二十年間レベル1のおっさん、恋人を寝取られた上にギルドを追放される〜ハズレスキル「ちからをためる」で溜め続けた力、今こそ解放します〜完全版

アキ・スマイリー

文字の大きさ
11 / 39

第9話 夢の中での神託。

しおりを挟む
 シュタイン達と合流して総勢八人となった俺たちは、大きなテーブルへと移動して飲み直していた。シュミラは冒険者関連の話題に入れず気まずそうだったが、時々キーラが絡んでくれたおかげで間がもったようだった。なんだかんだで、仲の良い二人である。

「では方針が決まった所で早速、迷宮へ参りますか」

 そう言って立ち上がるノートン。だが実際の所、俺は猛烈に疲労していた。急激に上がったレベルの反動のようなものかも知れない。眠くてたまらない。

「すまないがみんな、迷宮の攻略は明日にしよう。俺は今日、レベル1から99999まで一気に上がってね。詳細は省くが、反動で眠気が凄いんだ」

「きゅ、99999!? そんなの、聞いた事ないわよ!?」

 素っ頓狂な声を上げたのはキーラだ。

「まぁな。俺が一番驚いてるよ。だけど本当なんだ。ほら、俺の冒険者証を見てくれ」

 冒険者証とは、冒険者ギルドが発行する冒険者の証だ。名前や年齢、冒険者ランク、レベルが記載されている。

「驚いたわ......ティム、あんたもう人間超えてるじゃないの」

 冒険者証を持つ手を震わせ、キーラが俺を見つめる。

「わ、私にも見せて!」

 薬学士のモリーも冒険者証を手に取り、それをノートンとシュタインが覗き込む。

「なんなのこれ! 尋常じゃないわ!」

「す、凄い! 歴代の英雄すら、99を超えた事がないと言うのに! と言うより、99が最大値の筈」

「ティムさん、やばいね。Sランク入りの基準値、50だよ。オーバーしすぎでしょ。僕、55」

「まぁ私のティムだもん。当然よね」

 モリー、ノートン、シュタイン、キーラは、冒険者証を持ってわいわいと大騒ぎだ。

 そんな中、ダフネと格闘士のキングスリーは、彼らを遠巻きに眺めている。

「思った通りです。やはりティム様は、偉大なお方ですね」

「押忍」

 なんともクールな二人である。

「お兄ちゃんって、やっぱり凄いんだね」

 シュミラが感心したように、隣の席から俺の顔を覗き込んだ。その表情は不思議と色っぽく、不覚にも心臓を高鳴らせてしまう。

 おいおい! シュミラは妹だぞ! 何を考えてるんだ俺は!

 そうか、酒に酔ったせいだ。だからこんな気持ちに......。

 ああ、眠い。まぶたが、重い。

「そうだぞシュミラ。お兄ちゃんは凄いんだ。だからちょっとだけ、眠らせてくれ」

 俺はそう言ってテーブルに両腕を乗せ、それを枕にして目を閉じた。

 ああ、こりゃだめだ。あっと言う間に寝ちまうな。それにしても、今日は凄い一日だった。

(ティム)

 あれ、父さんだ。赤ん坊を、抱いている。

(ティム、この子は、今日からお前の妹だ)

(俺の妹? あれ? 母さん、妊娠してたの? 全然気付かなかった)

(そうじゃないんだ。色々事情があってな。父さんの親友から預かった、大事な子供なんだ。父さんも母さんも、これから家を空ける事が多くなる。だからティム、お前がこの子の面倒を見るんだ。頼んだぞ)

(わかったよ。父さんも母さんも、忙しいもんな。任せてくれ。この子、名前は?)

(シュミラだ)

(シュミラ。いい名前だな。おー、よしよしシュミラ。おっ、笑ったぜ! 可愛いな)

 そうか、あの時の、夢。俺が十七歳の時、父さんがシュミラを連れて来たんだった。懐かしいなぁ。

 あれ、真っ暗になったぞ。何も見えない。

 お、遠くに光が見える。あそこに行ってみよう。

 少し進んだつもりが、体の速度は予想以上だ。光はあっという間に大きくなる。

 光の中に、人が見える。神々しい。

 あの人は、いや、あのお方は【光の神ルクス】。このグローデン大陸で、広く崇拝されている女神様だ。教会にある絵画や彫刻に良く似ているし、あの神々しさは間違い無いだろう。

「ティム・バートリー。此度のモンスターの大軍、良くぞ退けました」

 微笑む女神。その表情は慈愛に満ちている。

「お褒めに預かり、光栄です」

 俺は跪き、深く頭を下げる。

「顔を上げて下さい。私はあなたにも、あなたの父、ファースにも感謝しています。モンスターは私の姉、闇の女神【テネブラエ】の生み出した子供達。私の子供達である人間を、彼女は妬み、憎んでいます。何故世界がモンスターの支配下ではなく、人間の支配下にあるのか、と」

 その話は、伝説や御伽話として、子供から老人まで誰でも知っている。やはり事実だったのだ。

「私に出来る事はありますか? 迷宮を封印すれば、モンスターを封じる事になるのでしょうか?」

 俺は静かにそう尋ねた。

「確かに一定の効果はあるでしょう。ですが、根本的な解決にはなりません。姉は既に人間として転生し、直接世界に干渉しようとしています。私は世界を見守る役目がある為、転生しての直接干渉は出来ません。ティム、あなただけが頼りです」

「私は、何をすれば良いのでしょう。どうぞお導きを」

 父のような英雄になりたい。その一心で今日まで生きてきた。これからどう進めばいいのか。迷いを振り払いたい。その為には、彼女の導きが必要だ。

「迷宮の封印は必要です。それに加え、人間となった私の姉【テネブラエ】への対処が必要になるでしょう。多くは語れませんが、あなたの妹、シュミラが鍵となります」

「シュミラが!? あの子は一体、誰の子供なのですか!?」

「それは私の口からは言えません。自分で答えを見つけるのです、ティム」

「......わかりました」

「それとあと一つ。あなたのその力、狙っている者がいます。くれぐれも奪われないよう、気をつけて」

「奪われる? 力って奪えるものなのですか?」

「ええ。神術には光と闇がありますが、闇の神術には、他者の力を奪うものがあるのです。誰が狙っているかは言えませんが、充分警戒してください」

「わかりました。気をつけます」

 何てこった。今後は周囲を疑ってかからなければならないのか。誰であれ信じたいと言う俺のポリシーに反するが、仕方がない。

「では、私は消えます。シュミラをよろしく頼みましたよ、ティム」

 その言葉を最後に女神ルクスは消え、俺の意識も深いまどろみへと落ちていった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...