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第2話 冒険者ギルド。
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「と、言うわけで! 僕は今日から正真正銘の貧乏人だ! よろしく頼むよ、みんな!」
僕の馴染みの場所、「冒険者ギルド」。昔から城を抜け出しては、ここへやって来ていた。冒険者登録は成人となる十五歳から可能で、その頃から通っているから今年で五年目だ。
「よろしく頼むって、そんな元気に言われてもなぁ」
「おお、ドジで弱っちくてポンコツのDランク冒険者、ジャン王子にまたハクがついちまうぜ」
ドッと笑う冒険者達。ギルドの中にある酒場は今日も大盛況。昼間っから大賑わいである。口は悪いが、みんないい奴である。
「おいおい、ポンコツは言い過ぎだろ?」
僕は笑いながらツッコミを入れる。
「いいや、マトを得てると思うぜ? 五年も冒険者やってるのにレベルは1のままだし、ランクはDランク。だがそんなお前がみんな大好きだ! まぁ飲めよジャン。俺の奢りだ」
「ちょっと待てよ。ジャンは俺の酒を飲むのが先だぜ。なぁジャン。もちろん金の事は気にしなくていい」
次から次へと、目の前に料理が運ばれてくる。全て冒険者仲間達の奢りである。
「しかしその親父、マジでクソだな。俺が代わりにぶん殴ってやろうか?」
「いやいや、俺にやらせろ。勇敢だが非力で貧弱なジャンの手を汚させたくねぇ」
僕は父上の悪口を散々ぶちまけていたので、みんな共感してくれた。
「こらこら。仮にも国王だぞ。処刑されちゃうからやめろって。気持ちは嬉しいけどさ」
処刑、か。自分で言っておいて気が滅入る。
「命なんて惜しくねぇよ。ジャンにはみんな世話になってるからな。主に戦闘以外の所で」
「ちげぇねぇ。人探しも物探しも、ジャンの右に出る奴はいねぇからな。家族や恋人、家宝。もう諦めてたモンまで、ジャンは見つけてくれた。しかもタダでな。恩返しは出来る時にやっとかねぇとだ」
みんながウンウンと頷く。
「ありがとう、みんな。持つべきものは友達だね」
僕の周囲に集まっている冒険者は男ばかりが十人程。比較的よくつるむ連中だ。腕っぷしが強く、肉弾戦に秀でた者が多い。少し離れた所でこちらを見つめているのは女性の冒険者達で、こちらも十数名程。彼女達は知性的で、魔術や神術に優れている。よく食事をしたり困りごとを手助けしたりしているのだが、男達に遠慮して離れているようだ。
僕はみんなの顔を見回して、目が潤むのを感じた。城を追放されても、何もかも失った訳じゃない。僕には仲間がいる。その事は、どんな事実よりも僕の支えになった。
「泣くなよジャン。ハンカチなんて誰も持ってねぇぜ。そうだ、ハンカチといや、昨日も現れたそうだぜ」
男性冒険者の一人が誰ともなしに話し始め、周囲の連中も会話に混ざる。
「ああ、聖女ジャンヌ様か。今度はなんだ?」
「なんでも、頭がおかしくなっちまった貴族のお嬢さんの悪魔払いをしたらしい。ジャンヌ様の聖なるお力で、そのお嬢さんはすっかり元通りになったそうなんだが......ジャンヌ様がそのお嬢さんの涙を拭うのに使ったハンカチ、やっぱり置いて行ったそうだ」
「へぇ。んで、書いてあったのかよ、予言」
「ああ。一週間後に意中の男性と結ばれる。そう書いてあったそうだ。いいなぁ、羨ましいよなぁ。俺も恋人が出来るか予言して欲しいぜ。いやむしろ、ジャンヌ様と恋仲になりてぇなぁ」
僕は口に含んでいた麦酒をブーッと噴き出す。
「うわっ、なんだよジャン! 汚ねぇな!」
「ご、ごめん!」
僕は立ち上がって、彼の顔をハンカチで拭く。
「なんだよジャン、ハンカチ持ってるんじゃねぇか。やっぱり王族だな。いや、元王族か」
「まぁな。これくらいは紳士の嗜みだよ」
そう言いながら彼の顔を拭く。彼はジーッと僕の顔を見ている。
「なんだよ。僕の顔に何かついてるか?」
「いや、なんかよ、ジャンの顔ってジャンヌ様に似てるなぁって思ってよ」
ギクリ。
「そ、そ、そんな訳ないだろ! だって僕は男だぞ! ジャンヌ様は女じゃないか!」
「うーん、そうだよなぁ。他人の空似ってやつか? でも似てるなぁ」
「マジかよどれどれ。おー、本当だ。よく見りゃそっくりだぜ。双子か?」
男連中が立ち上がり、ドヤドヤと僕をと取り囲む。
「違うって! もー、気持ち悪いな、離せよ」
この状況はまずいな。彼らに同性愛の気はないだろうが、本能的に身の危険を感じる。危険を感じると、勝手に変身してしまうかも知れない。「聖女ジャンヌ」に。
「ちょっとジャン! あんたいつまでむさ苦しい連中と戯れてんのよ! 女子の方にも来なさい! みんな待ってるわよ!」
僕の腕をガッと掴んで、男達の輪から引っ張り出してくれたのは幼馴染の美少女シャーロットだ。
た、助かった......。
僕の馴染みの場所、「冒険者ギルド」。昔から城を抜け出しては、ここへやって来ていた。冒険者登録は成人となる十五歳から可能で、その頃から通っているから今年で五年目だ。
「よろしく頼むって、そんな元気に言われてもなぁ」
「おお、ドジで弱っちくてポンコツのDランク冒険者、ジャン王子にまたハクがついちまうぜ」
ドッと笑う冒険者達。ギルドの中にある酒場は今日も大盛況。昼間っから大賑わいである。口は悪いが、みんないい奴である。
「おいおい、ポンコツは言い過ぎだろ?」
僕は笑いながらツッコミを入れる。
「いいや、マトを得てると思うぜ? 五年も冒険者やってるのにレベルは1のままだし、ランクはDランク。だがそんなお前がみんな大好きだ! まぁ飲めよジャン。俺の奢りだ」
「ちょっと待てよ。ジャンは俺の酒を飲むのが先だぜ。なぁジャン。もちろん金の事は気にしなくていい」
次から次へと、目の前に料理が運ばれてくる。全て冒険者仲間達の奢りである。
「しかしその親父、マジでクソだな。俺が代わりにぶん殴ってやろうか?」
「いやいや、俺にやらせろ。勇敢だが非力で貧弱なジャンの手を汚させたくねぇ」
僕は父上の悪口を散々ぶちまけていたので、みんな共感してくれた。
「こらこら。仮にも国王だぞ。処刑されちゃうからやめろって。気持ちは嬉しいけどさ」
処刑、か。自分で言っておいて気が滅入る。
「命なんて惜しくねぇよ。ジャンにはみんな世話になってるからな。主に戦闘以外の所で」
「ちげぇねぇ。人探しも物探しも、ジャンの右に出る奴はいねぇからな。家族や恋人、家宝。もう諦めてたモンまで、ジャンは見つけてくれた。しかもタダでな。恩返しは出来る時にやっとかねぇとだ」
みんながウンウンと頷く。
「ありがとう、みんな。持つべきものは友達だね」
僕の周囲に集まっている冒険者は男ばかりが十人程。比較的よくつるむ連中だ。腕っぷしが強く、肉弾戦に秀でた者が多い。少し離れた所でこちらを見つめているのは女性の冒険者達で、こちらも十数名程。彼女達は知性的で、魔術や神術に優れている。よく食事をしたり困りごとを手助けしたりしているのだが、男達に遠慮して離れているようだ。
僕はみんなの顔を見回して、目が潤むのを感じた。城を追放されても、何もかも失った訳じゃない。僕には仲間がいる。その事は、どんな事実よりも僕の支えになった。
「泣くなよジャン。ハンカチなんて誰も持ってねぇぜ。そうだ、ハンカチといや、昨日も現れたそうだぜ」
男性冒険者の一人が誰ともなしに話し始め、周囲の連中も会話に混ざる。
「ああ、聖女ジャンヌ様か。今度はなんだ?」
「なんでも、頭がおかしくなっちまった貴族のお嬢さんの悪魔払いをしたらしい。ジャンヌ様の聖なるお力で、そのお嬢さんはすっかり元通りになったそうなんだが......ジャンヌ様がそのお嬢さんの涙を拭うのに使ったハンカチ、やっぱり置いて行ったそうだ」
「へぇ。んで、書いてあったのかよ、予言」
「ああ。一週間後に意中の男性と結ばれる。そう書いてあったそうだ。いいなぁ、羨ましいよなぁ。俺も恋人が出来るか予言して欲しいぜ。いやむしろ、ジャンヌ様と恋仲になりてぇなぁ」
僕は口に含んでいた麦酒をブーッと噴き出す。
「うわっ、なんだよジャン! 汚ねぇな!」
「ご、ごめん!」
僕は立ち上がって、彼の顔をハンカチで拭く。
「なんだよジャン、ハンカチ持ってるんじゃねぇか。やっぱり王族だな。いや、元王族か」
「まぁな。これくらいは紳士の嗜みだよ」
そう言いながら彼の顔を拭く。彼はジーッと僕の顔を見ている。
「なんだよ。僕の顔に何かついてるか?」
「いや、なんかよ、ジャンの顔ってジャンヌ様に似てるなぁって思ってよ」
ギクリ。
「そ、そ、そんな訳ないだろ! だって僕は男だぞ! ジャンヌ様は女じゃないか!」
「うーん、そうだよなぁ。他人の空似ってやつか? でも似てるなぁ」
「マジかよどれどれ。おー、本当だ。よく見りゃそっくりだぜ。双子か?」
男連中が立ち上がり、ドヤドヤと僕をと取り囲む。
「違うって! もー、気持ち悪いな、離せよ」
この状況はまずいな。彼らに同性愛の気はないだろうが、本能的に身の危険を感じる。危険を感じると、勝手に変身してしまうかも知れない。「聖女ジャンヌ」に。
「ちょっとジャン! あんたいつまでむさ苦しい連中と戯れてんのよ! 女子の方にも来なさい! みんな待ってるわよ!」
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