【完結】のじゃロリ狐娘に転生した俺。守り神として村人を英雄覚醒させ、邪悪な帝にざまぁします。

アキ・スマイリー

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第38話 都へ出発。

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  都へ行く話がまとまり、オレは亜水に命じて都民を集めてもらった。

  新都の入り口は西側にあり、入り口に程近い南西部、一番町に亜水の屋敷はある。亜水は現在、村長ではなく一番町の町長だ。一番町から六番町まで、かつては村長だった者たちが町長を務め、その立場は平等だ。

  ちなみに白金の屋敷も、一番長にある。

  町は円を描くようにぐるりと配置され、六番町は北西部の位置付けとなる。

  新都の中心部には、奉行所がある。と言っても江戸時代の奉行所のように過酷な業務ではなく、ゆるい感じだ。現世で言うところの交番と役所を合わせたような場所だと思って欲しい。

  数名の同心と火消しが駐在し、何かトラブルが起こった際は駆けつける。この都に罪を犯すような人はいないと思うけど、もしもの際は白金が奉行の役目を果たし、罪人を裁く事になっている。

  奉行所の前には広場があり、舞台もある。祭りの時はここで演舞などを行えるようになっているのだ。

  オレは舞台へ上がり、三言呪の「大音声」を使った。声が大きくなったところで、集まった都民に向けて高らかに叫んだ。

「皆の者、良く聞け。わしはこれより、仲間と共に都へ向かう。目的は帝の持つ『盟約書』じゃ。帝は皆を追放しただけでは飽き足らず、物ノ怪に売り渡したのじゃ! エサとして!」

   民衆がどよめく。当然だろう。

   帝許すまじ。怒りと恨みに満ちた声が、渦となって広場を覆う。

「皆の怒りは最もじゃ。わしが代わりにその恨み、晴らしてくれよう。じゃが例え帝を殺したとしても、わしらの気は晴れぬ。帝から、わしらを売った『盟約書』を取り上げる。そして、この新都に住まう者たちに対して謝罪させる。それを約束しよう!」

   広場中から歓声が上がる。

「出立は今、この時!  わしと白金、塁火、木蓮。そしてわしの姉上である紅蓮。この五人で行く。また、一番町長である亜水を、奉行代行とする。わしらがいない間に何かあった場合は、亜水に申し立てよ。以上じゃ。解散!」

   都民たちの見送りや同行を求める声が多く聞こえた。だが町長や同心たちになだめられ、人々は広場から帰って行った。

「では参ろうか。わしは白金と木蓮を連れて行く。姉上は塁火を頼むぞよ」

   神速歩は手を繋いでいる人物も一緒に高速移動出来る。定員は自分を入れて二名だ。

「銀杏、何故お前が白金と手を繋ぐのだ。白金は我が連れて行く」

  紅蓮が眉間にしわを寄せながら、オレに詰め寄る。

「仕方なかろう。白金の正室はあくまでもわしじゃ。姉上と塁火の位置付けは側室。わしが白金に寄り添うのが筋というものじゃろう」

「ちょっと待ってください銀杏様! 勝手にランク付けしないでくださいよ!」

  また英語を使う塁火。どこで学んでいるのだろうか。

「そうだぞ。確かに白金は銀杏を一番愛していると言った。だが、誰が正室かはまだ決まってはおらぬはず。白金! はっきりせよ!」

  オレと紅蓮、そして塁火の強い眼差しを一身に受け、たじろぐ白金。ちなみに木蓮は居心地が悪そうに周囲を見回している。

「あー、銀杏の言った通りだ。銀杏が俺の正室。紅蓮と塁火は側室だ。ランク付けとかするの本当は嫌なんだけどさ。でも俺が銀杏を愛する気持ちは唯一無二。紅蓮と塁火も同じように愛したいとは思ってるが、全く同じという訳にはいいかないだろう」

 そう言って、優しくオレたち三人を抱きしめる白金。ああ......好き♡やっぱりオレが一番なんだ。好き好き♡好きー!

  はいそこ!キモいとか言わない!今のオレは、身も心も乙女なの!

  白金はオレたちに順番にキスをし、オレの手をキュッと握った。

「みんな大好きだぜ。愛してる。だから仲良くしてくれ。俺の事で争うのはもうやめろ。いいな」

「うう......」

  紅蓮も塁火もシュンとしていたが、コクリと頷いた。

「ではこれで異論はないな。行こうぞ、姉上。神速......」

「待て、銀杏! 用を思い出した!」

  紅蓮が突如、何かを思い出したようにハッとする。

「我が本日中に宮殿に戻らなかった場合、霧隠れの村、つまりこの新都に総攻撃を仕掛けよと、部下に伝えてあるのだ。一度、黄泉の国にある我の宮殿に戻る必要がある。すまぬが、お前たちは先に都へ向かってくれ」

「まぁ、それは構わぬが......塁火も連れて行くのか? 黄泉の国は人間は入れぬ筈」

「確かに......では我だけ宮殿に向かい、それからこの新都に戻って来よう。少し待っていてくれるか、塁火」

「はい、大丈夫です。待ってます」

  紅蓮の問いに、塁火は微笑んだ。

「それなら、俺が一緒に行きます、紅蓮様。塁火は、銀杏様と先に都に行っててくれ」

  そう進言したのは、木蓮だった。

「む? 何故じゃ木蓮」

  何か、黄泉の国に行かなければならない理由でもあるのだろうか。

「俺の中にある酒呑童子の魂が、刀を求めているんです。黄泉の国には、酒呑童子の愛刀『神殺刀しんさつとう』が、八雲様によって封印されています。これからの戦いに向け、俺はもっと強くなりたい。是非、同行をお許しください」

  木蓮はオレと紅蓮に向けて頭を下げた。

  紅蓮の話によれば、都には恐ろしく強力な術者がいるらしい。木蓮は既に充分強いとは思うが、力を求める気持ちはわかる。白金に対するライバル心もある筈だ。

「わしはそれでも構わぬぞ。姉上が良ければじゃが」

  オレがそう言うと、紅蓮は「ふーむ」と唸った。

「木蓮は鬼に変化出来るゆえ、連れて行っても構わぬのだが......我が人間と馴れ合っていると思われるのもまずい。部下たちへの体裁もあるのでな。よって木蓮よ。黄泉へ入る際は鬼に変化せよ。お主を我の婚約者として紹介しよう。も、もちろん我が好きなのは白金だ! だが、そう言った特別な理由が必要なのだ」

  紅蓮はしどろもどろになりながら、そう説明した。木蓮が紅蓮の婚約者に? 本当に恋仲になってくれれば最高なんだけど......。ライバルが一人減るからね!

「わかりました。では、そのようにします。俺は紅蓮様の婚約者。そして鬼。それで通します」

  木蓮は早速「鬼」の姿に変化し、紅蓮の手を握った。

「あなたの事は、なんと呼べば良いですか?」

  紅蓮をジッと見つめる木蓮。紅蓮は顔を真っ赤にしている。

「あ、え、えっと、紅蓮で良い。呼び捨てを許す!」

「そうか。わかった。よろしくな、紅蓮」

  木蓮は爽やかに微笑んで、紅蓮を抱き寄せた。紅蓮は「きゃわわっ」と乙女チックな悲鳴をあげる。耳まで真っ赤だ。

「それでは参ろうか。わしと白金、塁火は都へ。姉上と木蓮は黄泉の国へ」

「う、う、うむ! 参ろうぞ! 神速歩!」

  紅蓮と木蓮は、残像を残して「どひゅんっ」と疾走して行った。うろたえる紅蓮を見るのは実に面白い。

 「よし、わしらも行くとするか。神速歩!」

  オレは右手を白金、左手を塁火とつなぎ、都へと出発した。さてさて、どんな事が待ち受けているのやら。

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