【完結】のじゃロリ狐娘に転生した俺。守り神として村人を英雄覚醒させ、邪悪な帝にざまぁします。

アキ・スマイリー

文字の大きさ
29 / 42

第29話 新たな称号。

しおりを挟む
 村人全員が広場に集まり、オレは演説を始めた。みんな涙を流して喜んでいた。快適な生活を突然奪われた苦しみ、悲しみ、悔しさ。それを今、解消出来るかも知れないのだ。

「銀杏様! 他の村への連絡、是非俺に行かせてください! 今朝のゴタゴタのこたぁ聞きましたが、別に今からむかっても、明日の朝までには着けると思いますんで。予定通り、田口村に向かわせてください!」

 そう言って意気込む弥平さん。

「弥平よ、それには及ばぬ。昨夜はわしも力を失っておったゆえ、お主に頼んでいたのじゃ。じゃが今のわしはすこぶる調子が良くてな。術も自在に使う事が出来る。おそらく一刻もたたぬうちに、全ての村を回る事が出来よう」

「一刻もたたぬうちに、でございますか! それはすごいですね。わかりました。じゃあ、俺は大人しく待ってます」

 そう言って笑う弥平さんは、少し残念そうだった。役に立てる事に喜びを感じていたのだろう。

「うむ。それが良かろう。いずれお主の脚に頼る場面も出て来る。それまで、怪我などせぬようにな。頼りにしておるぞ、弥平」

「はい! ありがとうございます!」

 弥平さんは満足そうに微笑んだ。

 千里眼の力により、周辺の村々の情報は得ている。この霧隠れの村を含め、都から追放された人々の村は全部で六つ。田口村、川中村、山下村、畑山村、雲上村、の順で回るのが効率が良さそうだ。

 さて......オレは一旦この場を離れる訳だが、亜水たちに指示を出してから出発しないとな。時間は有限だ。いつ紅蓮の手下が襲ってくるとも限らない。

 オレのそばには、白金を筆頭に七人の精鋭が顔を揃えている。彼らなら、オレの留守をしっかり守ってくれる筈だ。

「亜水よ。わしが留守の間、村の守りをしっかりと頼むぞ。ふむ......成長著しいのう。かなり格が上がっておるぞ」

 看破で亜水の能力値を見ると、格段に跳ね上がっていた。緑爪にダメージを与える事が出来たのも納得だ。

「まことでございますか、銀杏様」

「まことじゃ。物ノ怪たちとも随分戦ったからのう。お主に新たな称号を授ける事が可能じゃ。その名も『侍大将』じゃ。配下の士気を高め、攻撃力も強化出来る能力を持つ」

 オレが新しい称号を授けると、亜水の体が眩しく輝く。

「おお、力がみなぎって来ました! ありがとうございます!」

「うむ。お主は村の男たちを集め、侍の技術を教えこめ。主従の契約を交わすには、口約束で構わぬ。つまり、配下になる事を了承すれば、其奴はお主の配下となる。それだけで力を高めてやる事が可能じゃ。戦力は一人でも多い方が良い。わしが旅立ったら、早速人材の確保と育成を開始せよ。良いな」

「かしこまりました!」

 深々と頭を下げる亜水。ほんとに礼儀正しいよなぁ。

「さて、それから葉月よ。そなたも随分と格が上がっておる。緑爪との戦いでの活躍、見事であったぞ」

「そんな......滅相もございません。ですが、お役に立てて光栄です」

 目を細め、優しい笑みを浮かべる葉月。ああ......彼女の笑顔は、本当に心が癒される。

「うむ。そなたには、新しい称号『頭領』を与える。同じく配下の力を高めるが、お主の場合は『器用さ』じゃな」

 葉月の体がパァァッと輝く。

「まぁ。なんだか凄いものが作れそうな予感がするわ」

 嬉しそうに笑う葉月。

「うむ。お主は村の女達を集め、くノ一として育成せよ。戦いの技術はもちろん、敵を陥落する技や、薬や道具、罠の生産もしっかり教えるのじゃぞ」

「かしこまりました。陥落の練習には相手が必要ですが、この村は男性の方が多いですし、相手には困りませんわね。うふふ」

 そう言って妖艶な笑みを浮かべる葉月。亜水はちょっぴり心配そうだ。

「まぁ、その辺はほどほどにな。さて、次はドラザエモン、お主を覚醒させてやろう」

「えっ、オレ!? まじ!? やったぁぁ!」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶドラザエモン。こういう所は結構子供っぽいな。初めて出会った時は、まじで怖かったけど。

「何、何!? オレ何になるの!」

 手をバタバタして落ち着きなく歩き回るドラザエモンにゲンコツを落とす。

「イッテェ!」

「落ち着け。ほれ、額を出すのじゃ」

 ワクワクした顔で、額を差し出すドラザエモン。本当に、見た目だけは可愛いよなコイツ。中身はクズだけど。

「土羅座衛門(ドラザエモン)よ、その秘めた力を解き放ち、あまたの鉄を力とせよ! 覚醒!」

 パァァーッとドラザエモンの体が輝く。なんだかお顔が凛々しく、ちょっと逞(たくま)しくなったようだ。

「うわぁー、すっげぇ! めっちゃ強くなった気がする! やったやったー! よし、日凛、相撲で勝負しようぜ!」

「えー、面倒くさいなぁ」

「お前が勝ったら、お母さんへのエッチなイタズラはやめてやるよ」

「え!? じゃあやる!」

 オレは再びドラザエモンにゲンコツを落とす。

「勝負とか関係なしに、葉月にちょっかい出すのはやめんか、この助平。前にも約束しとったじゃろーが。全くこりんやつじゃ。ほれ、まだ称号を与えておらぬ。大人しく立っとれ」

    ドラザエモンは頭をさすりながら「はぁい」と言った。

「ドラザエモンよ、お主に与える称号は『刀鍛冶』じゃ。刀が無くては侍は真の力を発揮できぬからのう」

 ドラザエモンの体が再び輝く。

「えー、もっとカッコいいのが良かったなぁ」

 ドラザエモンは不服そうに口を尖らせた。

「つべこべ言うでない。大事な役割なんじゃぞ。固有能力は『鍛造』じゃ。槌で刀を鍛える際、炉がなくても熱を加える事が出来る。材料は、農具から拝借すると良い。すでに葉月が解体して鉄部分だけにしてあるじゃろうから、分けてもらうのじゃぞ」

「ふぇーい。わかったよぉ。やりますよぉーだ。ま、どうせだから凄い刀つくったるぜ。お母さんも応援してね」

「ええ、もちろんよ。頑張ってねドラちゃん」

 葉月はニッコリと微笑んだ。

「日凛、お主には新たな称号はないが、随分と強くなっておるのは確かじゃ。ドラザエモンを手伝ってやってくれるかの? 鍛冶場では腕力をかなり使うからのう」

 日凛はぶぅっ、と頰を膨らます。

「ええー!? やだよ、こんな奴と一緒に仕事するなんて! 絶対やだ!」

 日凛はほとんど涙目だ。ドラザエモンが葉月の愛情を受けている事にヤキモチを妬いているのだろう。

「そう言うなって日凛。後でいいものやるからさ。耳貸して」

「えっ、いいもの?何々?」

 日凛にそっと耳打ちするドラザエモン。日凛の顔がパァッと明るくなる。

「本当にくれるの!?」

「ああ、本当にやるよ。だから鍛冶場の手伝い頼むよ」

「うん! 任せて!」

 二人はガッチリと握手を交わし、にまぁっとした笑みを浮かべた。

 あの二人、何か悪巧みでもしているのだろうか。まぁいい。子供の考える事なんてたかが知れてる。

「俺にも何か新しい称号はありますか、銀杏様」

 木蓮がそう言いながら、オレのそばにやって来た。

「いや、特にないのう。お主と累火、それから白金はすでに完成された力を持っておる。称号を新たに与えずとも、安心して留守を任せる事ができるぞよ」

「そうですか......」

 木蓮はなんだか残念そうだった。緑爪戦でも大活躍だった木蓮。オレとしては今の台詞は褒めているつもりだったんだけど、なんかまずかったかな。

「木蓮よ、お主は式神を四方に配置し、怪しい者が来ないか監視せよ。累火は村の結界に対して祈祷を頼む。わしが張っておいたものじゃが、力が弱まっておる。頼めるかの?」

「お任せください。では、狐式神を配置します」

「かしこまりました、銀杏様!村の結界と白金様の事は、私がちゃんと守りますので!」

 また累火が対抗心を燃やしている。まぁ別にいいけどね。だって白金はオレの事......死ぬほど好きなんだからな♡

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...