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第29話 新たな称号。
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村人全員が広場に集まり、オレは演説を始めた。みんな涙を流して喜んでいた。快適な生活を突然奪われた苦しみ、悲しみ、悔しさ。それを今、解消出来るかも知れないのだ。
「銀杏様! 他の村への連絡、是非俺に行かせてください! 今朝のゴタゴタのこたぁ聞きましたが、別に今からむかっても、明日の朝までには着けると思いますんで。予定通り、田口村に向かわせてください!」
そう言って意気込む弥平さん。
「弥平よ、それには及ばぬ。昨夜はわしも力を失っておったゆえ、お主に頼んでいたのじゃ。じゃが今のわしはすこぶる調子が良くてな。術も自在に使う事が出来る。おそらく一刻もたたぬうちに、全ての村を回る事が出来よう」
「一刻もたたぬうちに、でございますか! それはすごいですね。わかりました。じゃあ、俺は大人しく待ってます」
そう言って笑う弥平さんは、少し残念そうだった。役に立てる事に喜びを感じていたのだろう。
「うむ。それが良かろう。いずれお主の脚に頼る場面も出て来る。それまで、怪我などせぬようにな。頼りにしておるぞ、弥平」
「はい! ありがとうございます!」
弥平さんは満足そうに微笑んだ。
千里眼の力により、周辺の村々の情報は得ている。この霧隠れの村を含め、都から追放された人々の村は全部で六つ。田口村、川中村、山下村、畑山村、雲上村、の順で回るのが効率が良さそうだ。
さて......オレは一旦この場を離れる訳だが、亜水たちに指示を出してから出発しないとな。時間は有限だ。いつ紅蓮の手下が襲ってくるとも限らない。
オレのそばには、白金を筆頭に七人の精鋭が顔を揃えている。彼らなら、オレの留守をしっかり守ってくれる筈だ。
「亜水よ。わしが留守の間、村の守りをしっかりと頼むぞ。ふむ......成長著しいのう。かなり格が上がっておるぞ」
看破で亜水の能力値を見ると、格段に跳ね上がっていた。緑爪にダメージを与える事が出来たのも納得だ。
「まことでございますか、銀杏様」
「まことじゃ。物ノ怪たちとも随分戦ったからのう。お主に新たな称号を授ける事が可能じゃ。その名も『侍大将』じゃ。配下の士気を高め、攻撃力も強化出来る能力を持つ」
オレが新しい称号を授けると、亜水の体が眩しく輝く。
「おお、力がみなぎって来ました! ありがとうございます!」
「うむ。お主は村の男たちを集め、侍の技術を教えこめ。主従の契約を交わすには、口約束で構わぬ。つまり、配下になる事を了承すれば、其奴はお主の配下となる。それだけで力を高めてやる事が可能じゃ。戦力は一人でも多い方が良い。わしが旅立ったら、早速人材の確保と育成を開始せよ。良いな」
「かしこまりました!」
深々と頭を下げる亜水。ほんとに礼儀正しいよなぁ。
「さて、それから葉月よ。そなたも随分と格が上がっておる。緑爪との戦いでの活躍、見事であったぞ」
「そんな......滅相もございません。ですが、お役に立てて光栄です」
目を細め、優しい笑みを浮かべる葉月。ああ......彼女の笑顔は、本当に心が癒される。
「うむ。そなたには、新しい称号『頭領』を与える。同じく配下の力を高めるが、お主の場合は『器用さ』じゃな」
葉月の体がパァァッと輝く。
「まぁ。なんだか凄いものが作れそうな予感がするわ」
嬉しそうに笑う葉月。
「うむ。お主は村の女達を集め、くノ一として育成せよ。戦いの技術はもちろん、敵を陥落する技や、薬や道具、罠の生産もしっかり教えるのじゃぞ」
「かしこまりました。陥落の練習には相手が必要ですが、この村は男性の方が多いですし、相手には困りませんわね。うふふ」
そう言って妖艶な笑みを浮かべる葉月。亜水はちょっぴり心配そうだ。
「まぁ、その辺はほどほどにな。さて、次はドラザエモン、お主を覚醒させてやろう」
「えっ、オレ!? まじ!? やったぁぁ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶドラザエモン。こういう所は結構子供っぽいな。初めて出会った時は、まじで怖かったけど。
「何、何!? オレ何になるの!」
手をバタバタして落ち着きなく歩き回るドラザエモンにゲンコツを落とす。
「イッテェ!」
「落ち着け。ほれ、額を出すのじゃ」
ワクワクした顔で、額を差し出すドラザエモン。本当に、見た目だけは可愛いよなコイツ。中身はクズだけど。
「土羅座衛門(ドラザエモン)よ、その秘めた力を解き放ち、あまたの鉄を力とせよ! 覚醒!」
パァァーッとドラザエモンの体が輝く。なんだかお顔が凛々しく、ちょっと逞(たくま)しくなったようだ。
「うわぁー、すっげぇ! めっちゃ強くなった気がする! やったやったー! よし、日凛、相撲で勝負しようぜ!」
「えー、面倒くさいなぁ」
「お前が勝ったら、お母さんへのエッチなイタズラはやめてやるよ」
「え!? じゃあやる!」
オレは再びドラザエモンにゲンコツを落とす。
「勝負とか関係なしに、葉月にちょっかい出すのはやめんか、この助平。前にも約束しとったじゃろーが。全くこりんやつじゃ。ほれ、まだ称号を与えておらぬ。大人しく立っとれ」
ドラザエモンは頭をさすりながら「はぁい」と言った。
「ドラザエモンよ、お主に与える称号は『刀鍛冶』じゃ。刀が無くては侍は真の力を発揮できぬからのう」
ドラザエモンの体が再び輝く。
「えー、もっとカッコいいのが良かったなぁ」
ドラザエモンは不服そうに口を尖らせた。
「つべこべ言うでない。大事な役割なんじゃぞ。固有能力は『鍛造』じゃ。槌で刀を鍛える際、炉がなくても熱を加える事が出来る。材料は、農具から拝借すると良い。すでに葉月が解体して鉄部分だけにしてあるじゃろうから、分けてもらうのじゃぞ」
「ふぇーい。わかったよぉ。やりますよぉーだ。ま、どうせだから凄い刀つくったるぜ。お母さんも応援してね」
「ええ、もちろんよ。頑張ってねドラちゃん」
葉月はニッコリと微笑んだ。
「日凛、お主には新たな称号はないが、随分と強くなっておるのは確かじゃ。ドラザエモンを手伝ってやってくれるかの? 鍛冶場では腕力をかなり使うからのう」
日凛はぶぅっ、と頰を膨らます。
「ええー!? やだよ、こんな奴と一緒に仕事するなんて! 絶対やだ!」
日凛はほとんど涙目だ。ドラザエモンが葉月の愛情を受けている事にヤキモチを妬いているのだろう。
「そう言うなって日凛。後でいいものやるからさ。耳貸して」
「えっ、いいもの?何々?」
日凛にそっと耳打ちするドラザエモン。日凛の顔がパァッと明るくなる。
「本当にくれるの!?」
「ああ、本当にやるよ。だから鍛冶場の手伝い頼むよ」
「うん! 任せて!」
二人はガッチリと握手を交わし、にまぁっとした笑みを浮かべた。
あの二人、何か悪巧みでもしているのだろうか。まぁいい。子供の考える事なんてたかが知れてる。
「俺にも何か新しい称号はありますか、銀杏様」
木蓮がそう言いながら、オレのそばにやって来た。
「いや、特にないのう。お主と累火、それから白金はすでに完成された力を持っておる。称号を新たに与えずとも、安心して留守を任せる事ができるぞよ」
「そうですか......」
木蓮はなんだか残念そうだった。緑爪戦でも大活躍だった木蓮。オレとしては今の台詞は褒めているつもりだったんだけど、なんかまずかったかな。
「木蓮よ、お主は式神を四方に配置し、怪しい者が来ないか監視せよ。累火は村の結界に対して祈祷を頼む。わしが張っておいたものじゃが、力が弱まっておる。頼めるかの?」
「お任せください。では、狐式神を配置します」
「かしこまりました、銀杏様!村の結界と白金様の事は、私がちゃんと守りますので!」
また累火が対抗心を燃やしている。まぁ別にいいけどね。だって白金はオレの事......死ぬほど好きなんだからな♡
「銀杏様! 他の村への連絡、是非俺に行かせてください! 今朝のゴタゴタのこたぁ聞きましたが、別に今からむかっても、明日の朝までには着けると思いますんで。予定通り、田口村に向かわせてください!」
そう言って意気込む弥平さん。
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「一刻もたたぬうちに、でございますか! それはすごいですね。わかりました。じゃあ、俺は大人しく待ってます」
そう言って笑う弥平さんは、少し残念そうだった。役に立てる事に喜びを感じていたのだろう。
「うむ。それが良かろう。いずれお主の脚に頼る場面も出て来る。それまで、怪我などせぬようにな。頼りにしておるぞ、弥平」
「はい! ありがとうございます!」
弥平さんは満足そうに微笑んだ。
千里眼の力により、周辺の村々の情報は得ている。この霧隠れの村を含め、都から追放された人々の村は全部で六つ。田口村、川中村、山下村、畑山村、雲上村、の順で回るのが効率が良さそうだ。
さて......オレは一旦この場を離れる訳だが、亜水たちに指示を出してから出発しないとな。時間は有限だ。いつ紅蓮の手下が襲ってくるとも限らない。
オレのそばには、白金を筆頭に七人の精鋭が顔を揃えている。彼らなら、オレの留守をしっかり守ってくれる筈だ。
「亜水よ。わしが留守の間、村の守りをしっかりと頼むぞ。ふむ......成長著しいのう。かなり格が上がっておるぞ」
看破で亜水の能力値を見ると、格段に跳ね上がっていた。緑爪にダメージを与える事が出来たのも納得だ。
「まことでございますか、銀杏様」
「まことじゃ。物ノ怪たちとも随分戦ったからのう。お主に新たな称号を授ける事が可能じゃ。その名も『侍大将』じゃ。配下の士気を高め、攻撃力も強化出来る能力を持つ」
オレが新しい称号を授けると、亜水の体が眩しく輝く。
「おお、力がみなぎって来ました! ありがとうございます!」
「うむ。お主は村の男たちを集め、侍の技術を教えこめ。主従の契約を交わすには、口約束で構わぬ。つまり、配下になる事を了承すれば、其奴はお主の配下となる。それだけで力を高めてやる事が可能じゃ。戦力は一人でも多い方が良い。わしが旅立ったら、早速人材の確保と育成を開始せよ。良いな」
「かしこまりました!」
深々と頭を下げる亜水。ほんとに礼儀正しいよなぁ。
「さて、それから葉月よ。そなたも随分と格が上がっておる。緑爪との戦いでの活躍、見事であったぞ」
「そんな......滅相もございません。ですが、お役に立てて光栄です」
目を細め、優しい笑みを浮かべる葉月。ああ......彼女の笑顔は、本当に心が癒される。
「うむ。そなたには、新しい称号『頭領』を与える。同じく配下の力を高めるが、お主の場合は『器用さ』じゃな」
葉月の体がパァァッと輝く。
「まぁ。なんだか凄いものが作れそうな予感がするわ」
嬉しそうに笑う葉月。
「うむ。お主は村の女達を集め、くノ一として育成せよ。戦いの技術はもちろん、敵を陥落する技や、薬や道具、罠の生産もしっかり教えるのじゃぞ」
「かしこまりました。陥落の練習には相手が必要ですが、この村は男性の方が多いですし、相手には困りませんわね。うふふ」
そう言って妖艶な笑みを浮かべる葉月。亜水はちょっぴり心配そうだ。
「まぁ、その辺はほどほどにな。さて、次はドラザエモン、お主を覚醒させてやろう」
「えっ、オレ!? まじ!? やったぁぁ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶドラザエモン。こういう所は結構子供っぽいな。初めて出会った時は、まじで怖かったけど。
「何、何!? オレ何になるの!」
手をバタバタして落ち着きなく歩き回るドラザエモンにゲンコツを落とす。
「イッテェ!」
「落ち着け。ほれ、額を出すのじゃ」
ワクワクした顔で、額を差し出すドラザエモン。本当に、見た目だけは可愛いよなコイツ。中身はクズだけど。
「土羅座衛門(ドラザエモン)よ、その秘めた力を解き放ち、あまたの鉄を力とせよ! 覚醒!」
パァァーッとドラザエモンの体が輝く。なんだかお顔が凛々しく、ちょっと逞(たくま)しくなったようだ。
「うわぁー、すっげぇ! めっちゃ強くなった気がする! やったやったー! よし、日凛、相撲で勝負しようぜ!」
「えー、面倒くさいなぁ」
「お前が勝ったら、お母さんへのエッチなイタズラはやめてやるよ」
「え!? じゃあやる!」
オレは再びドラザエモンにゲンコツを落とす。
「勝負とか関係なしに、葉月にちょっかい出すのはやめんか、この助平。前にも約束しとったじゃろーが。全くこりんやつじゃ。ほれ、まだ称号を与えておらぬ。大人しく立っとれ」
ドラザエモンは頭をさすりながら「はぁい」と言った。
「ドラザエモンよ、お主に与える称号は『刀鍛冶』じゃ。刀が無くては侍は真の力を発揮できぬからのう」
ドラザエモンの体が再び輝く。
「えー、もっとカッコいいのが良かったなぁ」
ドラザエモンは不服そうに口を尖らせた。
「つべこべ言うでない。大事な役割なんじゃぞ。固有能力は『鍛造』じゃ。槌で刀を鍛える際、炉がなくても熱を加える事が出来る。材料は、農具から拝借すると良い。すでに葉月が解体して鉄部分だけにしてあるじゃろうから、分けてもらうのじゃぞ」
「ふぇーい。わかったよぉ。やりますよぉーだ。ま、どうせだから凄い刀つくったるぜ。お母さんも応援してね」
「ええ、もちろんよ。頑張ってねドラちゃん」
葉月はニッコリと微笑んだ。
「日凛、お主には新たな称号はないが、随分と強くなっておるのは確かじゃ。ドラザエモンを手伝ってやってくれるかの? 鍛冶場では腕力をかなり使うからのう」
日凛はぶぅっ、と頰を膨らます。
「ええー!? やだよ、こんな奴と一緒に仕事するなんて! 絶対やだ!」
日凛はほとんど涙目だ。ドラザエモンが葉月の愛情を受けている事にヤキモチを妬いているのだろう。
「そう言うなって日凛。後でいいものやるからさ。耳貸して」
「えっ、いいもの?何々?」
日凛にそっと耳打ちするドラザエモン。日凛の顔がパァッと明るくなる。
「本当にくれるの!?」
「ああ、本当にやるよ。だから鍛冶場の手伝い頼むよ」
「うん! 任せて!」
二人はガッチリと握手を交わし、にまぁっとした笑みを浮かべた。
あの二人、何か悪巧みでもしているのだろうか。まぁいい。子供の考える事なんてたかが知れてる。
「俺にも何か新しい称号はありますか、銀杏様」
木蓮がそう言いながら、オレのそばにやって来た。
「いや、特にないのう。お主と累火、それから白金はすでに完成された力を持っておる。称号を新たに与えずとも、安心して留守を任せる事ができるぞよ」
「そうですか......」
木蓮はなんだか残念そうだった。緑爪戦でも大活躍だった木蓮。オレとしては今の台詞は褒めているつもりだったんだけど、なんかまずかったかな。
「木蓮よ、お主は式神を四方に配置し、怪しい者が来ないか監視せよ。累火は村の結界に対して祈祷を頼む。わしが張っておいたものじゃが、力が弱まっておる。頼めるかの?」
「お任せください。では、狐式神を配置します」
「かしこまりました、銀杏様!村の結界と白金様の事は、私がちゃんと守りますので!」
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