな?」

 白金は脅すような台詞を、快活な笑みと共に言い放った。これではまた、累火がときめいてしまうかも知れない。

 案の定累火は頰を朱に染め、潤んだ瞳で白金を見つめると、やがてコクリと頷いた。

「うむ。累火、わしはお主を恋愛における好敵手と認めよう。で、あると同時に、そなたはわしの大切な家族でもある。視線に火花を散らすのは、金輪際なしにしようではないか。のう?」

 オレは累火に右手を差し出した。別に喧嘩したわけじゃないけど、仲直りの握手と言うわけだ。

 累火はそっとオレの手を握る。

「銀杏様の手、小さくて、すべすべで、色白で......羨ましい」

「ん?そうか? 累火の手も、すべすべしておるぞ」

 オレはフッと笑い、累火の顔をみた。累火は笑っていた。いつもの可愛らしい、守ってあげたくなるような笑顔だ。

「一時休戦です、銀杏様。だけど私、白金様の事......絶対に諦めませんから。それじゃ、みんなを呼んできます」

 累火はオレの手を離すと、あっかんべーをした。そしてクスッと笑い、家を飛び出して行った。

「累火、すごい情熱じゃのう。白金、お主一体累火に何をしたのじゃ」

 オレはじとっとした目で白金を見る。疑いの眼(まなこ)ってやつだ。

「何もしてねーって。宴の時に、少し話しをしたくらいで......」

 オレはピンと来た。

「それじゃ! きっとまた、考えなしに女子(おなご)の心をもてあそぶような事を言ったんじゃろう!何を言ったか思い出せ!」

 まっ、馬鹿正直で天然な白金の事だ。絶対自覚はないだろうけどな!

「えー? ちょっと待て、思い出すからよ......確か、強いんですね、とかなんとか言われて......その後、何が襲ってきても、俺が守ってやるって言ったんだ」

「それじゃあああ!」

 オレは思わず叫んだ。白金は突然の大声に、体をビクッと震わせる。

「ぬおおお! いきなり叫ぶな! びっくりするだろ!」

「うっさいわ! 貴様が無責任に累火の乙女心を惑わせたのが悪いんじゃい!あー、もう馬鹿! 白金のバカバカバカ!」

 オレは白金の胸に飛び込み、ポカポカと拳で軽く叩いた。

「いてて、怒るなよ。悪気はなかったんだ。俺が愛してるのは、全世界でたった一人。お前だけだ、銀杏」

 そんな歯の浮くようなクサイ台詞をあっさりと......。そんな所も好きだ。

「本当か、白金。本当にわしだけを、愛しておるのか?」

 問いかけるオレをひょいと抱き上げ、二階への階段を登り始める白金。

「今からそれを証明してやるよ。覚悟しろ」

「えっ、まっ、みんな、帰って来ちゃうぞよ! ダメじゃダメじゃ、ちょっ、まっ」

 結局押し切られる型で、しばらくイチャイチャしてしまった。

   みんなは中々帰って来なかった。そろそろ帰ってきても良さそうなんだけど......。ちょっと様子を見てこよう。

 なかなか離してくれない白金を必死に説き伏せ、階段を降りる。すると、みんな一階に揃っていた。

「た、ただいまー! 今ね、ちょうど帰ってきたの! ね、みんな!」

 葉月が大げさなくらいの笑顔でそう言い、みんな「そうそう」と笑った。ただドラザエモンだけは、めっちゃニヤけた目でオレを見ていた。ゲンコツ落としたけどね。

 ああ、二人だけの家が欲しいな......。そしたら心おきなくイチャイチャ出来るのに。

 あっ、そうだ!ないなら作ればいいじゃん!

「皆の者、良く聞け!この村を、第二の都(みやこ)とする!」

 オレの突然の宣言に、みんなが騒めく。

「都、でございますか、銀杏様。帝(みかど)がおわす、あの......」

 亜水が信じられない、と言った顔で、オレに問いを返す。まぁ、驚くのは無理もないだろう。だが不可能ではない。オレと白金の力を合わせれば、充分可能だ!

「そうじゃ! その都じゃ! お主らを追放した事を後悔するくらいの、それはもう立派なやつを作るぞよ! 同じく追放された、近隣の村々の者も集めよう。全ての村人を覚醒、または再帰させ、帝を見返してやるのじゃ! ついでに厄神の紅蓮も、撃退してくれるわ!」

 オレは自信満々に言い放った。みんなが歓声をあげる。ヤッベェ! めっちゃやる気出てきた!

「おーい銀杏、早く二階に戻って来いよ。続き......」

 オレは一階に降りてくる白金に向かってダッシュし、その口に手をかぶせる。

「すまぬが白金、今はものすごーく大事な話をしておるところなんじゃ!」

 オレは自分の計画を、白金にも説明した。

「おおー! 面白れぇじゃねぇか! よっしゃ! やろうぜ!」

   白金も乗り気だ。よし、話は決まった。

「良し、では早速取り掛かるぞ! まずは近隣の村に使いを出す! 亜水よ、村の者たちを広場に集めるのじゃ!」

「かしこまりました! ただちに!」

「私もお供しますわ、あなた」

 亜水と葉月が、連れ立って家を出て行く。

 さて、これから忙しくなるぞ!楽しみだ。


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